シルバーバーチの霊訓(七)
シルビア・バーバネル(編)
平成十七年三月 近藤 千雄(訳)

More Wisdom of Silver Birch
Edited by Sylvia Barbanell
Psychic Press Ltd.
London, England

巻頭言
シルバーバーチ

頑固な心、石ころのような精神では真理の種子は芽を出しません。受容性に富む魂・・・率直に受け入れ、それが導くところならどこへでもついていける魂においてのみ花開くものです。

あなたがそのような気持ちになるまでには、つまり真理を魂の中核として受け入れる備えができるまでには、あなたはそのために用意される数々の人生体験を忍ばなくてはなりません。

もしもあなたがすでにその試練を経ておられるならば、その時点においては辛く苦しく無情に思え、自分一人この世から忘れ去られ、無視され、一人ぼっちにされた侘しさを味わい、運命の過酷さに打ちひしがれる思いをされたことでしょう。しかし魂は逆境の中にあってこそ成長するものです。黄金は破砕と精錬を経て初めてその純金の姿を見せるのです。

あなたがもしもそうした体験をすでに積まれた方ならば、今手にされている本書の中で私が語り明かす真理に耳を傾ける資格があることを、堂々と宣言なさることが出来ます。しかしそのことは私が語ることの全てを受け入れることを要求するものではありません。あなたの理性が反発することは遠慮なく拒絶なさってください。あなたの常識的感覚にそぐわないものはどうぞお捨てになってください。

私もあなた方と少しも変わることのない一個の人間的存在です。ただ私は死後もなお続く人生の道を少し先まで歩んできました。今その道を逆戻りしてきて、あなたが死の敷居を跨いだのちに絶対的宿命として直面することになっている新しい、そしてより広大な人生がどのようなものであるかを語ってあげております。

どうか謙虚に、そして畏敬の念をもって真理を迎えてやってください。謙虚さと畏敬の念のあるところには真理は喜んで訪れるでしょう。そして、せっかく訪れてくれた真理が少しでも長居をしてくれるよう、手厚くもてなしてあげてください。真理こそがあなたに自信と確信と理解力と、そして何にもまして、永遠に失われることのない、かけがいのない霊的叡智をもたらしてくれることでしょう。

編者まえがき
私はこれまでシルバーバーチの交霊会に何百回も出席しているが、その霊言を聞き飽きたという感じを抱いたことは一度もない。

三千年前に地上で北米インデアンとしての生涯を送ったというシルバーバーチは、現在では大変な高級霊であるらしいことは容易に察しが付くが、その本来の霊的位階を決して明かそうとはしない。そのわけは、こうして霊界から戻ってくるのは地上人類の為の使命を遂行する為であって、自分を崇めてもらうためではないからだという。

その使命とは、聞く耳を持つ者に永遠不変の霊的真理を説くこと、これに尽きる。その説くところは常に単純・素朴であり、そして単刀直入的である。宗派や信条やドグマには一切囚われない。その主張するところはきわめて単純・明快である。すなわち我々の一人一人に神の火花・・・完全なる摂理として顕現している宇宙の大霊の一部が宿っているのであるから、お互いがお互いの為に尽くし合うのが神に尽くすゆえんとなるというのである。

そうした内容もさることながら、シルバーバーチが語る時のその用語の巧みさ、美しさ、流暢さは、初めて出世した者が等しく感動させられるところなのである。美辞麗句を並べるというのではない。用語はきわめて素朴である。それがいかなる質問に対しても間髪を入れずに流れ出てくる。それを耳にしていて私は時折、シルバーバーチが初めて霊媒(編者の主人モーリス・バーバネル)の口を使って語り始めた時のことを思い出すことがある。

もう二十年以上も前のことになるが、私たち夫婦は、あるスピリチュアリストの招きで、ロンドンでも貧民層が集まっている地域のある家で開かれている交霊会へ出席した。第一回目の時は女性霊媒を通じていろんな国籍の霊がしゃべるのを聞いて主人はあほらしいといった気持ちしか抱かなかったが、第二回目の時にいきなり入神させられ、何やらわけのわからないことを喋った。その時はシルバーバーチとは名のらなかったが、今のシルバーバーチと同じ霊である。

