日本映画データベースより  2013年に増補     森崎東アーカイブズ (池田博明製作、2008年から)


森崎東


日本の三大映画監督  黒沢明・勝新太郎・森崎東 written by
 池田博明


  1. 監督
    1. 1969.10.01 喜劇 女は度胸  松竹大船
    2. 1970.01.15 男はつらいよ フーテンの寅  松竹大船
    3. 1970.06.13 喜劇 男は愛敬  松竹大船
    4. 1970.12.16 高校さすらい派  松竹大船
    5. 1971.05.19 喜劇 女は男のふるさとヨ  松竹大船
    6. 1971.07.24 喜劇 女生きてます  松竹大船
    7. 1972.01.21 生れかわった為五郎  松竹大船
    8. 1972.02.05 喜劇 女売出します  松竹大船
    9. 1972.12.09 女生きてます 盛り場渡り鳥  松竹大船 
    10. 1973.02.10 藍より青く  松竹大船
    11. 1973.09.29 野良犬  松竹大船
    12. 1974.04.27 街の灯  松竹=田辺エージェンシー
    13. 1975.05.24 喜劇 特出しヒモ天国  東映京都
    14. 1977.09.17 黒木太郎の愛と冒険  馬道プロ=ATG
    15. 1983.03.19 時代屋の女房  松竹
    16. 1984.09.22 ロケーション  松竹
    17. 1985.05.11 生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言  キノシタ映画
    18. 1987.08.15 塀の中の懲りない面々  松竹映像=磯田事務所
    19. 1987.12.26 女咲かせます  松竹映像
    20. 1989.08.05 夢見通りの人々  松竹
    21. 1994.07.16 釣りバカ日誌スペシャル  松竹
    22. 1996.04.13 美味しんぼ  松竹=フジテレビジョン=ポニーキャニオン...
    23. 1998.05.23 ラブ・レター  松竹=衛星劇場
    24. 2004.11.13 ニワトリはハダシだ  シマフィルム=ビーワールド=衛星劇
    25. 2013.11.16 ペコロスの母に会いにいく   製作委員会
  2. 脚本
    1. 1966.11.12 なつかしい風来坊  松竹大船
    2. 1966.11.12 燃えよ剣  松竹大船  
    3. 1966.11.26 命果てる日まで  松竹大船
    4. 1966.12.10 そっくり大逆転  松竹大船
    5. 1966.12.10 日本一のマジメ人間  日本京映
    6. 1967.04.29 愛の讃歌  松竹大船
    7. 1967.05.13 さそり  松竹大船
    8. 1967.07.19 大番頭小番頭  松竹大船
    9. 1967.11.11 女の一生  松竹大船
    10. 1968.01.03 やればやれるぜ 全員集合!!  松竹大船
    11. 1968.01.15 喜劇 夫婦善哉  松竹大船
    12. 1968.02.14 惚れた強み  松竹大船
    13. 1968.04.10 ドリフターズですよ!盗って盗って盗りまくれ  東宝  
    14. 1968.06.15 こわしや甚六  松竹大船
    15. 1968.06.15 吹けば飛ぶよな男だが  松竹大船
    16. 1968.08.03 日本ゲリラ時代  松竹大船
    17. 1969.01.15 ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓  東宝
    18. 1969.03.15 喜劇 一発大必勝  松竹大船
    19. 1969.05.17 猛烈社員 スリゴマ忍法  松竹大船
    20. 1969.07.23 いい湯だな 全員集合!!  芸映プロ
    21. 1969.08.27 喜劇 深夜族  松竹大船
    22. 1969.08.27 男はつらいよ  松竹大船
    23. 1969.10.01 喜劇 女は度胸  松竹大船
    24. 1970.06.13 喜劇 男は愛敬  松竹大船
    25. 1970.12.16 高校さすらい派  松竹大船
    26. 1971.05.19 喜劇 女は男のふるさとヨ  松竹大船
    27. 1971.07.24 喜劇 女生きてます  松竹大船
    28. 1972.01.21 生れかわった為五郎  松竹大船
    29. 1972.02.05 喜劇 女売出します  松竹大船
    30. 1972.12.09 女生きてます 盛り場渡り鳥  松竹大船
    31. 1973.02.10 藍より青く  松竹大船
    32. 1973.12.26 大事件だよ全員集合!!  松竹大船
    33. 1974.04.27 街の灯  松竹=田辺エージェンシー
    34. 1974.10.12 メス  松竹大船
    35. 1977.09.17 黒木太郎の愛と冒険  馬道プロ=ATG
    36. 1981.04.29 ダンプ渡り鳥  東映東京
    37. 1983.03.19 時代屋の女房  松竹
    38. 1984.09.22 ロケーション  松竹
    39. 1985.05.11 生きてるうちが花なのよ 死んだらそれまでよ党宣言  キノシタ映画
    40. 1987.12.26 女咲かせます  松竹映像
    41. 1996.12.21 ソクラテス  ソクラテス製作委員会 (ビデオタイトルは極道ソクラテス)
    42. 2002.04.13 白い犬とワルツを  「白い犬とワルツを」製作委員会
    43. 2004.11.13 ニワトリはハダシだ  シマフィルム=ビーワールド=衛星劇場
    44. 2013.11.26 ペコロスの母に会いにいく   製作委員会
  3.  出演
    1. 2001.11.17 世界の終わりという名の雑貨店  松竹=小学館  ... 映画監

    4. クレジットされていないが脚本に協力した作品

           1. 1960.11.30 武士道無残
           2. 1963.01.23 無宿人別帳 
           3. 1964.04.29 拝啓総理大臣様 

   5. 映画化されていない脚本

         1. 1968     女房がポックリ  森崎東・山田洋次

   6. 森崎東の思い出の映画
         1. 1952.12.15 真空地帯
         2. 1931.    人生案内

   森崎映画のシナリオと映画の異同    『喜劇・女売り出します』

                            『女生きてます・盛り場渡り鳥』 
  


★この『日本映画データベース』にはテレビ作品についての記述がないが、森崎さんはかなりたくさんテレビも演出している。
多くのテレビ作品もひと癖、ふた癖があり、見ごたえのある作品が多い。
テレビドラマ目録は『森崎東党宣言!』(インスクリプト)に中村有孝・木原圭翔の作成したものがある。
池田が記録したことのある森崎東関連のテレビドラマ(これ以外は見ていません)
TV放映日 放送局 時間 タイトル 脚本 監督
1967.1.21 TBS 泣いてたまるか・まごころさん 野村芳太郎・森崎東 中川晴之助
1973.10.13 NHK 今日夢人間 森崎東 藤田道郎
1975. NHK わが楽園 森崎東・中島信昭 大原誠
1975.4-9 日本テレビ 長崎犯科帳 池田一朗/猪又憲吾 森崎東
1976.7-8 フジTV 欲望の河 杉山義法ほか 森崎ほか
1978.2.10 テレビ朝日 新・必殺からくり人(14)
東海道五十三次殺し旅 京都
早坂暁 森崎東
1978.4-6 日本テレビ ハッピーですか 森崎東 矢野義幸
1978.10.21 テレビ朝日 幽霊海岸 松木ひろし 森崎東
1978.12.8 50 翔べ!必殺うらごろし(1)
仏像の眼から血の涙が出た
野上龍雄 森崎東
1978.12.15 翔べ!必殺うらごろし(2)
突如奥方と芸者の人格が入れ替った
野上龍雄 森崎東
1979.2.2 日本テレビ 熱中時代 学級閉鎖 森崎東 矢野義幸
1979.3.2. 日本テレビ 熱中時代 さびしい宇宙人 森崎東 吉野洋
1979.7.7. テレビ朝日 田舎刑事 まぼろしの特攻隊 早坂暁 森崎東
1979.8.23 日本テレビ 俺の愛した謎の女 山崎巌 森崎東
1979.11.16. TBS 天女の遺産 森崎東 山根成之
1980.1.16 テレビ朝日 帝銀事件 新藤兼人 森崎東
1980.10.6 蒼き狼 大野靖子 森崎東
1981.6.14 よみうりTV 妻の失ったもの 新藤兼人 森崎東
1982.2.3〜 TBS カムバック・ガール 森崎東 河合義隆
1982.9.23 よりうりTV 天使が消えていく 重森孝子 森崎東
1987.6.18 日本テレビ ああ離婚 森崎東 森崎東
1987. 家族の肖像  <未見> 山田信夫・黄充 森崎東
1988. 帰郷  <未見> 山田信夫 森崎東
1988.4.14 日本テレビ 喜劇・ああ未亡人 中島信昭・森崎東 森崎東
1988.9.22 日本テレビ 四十年目の恋 森崎東 松尾昭典
1990.6.14 よりうりTV 金のなる木に花は咲く 安倍徹郎 森崎東
1990.7.4 日本テレビ 弟よ! 森崎東 森崎東
1990.10.31 日本テレビ 90分 離婚・恐婚・連婚 高橋洋 森崎東
1991.5.23 よみうりTV 金のなる木に花は咲く・II 安倍徹郎 森崎東
1993.6.29 日本テレビ わが町U 鎌田敏夫 森崎東
1993. 日本テレビ 伊豆下田通信局 岡本克己 森崎東
1993. 日本テレビ 伊賀上野通信局 岡本克己 森崎東
1993. 浅虫温泉放火事件 <未見> 国弘威雄 森崎東
1993.8.23/30 テレビ東京 90分 香華 綾部伴子 森崎東
1994.10.25 日本テレビ 新任判事補 国弘威雄 森崎東
1996.3.6 ドキュメント わが生命わが情 島唄 森崎東 森崎東
1997.9.2 日本テレビ 転勤判事 井上由美子 森崎東
1999.6.29 日本テレビ 苦い夜 佐伯俊道 森崎東
2002.8.14 東京12 100分 修善寺温泉殺人事件 土屋斗紀雄 森崎東


       泣いてたまるか』 「まごころさん」の脚本 

                       1967年1月21日 国際放映・TBS

 一話完結の連続ドラマ。この回の脚本は野村芳太郎と森崎東、監督は中川晴之助。
 大森彦太郎(渥美清)は善意の人である。老人を助ける会やまごころ同盟支部員など十種類近いボランティア組織で活動していた。職業はビル清掃会社の班長である。
 通称ヒコさんは独身だったが、歌が好きで以前は同僚だった福ちゃん(浜木綿子)に心魅かれるものがあった。福ちゃんは今は小料理屋で働いている。休みが重なったある日、二人は浅草の観音様へ出かける。戻り道でタクシー(江幡高志)の前に飛び出して転倒した老婆(武智豊子)の身体を気遣い、病院へ同行するヒコさん。女将(賀原夏子)は気さくな性格でヒコさんに対する福ちゃんの気持を確かめてやろうと提案するのだった。
 めかしこんで出かけたその日、福ちゃんのところにはヒモ・三ちゃん(ジェリー藤尾)が金の無心に来ていた。別れるなら手切れ金として10万円を用意しなと男は言うのだった。
 孫娘を連れていた老婆は、病院の検査で脳に腫瘍があることが分かった。頭がズキズキ痛むのはそのせいらしい。手術には約20万円の費用がかかるという。タクシーの運転手・笹川も病気で寝たきりの妻と小さな子供をかかえ、費用が出せるような状況にはない。
 困った彦さんは女将に借金を依頼する。福ちゃんのための手切れ金だと勘違いした女将は快く貸してくれた。
 いよいよ問題の2月10日になった。老婆はベッドで怪我はウソだったことを告白する。手術は止めてくれと言うが、手術しなければ助かる可能性はほとんど無い。彦さんは小さな孫娘のためにも、手術代を自分で持ち、身元保証人にもなることを約束する。運転手はお金を数万円置いて、夜逃げしてしまっていた。
 一方、小料理屋にはヒモが来ていた。公園で待つという。班長さんは金を老婆の手術代に回してしまったことを詫びる。女将は「二度もカミさんに逃げられたのも無理ないわ」と怒るが、福ちゃんはむしろホッとしたと言う。田舎を一緒に出た頃から、突き放されたら死ぬというのが、あいつのいつもの手なんだ、ここら辺で突き放すか、横っ面をひっぱたいてやるか、いったいどうしたらいいものか、班長さん、意見をお願いします。彦さんは「ひっぱたいてやれ」と助言する。「ひっぱたいたぐらいで、まごころが通じるもんかね、「通じる、きっと!」」。公園で福ちゃんは三ちゃんの頬をひっぱたいて、胸に飛び込んでいくのだった。
 病院で手術した老婆は手術の甲斐なく死んでしまった。善意がむくわれず、落胆した彦さんは、まごころがなんだ、小さな親切クソ食らえと当り散らす。意地悪じじいになってやると決意したものの、翌朝、小さな孫娘を背負いながら学童の交通整理をしている彦さんの姿があった。
 山手線の電車が走る。駅で交通道徳を守る会の彦さんは、ラッシュで押されて電車の中まで押し込まれてしまう。ナレーターは、世の中が複雑になると、いろいろな病気が増えます、まごころ運動も病気のひとつとして数えられるのかもしれませんと解説した。 
 プロデューサーに『男はつらいよ』の高島幸夫氏がいる。
 過剰な善意が報われない、残酷な物語だった。

