シルバーバーチの霊訓(八)
A.W.オースティン(編)
1987年4月 近藤 千雄(訳)

More Philosophy of Silver Birch
Edited by Tony Ortzen
Psychic Press Ltd.(1979)
London, England

まえがき
本書はハンネン・スワッハー・ホームサークルでの過去七年におけるシルバーバーチの霊言の速記録を読み返し、ふるいにかけ、そしてまとめ上げたものである。夏期を除いて、交霊会は月一回の割合で開かれた。

私のねらいはシルバーバーチの哲学と教訓を個人的問題、及び国際的問題との関連においてまとめることである。選んだ題目はなるべく多岐にわたるように配慮した。シルバーバーチはとかく敬遠されがちな難題、異論の多い問題を敢えて歓迎する。それをぎこちない地上の言語の可能性を最大限発揮して、分かり易い、それでいて深遠な響きを持った言葉で解き明かしてくれる。

私はこの穏やかな霊の聖人から受けた交霊会での衝撃を非常に印象深く思いだす。開会前のバーバネル氏の落ち着かぬ様子を見るに見かねて目を逸らすことがしばしばだった。いつもはジャーナリズムとビジネスの大渦巻ど真ん中に身を置いて平然としている,この精力的でエネルギッシュ過ぎるほどの人物がシルバーバーチに身を委ねんとして、その訪れを待っている身の置き所のなさそうな何分間は、本人にとっては神の裁きを待っている辛い瞬間のようで、私には痛々しく思えるのだった。

しかし、シルバーバーチの訪れは至って穏やかである。そしてそのメッセージはいたって単純素朴であるが、今崩壊の一途をたどりつつあるキリスト教の基盤にとっては、あたかもダイナマイトのような衝撃である。十八歳の懐疑論者のバーバネルをある交霊界へ誘って入神させて以来ほぼ半世紀たった今、その思想は一貫して変わっていない。

変わっていないということは進歩がないということではない。その間にいくつかの世界的危険と社会的変革がありながら、それを見事に耐え抜いてきたということは、その訓えの本質的な強固さと実用性を雄弁に物語っていると言えよう。
これからシルバーバーチに登場していただくお膳立てのつもりのこの前書きも、結局はシルバーバーチの霊言を引用するのが一番よいように思われる。ある日の交霊会でシルバーバーチがこの私にこう語ったことがある。

「活字になってしまった言葉の威力を過小評価してはいけません。活字を通して私たちは海を超えて多くの人とのご縁が出来ているのです。読んでくださる私の言葉、と言っても、高級界の霊団の道具として勿体なくもこの私が取り次いでいるだけなのですが、それが、読んでくださった方の生活を変え、歩むべきコース、方角、道しるべとなっております。無知が知識に取って代わり、暗闇が光明に変わり、模索が確信に代わり、恐怖が平静に取って代わります。地上の人間としての義務である天命の成就に向かって踏み出しております。

それ程のことが活字によって行われているのです。それに携わるあなたは光栄に思わなくてはいけません。話し言葉はそのうち忘れてしまうことがありますが、活字にはそれがありません。永久にそこにあります。何度でも読み返して読むことができます。理解力が増すにつれて新しい意味を発見することにもなります。

かくして私たちは、この世には誰一人、また何一つ希望を与えてくれるものはないと思い込んでいた人々に希望の光を見出させてあげることが出来るのです。あなたも私も、そして他の大勢の人々が参加できる光栄な仕事です。それはおのずと、その責任の重さゆえに謙虚であることを要求します。その責任とは、自分の説く霊的真理の気高さと荘厳さと威厳をいささかたりとも損なうようなことは行わないように、口にしないように伝達しないように慎むということです」

そう言う次第で、本書には私個人の誉れとすべきものは何一つない。関係者一同による協力の産物である。では、主役の古代霊、穏やかな老聖人、慈愛溢れる支配霊に登場願うことにしよう。
トニー・オーツセン

訳者注-本書はシリーズの中で一番ページ数が多く、一ばん少ない第一巻に較べると倍以上の霊言が収められている。しかも〝再生〟の章を除いて、重複するところがまったくない。そこでぺージ数をほぼ平均にしたいという潮文社の要望も入れて、わたしはこれを二冊に分けることにした。

というのは、オーツセンが編集したものがもう一冊あるが、これが本書とうって変わってその90パーセントが他と重複するものばかりであること、さらに本書の後半が全霊言集の中から名文句を断片的に厳選して収録してあることから、それとこれと一緒にして最終巻としたいと考えている。

なおサイキックニューズ紙とツーワールズ誌には今なお断片的ながらシルバーバーチの霊訓が掲載されている。その中には霊言集に出てこないものもある。最終巻にはそうしたものも収録してシルバーバーチの〝総集編〟のようなものにしたいと考えている。