その頃はぎこちない英語、どうにか簡単な単語をつなぐことしかできなかった頃のことを思うと、今は何と言う違いであろう。が、ここまでに至るのには大変な時間と経験を要したのである。

そのシルバーバーチの道具として選ばれた十八歳の青年霊媒は、その後の用意されている仕事の遂行に備えて、様々な試練と訓練を耐え忍ばなければならなかった。その目指す目標はただ一つ・・・シルバーバーチの語る教説を少しでも遠く広く地上に行き渡らせるための機会を持つことであった。

良く知る者から見ればシルバーバーチは良き助言者、よき指導者であると同時に、よき友人でもある。決して人類から超然とした態度を取らず、世俗的な問題や人間的煩悩にたいしても深い同情心を見せてくれる。

頭初に比べシルバーバーチも性格が発達し深みを増した・・・と言うよりは、本来の霊的個性がより多く霊媒を通じて発揮できるようになったと言った方が適切であろう。最初のころはふざけっぽく、時には乱暴なところさえ見せながらも、常に愛すべき支配霊と言う感じだった。それが次第に今日の如き叡智に長けた、円熟した指導者へと徐々に”進化 してきた。声の質も変化して、今では霊媒の声とは全く異質のものとなった。

今でも、続けて出席していないと同一霊であるかどうかを疑うかも知れないほどの異質の側面を見せることがある。が、いつも変わらぬ側面がある。特にユーモアのセンスと当意即妙の応答の才能は少しも変わらない。

シルバーバーチの霊言はサイキックニューズ紙にずっと連載されてきており、書物にもなっている。その間には第二次世界大戦が勃発したこともあって各地の戦地においても読まれている。陸軍・海軍・空軍の兵士から苦悶と苦難と疑問の中にあってシルバーバーチの言葉から何物にも変え難い慰めと勇気を得ることが出来たとの喜びの手紙が数多く寄せられた。そのうちの一つを紹介しておこう。これは陸軍の下司官からの手紙で、こう述べている。

〝私はたった今〟More Teachings of Silver Birch(邦訳シリーズ第五巻)を読み終えたところです。終わりの部分はオランダを転戦中に読みました。その壮麗な説得力とさまざまな質問に対する明快そのものの応答は深い感銘を受けました。

ぜひシルバーバーチ霊に、こうした戦地においても霊言が愛読されかけがいのない影響を及ぼしていることを知っていただきたいと思って筆をとりました。どうかシルバーバーチの努力が今後とも何らかの形で認識されていくことを心から願っております。シルバーバーチ霊に神からの祝福のあらんことを!

私はこうした霊的真理を折ある毎に僚友に伝え、それがこの戦地において様々な波紋を呼び起こしております。私がスピリチュアリズムに関心を抱いて十五年にもなりますが、その計り知れない深さと高さを私の魂が身に沁みて味わったのは、やっとこの一、二年のことです。云々・・・。

同じくシルバーバーチを知り尊敬してきた者の一人として、この度本書を編纂することになったのも、私にとっては愛の行為の結実に他ならない。その編纂の作業が終わったのは(第二次大戦)戦乱が終わって間もなくのことだった。(それから二か月後に日本が降伏して全面的に終結する・・・訳者)

願わくは戦乱によって傷ついた暗い西欧世界にようやく訪れた平和がシルバーバーチの言う〝新しい世界〟の夜明けであってくれればと祈らずにはいられない。シルバーバーチが〝必ず来ます〟と述べ、そのために吾々に求めてきた視野も常にその方角である。そこにおいて初めて真の同胞精神が招来される。シルバーバーチの霊訓の基盤もまたそこにあるのである。

1945年6月 シルビア・バーバネル


訳者注・・・この〝まえがき〟の原文はかなり長文のものであるが、他のまえがき、特に第一巻の〝古代霊シルバーバーチと霊媒モーリス・バーバネル〟と重複する部分と、重複しなくてもあまり重要と思えない部分とがあり、それよりは霊言そのものを少しでも多く載せた方が良いとの私の判断で、それらは省いてある。