【DVDが発売されています】

       今日夢人間(こんにちゆめにんげん)    (池田博明の視聴メモより) 
                   1973年10月13日 22:30-23:45

 制作・成島康雄、脚本・森崎東、音楽・寺尾聡、美術・伊川陽一、演出・藤田道郎
 久保秀夫(河原崎長一郎)はビルの一角、広告代理店に勤める万年平社員で、妻ひとり、子ひとり。電車内でチンピラが一人の乗客にからんでいる。みかねた久保はチンピラ二人をちぎっては投げちぎっては投げ・・・・しかし、それは久保の幻想(願望)だった。週末には釣りに行くと称して出かけるが、実際には港の沖仲士など、肉体労働のアルバイトをしている。
 ある日、飲み屋で「貝づくし」などを歌っている男(花紀京)がいた。男は「どこかであったね」と声をかけてくる。昔の同級生、ドン亀こと穴山亀吉であった。そのことは、宝部(財津一郎)が企画した恩師・トーチカ先生こと野田青雲(伴淳三郎)を囲んでの同窓会で判明する。
 宝部は土方の穴山を住む世界が違うと呼ばなかったのだが、穴山は先生と共に来たのだった。
 宝部が先生の話を承ろうとすると、穴山は乾杯しようとする。ついに二人は争って、贈り物に用意した有田焼の皿を壊してしまった。先生は「みんなの気持がありがたい」と皿の破片をもらってくれたが、穴山は部屋を飛び出す。
 久保はベンチに寝ている穴山に会い、ふたりは意気投合する。竹馬に乗っている二人のイメージ(「竹馬の友」を意図したシャレだろうか)。
 二人はBARモナリザへ入る。なんと、そこのママ朝子(山本陽子)は穴山の女房だったらしい。
 ホステスのパンダ(桃井かおり)の勘違いと、ショックを受けた朝子の様子で、穴山はパンダと、久保は朝子とコンビになってしまう。久保は朝子や子供たちとひとつ屋根の下ね寝る羽目になってしまい、穴山がやってくるとその服を着て脱出した。
 翌朝、久保の背広を着て、6歳の子供を連れて動物園にいる穴山。穴山は6年前に、ひと旗上げようと、子供と妻を置いて出て行ってしまったのだ。
 モナリザでは子供をおぶったパンダが清掃をしている。「アイス屋のおじさんが恋をした。アイス。モナリザのパンダちゃん何食べた。パンダ」などと口ずさみながら。
 久保が来た。ジュースを奢ってくれるが、自前でおごるときは招き猫の貯金箱に料金を入れるしくみになっている。朝子が買い物から帰って来た。
 パンダはチンピラ(常田富士男)がうわ前をはねに来たのを説得するために外へ出ている。そこへ穴山と女の子が帰宅した。穴山はチンピラにでまかせの「森崎組のもんだ」と言い、社長は朝子の亭主だが、バーを8軒持っている、そこへ連れてゆかせる。パンダは久保に「あのひと、俺の女房を返せと、かけあいにひとりで行ったのよ。加勢しなさい」とはっぱをかける。久保は追いかける。穴山は専務になにかを交渉して、しばらくして出てきた。話しはついたようだ。
 一方、出て行ったきり、帰って来ない久保を家族や会社の課長(犬塚弘)が心配している。
 屋台で飲んでいる久保と穴山。久保は上機嫌だが、穴山は機嫌が悪い。訪ねてみると、穴山は九州へゆく、金もあるのだと言う。その金はいったい?穴山は「俺はサッパリ手を引くのだ」と答える。
 「それじゃお前、あの奥さんを売ったのか?」、久保は穴山を殴る。そこへチンピラが四人やって来る。「よくもさっきは騙してくれたな。ワイの顔がたたん」と、二人ともぶちのめされてしまう。
 警察で取り調べが行われる。一方で丼を出されている男がいるが、「食えよ。なぜ食わん?」、「ハシがないんで・・・」。警察の担当者(山本麟一)は穴山は喧嘩で前科もある、あんたとは住む世界が違う人や、つきあわんほうがいい、また釣りと称して肉体労働の趣味なんて、あんまり人のせんようなこと、せんほうがいいと意見する。
 そこへ、朝子とパンダがやって来る。亭主を受けに来たと言う。担当が渋るので、朝子はつっかかる。「籍にも入ってないし、長い間別れて暮らしてるからって、エ、なんですか、最近は警察は夫婦が寝るのにも一々許可がいるんですか!」と。朝子は「たった今、離縁状を叩きつけてきた。あ、せいせいした。こんな気持は久しぶり」と酔いつぶれた。
 自宅に帰ろうと地下鉄に乗った久保。穴山が窓からカバンを返してくれる。久保は窓から飛び出して抱き合い、肩をたたき合う・・・それは久保の幻想だった。
 エピローグ。つりに出るのはやめて、平和で毎日退屈な日々が続く。しかし、穴山たちは小料理「茉莉亜」を開いたので、そこに行けばまた彼らに会えるのだ。一人称のカメラが店に入ると、穴山と朝子がこちらを見る、「あら、いらっしゃい」とばかりに微笑んでストップ・モーション。 

      森崎東監督の長崎犯科帳   (池田博明記)   1975年

 ユニオン映画の製作により、日本テレビ系列で1975年4月6日から同年9月28日の間に放送された全26話の時代劇。全体のストーリー作成は池田一朗が手がけたようである。森崎東監督が3回ほど演出した。幕末の長崎を舞台に法の裁きとは別に人々の恨みを晴らす闇奉行が存在したという≪必殺≫ドラマで、長崎奉行・平松忠四郎役をを萬屋錦之助が演じる。森崎作品を多く企画した梅谷茂の企画。。
 ≪闇≫の裁き人は奉行のほか、丸山遊郭の客引き三次(火野正平)、蘭法医・木暮良純(田中邦衛)、良純といい仲の居酒屋「せいろむ(象のこと)」の女将・おぎん(磯村みどり)、短刀を使うお文(杉本美樹)。
  レギュラー・メンバーは同心・加田宇太郎(新克利) 、通詞・一馬(太田博之)、同心・三島与五郎(御木本伸介)。ナレーター・城達也「空に真っ赤な雲の色、梁に真っ赤な酒の色、なんでこの身が悲しかろ」と始まる。

 第3回「彼奴は医者か殺し屋か」(脚本・下飯坂菊馬、監督・大洲斉)。丸山遊郭で奉行を接待し、カスティラと称して賄賂を贈る商人たち。上海丸の船底に更紗を隠しての密輸を企んでいる。中心は音羽屋徳兵衛(横森久)。引田屋甚右衛門(香川良介)は密輸仲間に入らず、秘密を知ったために殺される危険が迫る。胸の病気の源七の娘・お美代は女郎に身売りし、いまや美里(佐野厚子)と名乗っていた。与八にいれあげて騙され、朝鮮人参持ちだしの手札を唐人屋敷から持ちだそうとするが与力に発見され仕置きを受けることに。奉行は百叩きの刑に処する。が、引田屋が孝行娘が父親の病気を治したい一心でしたことと弁護し、刑を身代わりに引き受けると申し立てる。奉行は百叩きを一叩きに変えて処罰する。暗闇に乗じて引田屋の暗殺に与八らが来る。引田屋は殺されてしまったが与八は三次が刺す。白頭巾をかぶった奉行が悪人を呼び出し成敗する。しかし、お美代の父は死んだ。救えない生命。良純は自分を責める。監督の大洲斉には松田優作主演の異色時代劇『ひとごろし』がある。『長崎犯科帳』をかなりたくさん演出しています。

 第6回「虎の罠を噛み破れ」(1975年5月11日放送、脚本・池田一朗、監督・森崎東)。撮影は伊佐山巌。白頭巾が斬った町年寄りの葬式(葬連)で闇奉行退治を請け負った商人・要屋(竜崎勝)は、闇奉行を引き出す罠をしかけようとする。裏事情に詳しい岡っ引き・佐吉(浅若芳太郎)の女房・子供を短銃で流れ者・松造(郷^治)に殺させる。捕り方は騒然となるが、黒頭巾をかぶった奉行に凧で呼び出された良純は、手口が派手すぎる、罠かもしれないと助言を受ける。盗み聞きをしていた熊吉を射殺。奉行所を見張っていた熊吉の消息不明で奉行所に仕掛け人がいると推測した要屋は第二の罠に進む。短銃を持った男を見たというタレ込みを相模屋(坂本長利)にさせて、でもぐら長屋で大捕り物。捕り方や野次馬の男女を無差別に撃った松造に奉行は獄門の沙汰を下すが、松造は不敵に笑う。笑いを気にしていた奉行の耳に松造脱獄の知らせが入った。  
 最後の罠は銃のせり市におびき出すことだ。せり市の情報を得た三次は良純に市に参加し銃をせり落として来いと言われる。しかし、新参ものだったので、捕えられて水責めに会う。せいろむへ来て、焦る良純を止める奉行、しかし、良純は耳を貸さない。相模屋へ乗りこむお文と良純。しかし、あえなく捕まって水責めに会ってしまう。
 相模屋から要屋への移動のときにも何も起こらなかった。納屋に閉じ込められたお文と良純は縄抜け、三次も縄をほどかれる。奉行が加勢に来て、最後の大立ち回り。出演者は他に森みつる、中島正二など。
 森崎作品らしいところは・・・特にない。松造のむやみに短銃を撃つ“狂った”精神が興味深い。

 第23回「風の噂の孫七郎」(1975年9月7日放送、脚本・猪又憲吾、監督・森崎東)。佳作である。
 二十年前に商売がたき西国屋の謀事で磔になった十文字屋の遺児・孫七郎の噂が長崎の町でささやかれる。彦太(大門正明)は西国屋の瓦をはがしたり、自分が孫七郎だと宣言したりして噂に拍車をかける。西国屋の番頭が斬られていく。奉行は良純に孫七郎に会って「本当に海の向こうからやってきたのか」と聞いてくれと頼む。お文は二番番頭が斬られる現場を見た。頭巾で顔を隠した眼光鋭い男だった。三次はもと西国屋の下男だった彦太が、妾を嫌がった女中おなか(野村けい子)を西国屋・長兵衛(須藤健)と一番番頭の徳助(山本清)が殺した恨みをはらそうとしていることを聞く。長兵衛は用心棒を探すよう徳助に依頼、しかし徳助が連れてきた用心棒の溝口(浜田晃)こそ、孫七郎を騙る浪人ものだった。それまで一のつく日に孫七郎を登場させてきた二人は警戒の裏をかいて七の日に長兵衛殺しを計画する。七の日の晩、溝口は長兵衛を斬り、徳助にもひと太刀浴びせて逃げる。逃走の途中で良純に会う。良純は件の質問をするが男はもちろん答えない。争った良純は相手が相当の剣の使い手だと感じる。腰を痛めてしまった。徳助が西国屋の主人に収まったので三次は不審に思う。彦太は孫七郎ニセモノ説を信じない。一方、奉行は密かに十文字屋の子守おきくを探しだし、真相を聞いていた。良純・お文・三次・彦太はおきくに確かめにいく。生き証人のおきく(牧よし子)は海にさらわれた孫七郎は死んだと証言し、無縁仏の墓の下から位牌を取りだす。それでも信じない彦太。三人が説得しようと油断している隙に、おきくは溝口によって崖から突き落とされてしまう。
 おきくの為にも徳助の陰謀を暴こうとする良純たち。一方、彦太は留守番を言いつけられている間に頭巾を縫い、刀を盗んでひとりで西国屋に殴りこみ。溝口に斬られて息を引き取る彦太の目に映ったのは白頭巾の男が徳助や溝口を成敗する姿だった。彦太が「あんたは誰だ?」と聞くと、男が答える。「十文字屋孫七郎だ」と。彦太は微笑んで死んでいった。修羅場を去る奉行と良純はお互い声もかけない。おぎんがこの回も次の回も登場しない。
 
 第24回「悪い奴らをあぶり出せ」(1975年9月14日放送、脚本・池田一朗、監督・森崎東)
 白昼、油問屋・山城屋(庄司永建)の若旦那が射殺される。下手人は虎松(潮健志)一家のもの。背後で糸を引いているのはもう一軒の油問屋・赤松屋(内田稔)だ。山城屋の鬼熊一家の熊吉(高杉玄)は入荷してくる油をひっくり返す報復措置に出る。暴力団同士が争う“仁義なき戦い”である。山城屋は油が無くなったと喧伝、値の上がるのを待つ。町には灯りの油もない。庶民は困ってしまった。良純のもとに女郎・小春が盲腸炎で運び込まれる。丸山遊廓は赤々と点燈しているが、灯りが不足する中、良純の手術は失敗、小春は死んでしまった。
 金持ち同士の喧嘩は放っておけという奉行の判断に怒る良純は奉行所前で無料の油を配るという風聞を流す。奉行は仲間だ主張する三次と自分だって信じられない時勢だという良純は大喧嘩。
 奉行は油問屋ふたりを呼ぶ。ふたりは在庫がないの一点張り。奉行は蔵を改めるがいいか、と確認。さらにもし油が見つかったらそれは両人のものではないことを確認する。
 鬼熊と虎松の争いが続く。争いの下手人に双方が一人を出す。奉行は虎松と鬼熊も白州へ呼びだし、騒ぎの代人には引き回し・獄門の刑を、監督の虎松らには謹慎を申し渡す。
 奉行は同心に隠し油を見つけるよう厳命。オランダ屋敷と唐人屋敷も捜査する。一方、油問屋の争いには仲裁人の頭取(見明凡太朗)が口利きに入り、手打ちの段取りが進む。お互い兵隊を集めて出入り。町人が巻き添えになって死亡。良純は怒って、ひとりで手打ちの式に殴りこむと意気巻く。
 その夜、唐人屋敷で遊ぶ奉行は隠してあった百樽の油の一部に火をつける。手打ち式を途中で中断した油問屋は手勢を油樽の運び出しに注ぐ。町方は運び出された樽を押収、同心たちは「これではまるで我々は火事場泥棒ではないか」と思いながらも奉行の大胆不敵な計画に感心。
 手勢の減った両問屋たちに裁き人たちが襲いかかる。危ないところで奉行も加勢に来る。やはり仲間だ、来てくれたと喜ぶ三次に、良純は一番大変なところに来ずに、楽になってから来てカッコつけやがってと不平をぶつけ、唐人屋敷が都合よく火事になってくれたからいいがと言う。お文が奉行の腕のひどい火傷に気づく火事を起こしたのは奉行だったのかと理解する良純、奉行は微笑む。
 三次と良純がお互い悪口を歌で言い合うシーンが森崎さんらしい。三次は良純・田中邦衛を「青大将め!」と非難するがこれってアドリブだろうか? 殺陣シーン、アクション・シーンも秀逸。

       欲望の河   (池田博明記)

