刀鍛冶のところにお邪魔してきた

'02/秋


 ここ数年、仕事が忙しくて個人サイトのページ更新が出来ないで居る。ろくに遊ぶ暇もない。でも、たまにパッと思いついたときには遊びに行ってくる。昨年、2002年の秋に、鍛冶の師匠の小山氏と電話をしていた土曜日のこと、小山師匠が、「いま八尾で風の盆をやってるだよな。富山の知り合いの刀鍛冶のところにも久々に行ってみたいし。」と言う。「今だったら行けるから一緒に行ってもいいですよ。水曜日が歯医者だから其れまでに戻れれば。」と返事をしたところ、先方の刀鍛冶の稗田氏もOKとのこと。日曜の明け方から富山に向かって出掛けた。
 かなり早く目的の町に着いたので、取り敢えず刀鍛冶稗田氏の住む山奥へ車を進めた。稗田氏は、田畑をやりながら自給自足で刀鍛冶を営んで居られる。細い山道を登り上げ、蚊に刺されながら、入り口から声を掛けるが応答がない。近所を一回りして戻り、どうしたものかと思案し、一旦山を下りる事に。
 山を下りきった辺りで、稗田氏の軽トラとすれ違う。あわてて戻り拿捕。「八尾に行ってから、明日来るんかと思ってたわ。」。今晩は、泊めて貰う事になったので、取り敢えず町に出て稗田氏の案内で旨いそば屋で軽く一杯やってお昼を済ませ、その足で今夜の分の酒やつまみの刺身などと料理の材料を仕入れ、準備だけしておく。料理人は自分だ。戻って、刀を色々拝見させて頂く。

この日、フェーン現象で過去一番の暑さだった富山だが、山の上は町に比べれば遙かに涼しい。
なんといっても、熊が里に出てくるところだ。

偏屈小山師匠は、出来の良くないものだと口を開かないが、稗田氏の刀は何度も讃えていた。

 稗田氏は、作刀に必用な玉鋼を、他の新刀を作る刀鍛冶の様に日刀保の提供する玉鋼を調達してきているわけではない。古い刀を探してきて、おろし金の技法(集めてきた鉄を脱炭や浸炭を行う:昔の和鉄の方が良質とされている)により刀を作っている。日刀保に払う歩合が無いので良い刀がリーズナブルな価格で出来る様であるから、そんな刀を作って欲しい方は連絡されると宜しいと思う。“刀匠:稗田康光(0765-33-9061)”

依頼されて作った両刃の剣
ちょっとこれは怖いぞ

 

仲間内のリラックスした格好なので、写真を撮ってご免なさい状態だ。

 この晩は、ドンチャンやって色々なお話を伺い、翌朝は稗田氏の作ったお米を玄米で頂く。稗田氏の圧力釜を二層で炊くやり方は、玄米が柔らかく、そしてベタベタせずにメチャ旨かった。ご馳走様。※他のページの調理器具関連の所にその炊き方を記載してあるのでご興味がある方は其方をご覧下さい。

 そして稗田氏が、行きたいところがあると仰る。新潟の刀鍛冶のところへ行きたいので一緒に行かんか?と言う事だ。電話をしてみると了解を得た。新潟まで車を飛ばして昼前に着き、またまたそば屋で昼を済ます。午後から刀鍛冶のY氏のお宅へお邪魔をする。上がらせて頂き、刀を拝見しながら四方山話。その後に、いよいよ待望のY氏の作業場に向かう。
 広い! 今は弟子の方一人と、二人だけで行っているそうだ。炉もいろいろなものがある。スプリングハンマーも2台。スプリングを加工して特性を変えてある。

こちらは卸しがねの炉。鋼を脱炭したり浸炭させたりするためのものだ。みな炉の造り方にもノウハウがあるらしい。小山師匠は、ブロアーに電圧を可変にするスライダックを付けて風量を調節するそうだが、鍛冶屋によっては、途中に調整弁を付けたり、チャンバーをつけたりして、いろいろ工夫をするらしい。 鞴から火床への羽口の直径を測って、自分のはこの位のもので、こうやって加工しているなどと、鍛冶屋同士で教え合っていた。


 

鍛冶屋は、皆自分の工夫で道具を作っているので、他の鍛冶屋の設備をみて、いろいろ勉強させて貰う。 現役の鞴。四尺だったと思う。二本使って居られた。鞴も、設置に色々な工夫がされている。


こちらはコークス炉。炉は用途によって様々。

 まだまだ、色々なお話しを伺えた。写真も撮らせて頂いたが、素人の自分には良く解らないので、ここには書けませーん。

 

帰りに八尾に回った。
かなり遅い時間だったが、まだまだ観光バスが走っており、車を駐車するのも、遠くになってしまった。
踊っている人は、かなりお疲れの様子。
一通り観て、今晩中に帰る事に。

 スーパーカミオカンデがある神岡を通り、安房峠回りで帰る事にした。今年は、春に仕事で岐阜に行ったときも高山から安房峠回りで帰ってきたこともあったので安房峠は2度目の年だ。今回は、かなり昔に行った事のある、奥飛騨温泉郷の栃尾の無料(思し召し)露天風呂に行こうと小山氏を誘って回ってみたら、な、な、なんと施設が綺麗になって、夜中は入れなくなってしまっていた。ガッカリ!
 思い出せば十年程前だったのだろうか、その時も秋だったと思うが、夜中にこの栃尾の露天風呂に入っていたとき(脇の小屋に、調理道具や寝具を持ち込んで野宿してお風呂に何度も入り、そして明け方に台風の風雨が強くなり撤退)には、大阪から来たという酔っぱらいの若い娘二人とその運転手の男の子が来て、女の子がお湯に手を付けて言う、「入りたいなあ・・・」と。。。
 「入んなよ。気持ちいいよー。」と自分。「でも、タオル持っておらへんし。ねえー。」ともう一人の女の子に言う。すると、わたしの連れの女性が、「タオル貸してあげるわよ。」ですと。そうしたら、大胆にスッポンポンで入ってきました女の子達だけで。。。思わず、、、合掌! 岩の影の暗いところに居たわたくしめは、思いっきり眼を全開に。自分の連れの女性は心が広いので、そんなわたしになんのお咎めもなし。(^^;; うーん、、、綺麗でしたね〜。。。
 男の子は度胸がないのか、はたまた女の子と一緒で恥ずかしいのか、何処かに行ってしまいましたね。いやあ、良き時代でした。それなのに、こんな管理浴場にされてしまって、なーんも面白くねー。こうやって世の中が無機質になっていくんだな。日本古代の原始共産的共同体の時代に戻りたい...って、違うか?

 そんな訳で、峠をぶっ飛ばして、さっさか帰ってきて着いた明け方、小山氏と交代で家の風呂に入って寝たという顛末。今回は、鍛冶をやる人達が、自分の道具を如何に工夫しているかという勉強になった。それから、富山のスーパーで売っている魚や刺身類がむちゃ旨かった事。。。こっちの都会の魚屋の扱いものよりも旨い!これは当たり前のようだが、新潟辺りだと、スーパーの魚は大して旨くないんだよね。富山はいいなあー。
 それにしても、刀鍛冶のお二人の方々、わたくしめのようなおまけまで付いて行ってしまったのにも関わらず、色々お話しをお伺いさせて頂き誠にありがとうございました。m(_ _)m 感謝!


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