`04/10/10追加

良い“箕”を手に入れる?

 先のページ(手打ち鉈他、造林用の良い道具類を手に入れる`01/2)に書いた様に、この昭和28年に買ったと書かれた箕は(漂白の民?)サンカと言われる人達の作かと思ってドキドキしていたのだが「特集サンカの最新学2」歴史民俗学2003 no.22を読み進めると、P-136〜の「千葉県の竹細工事情」田村勇氏の記事に房総で昭和の中期まで作られていた箕の話が載っていた。その内容を拝見し、もう一度「特集サンカの最新学」のP-108を読むと「桜の表面皮をミサキとアクドに編み込んでいる。」(注:ミサキ=箕先?、アクド=足処?)とある。ということも考慮して推察すると、この箕はサンカと言われる人達の作ではないかも知れないという考えに落ち着いた。しかし本を見ているとサンカの人達が作って居るものでも桜の表面皮が織り込んでないものもあるように見える。もし此がサンカの人達の作だったらかなり貴重なものでしょ。
 この箕をリサイクル屋さんが何処に手に入れたかというと八王子市の柚木の古い家からだそうで、お父さんが古いものを集めていたのを無くなったので息子さんが処分したというものらしい。使用した痕はあまり無い程度の良いものである。
 またこの箕とは関係ないかも知れないが、鍋屋の親父さんによると、津久井の地でも昔はサンカの人が箕などを売りに来たそうで、今は津久井湖に沈んでしまった荒川橋の近くの旧家には、ダムが沈んでしまって引っ越した先の橋本に近い新しい家まで売りに来ていたそうだ。ダムができた後だから昭和の40年頃だったかもと言っていた。なので、この箕がサンカの人達の作の可能性が無いとは言いきれない。が、先の資料にあるような桜の表面皮が使われていないからなあ。。。
 サンカについてはこちらのサイトが詳しい。『自然の中へ そして心の中へ!』このサイト管理者の方には誠に頭が下がる思いだ。感謝!

 左側は、リサイクル屋で手に入れた昭和28年当時1500円の箕。今回3000円で買ったが、価値からするととてもそんなものじゃないと思う  右側は、現在鍋屋さんで売っている2940円の箕。造りから見て、その手間を考えると此の価格は凄く安いと思う
 
 

 写真だけでは分かりにくいであろうが、実際の質は大分違う。先ず藤の鞣し方が昔のもの(昭和28年購入分)は凄く丁寧だし綺麗に整っている。勿論、竹自体も質がよいし丁寧に整えられている。あと、資料の本のものと見比べても、このリサイクル屋で手に入れた箕の縁に螺旋状に巻いてある竹の巻き数がかなり多く丁寧な造りとなっている。また、左の写真の下のものの様に縁の背の部分、弓張りを留めている竹籤がクロスして巻いてあるのが他にない特長だ。これらを含めて考えても可なりの上品だと思われる。

 でも、鍋屋さんに置いてある箕も手間から考えるととても2940円は安いと思わせるもの(ただ、弓張りの部分の縁に纏められた竹が曲がりがきついところが折れてしまっているのが残念。採った時期が悪かったか、処理が悪かったか、それとも竹の質が昔みたいに良くないものを使っているかだが)。いまはプラスティックの箕が安くて丈夫なのでこういう竹製の箕は売れないみたいだ。が、わたしは火にくべて気持ちよく燃えて綺麗に灰が残るものが好きだし、またもし食べ物類を扱うのだったら静電気を帯電するプラスティックより自然素材のものが良いに決まっている。果物も樹脂製品や金属の上に置いておくよりも、例えば絶縁体で電気的に安定している漆の器の方が保ちがよいことなどがある。変に電気が流れるものはプラスイオン化(酸化)しやすい可能性が無いとは言えないのでは。
 また、実際にプラスティックの箕を使っている人は、プラスティックのツルツルの表面では穀類などの実を風で煽ってゴミを取り除く時に実が滑って広がらずに使いにくい、だからこういう竹で編んだザラザラが良いんだよ、と言っていた。

 サンカの人達の作かどうかは分からないが、かなり質の高い箕を手に入れる事が出来たのは結構嬉しい。見ていて昔の人の手仕事に敬服してしまう。そして、同じ造りの箕が未だ作られて売られている事に二度ビックリ。鍋屋さんも面白いものを置いている事を再確認した次第だ。 


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