 1976年7月12日(月)から8月20日まで、土曜日曜を除く13:50からのフジテレビ昼ドラマ枠で放送された、五月みどり・内田朝雄主演の連続ドラマである。「キネマ旬報」No.689(1976年8月下旬号),195頁に記録がある。東海テレビ制作、出原弘之プロデューサー、脚本は杉山義法・灘千送・金子成人・宮川一郎、監督は森崎東・木村正芳・高橋勝。和田拒衛の評は、「3〜5回の3本を見ているが、森崎演出の画面のもつ演出の厚味は出色であった。内田朝雄も久しぶりの主役で、一代で成り上がった事業家の強引な人間像を作り上げていた。ユージン・オニールの『楡の木陰の欲望』をヒントにしたという。脚本家・監督があまりにも多勢すぎるのが心配である」。

  ====試写室プレビュー 退屈な午後のひとときに圧倒的な森崎演出 ====「週刊TVガイド」7月16日号====
 ヒロインには、かまきり夫人こと五月みどりが扮している。夜の虚飾の中に生きながら、“妻”の座のある仮定生活を夢見る女という役柄だ(ストーリーは137頁参照)。
 五月が好演というより、“地”でやっていると思えるほどピッタリちはまり、生き生きと動いている。
 とくれば、さぞかしお色気ムンムンと想像しがちだが、ドッコイ、迫力ある画面の展開の中では、息ぬき程度の感じなのである。
 脚本(杉山義法)もさることながら、監督(森崎東)は映画育ちだけに、一つ一つをていねいに撮り上げている。女の部屋から博多の夜、博多の夜から横浜、横浜から女の部屋と、カット割りのテンポは見事なものだ。
 さらに、物語とはさして関係のない脇役-例えば、日下部海運の九州支店長-の目の演技にまでぬかりがないのはうれしい。
 難をいえば、中心舞台となる日下部家の人間関係。少々複雑で、はっきり分かるのは二週目に入ってからか。
 制作は、昼メロの老舗・東海テレビ。のれん健在というところだ。“ときめきの午後を”という局の宣伝文句にのせられても、ソンはない作品である。
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  あの役この役  下品でなく上品でなくきわどく   五月みどり    読売新聞 1976年8月20日

 今主演中のフジ系「欲望の河」(月−金曜後1:30)では、バーのホステスから海運会社の老社長の後妻となった主人公。がんこな夫につかえながらも、その美しさから、夫の長男つまり義理の息子に犯され、ニ男とは“不倫”の仲となり、その子をみごもる。
 「すごい役でしょ。これをきれいに演じ上げるのが私の仕事だけど、私、やりながらどうしても本当の自分と比べちゃう。複雑で我慢できないナ。それにみんな横暴なの。私はやさしい人が好き」
 NET系の「ベルサイユのトラック姐ちゃん」(金曜後9:00)では、その色気を看板にするスナック「ジョーズ」のママ。
 「私の裸のシーンがあったんですけど、仕事の都合で若い人が吹き替えで出たんです。若かったのはいいんですけど」と口ごもる。その女性の胸が薄かったのが今でもくやしいらしい。「自分が出るべきだったと反省しています」。
 TBS系「夜のデラックスりらっくす」(火曜後10:00)は彼女の“地”でいける色気談義だが、「“地”以上にやらされるんです。初体験の話とか、女性が話したがらないことは全部私。下品でなく上品でなく、相当にきわどく。笑ってますけど難しいんです」
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       ハッピーですか         (池田博明記)

 原案・脚本が森崎東の連続テレビドラマ。制作は梅谷茂、プロデューサーは波・・・と永野保徳。
 1978年4月7日に始まって6月30日までのワンクールで終了した。第5回と第6回の録画が残っていたので、それぞれの回を記録しておく。1978年5月26日の勤務校の学級通信に書いた評価は次の通り。
 “『ハッピーですか』は、そのまとまりのなさと、それと抱き合わせの人間群像の豊かさにおいて、森崎節(ぶし)の感じ取れる番組である。一時間半で起承転結を完結しなければならない映画と違って、長く続いてゆくテレビの連続ものの特徴を利用して、森崎東はいろんなエピソードを盛り込む。
 エピソードだけがひとり歩きしそうなほどの魅力。私たちは受動的にテレビを見るだけではなく、自分の想像力でエピソードに関わる。
 敗戦で変わった世の中に乗りそこねた父親(伴淳三郎)、その骨をもらった息子(江藤潤)、欠陥マンションに徹底して憤る兄(田中邦衛)、そして屈託無く多様に働きつづけるカミサマ(桃井かおり)たちに関わる。兄弟名が勉と学。”

  (この項、未完成)

       森崎東監督の 幽霊海岸      (池田博明記)

 『幽霊海岸』は赤川次郎原作、浅茅陽子・田中邦衛主演の「幽霊」シリーズの一篇。脚本は松木ひろし。1979年8月4日(土)に山形放送で再放送されたのを見ていた。その時の視聴メモ。
 演出はキレが悪かった。カットがシーンとうまく合っていない。
 交通事故を起こして、はねた女性に足が治るまでつくす家元の御曹司の言葉、「君は足が治ったら、ボクから離れていってもいいんだよ。君はこれまでもひとりで生きてきたんだから、これからも生きていけるだろう」。その言葉で突き放されたように思い、足が治ってもそれを隠していた女の言葉、「あなたに傍にいてもらいたかったの!」。崖から落ちかかったとき、御曹司のくれた貝の腕輪を見て再度、「生きたい!」と思い直す女--この辺が森崎さんらしかった。森崎さんとしては、犯人側を描くべきだったのだ。しかし、捜査側(田中と浅茅のからみ)がかなり描かれていて、それがドラマを分裂させている。田中と浅茅のからみは蛇足だった。『幽霊列車』(岡本喜八監督)と異なり、彼等はたいしたことはしないのだったから。

       森崎東監督の『翔べ!必殺うらごろし』    (池田博明)

 1978年12月8日に第一話「仏像の眼から血の涙が出た」が放映された。このパイロット・フィルムに当る第一話が森崎演出だった。第二話「突如奥方と芸者の人格が入れ替った」も森崎演出。森崎演出は2話だけだった。「必殺うらごろし」は、木枯し紋次郎役で人気を得た中村敦夫が主演するオカルト時代劇だったが、異色すぎたためか「必殺」シリーズとしての視聴率はふるわなかった。製作発表の記者会見には主演者のほか、森崎監督も同席している。第2話は講談社の必殺マガジンのDVDに収録された。
 第1話は『翔べ!必殺うらごろし』DVD-BOXで見ることが出来る。ブックレットの「みどころ」と「ものがたり」は下記(執筆は徳重耕一郎)。
 “うらごろしチームの会合を描きつつ、怪奇現象を採り入れた意欲的な新フォーマットを提示し、その方向性をあらゆる面で徹底すべく練りこまれた第1話。
 序盤でおばさん(市原悦子)の過去を暴くシーンなどに顕著だが、逆光や川からの乱反射などの光を活かした画作りが多く、これは「光と闇の落差」を活かした旧来の『必殺』と意図的に差別化するためであろう。常識を超えたパワーが炸裂する殺陣はもちろん、仏像が血の涙を流すシーンやその仏像を霊視して因果を探る場面などの特撮要素も、それまでの『必殺』ではあまり味わえなかった映像効果といえよう。
 記憶の一部を取り戻したおばさんが先生(中村敦夫)へ駆け寄る際、その表情を逃すまいと的確にフォローし続けたカメラワークの巧さにも、注目すべき。
   物語
製作発表記者会見 旅の修験者・先生は、とある村の古びた祠の前で木綿針の行商女・おばさんと知り合う。彼女は祠の中の仏像を拝んでいたが、それを知った村人たちは慌てて駆けつけ、躍起になって彼女を追い払ってしまった。
 そこには、余所者に知られては困る村の秘密--目から血の涙を流す仏像が安置されていたのだ。元々この仏像は、飢饉の度に泣く泣く間引いてきた子供たちを祭ったものだが、こんな不気味な出来事が近隣の村々に知れては、今後年貢米の貸し借りも出来なくなってしまう。それを恐れて、村人たちは祠から人を遠ざけていたのだ。
 凶事に怯えた村人たちは、最近村の側に住み着いた得体の知れない若夫婦・お鶴(栗田ひろみ)と千吉(小林芳宏)のせいだと思い込み、彼らを強引に村から追い出そうとする。その場を偶然通りかかった男装の流れ者・若(和田アキ子)に危ういところを救われた千吉は、若に礼を言うと身の上を語り始めた。
 実はお鶴は元捨て子の女郎で、千吉は彼女を女郎屋から連れ出してこの村へ逃げてきたというのだ。村の人々に過去を明かさなかったのは、女郎屋からの追っ手に居場所を知られるのを恐れてのことだったのである。
 一方、おばさんが記憶喪失だと知った先生は、過去を霊視してかつて彼女に子供がいたことを見抜く。続いて仏像を霊視すると、かなり以前に子供を連れた巡礼が村を訪れ、死んでいたことが判明する。その年は飢饉で、村人たちはその子もやむなく川へ流したと語るのだが・・・・。” 昔、川に流された子供が大きくなったお鶴だった。お鶴を大切に扱うことで地蔵の目から血の涙は流れなくなった。しかし、逆に血の涙を流す地蔵を見世物の金儲けに使おうとしていた三つ目の重蔵(山本麟一)は千吉とお鶴を殺し、地蔵を奪った。三つ目の重蔵から勘当された正十(火野正平)は経緯を先生たちに連絡する。おばさんは正十が江戸で殺しの斡旋業っをしていたことを急に思い出した。おばさんの喪失した過去には殺し屋の歴史があるのだろうか。
 冒頭は岩山の間をボロをまとった先生が歩いて登場、BGMは口笛を使った音楽で、まるでマカロニ・ウェスタンの幕開き。

 第2話。江戸の大道で占いの旗を立てて座した先生(中村敦夫)のそばで呼び込みをするおばさん(市原悦子)。ちょうどごろつき侍にからまれた柳橋の芸者・染香(左時枝)を、先生が助けた。気合で相手を倒す技だ。染香は宴席の途中で、自分は上州漆ケ原の代官の奥方・琴路(小山明子)だと宣言する。憑依したのだ。先生たちは様子をw探るため、漆ケ原へ行く。
 前代官の娘婿となった代官・半十郎(新田昌玄)は漆の利益の取り分を4割から7割にしてもうけた分を勘定奉行への賄賂に当てていた。勘定奉行は代官を江戸の役人に取り立てる約束を交わしていた。一方、年貢の軽減を訴えに来た村人を殺して地下に棄てていた。琴路は良心の呵責から同日生まれの染香に憑依したのだった。
 乱心したとして地下に匿われていた琴路を先生一行は拉致する。見張り役の若(和田アキ子)は琴路から裏の事情を聞く。そしてなおも夫に尽くそうと代官所に戻ろうとする琴路の「男のあなたには女の気持はわかりませぬ」という言葉に傷つく。
 戻った琴路は夫に村人たちの虐殺はもうしないと約束させ、「抱いて」と懇願する。しかし、代官は勘定奉行の接待中だった。琴路は地下牢で請願で殺された村人の息子の新しい死体を見て衝撃を受け、再び憑依し、染香となる。奥様、御乱心の報に駆け付けた代官は妻を斬る。目撃した奉行は代官の取り立ては決定事項で変わらないが、事が露見しないように火をはなてと示唆する。
 翌日、事情を把握した必殺一行は江戸へ向かう代官たちを成敗する。

 市原悦子は新宿芸能社の竜子さながらの演技だった。“制作者の山内久は『必殺シリーズを作った男』(洋泉社)で、かつて『必殺仕掛人』の企画をコンペにかけた際、競合した東映は梅安役に天知茂を提案してきたことがあり、山内は「それでは怖すぎる」として却下したというエピソードを持つ。「一番恐かった。市原悦子さんの凄さがね。しまったと思った。『必殺』はね、あんなに凄かったらあかんのやね。一番先に天地茂でやってはいけないと思っていた線に突っ込んでしまったんですね。僕は市原さんのキャスティング段階ではその逆やと思ってたんですよ。でも市原さんが、あまりにも演技力がありすぎて・・・・本当に殺してるみたいに見えるでしょ」と同書で語っている。”「ブックレット」より。

       森崎東脚本の熱中時代      (池田博明記)

 『熱中時代』は、水谷豊が3年生を受け持つ新米小学校教師・北野広大を演ずる連続ドラマ。1978年10月6日から1979年3月30日に金曜21時から放送。
 30年前のドラマとは思えないほど現代的です。主題歌「ぼくの先生はフィーバー」は同じ日本テレビ系列の『世界一受けたい授業』のテーマソングとして使われています。制作は『傷だらけの天使』の清水欣也と、ユニオン映画の永野保徳。企画は梅谷茂。主な脚本は布勢博一ですが、第18回「三年四組学級閉鎖」は脚本・森崎東でした。この回の演出は矢野義幸。監修に教育学者の遠藤豊吉。

