遠近・複眼メガネ



  若者に媚びない街

第二回 絵と文 長尾みのる
若者に媚びない街

 昔恋しい銀座の柳……
 という歌いだしの「東京行進曲」は、私と同じ昭和四年生まれだ。

 といって、銀座も私のような年寄りかというと、この街は少しも老け込まず、いつもモダンという不思議な魅力と貫禄を持ち続けている。
モガ・モボ、つまりモダンガール&ボーイも、そのずっと以前からの存在だ。
が、ずっと若い流行感覚ばかりを追い続けていたわけじゃない。
 そのころの記録写真集など見ると、銀座通りはモガ・モボぞろぞろの感じだが、当時それが珍しかったから撮ったのであって、実際は和服姿も多く、老若男女いろいろのモダンな街だったというわけ。

 むしろオペラ・シネマ・演劇の浅草のほうが若者好みの最新流行の街だった。
 いまの渋谷・原宿と似ていたのかも。
 銀座近辺で生まれ育ったせいか、歳とって、ようやく、この街の練り上げた不思議パワーもわかってきた。

 それは、若者に媚びない、若者を追わない、最新の流行にも、むやみには飛びつかない達人感覚で、大人の人生ヒントにもなる。

 若者は、媚びを見抜き、追えば逃げる。が、好き勝手自由に……では迷ってしまう。

 「坊や、駄目よ、そんなに出たり入ったりしちゃあ!」

 日本最初の自動ドアが、服部時計店(現・和光)に出来たとき、近所のガキどもと何度も出入りして叱られた昭和初期、銀座にはそういう新しさが関西より早いこともあった。
 若者に媚びない新しさが永続する魅力だ。


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