遠近・複眼メガネ


  ダンスも多様化時代

第十三回 絵と文 長尾みのる
まあ! 外は雪。寒そうよ

 近ごろ、巷に流行る社交ダンスは、ポップスやロックでも踊れる若いリズムの新ステップも現れ、ルンバ、サンバが古く感じられて、老若多様に賑々しい。

 タイタニック号の舞踏会シーンで、ある映画会社の作品では、
 「まあ、タンゴなんか踊ってお下品な!」
という場面があった。当時、優雅にワルツなどで踊るのが社交舞踏会の常識、南米の港街で発生したタンゴは上流社交界に不似合いだった。が、現代では、五つ星級の豪華客船でも欧米の社交舞踏会でもタンゴは上等なほうだ。サンバ、チャチャチャ、ジルバ、ジャイブなども自由になって楽しい。

 日本人の踊り方を嫌う向きも多い。
「どういうつもり? こういう海上で競技用ダンスを派手に踊ってるマナー知らずのあの日本人たち、雰囲気ぶち壊しで、迷惑!」
 と嫌がられるのだ。いまの日本では見せるための派手な競技用ダンスで習い覚え、それしか知らない人がほとんどなので、フォーマルな社交界での、たとえばイブニング・ドレスで優雅には踊れず、ハイセンスな社交もできない。

 ヒットした日本映画『Shall We ダンス』も競技ダンス物語だ。その映画も日本のダンス・ブームに拍車をかけたものだ。

 不況の中でも人間は踊り、踊らされる。オレもやるか! とブームになる前から習い続けてきたが、きりがない、体力がない、覚えきれない…の情けないづくしの、わがダンス事情なのだ。


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