 風邪が流行し出してクラスの5分の1、8人が欠席すれば学級閉鎖に。北野先生(水谷)のクラス4組は欠席者が6人。刃物での鉛筆削りを宿題にしたところ、安達君は母親に刃物の使用を止められてやってきませんでした。眼の病気と言って眼帯をしています。宿題をしないことをクラスのみんなに咎められた安達は早退してしまいます。心配になった北野は家庭訪問、美容室の母親から刃物を探したついでにいたずらで眉毛をそり落としてしまったことを聞きます。ゲームセンターで安達を見つけた北野は自分も眉毛をそり落として、翌日の登校を約束します。
 翌朝、点呼に行った北野は朝いたはずの安達が欠席、別の谷田も欠席して欠席者が8人になったことを知ります。学級閉鎖にしたものの、割り切れない北野は夕方、安達の家へ。クラスのガキ大将に指図されて先生との約束を破って学級閉鎖にするために早退したことが分かります。子供たちに裏切られた北野はショック。クラスの子供たちの家を回ったと花井先生(音無美紀子)に話します。子供たちはまるで犯罪者を捕まえに来た刑事を見るような目で自分を見た、自分は子供たちの敵だったんじゃないかと北野は悩みます。塾の教師にお前たちが子供を落ちこぼしているんだと非難された中学教師の八代(山口崇)は自分たち教師もゴミだし、子供たちの9割もゴミだ、酒でも飲もうと誘いますが、そんな八代を花井先生がビンタ!
熱中時代18 翌日、誰もいない教室で教壇に立ち尽くす北野。様子を見にガキ大将たちがときどきやって来て、いよいよ給食の時間、急に全員が教室に来て給食の準備を始めます。今日も元気にしっかり食べようと子供たちに声をかける北野でした。子供たちは決して善意の存在ではない、先生を裏切ったり、悪知恵も働かしたりする。そんな現実に向き合って、教師はつらい思いをすることがある。けれども、山あり谷ありで信頼を失ったり、取り戻したりしながら成長していくのが人間の社会なんだというメッセージがこめられていました。
熱中時代18  若葉台小学校の校長・天城家(船越英二・草笛光子)は教師を下宿させています。愛犬チャーチルが死んだ後はときどきイヌ語で話し合っているという夫婦。天城家の高校生の息子・イクミは太川陽介。同居の小糸先生(志穂美悦子)・花井先生(音無美紀子)は同じ小学校の同僚で、魚津先生(島村佳江)は別の小学校に勤務。同僚は他に3年3組の小嶋田先生(小倉一郎)、3年1組で学年主任の前田先生(執行佐智子)、教頭(小松方正)、派出所の警官・小宮新八郎(谷隼人)。北野先生の妹・北野青空(池上季実子)は上京して劇団「蜘蛛の巣」(団長は奥村公延)に入っています。

 第22回「お雛さまとさびしい宇宙人」(脚本・森崎東、演出・吉野洋)
 「UFOを見た」という少年・森君は自宅のお店・金時屋で、宇宙人と自称する男(伊東四朗)に出会います。普段から「みなし子」だのなにかとウソをついている森君の言うことを信じる生徒はいません。男は縁日で昼でも星が見えるという宇宙ミラーを売っていました。学校でその宇宙ミラーが評判になります。北野が子供たちに見えたような気がしただけということを確認すると、森はみんなから責められ、宇宙人を連れてくるといって学校を出ました。心配した北野は森少年を探します。
熱中時代22 渋谷のドヤ街、日の出荘に仮住まいしているテキヤの小林長二郎、それが宇宙人の正体でした。一杯呑み屋のおかみによれば「二年前に子供を亡くした」そうです。
 北野が部屋を尋ねていくと、フグのはらわた入りの焼酎を勧められます。負けたら人間であることを認めるという条件で腕相撲をしますが、必死になる小林へわきあがってきた感情で、北野は負けてしまいます。「もう帰りな。みなし子は俺ひとりでたくさんだ」と言って、森を帰す小林。少年は「あのおじさんは宇宙人じゃなかったね。だって、泣いてたもの」と言います。
 警官の小宮も少年を探してくれていました。少年を肩車した北野は「もう屋探ししても誰もいないよ。消えちゃったもの。宇宙人だから」と言います。「日の出荘」は『喜劇・女売り出します』にも出てくる木賃宿。その前には労務者用の「小袖」という一杯呑み屋があります。伊東四朗が落ちぶれたテキヤを演じます。この人物像や住まい、飲み屋などが森崎ワールドでした。
 この回は『熱中時代』をノベライズした本には収録されておらず、いかに他と比べて“突出した”、別の言葉で言えば“困った”作品であったかが想像できます。それだけ、森崎節が強烈な、“お茶の間向きでない”回でした。

[参考書]
 熱中時代脚本家グループ『熱中時代A』(日本テレビ,1979年)

【DVDが発売されています】第10回「やって来たガキ大将」は脚本が布勢博一と大和屋竺で、演出が企画の梅谷茂(このドラマ初演出)。横浜から転校してきた少年(原田翔)がワルサをして暴れまくるものの、八代(山口崇)が六年前に別れた京子(沢たまき)との間の子供だったという話。
 
  [TV]森崎東監督による土ワイのドラマ田舎刑事 まぼろしの特攻隊』が凄まじい件について
    
       素晴らしい内容ですので引用  真魚八重子のウェッブより
           
  CSのホームドラマチャンネルで今月、森崎東監督が撮った土曜ワイド劇場のドラマ『田舎刑事 まぼろしの特攻隊』(主演:渥美清)が放映されています。4〜5年前に一度、イメフォの「森崎東レトロスペクティブ」で一晩だけ上映されていますが、あとは放映時以外で観たという話をあまり聞かない作品で、わたしもすごく観たい〜と思いつつ、もうテレビ番組だし諦め半分でおりました。なのでボッケーとしながらテレビで番組スケジュールを見てて、放映前日くらいに『田舎刑事』のタイトル見つけたときは、畳の上でガバッとはね起きちゃいましたよ。

 制作は1979年。この頃は土曜ワイド劇場もまだ16mmフィルム撮りが多いのに、本作はビデオ撮影なので残念ながら画質が悪い。それに天候に恵まれなかったようで、大分〜鹿児島を舞台としながら、曇天で曖昧な質感になっていました。

 それでも、脚本家・早坂暁と、土着的な反骨精神を持つ映画監督・森崎東の世界は壮絶です。

 なんといっても、特攻の生き残りの役を、実際に特攻の生き残りだった西村晃さんが演じている!それだけでも何かを孕んでいるのが察せられるかと思います(どんでん返しがまた・・・)。高峰三枝子が出演しているのも珍しく、とある衝撃を受ける場面で「まさか・・・!」と呟く一瞬の気品と重厚さは、『犬神家の一族』を彷彿とさせました。

 音楽は(なんか、野村芳太郎が撮った東宝のサスペンス映画みたいだな〜)と思ってたら、本当に菅野光亮で驚いた。『田舎刑事』でもくどいほどかかるテーマ曲は『砂の器』のような感傷的で壮大なもの。なおかつ、菅野光亮は前衛的な和ジャズの人なので、不協和音全開な音楽もかかって不思議な雰囲気です。

 以下、粗筋です。あえてオチまで書いています。ドラマだからgoo映画にもストーリーが載ってないし、しかしこのお話の面白さはwebにどうしても留めておきたい。早坂暁や森崎東って誰?という方は、興味を持つためにもオチバレは気にせず読んでくださいませ。あと、森崎東にこだわりのない方や、ドラマは必死になって観ない方、オチを知ってても鑑賞に差し支えないタイプの方もどうぞ。小説でも読むつもりでご覧ください。

 <物語>

 大分。草むらで、絞殺された女子学生の遺体が発見された。胸元にはなぜか桜の花が一輪と、そばに落ちている日の丸のはちまき。杉山刑事(渥美清)らは制服から被害者の身元割り出しを急ぐが、不思議なことにその制服は、県下から九州全土を調べても、まったく使用されていないセーラー服だった。

 しかし、意外にも事件は桜をきっかけにほどけていく。落ちていた桜が大分にはない珍しい品種であったことから、鑑定の結果、とある地名が浮かび上がった。鹿児島県の知覧だ。

 同時に、女子高生の捜索願も出てないことから、杉山刑事はセーラー服が現役学生ではなく、エロ写真の撮影用だったのではと当たりをつけ、「摘発のため研究してたらやたら詳しくなった」というエロ写真のエキスパート、大阪府警の山中刑事(浜村純)を訪ねる。山中は遺体写真を見て、これはエロ関係だが写真ではなく、桜は小道具でブルーフィルムの撮影だろうと推測。そしてもう一枚、現場に残されていたはちまきの写真を見るなり、山中はハッとして、即座にこのブルーフィルムの制作者を特定したのだった。

 杉山刑事は山中から、過去押収したブルーフィルムを見せられる。戦争末期、特攻前夜の青年が、マリアと名乗る女子高生に肉体を与えられる話で、5〜6年に一度、まったく同じストーリーがキャストを取り替えただけで繰り返し作られており、それはブルーフィルム界の最高傑作「マリア物」と呼ばれる一連の作品だった。

 その制作者は深沢(西村晃)。数年前に山中が逮捕し、取調べで深沢は自らを「知覧の特攻の生き残り」と証言していた。彼は実刑を受けたが、女子学生絞殺事件が起こった頃にはすでに出所していたことがわかる。
まぼろしの特攻隊
 その頃、深沢は知覧近くのある漁村の家を訪ねていた。そこにはさきほどバスで一緒だった、暗い影のある若い女(宇津宮雅代)がひとり。しかし帰宅した祖父らしき男から冷たく追い出されるのを見て、深沢はなぜか動揺しながらその女、幸子とあてどない道行きを共にし始める。そして小さい頃から両親はおらず不遇で、今も未婚のまま妊娠中だが産む勇気がないと自殺願望を口にする幸子に、深沢は自ら作ったブルーフィルムを見せ「これは実話なんだ。・・・わたしは、君のお母さんを知っている」と告げた。

 杉山は大阪のブルーフィルム関係者から、深沢が後援者といっていた人物を訪ねる。政治家の妻で、夫の死後も名門のいけ花の家元として活動する真理子(高峰三枝子)。「深沢など知らない」と言い張る真理子の不自然な様子と、知覧の特攻関係者の聞き込みから、杉山は特攻する若い隊員たちに出撃前夜、肉体を捧げ続けたひとりの少女の話は実際にあったことであり、真理子こそがマリアであったと確信する。そして、彼は、終戦時に真理子が妊娠していたことも知るのだった。

 真理子は深沢の後援者などではなく、訪ねてきた彼からブルーフィルムによって自分の過去について脅迫を受けたと思っており、口止め料として金を払っていたのだった。しかし深沢には、深いマリアへの尊敬と感謝、知覧から沖縄へ向かい死んでいった特攻隊への慙愧の念があった。明日自決する特攻隊員に自らの肉体を捧げる少女という、優しく痛ましい真実を忘失の彼方へやらぬため、彼は歴史を刻む目的で「映画」を作っていた。彼自身はブルーフィルムとは思っていなかったのだ。だが、その尊い行為が性的なものだったゆえに、それらのフィルムはエロ市場に出回っていたのだった。

 だが、真理子が深沢を憎んでいたのは、エロ映画を撮ったと誤解したからだけではなかった。深沢もマリアを抱いたひとりだったが、特攻は明日お国のために死ぬ「生き神」でなければいけなかったのに、「エンジン不調で不時着してしまった」と語る、おめおめと生き延びた深沢が許せなかったのだった。

 だが、杉山刑事は当時の記録を調べ、深沢の名が特攻隊の名簿に載っていないことをつきとめる。深沢は、じつは特攻機の整備士だったのだ。45年の春の晩、マリアの噂を聞いた彼は、調達した特攻隊員の軍服を着て、身分を偽り彼女を抱いたのだった。深沢はそのことを、真理子にも幸子にも告げられずにいた。

 そして女子高生殺害事件は、深い湖水地に沈められたレンタカーが発見されたことで急展開を迎える。車の中には特攻隊員役と思われる若い男の死体と、未現像のフィルムが残されていた。そこには、新しいマリア物の撮影中、「コレ、映画じゃなくてブルーフィルムじゃない!」と叫ぶ女優志望の娘が、撮影を降りると言い出し暴れる姿と、押し留めようとして発作的に彼女の首を絞める深沢の姿が写っていた。その偶然、スナッフフィルムとなった映像の断片は、深沢の犯した殺人の動かぬ証拠であった。

 深沢は全国に指名手配された。その頃、鹿児島の浜辺で、幸子とともに沖縄の方向を見やる深沢。二人は一緒に沖縄へ渡る約束をしていた。仕事で沖縄舞踊をしている幸子に、不意に彼は「今ここで、衣装を身につけて踊ってくれないか」と頼んだ。
しかし、砂丘の陰で着替えを済ませた幸子と、駆けつけた杉山たちが見つけたときには、深沢は既に遥か沖へと泳ぎ出していた。

 それは沖縄を目指して、最後の特攻隊となる、覚悟の入水自決だった。
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 西村晃さんは『北陸代理戦争』でも雪に埋められて頭の周りをジープが走り回るとか、すごい体を張った芝居をいい年になってもやってましたが、ここでも撮影時、まだ冷たいだろう海をズーッと裸で泳いでいて、そのムチャさに相変わらず驚かされます。スタントじゃなくマジで本人が泳いでいて、それも沖と浜の両方からカメラがおさえてる。

 放映は来月もあるかもしれませんが、とりあえず今月はあと1回、リピート放映があります。

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 私、池田博明もこの作品は見ていた。1981年にアンコール上映されたのをビデオに収録していたのだ(ベータなので再生できない)。年末に見て、日記に記録していた。以下その記録の内容。

