大事件だよ全員集合!!

製作=松竹(大船撮影所) 
1973.12.26 
7巻 92分 カラー ワイド
製作沢村国雄 井沢健 大事件だよ            
監督渡辺祐介
助監督白木慶二
脚本渡辺祐介 田坂啓 森崎東
原作渡辺祐介
撮影荒野諒一
音楽たかしまあきひこ
美術森田郷平
録音田中俊夫
調音小尾幸魚
照明佐久間丈彦
編集寺田昭光
出演いかりや長介 加藤茶
仲本工事 高木ブー 荒井注
松坂慶子 中尾ミエ 天地総子
藤村有弘 芦屋小雁 玉川良一
由利徹 アグネス・チャン 伴淳三郎


      加とちゃんページ解説より

 第十二作「大事件だよ全員集合!!」
 またまたすごーく愉快な仲間ドリフが大事件の真っ只中へ
 こちらドリフの探偵社、
 ドウゾ ナヌッ誘拐事件、ドウゾドウゾ。ドリフ始まって以来の大事件!
 火攻め、水攻め、爆発攻め!
 悪ノリ五人もついにこれまでか?  

 【主題歌】「燃ゆるドリフだ」
 【挿入歌】「小さな恋の物語」唄:アグネスチャン [92分]

 今回は、名探偵を自負するドリフターズが大学助教授と美人芸者、女子大生のスキャンダルにまきこまれたり、さらには善良なる港町に乗り込んでコンビナート建設に反対する漁民の味方となって、悪徳企業家集団に挑戦するなど予期せぬ大事件と抱腹絶倒の爆笑を誘発する奇抜な解決がたっぷりもりこまれています。


    『大事件だよ全員集合』作品紹介 (球磨元男) 『世界映画作品記録全集』(一九七五年659号)

 ドリフターズの「全員集合」シリーズ十ニ作目。監督はこのシリーズの全作を受け持っている渡邉祐介。今回は、いかりや長介がはやらない探偵事務所の所長、仲本工事がその助手、荒井注と高木ブーがラーメン屋の主人と使用人、加藤茶が自衛隊の脱走兵。ところが金に困って何か一発やらかさなくてはと長介が考えて、「おれは本当はCIAの東京支部長だ」と四人を脅し部下にしたことから大事件に巻き込まれることになる。好色助教授(藤村有弘)と芸者(中尾ミエ)との色恋沙汰、その助教授が目をつけた美人の女子大生(松坂慶子)と彼女が想いをはせる男(長谷川明男)の恋愛模様。はてはその男が巻き込まれた高知の港町でのコンビナート建設をめぐっての陰謀などが展開してゆく。この作品を最後に荒井注がメンバーを抜けた。92分。


