小さいけれど本物。ミニ沼田鉈
鍛冶屋の誇りが籠もっている鉈?

“趣味のミニ鉈”とは書いてありますけれど・・・

`06/8/2:updated


【ミニ鉈の素性】

 上は古見製作所製沼田鉈五寸割り込み片刃。下が二寸五分のミニ鉈。付け鋼片刃。勿論何れも鍛造品である。

 箱書きには、-------
“趣味のミニ鉈”沼田市は城下町として栄えてきた町です。古くより刀鍛冶、野鍛冶が多く優れた製品を作り出してきました。特に大正の時代より特殊な工法で作られた鉈は、その優れた切れ味と耐久力で、全国の山林業務に従事する人々に好評をいただき現在に至っております。今回はその鉈のミニチュアを観光地等の土産品に、また各種記念品に製作しました。本格的な切れ味を是非お楽しみ下さい。-------
と古見製作所のミニ鉈の説明が書かれている。

 でも、その謙虚な書き方とは異なり、造りは真面目に付け鋼の鍛造ものだ。ホームセンターなどに置いてある安物の鉈のように、最初から地金と鋼がくっついている積層綱を機械的に焼き入れして作られたものではない。とても趣味品なんて言えないと思うんですけどね・・・

 別ページの、手打ち鉈他、造林用の良い道具類を手に入れる`01/2の中の`06/4/29追記【古見製作所の沼田鉈、腰鉈五寸と豆鉈】に書いたように、ナイフマガジン2004/6月号No.106-P61には、此のミニ鉈と、其の元になった沼田鉈について詳しく書かれている。
 件のページに書いた様に古見製作所の五寸鉈は、片刃なのに鋼を割り込みの手法で作ってあるという手の込んだ珍しいものでして、ナイフマガジンによれば8:2の割合の片刃だそうだ。裏側にも2割の地金が入っていることと、裏スキの代わりに反りが入っていることで、打撃のショックを吸収してくれたり、捻りの応力による刃の欠けを防ぐ役目をしてくれるようである。つまり手間の掛かった難しい作り方というわけですね。

 でも、此のミニ鉈は当然のことだが、普通の片刃の鍛造物の様に付け鋼だそうだ。裏を見ると峯の方まで鋼が入っているのが解った。おまけに裏スキもベルトグラインダーでちゃんと作ってあって充分に空いている。そして庭に行って繁茂した藪を払ってみたら切れること。裏スキが有る為か、小さくて軽いのに其の割には良く切れました。

 箱には責任保証、手造りとしっかりと書かれている。  鞘もしっかりと丁寧に作ってある。

 

 大きい沼田鉈と同じように手元が収束している刃の形状。  裏スキもベルトグラインダーで作った様だが、本物と同じようにしっかりと入っている。

 

 金尺を当ててみると、裏が空いて作ってあることがわかる。金尺無しではパッと見た目には裏が空いていてあるかどうか解らないかも知れない。此の裏スキがあることで刃の吸い込みがよい。  凄いのが口金。本物の大きい方ではマスプロ市販品の口金が挿し込んであるが、ミニ鉈の方は鎚目が入った手造り物。ああ驚いた。この様な口金を自作するページはこちら

 

 一応礼儀ですから、どんな切れ味なのかお試しをやらせて貰う。

 ご存じの方は以前ナイフマガジンに載っていた大型刃物のテストの記事に於いて、元相撲取りの人が、世にもおとろしい歪んだ顔をして鉈を振り下ろしている図を思い出しておくんなまし。(#c*)

 「でゃ〜!」....カツン! と、、、ちゃんと刃が入りました。(^-^)

 此の木は、ベーコンの薫製に使って残っていたサクランボの木。乾燥してカチカチの状態。

 

 鉈は打撃で切る道具だからね〜。ミニ鉈は軽いので柄の端をもってスナップを効かす。  何度もカツカツと刻みました。切り口は綺麗でしょう?軽い割には良く切れた。裏スキが効いているかも?