 さすが森崎さん!という出来だった。
 女高生が扼殺された。被害者の服に桜の花弁が付いていた。近くに日の丸鉢巻が落ちていた。ところが、近隣の女子高生に当たっても身元が割れない。事件は迷宮入りとなった。
 翌年のことである。日向大学から、桜に花弁の鑑定結果が知らされた。桜の時季を待って鑑定するしかなかったのだ。花弁がおしべとくっついている珍しいソメイヨシノで、九州に四箇所しかないという。刑事(渥美清)は同僚(赤塚直人)と手分けして調査するが、手がかりがつかめない。エロ写真の専門家に見てもらったところ、女高生は8ミリのエロ映画を撮影していたのだろうと判明する。それがおそらく「マリアもの」と言われる、特攻隊員が一夜の契りを少女と交わす物語だということ、市場に現れて来る映画の作者が深沢寛一(西村晃)という男だということも判明する。知覧で男達に殴られていた男である。しかし、証拠がない。
 深沢に出資しているという生け花の師匠(高峰三枝子)も、深沢を知らないという。
 一方、深沢は坊之津の権田(信欣三)を訪ねている。そこで娘の幸子(さちこ。宇津宮雅代)に会う。
 刑事は特攻バアサン(南美江)から、知覧に特攻隊員と契りを交わしたマリアが実在だったことを知らされる。マリアは生け花の師匠ではないか。マリアは権田真理子という名前だという。妊娠して坊之津に帰ったというのだが、坊之津では真理子は死んだことになっていた、墓も立っていた。しかし、・・・・。
 生け花の九州大会のため東京から来た師匠は深沢と自分の生んだ娘・幸子に会う。
 三者三様の思いがぶつかり合う。整備士だったことを隠し、特攻隊員になりすましてマリアを抱いた深沢が、戦後一貫して、“あのとき”にこだわって映画を作ったのは、“あのときだけ俺は生きていたからだ”という。師匠は深沢をエロ映画をネタに恐喝に来た男とみている。映画はただのエロ映画としか思えない。死んでゆく男たちだったから自分は抱かれたのだ。それが生きているなんて許せない。そうして深沢を刺した過去がある。幸子は母親は死んだと聞かされて育って来た。深沢から説明を受け、深沢の気持が理解でき、エロ映画でないというその思いも理解できた。しかし、愛する男に先立たれ、身重の自分・・・。
 渡された金をつき返し去っていこうとする幸子。後を追う深沢。ようやく刑事が追いついた。しかし、深沢は自白しない。証拠もない。釈放である。幸子が待っていた。
 深沢は幸子の沖縄の舞踊団の手伝いをする。二人は沖縄に行く相談をする。
 深沢が撮影のために借りたピンクのワゴン車が沼から発見される。車の中から相手役の男の死体が出て来た。撮影器具や未現像のフィルムも出て来た。
 フィルムには殺人の瞬間が写っていた。急に演技を打ち切って、「エロ映画じゃないの!」と帰ろうとする女を説得しようとした挙句に、逆上して絞め殺してしまったのである。
 急げ。深沢と幸子は浜辺に行く。海を見る。幸子は深沢を「おとうさん」と呼ぶ。そして一緒に死のうと言う。深沢は、それなら沖縄の衣装を着てくれと言う。幸子が着替えている間に、深沢は海に向って泳ぎだす。
 刑事たちが駆けつける。深沢の後を追おうとする幸子を引き止める。数時間後、深沢の水死体が収容された。幸子は泣きながら言う、「沖縄に行こうとしたんだわ」と。
 刑事は思う、「深沢は遂に自分は特攻隊員でないことを、幸子にも真理子にもあかさないで死んでいったのであります」と。
 宇津宮雅代が素晴らしかった。

【追記】2013年11月22日にオーディトリウム渋谷「森崎東と十人の女たち」でトークショー「森崎東の戦後(山根貞男・上野昂志・藤井仁子)」の前に無料参考上映されました(DVDによる)。

    俺の愛した謎の女   (池田博明記)

 森崎東監督の「特選サスペンス」枠のテレフィーチャー。車が縦横に走ります。
 山崎巌脚本・原作はルイーズ・フレッチャー「スタンフォード60号の女」。助監督に下村優。
 タクシー運転手(河原崎健三)は横浜行きを秘密にしてくれという不思議な美女(宇都宮雅代)を載せます。もう一度、女に会いたくなった彼は偶然を装ってKDDI前で待ち伏せて女を拾います。再び横浜へ行った女はタクシーを待たせてある家に入っていきます。約束の時間になっても戻って来ない女は、どうやらそこで男に脅迫されているようです。激しい雨に濡れた体を乾かそうと入ったホテルで女は彼に体を寄せてきました。彼はひき逃げされた妻の話をして、ひき逃げ車に乗っていた男を探すために運転手になったのだと告白します。
 数日後、「河野」と名乗る女に指名された彼は例の横浜の家で男の刺殺死体を発見します。男はあのひき逃げ犯人でした。警察が乗り込んできて間一髪、彼は逃げのびます。しかし、駐車したままの車が証拠となり、彼は重要参考人となってしまいます。「女のワナにはまったのでしょうか」。
 殺された男は古美術商で商事会社を脅迫しており、その会社の社長秘書が女の正体でした。成田空港から飛行機に乗ろうとしていた女をやっと発見した彼は、警察に出頭する前に、驚くべき告白を女から聞くのでした。そして女は短刀で自殺してしまいます。
 正味40分のドラマで森崎さんのスピード感覚あふれる作品となっています。
 
    天女の遺産    (池田博明記)

 森崎東脚本のテレビドラマア。監督は山根成之。
 森崎世界のキイワード満載の映画になっています。
 “ひろわれっ子”の“温泉芸者”豆太郎こと西村時枝(倍賞千恵子)はお百度参りをしているようです。“養父母”(楠トシエなど)の家で病気療養中だった老人が“大往生”していました。豆太郎の水上げをしたこのパトロンは、豆太郎に会社の財産をそっくり遺してくれたばかりか、会社社長にしてしまったのです。息子の副社長(砂塚秀夫)も老妻(浦辺粂子)も社長の遺言に異存はありません。戦争中、“引揚者だった”夫が中国でご馳走になった“茶碗”に入れた“砂糖水”を入社の儀式として社員に課しているような栃木の中小企業です。
 豆太郎=蘭子は美容院で「天中殺」の話を聞き、自分の生年月日から天中殺が来ないうちにと、会社に出社し、経理をマスターしてしまいます。初恋の人に似ているという親切な社員・古屋(糸山英太郎)に惚れて、婚約しようと決意しますが、彼には内縁の妻がいたのです。養父母が生年月日を3日遅く届けていたので、本来の生年月日からは蘭子はもう天中殺に入っていたのでした。
 副社長は“親子どんぶり”になりますが、蘭子に惚れてしまいました。会社の金を持ち逃げした古屋の“赤ん坊を引き取って育てる”蘭子でした。古屋が出所する一年後にはたして赤ん坊を親もとへ返せるかどうか、養父母は心配しています。まるで自分を見るようで、甲斐甲斐しく育てているのですから。
 主演は倍賞千恵子で、コミカルな演技をきっちりこなしています。

   帝銀事件 大量殺人 獄中32年の死刑囚    (池田博明記)

 テレビ朝日の土曜ワイド劇場、1980年1月26日放送。原作・松本清張、脚本・新藤兼人、監督・森崎東。第17回月間ギャクラクシー賞受賞作品。戦後の事件をTVドラマ化した一連の企画の一本。
帝銀事件 仲谷昇が放送当時獄中にあった平沢貞通を演じた傑作。平沢はその後、死刑を執行されないまま獄中で亡くなりました。帝銀事件の犯行の様子もドキュメンタリー風に再現されています。
 真犯人に関して明石警部補・中谷一郎が追跡した七三一部隊の関係者の線は占領軍によって打ち切られてしまいます。その代わりに「松井」名刺捜査班・古志田警部補・田中邦衛が粘り強く追跡した平沢が犯人として浮かびあがってきます。
 検事・橋本功の取り調べ官と仲谷昇のやりとりが奇妙なおかしさを生み出します。捜査当時は新旧の刑事訴訟法の端境期で自供が重視されていました。しかし、平沢の自供どおりの行動をすると到底犯行に間に合うことはできませんし、説明できない矛盾がたくさん出て来ます。平沢は犯人ではありえないのです。もうひとつの重要な矛盾点は毒物に関するもので、平沢の言う毒物では事件のような展開はありえません。また、平沢が、使用毒物の作用と効果について知識を持っていたはずもないのです。
帝銀事件 事件当時の地方の警察官のなかには平沢がモンタージュ写真とそっくりだったため、モンタージュ写真が効果をあげた最初の事件として記憶している人もいます。しかし、最初に作成された手配書の似顔絵は平沢とは似ていませんし、最初に平沢の顔写真を見た警察上層部の意見も、「似ていないじゃないか」というものでした。生き残った証人たちの証言も微妙に変化してきます。当初は「違います」「似ていません」(証人11名中6名。他の5名は「似ている」)と断定的な表現だったものが、「細部は似ている」「容疑者のなかでは似ている方である」という曖昧なものに変化します。
 くせのある俳優たちを見事に演出した森崎さんの手腕が存分に伺える傑作で、多くの人に再評価してほしい傑作です。
 松本清張の『小説帝銀事件』(角川文庫,1985)も現在は入手不能なため、原作を手にとってもらうことができないのが残念です。私は文庫を持っているはずですが、置き場所を失念してしまったので、「日本の古書店」を検索して1959年発行の単行本(文芸春秋新社)を入手しました。装幀は佐野繁次郎氏。
 『小説帝銀事件』では平沢無実説に不利な証拠も検討されています。コルサコフ症候群に罹患した後、虚言癖が平沢の通性となり、不利な印象を与えたこと、大金の入手法を合理的に説明できなかったこと、帝銀事件の真犯人が事件の後に小切手を換金した際の裏書きが平沢の筆跡と鑑定されたこと、犯人に似ているという証言者が比較的多かったことなどです。このうちもっとも重要な事実は大金の入手法でしょう。正木亮弁護士が主任弁護人を降りたのもこの金の出所を平沢がはっきりと打ち明けないからでした。帝銀事件で1月26日に盗まれた金額が16万3410円、翌日小切手を換金した額が17450円。一方、平沢が出所不明金13万4000円を得たのは1月29〜31日だというのです。平沢は花田卯造から屏風画料として10万円を貰ったと主張していますが、花田氏は亡くなっており証明できませんでした。TVドラマはこの点については触れていません。

   蒼き狼 成吉思汗の生涯   (池田博明記)

 ジンギスカンを主人公にした井上靖原作の大河小説の映画化。テレビ朝日・国際放映の制作。
 プロデューサーは勝田康三・原田昇・古賀伸雄。脚色は大野靖子。撮影・村野信明、照明・小中健二郎。録音・山田義朗、助監督・下村優、美術・末広富治郎、殺陣・林邦史朗、編集・神島帰美、記録・中川節子、制作主任・神成文雄、制作担当者・小林晋武、整音・黒丸治夫、編曲・山川繁、効果・橋本正三、音楽・佐藤勝、中華人民共和国協力。ナレーター・仲代達矢。  
 第一部・成吉思汗の誕生(73分。監督・森崎東)では、テムジンの誕生からボルテとの結婚までが描かれる。主人公にまつわる挿話をつないで進行する展開になっており、歴史を絵解き早送りするようなもので、ドラマが複雑にからみあうような感興には乏しい。たくさんの騎馬が活躍する。

 モンゴルの英雄エスガイ・パガトル(平幹二郎。パガトルはモンゴル語で英雄を意味する)は略奪したメルキトの女ホエルン(大楠道代)を妻にして、誕生した長男に、戦いで首をはねたタタールの首領テムジンの名を与えた。掌に母親の血こごりを握って生まれた赤子は世界を征服するが犠牲者も多いという伝説があった。
 9歳になったテムジンには5人の弟妹があったが、ベクテルとベルグタイは第二夫人の子供だった。母の故郷オルクヌートへの旅に父と出かけたテムジンは途中のオンギラト族に歓待され、「目に火あり、面に光ある」ボルテと婚約し、この地に5年間留まった。父はタタール族に毒殺され、配下として隷属を拒んだエスガイ一家は他の部族の援助を拒否され、孤立し、生活は困窮を極めた。とりなそうとしたチャラカ(信欣三)も殺された。
 テムジンは異母弟ベクテルから自分がモンゴルのエスガイの子ではなく、異邦人のメルキトの子だと非難され、矢をいかけて殺す。母は兄弟での争いを嘆く。  成長したテムジン(加藤剛)は自分たちの勢力を次第に広げていく。馬泥棒から馬を取り返す事件をきっかけに生涯の友となるボオルチュ(田中邦衛)と知り合う。以前自分たちの家族を見捨てたオギラント族へボルテを迎えに行くと、ボルテ(倍賞美津子)は結婚 はせず、テムジンを待っていた。ボルテは「自分には狼の血は流れていないが、狼の子を産みたい」と言い、結婚式があげられる。

 第二部・大平原の誓い(73分。監督・森崎東)。テムジンはエスガイの僚友、ケレイト族のトオリルカン(中谷一郎)に黒テンの毛皮を献上して同盟を結ぶ。メルキトがボルジギン族のパオを襲い、ボルテをさらう。テムジンはトオリルカンやジャムカ(若林豪)と協力し、メルキトからボルテを奪還する。ボルテはみごもっていた。テムジンは「男はすべて殺せ」と命ずる。ボルテは赤子を産んだ。テムジンは自分と同じ運命の子にジュチ(客人)と命名する。テムジンはジャムカと盟約を結び、豊かなメルキトの土地を占有し、モンゴル統一の一歩を踏み出す。ホエルンは捨て子クチを育てる。
 ジャムカが狩のためにと人を集め出した。危険を感じたテムジンらは密かに集落を移動する。草原の部族はジャムカにつくか、テムジンにつくかを決した。呪術師ゴルチ(泉谷しげる)が「テムジンがモンゴルの王となる」とお告げがあったという。テムジンはやがて部族の官となり、組織を統率していった。七年目、タタルを討伐した。父の仇をうったのだ。金銀財宝はトオリルカンに分け、テムジンはタタルの武器を取った。夢でテムジンは父に会い、昇る太陽に「蒼き狼の子としてエスガイを超える」と誓うのだった。

 第三部・モンゴルの統一(72分。監督・原田隆司)。テムジンは狼であることを証明しようと、金を討つという。呪術師テップテングリ(財津一郎)の予言はジャムカが兵を上げるという。数年前、処刑した馬泥棒がジャムカの弟だったことをきっかけに起こった小競り合いがあった。いよいよ決戦のとき、トオリルカンはテムジンに賭けた。肩に矢を受けたテムジンは死線をさまよったが、ジュチが決死に盗った馬乳酒で助かった。戦いに勝利したトオリルカンとテムジンは草原を二分した。トオリルカンの息子サングンにジャムカはテムジン謀略説を吹き込む。逃走したトオリルカンをナイマン族が襲う。テムジンはトオリルカンをいったん助ける。大軍を擁するトオリルカンの前にテムジンは退却。力を貯えてテムジンはトオリルカンを討伐。ナイマンをも討った。メルキトの女クラン(神崎愛)を側室とした。逃亡中のジャムカは部下の裏切りでテムジンの許へ引き出される。テムジンは主人を裏切った部下を処刑し、ジャムカを血を流さず死罪とした。テムジンはジンギスカン=王のなかの王となった。呪術師テップテングリは陰謀を企てていた。