     『大事件だよ全員集合!!』 あら筋と感想
         池田博明記  2008年10月

 脚本は渡邉祐介・田坂啓・森崎東の順なので、森崎さんの貢献度はそれほど大きくないのだろう。前半3分の1くらいは絶好調だった。
 戦争時の爆撃シーンや機銃掃射の場面に引き続いて自衛隊の実戦訓練。加藤茶「こわいヨ〜脱走します」、部隊長の玉川良一「こらア!」と追っかけてくる。タイトルにドリフターズの歌う主題歌「燃ゆるドリフだ」がかぶる。
 いかり探偵事務所に来たおばあさん(武智豊子)を「家出娘の捜索ね」と気の無い返事で受けているのは長吉(いかりや長介)。調査料500円を払わないというので長吉はばあさんを「つんぼ!くそババア!」と追い返してしまう。事務員の直人(仲本工事)が「一ヶ月ぶりに来た客なのに」と残念がる。注文もしていないラーメン一杯の汁はお前にやると恩着せがましく約束する長吉。向かいのラーメン屋万来軒の店主(荒井注)とデブ(高木ブー)が付け9800円の回収にやって来るが、当然、金は無い。留守になった万来軒には乞食同然の加藤(加藤茶)が入って、調理中のチャーハンをかきこんでいた。
 長吉は実は自分はCIAの東京支部長だと告白し、スクラップ帳に貼っていた世界の大事件と関わっていた、もしお前たちが特命に反するならば裸にしてひき肉器械でミンチにしてしまうと脅す。巨大なひき肉器械にふんどし一丁の四人を入れ、ハンドルを回すと、ひき肉が出てくる(ただ器械から出てくる挽き肉のアップだが)、モンティ・パイソン風なグロテスクな場面がある。長吉は、外を通るチリ紙交換屋のトラックが言う「ボロくず」が「ボロきれ」に変わることが本部から殺しの指令が出た証拠だと解説してすっかり一同の信用を得てしまう。このチリ紙交換屋がドリフターズに加わる前の志村健。
 さっそく一同に調査の訓練を行う長吉、第一は「すれ違いざまに女の子のパンティの色を見分ける方法」や「食べるフリをしておいしい芝居をする」など、およそ奇妙な訓練ばかり。フランスの首相ド・ゴールを暗殺しようとしたジャッカルは自分のことだという時事ネタも入る。
 訓練を受けた四人は次に実践。荒井注と仲本は由利徹のバーへ、加藤茶と高木ブーは新婚さんの饅頭屋へ、素行調査の注文を取りに出向くが、ホステスの売春やら、夫の女遊びの調査を依頼されるわけがない。逆にネジこまれて立ち往生。
 芸者の桃太郎(中尾ミエ)から貢いでいた男に裏切られたと調査を依頼され、張り切る一同。相手は城北大学助教授地質学の黒木(藤村有弘)、学生に変装した一同はさっそく応援団に見抜かれてたたき出されそうになるが、危ういところを声をかえて救ってくれたのはこの大学の学生坂本ミサヲ(松坂慶子)だった。
 アグネス・チャンが「小さな恋の物語」を歌う喫茶店で、黒木がミサヲを誘うが郷里の高知から父親が出てくるからと彼女は断る。歌をきかずに上の空のドリフにアグネスは中国語で抗議する。長吉はCIAホンコン支局員との連絡だと誤魔化す。店を出た長吉はスケの尾行は自分がと引き受け、ミサヲを尾行、黒木の尾行は四人に任せる。
 ミサヲは緑ヶ丘保育園から預かった園児を南風荘の自室に連れて行く。自室で待っていたのは郷里の漁業組合長の父親(伴淳三郎)。園児は隣室の八代五郎(長谷川明男)の子供だった。新しい魚をぶら下げて帰宅した五郎になにか悪い仕事を依頼しようとする暴力団風のチンピラたち。
 実は神埼サルベージ株式会社の社員だった。社長(山本麟一)は代議士の二宮と組んで足摺岬沖に石油コンビナートを建設する計画を進めていたのだ。組合長は二宮代議士にトイレットペーパー50巻を手土産に建設反対の陳情に来たのだった。代議士は陳情を聞いたものの、腹は既に決まっていた。コンビナート建設でもうけようというのだ。
 一方、水増しされた黒木の素行を聞いた桃太郎は、長吉が自分と心中を希望しているとドリフの面々に言われたので、お茶に青酸カリを入れて待っていた。なかなかお茶に口をつけない長吉だったが、とうとう飲ませることに成功、後を追ってお茶をあおる桃太郎。医者だと大騒ぎになるなか、長吉はいち早く火葬場に運ばれてしまう。
 棺に納められ、火葬される長吉だったが、あわやのところで蘇生し、煙突から脱出する。
 やっと長吉の支配から脱出した四人は喜んでいるが、それも束の間、長吉が戻って来る。そこへ自衛隊の隊長が加藤を探しに来る。不名誉な脱走兵を出したことを秘密にしておいて、隊へ戻そうというのだ。加藤が隠し持っていた手榴弾と実弾を目撃したり、隊長から国家の秘密という言葉を聞いたりして、加藤こそCIAの諜報員と錯覚してしまうドリフの面々。リーダーがいつのまにか、長吉から加藤へ移る。
 大学の研究室の川上助手(天地総子)に黒木は足摺岬に出かけたと聞いて、ミサヲ始め一同は足摺岬に乗り込む。黒木に色仕掛けで接近したミサヲは海底爆破計画書を盗み見て、神崎たちは海底にダイナマイトを仕掛けて爆破し、海底火山の爆発とみせかけて石油を採掘する計画、小さな漁港が沈んでも構わないという計画を進めている。その事実を父親に告げると漁民たちは一気に反発。ダイナマイトを仕掛けるために誘拐していた五郎の子供を取り返す。
 沖に出ていた船に乗り込んだドリフの面々は神崎たちの企みを阻止するのだった。
 面白いのはいかりや長介が生き返ってくるまで。その後、加藤茶がリーダーになった辺りから、かけ合いも少なくなり、リズムが悪くなって、急速に陳腐になってしまう。