遠近・複眼メガネ


  休息音楽の次は

第二十二回 絵と文 長尾みのる
休息音楽の次は

 ボサノヴァの気怠いラテン・リズムが日本の巷に流れている。「半世紀も過ぎたいまごろ、なんで?」と、そのラテン音楽を懐かしく聞く今日このごろだ。

 その新しいリズムを、誕生したてのブラジルで聞いたのは、一九五三年のことだった。憧れのブラジルは情熱まるだしのサンバ・リズムがいつも巷に溢れているものと決め込んでいたのでガッカリしてしまった。

 ブラジルは第二次大戦での好景気が下り坂のころだった。好景気とサンバの賑々しいはしゃぎのリズムはピッタリだったし、カーニバルの浮かれた欝憤ばらしにも合う。が、その激しさにもやがては疲れてくる。そこで、気の休まる気息いボサノヴァ流行につながったといえるだろう。

 それは、元来のんびり屋のブラジル人好みの休息音楽にもなり、流行は半世紀を超えて二十一世紀に入ってからも続いている。当時から超好景気の続いた日本では、まったく流行らなかったが、不況とともに半世紀遅れで、そのボサノヴァは疲れた日本人の心にも通じ始めたのだ。

 昭和のはじめ、ジャズに浮かれて欝憤をはらし、ブルースに酔い、ぼんやりシャンソンに溜息つくころに、軍歌が聞こえてきた。

 近ごろ-日本の巷には復活したシャンソンの復活や、ボサノヴァの気息い慰さめ、癒しの音楽が流れている。

 二十世紀半ば、金持ちだらけの贅沢都市リオの街角力フェバーから静かに発生したボサノヴァだが、半世紀過ぎて、はるか日本にも流れてきた。ノンビリした国のようにユックリ長続きすればいいのだが…。


遠近・複眼メガネ Nagao Minorumailto
[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12]
[13][14][15][16][17][18][19][20][21][22]

 
[ハッピーエンドレス][NAGAOの絵][国際俳句ロシア語句会]