 


【お化粧?】

 いつもの悪い癖が発動。得物を眺めていると、これをああしてこうしてと、イメイジが湧いてしまうものだから、日常の義務優先順位をひっくり返しても手が出てしまう。自営業者は自制心がないと勤まらないね〜。

 ミニ鉈の場合、手を入れるところはこんなところでしょうか。
・研ぎ直し:取り敢えず切れるけど、元の素性が良いのでチャンと研いだらどうなるだろう?と思わせるのが罠。
・柄を交換:柄が代われば雰囲気も変わって自分のものになった実感が。
・恰好の良い鞘を作る:良いものを作ろうとすると此が一番手間が掛かるかな。

 この所、あまり時間が取れないので出来ることだけ。となると、研ぎ直しと柄の交換をちょっとやってみた。

 まずは目釘を外してっと。。。釘を当てて金槌でコンコンと・・・

  この反対側に出っ張った目釘をプライヤーで掴んで、引っ張っても抜けないのでグリグリと回してみたら、、、千切れてしまった。(;_;)

 千切れた残りの部分を細い金属棒を挿し込んで打ち抜こうとしたが全然ダメ。諦めて柄を割ってみると、目釘が潰れていた。それも引っ張ると簡単に千切れた。目釘は相当柔らかいものだ。  バラバラになったミニ鉈。柄が抉れているのは刃が手元が収束している刃付けをするときにベルトグラインダーで付いたものだろう。左側の小さい棒状のものは千切れた目釘。

 

 はい。出来ました。持っていた桜の枝を柄にしてみました。ま、大したこと無いですが・・・  柄も尻側が太いと様になるんだけどね。全長18cm弱。刃渡りは7cmなので二寸半にはちょっと足らない。

 

 研いでみた。真ん中が膨らんで前後に肉が落ちて居たので可成り研いで平らにした。  刃の手元側のところは司鉈みたいに丸く削った。研ぎは最初、全部バラした状態でやっていたのだが。

 

 柄を付けてからの方が力が入って研ぎやすかった。粗砥で肉を落としてから1000番の中砥で綺麗にして、天然砥石(多分、大平)で仕上げ。  裏も日野浦司鉈みたいに刃のところを平らに研ぎを掛けた。裏スキのところは刀用の薄曇り砥の木っ端があったので其れを整形して研いだ。

 

 柄は中子が入るところを鋸で切り落としてから小刀で整形。出来上がったところで椿油を染み込ませておいた。  刃側は手抜きでパテを埋めてしまった。ちゃんとやるなら木を削って埋めましょう。

 お化粧の過程で、試し切りをしてみたら硬い木の枝を払ったところ刃がよれた。焼きは少し甘いかも。また、沼田鉈の方は鋼に黄紙を使用とナイフマガジンに書かれていたからミニ鉈も同様なのだろう。水滴が残っていたりすると白紙や青紙に比べてちょっと錆びやすい傾向があるようだ。

 さて、簡単に手抜きでお化粧してみたけれど、ざっとやった割にはまあまあの出来。もっと丁寧に綺麗に作る人はいらっしゃるだろうから、好きな人はおやりになってみると良いと思う。案の定、鍋屋さんでは好き者のお客さんがお二人ほどミニ鉈を手に入れていって改造中だそうだ。

 こんなんで遊ぶと面白いだろうということで、ご参考に無理くり此のお化粧したミニ鉈を鍋屋さんのショーウィンドウに並べて貰った。非売品なのでご覧頂くだけだが、センスの良い皆さんはもっと恰好いいのをご自分で作って欲しい。こういう自分でモディファイしたものを作って、日頃お世話になっている道具が好きな人にプレゼントすると喜ばれそうだよね。


