近・複眼メガネ


  和魂雑才

第十六回 絵と文 長尾みのる
和魂雑才

 日本人家庭の食卓は、自分に良ければ、外来の食文化を、いとも気楽にとり入れる。

 醤油、ソース、辣油、マヨネーズ、胡椒、七味唐辛子…など雑多な味が同居の食卓だ。

 食器も和洋中華いろいろ。箸、フォークを使い分け、主食もパン、飯、スパゲティーなど自由だ。食後に、日本茶、中国系、紅茶、コーヒーなど、そのとき次第。

 たとえば、欧米人もスシ・テンプラを食べるが、ごく最近まで、その多くは家庭の外のレストランで、だった。

 家庭での食生活はかなり保守的で、祖父母の代から同じパンと料理なんてのが普通だった。

 いまでも民族、宗教、習慣など勝手に超えられない生活の国の方が絶対多数なのだ。

 歳末はメリークリスマス!  で、初詣は神社で、葬式は仏式で、という気楽な日本人にとって、異国の民族や宗教上の頑固な紛争など難しすぎる問題かもしれない。

 日本の達者な折衷感覚は、平安の昔からの「和魂漢方」に始まり、明治の「和魂洋才」へと続き、現
代は「和魂雑才」に進化した。

 日本人は、自国固有の心を捨てないで他国の文明文化を都合よく消化吸収する達人だ。

 アニメは和魂アニメだし、カップ麺なんかは「洋魂和才」に進化した異文化といえる。どれもはじめは日本人用だったのに世界の人向きにもなった。

 この「和魂雑才」感覚のゴチャゴチャ文化は、それなりに世界マーケットで通用してしまう不思議パワーも秘めている。


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