シルバーバーチの新たなる啓示
スピリチュアルな言葉が教える“生きる”ことの意味
トニー・オーツセン(Tony Ortzen)(著)
原書名:Lift up your hearts
近藤 千雄(訳)

Lift Up Your Hearts
Compiled by Tony Ortzen
Psychic Press Ltd .,
2 Tavistock Chambers,

Bloomsbury Way
London WCIA 2SE,ENGLAND

目 次
まえがき
第1章 組織と綱領
第2章 聖職者の使命
第3章 強健なる魂が選ぶ道
第4章 読者からの質問に答える
第5章 愛は死を超えて
第6章 霊能養成会と青年心霊グループの代表を迎えて
訳者あとがき

まえがき
本書の編纂を終えた頃の英国は、五月というのに数十年ぶりの猛暑が続いていた。朝起きてみると、いつも空は抜けるように澄み渡っていて、うっすらとモヤが掛かっていることはあっても、今日もまた暑い一日になることを予告していた。

気の短い人間にとって、ロンドンのような大都会でのそうした季節はずれの暑さは、置かれている状況によっては、たとえば地下鉄に乗っているとか長い行列の中にいると、それはそれは耐え切れない苦痛である。

反対に天候も気候もいい時は人間の心まで良くなることは、誰しも知るところである。晴れ渡った空はわれわれ人間の心まで晴ればれとさせてくれる。花は咲き、小鳥はさえずり、蝶が花に舞い、木々がそよ風に揺れて、すべて世は事もなしとにいった気分になる。

しかし、シルバーバーチがよく強調するように、何事にも表と裏がある。夜があれば昼があり、愛には憎しみがあり、光には影がつきまとう。人生も同じである。何をやってもうまく行かない時期があるものだ。

大所高所から見ればどうということはないことばかりかも知れないが、凡人の悲しさで、その一つ一つが不幸に思える。そして、とてつもない大きな災厄に見舞われてはじめて、それまでの自分が本当は幸せだったのだと気づく。

先日も、のんびりとショッピングを楽しんでいると、中年の婦人がいきなりこの私に話しかけてきた。十二年前に十八歳の息子を交通事故で亡くしたというのである。様子から見て、その婦人にとっては、その息子の死とともに何もかもが終ってしまったようなものだったことは明らかだった。十二年後の今もその悲しみが消えやらないのだ。

肉身との死別───それも母と子の間であれば、無理もない話で、私には一言も咎める気持ちはない。親と子のつながりは愛情と尊敬の念の上に成り立っているからだ。

《サイキック・ニューズ》の編集者として私は、そうした悲しい体験の便りをよくいただく。先週も、十三年間も飼っていた犬の死による心の痛みを切々と訴える手紙が寄せられた。私にとっては、動物とはいえ、生命はあくまでも神聖である。悲しむのを少しも不自然だとは思わない。子供が殺されたり事故で死んだという人からの手紙もよく受け取る。つい昨日も、十代でこの地上生活を終えた人の話を聞かされたばかりだ。

そうやって悲しみの心情を私に吐露するのは、私が第三者だからであることは言うまでもない。私はそのことを光栄に思い、細やかな同情の気持を込めた返事を書くようにつとめている。

そんな時、シルバーバーチの本を奨めることもある。それは、シルバーバーチがこの地上に戻ってきた高級指導霊の中でも、文句なしに最も説得力のある教えを説いているからである。初めて出現したのは今から半世紀以上も前であるが、英語による表現の巧みさは右に出る者はいないし、霊的思想の説明の明快さも類を見ない。掛け値なしに〝偉大なる霊〟であったし、今なおそうなのであるが、それらしく気取ったところはみじんも見られない。

本書は、シルバーバーチ選集としてはいちばん新しいもので、ほぼ二十年間にわたる期間の霊言から抜粋してある。なるべく重複しないように気をつけたが、前に出た霊言集と重複するところがあるかも知れない。が、そのことは、このシルバーバーチの霊言に関するかぎり決して〝まずい〟こととは考えていない。何回でも繰り返すだけの価値があるし、むしろその必要性すらあると考えている。

どういう仕事に携わっていようと、どこのどなたであろうと───シルバーバーチのファンは文字どおり世界中に広がっている───本書によって人生の難問が解け、人生観の地平線がさらに広がることを希望し、かつ祈るものである。

願わくばシルバーバーチの言葉が、あなたにとっての慰めと親密感と充実感と生きる喜びの源泉となりますように。
トニー・オーツセン