鍛冶屋は面白い。男の遊び場だ。集まってくる人は、みんな興味深く、そしてまじめにおやじさんの作業を観察している。見ていて飽きない不思議な仕事場だ。


【番外編】にわか鍛冶ワークショップ
おやじさんは素人の我々に、火造りで打つ釘の作り方を教えてくれた。
興が乗ると教えてくれるみたいだ。見学に来た小学生たちにも、一人一人釘作りを教えたそうだ。

おやじさんの考え方は、こういうものはとにかく体を動かして、体験するのが一番だというものだ。特に今の若い人に対しては強く思うそうである。頭が良くても、身体がその通りに動くかどうかは解らない、といって笑っていた。
19世紀のドイツの巨人、シュタイナーである。というより、現代では消えかかっている、日本古来からの寫瓶方式か。
キリストも釈迦も、他の聖人達も、書物を残さなかった。文字によりドグマに囚われ、形式に堕するからだ。
正解はない。時と人と場所に応じて、自分たちが答えを出していくのである。現場で身体を動かすことによって、見えてくるものがある。
と、にわか鍛冶は思う。※聖書も仏教教典も口誦や聞いたことから弟子や後の時代の人が作ったものである。 聖人達は文字による伝達を望まなかった。

    

真っ直ぐの軟鉄の棒を真っ赤に焼き、頭を丸める。打つ手順とコツがある。モタモタしていると、真っ赤な鉄がドンドン色褪せていく。それと同時に硬くなって、打っても形が変わらなくなる。焦ると、さっき言われたことが頭から消え、身体はとんちんかんな動きを始めてしまう。釘は、益々形が崩れていく。

それでも、おやじさんの手を借りて、どうにかこうにか、釘の頭が丸まった。

 

そして、たがねを当て、ハンマーを打ち下ろし、鉄棒を短く切る。
今度はヤットコで釘の頭を持ち、釘の先を鋭く尖らす。釘を持ったヤットコは、金槌の打ち下ろすのに合わせ、90度の角度で繰り返し捻るだけである。つまり、二面のみを打って、先細りの四角い先端を作るのである。
師匠のリズミカルな鎚打つ音が響く。
我々は、小手先で繕うので、リズムは無い。注意の言葉も筒抜けに、釘の先を打ち続け、形の美しさより先端を細くすることのみに囚われた雑音が響く。
いや、これは私だけかも。写真の二人は上手にやっていました、、、と思う。

おやじさんによると、見習いの始めには、この釘を一日百本打たされたそうだ。鍛冶屋の基本だと言っていた。この釘は、打って不純物を出してあるので長持ちするし、四角く作ってあるので、家が地震で揺れても緩まない。今の釘など足元にも及ばないほど良い釘だったそうだ。

【更に番外編】フイゴで炭を熾し、炭焼きバーベキュー
おやじさんの仕事場には、結構な人数が出入りする。夕方になり、近所の人が、ビールや焼酎、肉や野菜を持ち寄る。
当然、炭は沢山ある。火床に炭を並べ、フイゴで火を熾す。そこに網を置き、牛カルビや鳥肉、玉ねぎ、シシトウなどを置いていく。
オイオイ、本当にいいんかいな?この火で、バーベキューやって (^-^;;; これで俺の山刀を焼いて、、、チャンと焼きが入るのかな・・・ という宴会が延々続くのでありました。

 



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・【更に番外編】フイゴで炭を熾し、炭焼きバーベキュー

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