 第四部・万里の長城越え(73分。監督・原田隆司)。弟カサル(河原崎次郎)が陰謀を企てていると予言する呪術師。カサルはクランに魅かれていた。テムジンはカサルを縛ったが、母は抗議する。テムジンは呪術師を処刑した。息子ジュチの指揮で清を攻め、ジンギスカンは金攻めを決意する。万里の長城の前に騎馬軍が攻め込む。壮大なシーンがある。テムジンは長老ソルカンシラ(大友柳太郎)に命じてクランの息子、病気のガウランを誰も知らない部族に育てさせる。金国の中都を陥落させる。回教の国ホラズムは汗の厚意にそむいた。予言師はホラズムは宗教でまとまっているゆえ手ごわいと討伐に反対する。長子ジュチ(荒木しげる)は敵を作ってこそ狼だと主張する。汗は後継者にエゲディを指名する。 ホラズムに侵攻し征服。ジュチはカスピ海の東、キプチャック草原で病死。1224年、ヒンズークシ山脈を越えインドへ侵攻しようとしたが、クランが亡くなる。汗は西夏を攻略して、1227年、汗は65歳で没した。
 【VHSビデオ、DVDともに発売】

    妻の失ったもの    (池田博明記)

 脚本・新藤兼人、監督・森崎東。近代映画協会が共同で製作していたTVドラマの一篇。新藤=森崎コンビ作品は『妻は何をしたか』(1983/1/11,ANB、香山美子主演)、『妻は何を感じたか』(1983/10/10,ANB、樫山文枝主演)など。
 太平洋岸沿いの新興住宅地(後で千葉県蒲郡と出て来る)に住む主婦・時田光枝(丘みつ子)が一人でいるときに、若い男(風間杜夫)が訪れてくる。男に押し倒されて寝室の布団の上で気絶した光枝が20〜30分後に気づくと、男の姿はなく、パンティが脱がされていた。暴行されたのだろうか。いや、そんなはずはない。隣人の主婦(吉田日出子)に訴えると警察に通報してくれた。すっかり主婦たち(絵沢萌子ら)の好奇心の餌食である。
 警察の取り調べ室で刑事の安達(前田吟)は現場に犯人の指紋がなく(軍手を手をしていた)、争った痕跡も残されていない(光枝が寝室の布団を片づけてしまった)ことから、無くした金の理由づけに妻が仕組んだ狂言強盗であるという予断をもって、捜査する。長時間の執拗な尋問に耐えられず、光枝は暴行された可能性が医師の診断によってはっきりすることを恐れ、「新聞には出ない」という刑事の甘言に乗ってしまい、狂言だったと自白してしまう。警察の部長役は戸浦六宏。
 しかし、翌朝の朝刊には狂言強盗と出てしまった。四面楚歌が始まる。小学校の娘や中学校の息子は仲間から非難される。役場に務める同居の妹(島村佳江)は同僚から交際を解消される。ホテルマンの夫(愛川欽也、月給は14万円という)は上司(小松方正)から辞職を迫られる。食堂を経営する父(殿山泰司)も商売あがったりだと言ってくる。妻は夫に真実を打ち明け、狂言強盗はウソでしたと警察へ訴えたが、メンツをたてに警察では取り合ってくれない。母(乙羽信子)は妻を信じて力になってやれと夫を激励するものの、次々に起るバッシングに二人は倒れかかってしまう。
 しかし、様子がおかしいと気づいた新聞社が取材を始め、狂言強盗ではなかったと報道される。そのことが一波乱を呼ぶ。騒ぎを嫌うホテル業界に務める夫は首をきられてしまう。妹は家を出て行く。夫は「この町ではもう暮らせない、町を出ていこう」と提案する。しかし、子供たちは味方だった、「なにも悪いことをしていないのに、こそこそ町を出ていくのはイヤだ」というのだ。
 そこへ、あの“強盗”男がやってくる。警察に自首する前に謝りに来たのだという。当日、自殺するつもりでいたのだという。暴行はしていないと断言する。思わず、「ありがとう」と答えてしまう光枝。夫はこれまでの怒りをこめて男を殴る、殴り続ける。やがてパトカーがやってきた。
 夫は無抵抗の男を殴った自分は卑怯ものだったと反省するが、妻は夫のその言葉を強く否定していた・・・・
 ほとんどセリフがない丘みつ子の演技力が光る。森崎さんの的確な演出がみもの。


     カムバック・ガール  (池田博明記)

 第1回(2月3日)と第2回(2月10日)の池田の鑑賞メモが残っていた。水曜日22時から放映。
 第1回。ジョギングする原田芳雄。朝である。息子は急に学校へ行かないと言う。父と同じように休みたいと言うのだ。なぜ父親は休んでいるのだろうか。父「・・・人生を考えてんだ」、息子「ワシも人生について考えたい」。赤西柿太(原田芳雄)は妻のスモモ(浅丘ルリ子)に一日遊んで来いと言う。妻は友達(佐藤オリエ)のところへ行って話す。休んで四日目である。仕事は航空会社のエンジニア。友人は夫が別れ話を持ち出した時のことを話す。二人は暗くしてワインを飲み、ブラームスのレコードを聞く。自宅に帰ったら同じ状態が起こっている。スモモは早とちりして、夫に新しい女が出来たと思い込むが、ちがった。三十七歳にして柿太はボクシングを始めようというのだ、明日はそのプロ・テストの日で相手は十七歳。
 喫茶店で不合格祝をしたものの、合格してしまった。スモモの前の亭主・二宮金平(山城新吾)が来る。作詞作曲をしているという。
 柿太は退職。スモモjは派出婦をしてみることにする。派出の社長(葦原邦子)が最初に派出した先が変な主婦・能見鳥子(樹木希林)の家だった。以下続く。
 子供が父親を「チチ」と呼び、自分のことを「ワシ」と言う。ドングリ“コロコロ”というこの子は柿太の連れ子である。
 第2回。スモモは金平の思い出の品としてタワシを持っている。結婚したが関係はなかったそうだ。新婚旅行でなじみのダンサーに気をとられた二宮が階段から落ちてギックリ腰、電車に乗り遅れてしまった・行き違いになって怒ったスモモと出合ったのが柿太だったのだ。寿司屋の娘だったスモモの学費を出してあげた二宮。
 能見家の鳥子(樹木)は脳軟化症の姑に五年つくした。そして京都に民芸の店を出したが、シーズン・オフの冬にノイローゼとなったという。「あたしの前ではおかあさんの話はしない約束・・・・」「酒をすすめるのは死ねということだ」と言いながら、その実、毎日隠れてウィスィーをガブ飲みしている。「知っていながら止めもしないと夫の昆(土屋嘉男)にからむ。スモモは腕づくでウィスキーを取り上げる。「私を叱ってくれる人がいた」と喜んでいたという。鳥子は家を出てしまったので、皆は町じゅうを探す。スモモは社宅からアパートに引越す。
 鳥子はいきつけのレコード喫茶にいた。帰宅したスモモは二宮の話をする柿太に「よりを戻そうとしているんでしょ」といい、別居を申し出る。柿太は外へ出て、ひとりジムで練習をする。

 2010年3月7日、森崎東脚本・河合義隆演出の最終回の台本が入手できました。なんらかの形で紹介したいと思います。

      天使が消えて行く   (池田博明)

 秋吉久美子主演で夏木静子原作のミステリーをTVドラマ化。

        (この項目、未完)


     ああ離婚        (池田博明)


        (この項目、未完)


     喜劇・ああ未亡人    (池田博明記)

 妙子(大原麗子)のナレーションで話が進んでいく。ウェルメイドな佳作。
 夫・正司(深水三章)の親友・本間公平(柄本明)の妻ひろ子の一周忌の法要の日のことだった。大学の囲碁クラブ仲間の夫は自分が死んだら、公平と再婚しろと言って、公平を受取人にして保険にまで入ってしまった。ちょうど公平の母親(乙羽信子)が保険の外交員だったので、手続きはアッという間だった。
 

 (この項目、未完成)


      四十年目の恋    読売新聞 試写室(田)

四十年目の恋 “人生の裏街道を歩き続けた老詐欺師と、高級老人ホームに住む未亡人との恋をユーモラスに描く。森崎東の脚本を松尾昭典が演出。
 娘の恭子(西川さくら)夫婦のもとに身を寄せている鳴沢雄三(森繁久弥)は、結婚詐欺で刑務所に入り、出てきたばかり。四十年前に、結婚まで考えた女性がいたが、その女性は雄三が事故死したと思い、大学出の男と結婚してしまった。そのため、雄三は結婚詐欺師となって、憂さを晴らす羽目になったのだ。
 そんな折、雄三は老人ホームの藤川セイ(杉村春子)と出会い、心を引かれる。
 元大使と偽って、セイに接近を図る雄三。それを応援する刑務所仲間の仁吉(伊東四朗)とその娘・有香(石川秀美)とのコミカルな触れ合いが、テンポも良く、思わず笑いを誘う。ドラマは、雄三が何度もセイと会ううちに、本気になっていく過程を丁寧に描きながら、実は、セイがかつての恋人だったことを、二人の思い出話を通して明かしてゆく。
 森繁と杉村の、ベテランらしいしっとりとした絡みはさすがで、軽くなりがちな内容をぴしっと締めた。伊東、石川らも持ち味をいっぱいに発揮している。”
 未見である(池田記)

      金のなる木に花は咲く  (池田博明記)

 木曜ゴールデンドラマの枠で放映。脚本は安倍徹郎、監督は森崎東。撮影は東原三郎、音楽は義野裕明、助監督は鶴巻日出雄。
 多摩川沿いの洪水跡地の坪当り400万円の高額になっていた。地上げ屋が土地転がしで投機を狙う宝。その一等地に戦争前から住む老婆・君島カツ(野村昭子)。駐車場を営む老婆は立ち退き要求や買い上げ相談を断り続けていた。今日も水道の水をかけられて追い払われた村雲不動産の社長(すまけい)は、藤巻加代(市原悦子)と銀ちゃん(大地康雄)の二人にカツの隠している土地の権利書と実印を盗むことを依頼した。自転車で銀ちゃんがカツに当り、そこを加代が介抱するという手口で取り入ったかにみえたが、老練なカツは自分に接近してくる人々には何か魂胆があると疑っていた。カツの娘(結城美栄子)と夫は生前贈与を求めてカツを訪ねて来ていた。
 近所の弁当屋に勤める娘(石井めぐみ)に声をかける加代。カツの疑いの目にもめげずに通う加代は、カツから私生児で生まれ、内縁の夫を戦争で亡くしたことを聞く。カツ「幸せは島倉千代子の歌の文句の中だけよ」。
 家を離れようとしないカツを好きな芝居見物に誘い出す。演目は『瞼の母』だったり、『切られ与三郎』だったり。カツの留守に骨壷の販売業者が来たり、娘夫婦が書類を探しに来たりする。カツのぬかみそ樽へのこだわりを見て、書類は樽のなかと推測する加代。地上げ攻勢で弁当屋も閉店した。残っている土地も少なくなり、いつまでも意地を張っていると生命を狙われかねないと村雲。カツを芝居に連れ出した後、銀ちゃんが樽の中の書類を盗む。しかし、その中身は古い預金通帳や思い出写真や、手紙だった。樽返そうとへ戻ったところへ、怪しんだカツが帰宅していて、企みが露見する。権利書は腹帯のなかだった。
 銀ちゃんが村雲に「ばあさんを殺してしまった」と相談に来た。絞殺だという。現場に来た村雲は(古い)通帳と印鑑を持ち帰る。手続きを進めて親会社の金菱不動産から4億円を振り込ませるという。死体は?床下に隠してくれ、明日にでも多摩川へ放り込む、という。村雲が帰るとカツは起き上がった。殺人は狂言である。国民健康保険にも入っていない、亭主殺されていまさら国家に面倒みてもらえるかってぇの。手続きを進めて村雲は愛人と一緒に南米へ高飛びしようとする。しかし、金菱不動産社長(八名信夫)が既に土地は娘に贈与されていたと明かす。
 一方、書き換えた通帳に振り込まれた4億円のうち半分を分けると約束された加代は銀行に通帳と実印を持って金を受け取りに行った。銀行の支店長(三谷昇)は小切手を渡した。カツが贔屓の劇団の控え室を尋ねると、カツは心臓発作で虫の息だった。娘夫婦が生前贈与では70%が税金になると贈与取り消しを求めて瀕死のカツに拇印を押せようとする。劇団の役者は一千万円の寄付を約束してではないかと詰め寄る。加代と銀ちゃんは取り分の半分を申し立てる。そうこうしているうちにカツは死んでしまった。
 リヤカーに引越し荷物を積んで川べりを行く二人。弁当屋が川向いに店を出そうと準備していた。銀ちゃんは加代に、あいさつついでに「「親子の名乗りもしてきちゃったら」と提案する。加代は娘に開店のあいさつだけをして戻ってくる。銀ちゃんは川岸でカツの思い出の品を焼いて野辺送りをしていた。
 
 鶴巻日出雄の証言(市原悦子『やまんば』春秋社、2013年より)。
 「鶴巻 市原さんと初めて仕事をした時、一番印象深いのはテレビドラマの「金のなる木」だったかな、その時は雨ばっかりで、集会所にえんえんと待たせてたんですよ。しかも一シーン、一カットが多かったんですね。OKだったのが、OKじゃなくなったんですよ。ピントがぼけたりして。そしたら市原さんが「どうしてダメなの?!」って、泣いちゃって。その時ビックリしたんですよね。この人は一発に勝負を懸けてるんだってことが分かって。結局30分くらいおさまらなくって、それでもう一度、僕が「すいません」って言って。
 今までそういう方っていなかったんで、それだけ真剣ですごいということが分かりましたね。初めてだったんですよ。NGになって、NGを出した相手を怒るんなら分かるんですけど、どこにぶつけていいか分からなくて、内に溜めてお泣きになって。あれは大変でしたよ。
 市原 憶えてない(笑)。
 鶴巻 それが二、三回あったんです。それでみんなが始まる時、小声で言うんですよ。「NG出すぞ」「また行ってこい」って。またおれの役目かって(笑)。
 東原 今みたいにVTRのモニターチェックして、「ここ悪いからもう一回」とかそういう状況じゃないからね。フィルムの世界だったから。カメラ覗いてて、ピントがズレたかどうかっていうのはカメラマンの責任で、OKかNGかの判断はカメラマンだったんですね。それで監督がOK出しても、カメラマンが「今のはちょっと」って言うとNGになるんです。
 市原 自分本位でうまくやったと思ったんでしょうね。「ああ、もう一度なんてできない」って。まあ興奮状態ね。でも泣いたなんて嫌ね。当時は思いあまっちゃったのね。」