【経緯】

 別ページで紹介している鍋屋金物店さんに、古見製作所の豆鉈(ミニ鉈)を入れて於いてよとお願いしてあって、その後入荷したのは良いけれど、懐が厳しいのでずーっとショーウィンドウに飾られていた此のミニ鉈。先日、立ち寄って細かい物を購入してから帰る際に、オヤジさんに「これ持っていってくれ。」と手渡された小さい箱。「いいのに〜!」と言いつつも頂いて、帰宅して嫁さんと一緒に箱を開けてみると、なんと此のミニ鉈が入っていた。ちょっと感激。そして悪いなあ〜という思い。
 別に仕事でもなんでも無いけれど、面白くて良いモノが沢山あると直ぐ人に言いたくなるタイプなものなので、こんなページ群を作っているだけなんだけど、それでも観て下さった方が近くの方も遠くの方も鍋屋さんにアクセスして下さって、なんだかんだ他では見付からない業物を買って下さっているらしい。それで、オヤジさんが気持だからと仰って時々ワインとか色々な物を下さるのだ。最終的には買って下さった方々のお陰かな?
 そういう意味で書いているのではないからと一応はお断りするのだが、、、、最後には貰っちゃう。(^-^;;  で、、、貰っちゃうと何か悪いなあとページを更に作っちゃう・・・というわけでも無いけれど、此等のページをご覧頂いてお役に立つ人もいるかも知れないので面白いモノを見付けると、つい書きたくなってしまうのが性。

 さて、我々貧乏人は仲間内で物々交換、対価交換方式で、美味しいものや色々なものをやり取りしているので、街場に近いところでの暮らし、そして現金が無い割には結構豊かかもしれない。その様なわけで、人生の付加価値部分は、出来るだけ対価交換方式で行い、やたら現金を動かさない生活姿勢であればと思っている。
 とは言っても何でもかんでも対価を求める気持はない。何故なら、自分の出来る範囲で周り(大きな意味での環境や状況)を整えることは、大地を借りて生きている我々の義務ではないかと思うからだ。大したことは出来ないのだけれど、自分自身の考えを整理したり言語外の意識(感情や身体意識)を探ったりすること、そして自分の行動パターンを正確に把握して偏向するプログラムを是正したりすることと同時に、地球上で生活させて貰っている一人として文化が破壊方向に向かっている現代としては、実際の行動や生き様として自分自身の在り方が是正されなかったら何も始まらないからだ。別に恰好良いことをしようとはおもわないけれど、何事も「出来ない理由、上手く行かない理由」を述べているようなドツボに填ったままの亡者的意識で一生を終わりたくないからね。先ずは今の流れの中で自分が出来ることから。

 なので自分に出来ることは良いもの質の高いものを正しく出来るだけ責任を持って紹介すること(オフィシャルサイトでは特に。この個人サイトでは変な人達に個人情報を流してもなんなので出来る範囲でといったところ。スンマセン)。出来るなら自腹を切って手に入れて使ったものを。
 何故なら、質の悪いもの、無駄なもの、身体を悪くするもの、自然破壊に大きく荷担するもの、、、などは買わない方が良いからだ。今の世の中を変えて行くには我々消費者が賢くなって、くだらないこと質の悪いものにお金を使わないことかが先ず第一だと思う。他人に魂を売るよりも、自分達が賢くならないとね。不安や恐怖や目先の欲に踊らされるから邪なものが蔓延るのは道理だろう。踊らされる人間が多いから世の中荒れて行くんでしょ。
 そういう流れを断ち切るためには、無駄なお金を使わないこと、現金を動かさないこと、そして其の大事なお金は、質の高いもの、智慧の籠もったものを提供してくれる職人さんに回るようにして、レベルの高い日本のモノ造りの伝統が失われないようになると良いと考えるからだ。それには気づいた人、世の中の在り方を疑問に思う人達が、足下から出来ることを。其れが第一歩。。。。と、自分に言い聞かせております。(^-^;;  食べ物も自給率を高くしてエネルギーや道具などの自給率も高くしてね・・・以上 by Recycler
 


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