       金のなる木に花は咲く・II  (池田博明記)

 木曜ゴールデンドラマの枠で放映。脚本は前作と同じ安倍徹郎、監督は森崎東。撮影は東原三郎、音楽は義野裕明、助監督は鶴巻日出雄。
 上野駅は春である。加代(市原悦子)は銀次(大地康雄)との出会いを思い出していた。20年前、子供を親戚に取られ、絶望して鶯谷の陸橋から身投げしようとしていたところを通りがかりの銀次に助けられたのだった。二人は後ろ暗い過去のある人たちが泊まるうぐいす館に身を寄せる。加代の娘ミキの「ほくほく弁当」屋は近所に越して来ていた。弁当屋に顔を出した加代は開店当初は縫製工場の女工たちで繁盛したものの、クリニックの院長のコメントで売り上げが激減したと聞く。東洋美容研究所ロイヤルクリニックというその診察所に抗議にいった加代は、縫製工場の女社長に高カロリーの弁当などは健康に悪いと助言し、社長が朝礼でそのことを社員に話したことが営業妨害だったと訴えるが、五万円の車代をつかまされて帰って来る。加代と銀次はその五万円で弁当を注文、うぐいす館の面々にふるまう。しかし、三日もすると元のスッカラカン。そんなとき、加代がクリニックであった肥満の女流作家が急死したことを知る。クリニック側に過失があったと直感した銀次はこれをネタにクリニックを強請る計画を立てる。
 漢方薬の斡旋業を掲げて強請りに乗り込んだ銀次だったが、院長ホアンと事務長・鳥居奈々(山口いづみ)はかえって銀次を歓待。うぐいす館で待つ加代に銀次が持ってきた話はホアンがアメリカに帰国するので銀次に副院長を務めてもらいたいという夢のような話だった。クリニックとは名ばかりで高級有閑マダムの社交場なのだという。そんなうまい話は危ないと加代は夜逃げを提案するが、乗り気の銀次は意に介さない。
 中国人の銭(ツェン)ドクター、特定の異性と関係を持たない、性的魅力にあふれた独身男性という役割を鳥居の補助も得てなんとかこなしていく。
 銀次は鳥居に精力増強剤を処方されたり、性的マッサージを施されたりと翻弄され気味。すっかりメロメロになった様子。加代も急募のマッサージ師に応募して採用され、近くで銀次を見張るものの、鳥居のガードが固くてはっきりと実態を把握できない。うぐいす館や弁当屋でグチをこぼす加代に同情する人々。実は鳥居はホアンの過失致死罪を隠蔽するための工作を行なっていた。カルテの医師名を黄(ホアン)から銭(ツェン)に変えていたのだ。
 気落ちする加代に鳥居は接近、「実は自分は(銀次に)レイプされた」と偽の告白をする。そして銀次は加代を名義人、自分を受取人に2億円の生命保険をかけた、加代に飲むように勧めた錠剤にはトリカブトの毒が入っていると偽の分析をして信用させる。自分も母親に捨てられた、二人で女の復讐をと持ちかける。すっかり騙された加代は保険金の書き換え(名義人を銀次、受取人を自分)を鳥居に依頼、トリカブトの毒入のカプセルを準備させる。
 何も知らない銀次だったが、留守中に忍び込んでいたサブが酔っ払った銀次に「おまえは今夜殺されるぞ」と教える。酔いつぶれた銀次にカプセルを飲ませた加代は自分も死ぬとカプセルを持ち出す。しかし、ちょっと待て、ミキに保険証書を渡してからである。飛び出して行く加代。鳥居は別室に来ていたホアンと会う。ホアンはロスで自分と妻と三人で暮らそうと提案。鳥居は怒る。なんのために銀次を殺したのか、あなたの過失致死罪を着せるためではないか、と。気づいてカプセルを吐き出していた銀次には、すっかり事情が飲み込めた。知人の店の保証人になっていたため借金で困っていたミキの弁当屋に駆けつけるが、既に加代は去った後だった。橋から身投げしよとする銀次にミキは加代は鶯谷の陸橋に行ったのではないかと示唆。自転車で駆けつける銀次。陸橋ではしごを準備していた加代を留めてエンド。

     弟よ!       水曜グランドロマン(池田博明記)

 水曜グランドロマンの枠で、つかこうへいの原作を脚本・監督を森崎東で制作した貴重な一篇。
 小説家の森田一郎(風間杜夫)は雑誌の新人賞は受賞したものの、その後目立った作品がない。同棲相手のスチュワーデスの礼子(平栗あつみ)ともうまくいっていない。礼子には別れた夫との間に兼介という小学生の子供がいる。そんな一郎に父親から故郷で見合いをさせるから帰って来いとの連絡が来る。故郷は静岡県の寸座で両親は養鰻業を営んでいる。
 5年ぶりに帰宅してみると、弟サトル(金山一彦)は歯科大学の5年生。湖の鰻を散弾銃で撃つ無茶をしていた。一郎はサトルが自分へのあてつけでそんなことをしているのかといぶかしむ。5年前のあの日、サトルに合格通知が来た日のことだ。成績優秀だった一郎は医師を目指さず、作家を目指し、勉強は苦手なサトルが兄の代りに医師を目指すことになったのだが、受験しても合格できず、とうとう新設の三流歯科大学に三千万円の寄付金を積んで裏口入学したのだった。裏口入学をめぐって金を惜しむ父親(藤岡琢也)や母親(富士真奈美)と、一郎は大喧嘩になる。サトルも妹のユキも巻き込んで大騒動。家を飛び出した一郎はゆきずりに出会った早苗(姿晴香)を力づくで犯していた。そして、彼女との体験をもとにした小説「惜別」が新人賞を得たのだった。
 父親は一郎には口の大きい鈴江との見合いを、サトルには酒造業の娘、良江との見合いを用意していた。父親から三年前にがんになり、放射線治療で髪の毛が抜けたという話を聞いた一郎は、先が長くない父親の意志をあれこれ推量する。鈴江はそれ以前に見合いした男が三人とも変死したという「人喰い女」だ。良子は実は一郎が好きだったんだと聞かされて一郎は驚く。
 養鰻業の使用人・善太郎(すまけい)は鰻にドボルザークの「家路」を聞かせている。弱っているときはベートーヴェンがよいのだそうである。「悲愴」や「ワルキューレ」も良いそうだ。一郎は善太郎に早苗がその後、気が触れたことを聞き、自分を責める。早苗は一郎を見かけると雑誌を差し出し、サインをねだった。「惜別」の掲載された号だった。礼子の元夫が恵介を一郎に預けにやってくる。自分は大学の講義があるというのである。遺伝子組換えの研究者である。恵介は一郎の両親や早苗とすぐ馴染む。
 公民館でユキの高校新聞部が「大学へのコネ入学は許されるのか?」というテーマでサトルを呼び、詰問の会を開いていた。激しい糾弾にあうサトル。一郎は外から様子を伺う。サトルはコネとレッテルを貼られた者の苦しみ、それでもその非難を見返すべく努力していることを訴える。父親から贈られたソープランドの定期券を(使わずに)お守り代りにしていると言う。一郎はサトルの苦悩と苦しみに耐える生き様に感動する。それは彼を詰問した高校生たちも同様だった。一郎は「人喰い女と結婚する。お前も良子さんと結婚しろ」とサトルに言う。サトルは納得できない。一郎はサトルを殴る。サトルはボクシングの訓練の経験があるが手を出さない。サトルは一郎が父親の「時間が無い」という言葉を「選挙までの時間が短い」という意味だと説明し、がんの件も思い込みだと言う。
 一人相撲を取っているかたちの一郎。台風の上陸が近づいて暴風雨のなか池の鰻を移動させなければならない。両親と一郎は嵐のなか作業をする。サトルが酔漢を殴ったのに因縁をつけようと町のチンピラたちが意趣返しにやって来る。サトルは良子の家から酒を運んで来ていた。チンピラ4たちに殴られて倒れた一郎はサトルがチンピラたちを養殖湖にたたきこむのを見た。礼子が駆けつけてきていた。

     離婚・恐婚・連婚     (池田博明)

 色川武大の連作短編集を高橋洋が脚色、森崎さんが演出した日本テレビの水曜グランドロマン枠で放映。
 羽鳥誠一(唐十郎)は週刊誌のライター、いとこのすみ子(岸本加世子)と離婚しようとしているところだった。すみ子はひどい近眼。離婚届を出す日も階段から落ちる始末だった。すみ子の「せいちゃんのお妾さんにしてくれない?」という言葉から始まった同棲生活、そして結婚だったのだが、いまや離婚したのだからお互い自由ということになってしまい、マンションに引っ越したすみ子のもとに誠一が通う生活になってしまった。借金を重ねる誠一は仕事を増やしつつ、借金も雪ダルマ式に増えていくのだった。重篤な胆嚢炎で入院した誠一は、病院で看護婦のカル子(吉行和子)に出会う。人間起重機とあだ名されるカル子は20時間働いていないと気がすまない女だった。すみ子とすっかり意気投合してしまったカル子は二人にストリップまでしてみせてくれたのだった。すっかりカル子を気に入った誠一は家政婦として家に来てもらうことにした。カル子には盗癖があったが、すみ子と張り合わせようと思ったのだった。しかし、すみ子がマンションを出て、家に戻ってきてしまい計画は失敗。もともと家はすみ子の実家(場所は成城学園のようだ)、文句を言える立場にないのだった。
 料理、買い物、洗濯、掃除など家事全般を切り盛りするカル子。すみ子も少しは対抗意識を燃やしたらしい。そこへある日、秋田の田舎からカル子の娘ハム子が東京に出てくる。ハム子は母親とは反対に家事は嫌い、田舎を嫌って東京に出てきたのだが、さっそく誠一に体をあずけようとする。最初は拒否していた誠一だったが、激しい誘惑にあえなく陥落。それがきっかけで、女たちがみんな家から出て行く羽目になってしまう。
 そこへやって来たのがハム子のもと彼。ハム子を探すためという目的で居候し始めた彼がすみ子と親しくなってしまう。
 すみ子の病気・入院・病院からの脱走をきっかけに二人の仲は進み、とうとう結婚する羽目に。結婚式の仲人を誠一は勤めていた出版社の課長(河原崎長一郎)に依頼するのだった。二人は別宅に住み始めたのだが、すみ子はなにかと理由をつけて誠一の家に来ては「家を買ってくれ、同時に生命保険に入れば死亡時に入る保険金でローンが払える」という始末。断り続けていたが、遂には彼から秋田の田舎に土地があるからそこで温泉旅館を経営しようという提案がなされる。
 三人で行ってみると、そこは不便な山奥。硫化硫黄のガスに当てられたすみ子を介抱する羽目に。温泉宿で露天風呂に入っている誠一に女湯のほうからすみ子が話しかけてくる。そのうち女湯から男湯へすみ子が潜って移動してきて・・・。

     わが町U     火曜サスペンス劇場(池田博明記)

 原作はエド・マクベインの87分署もの。脚本は鎌田敏夫、監督は森崎東。音楽は大谷和夫。
 
 (この項目、未完成)

     地方記者・立花陽介 (1) 伊豆下田通信局    (池田博明記)

 水谷豊主演の火曜サスペンス・ドラマ・シリ−ズ第一話。CS衛星劇場で2009年4月13日1時より92分。東京葛飾の建設現場でショベルカーが頭骨を掘り出す。水谷豊扮する東洋新聞記者・立花は久美(森口瑤子)との結婚式の前日、デートの最中に取材のポケベルが鳴り、久美に急ぎ伊豆下田通信局への転勤を命ぜられたことを伝えると同時に、白骨発見現場へ。現場は防空壕の痕で頭骨には鳶口でつけたキズがあった。刑事はこの殺人事件は時効だと言う。
 転勤の日、車で陽介は伊豆の旧道を走ってみることにする。天城トンネルの出口で紙きれが落ちてきた。「・・いな。金魚を一匹突き殺す」と書いてある。不審に思った陽介はトンネルの上を探すとそこで扼殺死体を発見してしまう。被害者は福本修造。修善寺警察署・井沢(井川比佐志)は娘の真美に身元確認をさせていた。福本はわさびを使った食品を扱う水口商会を退職して小売店をやっていた。わさび田で会った水口商会の社長・健(高橋長英)の娘は結婚直前だという。
 一人で東京に置き去りにされている久美は淋しい。「あの町この町」を口ずさんでいる。陽介は警察とは別に独自に調査を進める。福本の自宅のある吉奈温泉の勝與寺の住職(田武謙三)は福本が戦災孤児だったと話してくれた。その彼が事件の一週間前に東京へ行っている。水口商会に出資する塚本食品の多木川部長に会っていることも分った。多木川もなぜか行方不明である。
 陽介は塚本食品社長に会ってみようとする。社長は女性だった。
 記者仲間から陽介は女社長のぶ子(佐々木すみ江)が戦争直後、葛飾に住み、闇屋の男が戦争未亡人ののぶ子に言い寄っていたことを聞く。水口商会の乗っ取りを企んでいた多木川、過去のありそうな女社長。社長の自宅へ押しかけた陽介は社長には死んだ息子・洋一があったことを知る。海岸に流れついた多木川の扼殺死体が発見される。
 一方、久美は伊豆へ押しかけてきていた。童話社に務める久美は紙キレの文句は北原白秋の「金魚」という詩の一節だという。「母さん帰らぬ 淋しいな  金魚を一匹突き殺す」。
  浄蓮の滝の投稿箱にのぶ子の俳句があり、のぶ子は二月十五日、事件の日に伊豆に来ていた。寺にあった白秋の本は地元の吉奈中学校に寄贈されていた。当時の浮浪児のひとりは教頭になっていた。彼は男の子たちの間でワル自慢をしたことがあり、その際に一人が「ひとを殺した」と自慢したことがあり、年長だった福本が白秋の詩を示してお前の妄想だと決め付けたことがあると話す。ひと殺しを自慢した子供は・・・・古い写真を見ると、あの女社長の死んだはずの息子・洋一だった。教頭はこの男は健だという。水口商会の社長だった。
 伊豆下田の通信局の電話に塚本のぶ子社長の自白が録音されていた。俳句にあった野水仙を手がかりに岬に来た陽介は息子の罪を背負って死のうとしているのぶ子と、自分の母親を知らずに殺そうとする健を目撃した。
 葛飾から白骨発見と報じた自分の記事が過去の戦争の傷を掘り起こしたと思うと、やりきれない陽介であった。
 制作・日本テレビと近代映画協会、脚本・岡本克己、撮影・東原三郎、監督・森崎東。

     地方記者・立花陽介 (2) 伊賀上野通信局  (池田博明記)

 シリーズ第2話。水谷豊『相棒』のヒットのお蔭でCS衛星劇場で2009年4月に放映されました。
 陽介(水谷豊)は伊賀上野通信局に転勤、地元に着いたその日、妻・久美(森口瑶子)は「組紐教えます」の札を目にとめ、美人の好美(姿晴香)に教えを乞う。今は教えていないということだが、基本を聞いていったん帰宅、さらに教えられた組紐センターを見学した久美は帰途、神社の石の燈篭で撲殺されている男の死体を発見してしまう。
 被害者は呉服問屋の社長・手島俊造。死体の傍には「くひな笛」が落ちていた。芭蕉の生家を訊ねた陽介たちはそこに勤める安子(左時枝)が偶然の来客・小村一平(大和田獏)と23年ぶりの出会いと話しているのを微笑ましく聞いていた。
 地元の刑事・末吉(奥村公延)は、殺人事件は初めて。陽介は末吉に密着して情報を得ようとするものの、手島の知人・京都友禅染の下絵画家が小村だったことくらいしか分らない。事件当夜は明日香村の自宅にいたという。
 東京の手島の葬儀で陽介はキャバレーの女たちから、手島がくひな笛の件で小村をからかっていたことを聞く。昔の女にふられたらしいのだ。また、桜華女子大学の理事長・手島は学長選挙の対立候補・奈良文理大学の足立教授を追い落とそうと画策していたことを知る。
 足立教授は学問一筋の面白みのない男だった。帰宅してみると、久美はビックリ腰(ギックリ腰)になっていた。久美の代わりに組紐のことを好美に聞きに行ったとき、好美が足立教授の妻であることが分った。しかし、結婚生活は楽しいものではないらしく、教授が「いつまでたってもお前は女房らしくない。お茶が飲みたいときに、母親はいつもお茶を出したものだ」と責められている。
 手島の話に万博という言葉があった。銭湯での女たちの会話で、安子が手島と言い争っていたことを聞いた陽介は安子の自宅を訪ねるが、畑から追い返されただけで何も手がかりは得られなかった。安子が重要参考人と確信した陽介は末吉にそのy情報を伝える。末吉も乗り気になったが、翌朝、安子の死体が城の内堀に浮いた。
 安子の仏前で友人(絵沢萌子)は高校時代に芭蕉研究会で好きな男の恋人との橋渡し役を彼女はしていたと話す。くひな笛は二人の待ち合わせの合図に使われていたのだ。男の恋人は年上の良縁がまとまりかけていたが、二人は万博の会場で落ち合って駆け落ちの約束をした。1970年9月5日、入場者が80万人以上のピークだったその日、安子と男は会場で待ったが、女は来なかった。その後、男は町を出た。安子が結婚した夫は急死したという。あまり良い目をみないまま彼女は死んでしまったようなのだ。男は小村で、女は好美だ。
 小村の娘に陽介は事件当夜、父が家にいたかどうかを訊ねると、娘はその夜は遅くまで見てもいいテレビがあったが、父は帰宅しなかったと話す。
 久美は手島が学長選挙の対立候補・足立のスキャンダルを掘り出そうとしたのではないかと推理する。小村が大恩人だという手島は小村にどんな恩を授けたのだろうか。陽介は末吉に京都警察で古い事件の記録を調査してもらう。七条殺人事件で暴漢が殺された事件で小村が重要参考人、アリバイ証言が手島という迷宮事件があった。
 陽介の推理は、失恋で自暴自棄になった小村が起こした殺人を偽証で救った手島が、足立教授の妻・好美と小村の逢引を画策、不倫現場の証拠写真を撮影、争う小村に撲殺される。手島は安子にも協力を依頼、安子に恐喝された好美を守るため、小村は安子を殺したというもの。
 死を覚悟して会った二人に陽介は自首を勧める。駆け落ちの日に二人が出会えなかったのは、仲を取り持っていた安子の謀りごとだったことが分る。しかし、彼女も哀れな女だったのだ・・・
 脚本・岡本克己、監督・森崎東。撮影は名手・原一民。強引な話の展開に無理がある。

     香華   月曜 日本名作ドラマ  (池田博明記)

 有吉佐和子原作を綾部伴子が脚色、森崎さんが監督した。前篇・後篇と2回に分けて放送された。時系列をたどるだけの能のない、ダラダラした脚本と、主演の朋子役の墨田ユキの生硬な演技であまりみるべきところの無い作品である。娘をそっちのけに自分の幸福を追求する、プラス思考の母親を倍賞美津子が演じていて、そこがやや面白い作品です。
 明治40年春、和歌山県西の庄村の須永家では再婚の郁代(倍賞美津子)の結婚にその母親が皮肉を言っている。子供を放り出していまさら再婚でもないではないかというのだ。主人公の朋子はまだ子供である。どうもこの母親は後で首をくくって自殺したのかもしれない。輪に首をつっこむ回想ショットが挿入されるからである。
 明治45年春、次第に朋子と郁代の二人は都会へ出ていき、大正7年赤坂に1軒家を構えるようになったが、それは娘のほうで、女郎あがりの母親のほうは旅館の一室に閉じこめられたようなもの。朋子は神波伯爵の妾になったのだ。しかし、陸軍の幹部候補生・江崎文武と芸者・小牡丹すなわち朋子は情を通じるようになる。一緒になれるなら、芸者を辞めることさえ考える朋子。
 大正12年関東大震災が起きる。昭和3年正月、パトロンの伯爵が死亡、江崎も連隊長の娘と結婚の話があると去っていく。昭和5年秋に八郎(平田満)の妻が死んで付き合いのあった郁代を女房として籍に入れると言う。野沢(安岡力也)は正妻がいて結婚できないがオレの子供を産んでくれと言っていたが結局、朋子との間に子供はできなかった。
 昭和19年、そして昭和20年8月15日、焼け跡から食べ物屋での再興を決意する朋子に協力するような素振りの郁代だったが、八郎が迎えにきたら、すぐにそれに乗ってしまった。
 昭和23年、ようやく割烹旅館として経営が安定してきたところへ母が尋ねて来る。八郎が性的不能なので出てきたらしい。江崎大佐に絞首刑の判決の記事を見て、巣鴨プリズンに面会を依頼するが、面会は家族のみに限られ欠員が出たときには認められることもあるという。ようやく機会を得て家族より数歩しりぞいて面会したものの、江崎は自分に一瞥を与えただけであった。帰宅して腹痛に倒れる朋子。病院に連絡を急ぐ母。
 気が付くと八郎がいて、腸の腫瘍を取り除く手術だったという。なぜ母がいないのか。あの日あわてて飛び出した母は米軍のジープにはねられて死亡したのだ。母は生前自分の母を朋子の父親の実家の墓に入れてくれと言っていた。
 昭和28年、父親の実家の田沢家の墓にいれてくれるように頼んだが縁先で断られる朋子。骨を持って海の見える丘に登る朋子だった。
  【松竹ビデオあり】
 木下恵介監督、岡田茉莉子、乙羽信子主演の作品がある。

      転勤判事   火曜サスペンス劇場   (池田博明記)

 井上由美子脚本、森崎東監督。東京から山梨に転勤になった判事・二宮純子(渡辺えり子)は義母のふたば(渡辺美佐子)と一緒に駅に着いた。母は長男の嫁と折り合いが悪く、純子と同居するつもりらしい。裁判所の天徳部長(石橋蓮司)から早速、殺人未遂事件のファイルを渡される。部長は冗談も言わず、型どおりの挨拶言葉に切り替えしてくるようなマイペースな男で、同僚の森下判事補(尾美としのり)はやる気があるんだかないんだか分からない不思議な男。
 事件は、母親・節子(倉野章子)が中学生の息子・隆弘(池田貴尉)を笛吹川の河原で進学問題で言い争っているうちに川に突き落としたというもの。幸い息子は釣り人に救出された。被告も被害者も罪状を認めており、弁護人は夫・五十嵐(小日向文世)という特異な事件だった。わが子を自宅から15分もある川原に連れていき、そこでわざわざ初めて殴る蹴るの暴力をふるうという行動に不自然さを感じた純子は笛吹川に行ってみた。
 川原には隆弘がいた。声をかけるが彼の言葉は少ない。そこへ同級生三人がやって来て、隆弘に石を投げる。イジメとみてとった純子は中学生に抗議する。隆弘が転校生のくせに馴染まず勉強ができるのが気に入らないのだ。事件の背景にイジメがあるのではないかと純子は感じる。判事が係争中の事件の現場に行って予断を持つことは禁じられているため、純子は主席に叱られる。
 弁護を担当する五十嵐と妻・節子は証言を細かく打ち合わせをしている。少しのズレに五十嵐は腹を立てている。なにか別のことを隠しているのだ。
 証人尋問で隆弘に川原に行った前後のことを純子が尋ねると、隆弘は無言になり、トイレに行きたいと言って出たきり、窓から脱走してしまう。裁判は一時中断する。官舎に帰宅した純子はふたばと机に鍵をかけたままのことをきっかけに言い争いになる。仕事一途で女性としてのたしなみが無いと非難されて純子も怒る。ふたばは出て行ってしまう。ビールを飲んでうたたねした純子は中学の教員だった夫がキャンプで川に落ちた生徒を助けようと飛び込んだものの泳げず溺死してしまったときの夢を見る。目が覚めてもふたばが家にいないので純子は不安になる。朝5時、ふたばは川原で隆弘を見て、死ぬつもりだと直感する。自殺を思いとどまらせようとふたばは隆弘に話す。
 ふたばは自分も息子を亡くしたとき死ぬことを考えて川を見ていたと話す。生徒を助けようとして死亡なんてカッコイイイじゃんという隆弘のほおをふたばは殴る。ふたばは「どんなにブザマでも生きているほうがカッコいいんだから」と言う。純子も傍に来て家に彼を送っていく。五十嵐は礼も言わず隆弘を引き取る。ふたばは「あんたが見てなければ、あの子は死ぬよ」と忠告する。朝、中学校の登校時間帯だ。隆弘をイジメた三人に中州で発見された隆弘の時計のことを聞いて、純子はイジメた中心だった太田が事件の日から行方不明になっていることを知る。
 事件の隠された真相を追求すべく川原での審判を提案。事件現場となった川原で事件を再現する関係者。そこで、両親の贈り物だった時計を取り返そうとした隆弘と太田の間で起こった事件が明らかになる。
 渡辺えり子と渡辺美佐子のやりとりが可笑しい。井上由美子の脚本はしっかりしているが、事件の関係者の演技が硬い。「転勤判事」第1作であった。

      苦い夜   火曜サスペンス劇場   (池田博明記)

 読売新聞の試写室(増)で紹介された。紹介は次の通り。苦い夜
 “ほろ酔い加減で帰宅した男。暗い部屋に入った途端、何者かない背後から刺される。倒れ、痛みをこらえる男の目に入ってきたのは。携帯電話の着信音。しかし、ポケットにあるはずの自分の携帯はない。男には、何とも苦々しい夜だった・・・・・。
 男は、小さな建設会社のオーナー社長、相沢達夫(渡瀬恒彦)。何とか110番通報し、緊急手術を受けた結果、命はとりとめた。刺したのはいったい誰なのか。推理を巡らす相沢の頭に、どこか得たいの知れない娘の恋人(松重豊)や、事件の夜に立ち寄ったバーのママ(永島映子)らが浮かぶ。
 そのママが逮捕され、当夜、部屋に入ったことは認めるなど。前半はあっさりとした展開だが、主人公が職場復帰するあたりから深みが出てくる。相沢は、会社を支えてくれている経理担当の山岡(大谷直子)と専務の茂木(大杉蓮)にも不審を抱く。信じていた人間が信じられなくさる恐ろしさや、気付かずに人を傷つけていることの怖さが、徐々に浮かび上がって来る。
 役者も持ち味を出しており、特に相沢が茂木を追及する場面での、渡瀬の演技は鬼気迫る。佐伯俊道の脚本を森崎東が演出。”

     修善寺温泉殺人事件    (池田博明記)

 朝の読売新聞の試写室(高)で森埼東監督作品と知りました。最近のTVガイドや新聞にはテレ・フィーチャーの監督は記載されていないことが多く、森崎作品も1999年の『苦い夜』以降、お目にかかっていないのです。
 しかし、この吉村達也原作の愛川欽也・国生さゆりの親子刑事ものを演出した森崎さんは手堅い演出ぶりを見せてくれました。さすがに往年のゴッタ煮的要素は無くなってしまいましたが、刑事達が、上下関係が逆転した夏目親子のもとで働くのを気疲れするとボヤく場所が警察の便所であったり、国生さゆりが死んだお兄ちゃんの代わりに自分は警官になったんだと告白するしんみりした場面、左時枝扮する母親が最後の場面で自分が産んだ子と(今は事故の後遺症で盲目となっている)再会する場面などに、森崎さんのハートは感じられました。
 森崎さんも、もうだいぶお年だと思いますが、がんばって下さいね!

     

森崎東監督の