家にある道具で口金を火造り?`04

 

 リプレイス用の柄と口金は各種あるが口金の太さが合わないと使えない。その場合には、口金も柄も自作!

 3、4年前に撮った写真があったのでご参考にアップする。鉈など使い込むと刃のメンテナンスは勿論必用だが、それと共に柄も傷むし、口金や目釘も緩くなる。それを針金などで巻いて締め騙し騙し使っているのを良く見かけるが何れは使えなくなってしまう。また古道具屋やリサイクル屋にはそういった道具類が売られている事も多い。

 鍋屋金物店にあった口金二種

 さて、その目釘は建築用の釘をもって代用できるし、柄は林業関連のものを扱っているお店や地方によってはホームセンターにある。うちの近所だと違うページで紹介している金物屋さんにもいくつか置いてある。またナイフ関連のショップ(ハンドメイド用のキットなどを扱っている専門店)にも在庫している店もある。
 だが、これらのリペア用の柄を扱っているお店に置いてある口金も種類がそう多くあるわけではない。手鎌の様にあまり口金に応力が掛からないものだったら何とかなるが、鉈や大鎌などでは中子にぴったりと嵌る直径をもった口金でないと使っている内に直ぐにガタが出てしまう。となると自分で何とかするか、あとは鍛冶屋か鍛冶を出来る人に頼む事になる。
 ここでは自分で何とかするという自立精神に立脚する(様になりたいなという)為のサイトなので、自分でメンテする方向で考えてみよう。
・手に入れた口金が、直したい道具の中子より径が若干小さい位だったら叩いて楕円形に潰して径を合わせる:これは真円だと鉈の様な打撃道具の場合には強い応力が掛かるので何れ変形して緩くなり易い為に、最初から楕円形にしておくと変形しにくい。これに対応する柄には、口金の嵌め込み部分を楕円形に削るだけ。こんなのだったら簡単ね。
・お次はタイトルにある様に、その辺で細めの鉄パイプを探してきて切り、それを火造りで形や直径を目的とする中子の巾に合わせる方法。
 自分の手で道具を復活させる事が出来れば心おきなく使い込めるので、簡単な事だけど此等が出来ると非常に便利である。ということで下記に七輪を使って火造りする方法を書いておこう。
 また、七輪でなくとも全体が赤く焼ければ良いので屋外で使えるガスコンロ(但し火力の強いもの:自分の持っているのは登山用のもので5200kcalの出力がある)で風の影響を受けない様に炉を組んだものやブタン・プロパンのハンディガスボンベ(ある日の小山製作所`01/2に記載)を使っても出来る。但し、鋼を使って鍛造する場合には温度を上げすぎると脱炭して炭素分が抜け只の軟鉄になってしまうので温度管理には注意が必要。


 こちらは別のページにも載せたが、リサイクル屋で何百円かで買ってきた錆びてボロボロの鉈の錆を落として磨き研ぎ直し、また峯が打撃で変形していたのをサンダーで整形したもの。それに新たに口金を作り、樫の木を乾燥させて持っていたものを柄として使い復旧させた。鉈は割り込みで鍛造したものの様でかなり質の高いものだったので数百円で使える様になったのは可なりお得でしょ。

使った道具と素材は下記のもの。

 この道具の内、グラインダーは無くてもサンダー(ディスクグラインダー)があれば用事が済むかも知れない。一般的ではないが大事なものとしては金床とテーパー状の鉄の丸棒かな。金床は硬いもので或る程度の重さがあれば(ハンマーで打った時に跳ねないため)平らな面があるのならなんでも良い。テーパーの丸棒は何に使うのかというと、口金を打つ時に内側のアール、つまり径の大きさを変える為に必用なため。テーパーになっているから必用な丸みの部分で赤めたパイプを打っていって内径を決めたり外観の形を整えていく。

 七輪の風穴にドライヤーから送風して炭の温度を上げる。但し、しょっちゅうこんな事に七輪を使っていると七輪の寿命は極端に短くなる。ハンマーも専用のものでなく、金バサミもプライヤーで代用。
 左側の輪が打ち上がった口金(カツラと言う場合もある)。口金は叩いてあまり薄く延ばしてしまうと、鉈からの応力に負けてしまうので薄くし過ぎない様に。

 ここ数年でナイフマガジンやアウトドア雑誌にこの七輪を使った小型の刃物の火造りが載っていった。中には詳しく書かれていたものもあるので古本屋さんを探してみるのも面白いかも。

 乾燥させておいた樫の木の棒を丁度良い太さのところで切り、中子が入る切り込みをノコギリで入れているところ。人によってはこちらの作業の方が口金を作るよりも難しいかも。緩かったら中子が浮いてしまってガタついてしまう場合が。

 口金が嵌るところは少し太めに削っておき、鉈と口金を同時に差し込んで行きながら太さを確認してから削る。そして、大体合ってきつめになったところを確認して、最後は鉈の本体と口金を棒にたたき込みながらピッタリと合わせる。これが緩めだと使って暫くすると、衝撃で直ぐにガタが来てしまう。柄の棒の方は水に浸けて柔らかくしておいてからでも良いかも知れない。

 

 打ち込んでキチッと決まったら目釘の位置を決めてドリルで目釘が打ち込めば通る孔を開ける。
 ドリルの刃先の太さに合わせて細い鉄の棒を用意する。釘を太さに合わせて用意しても良い。

 目釘は左右2mm程度飛び出す位の長さにして打ち込み、先ず片側の頭を潰す。それを打ち込んで今度は逆側を打って潰す。その時に出過ぎていればサンダーで削ればよい。また最後に打つ方は軽く潰して柄に固定出来る程度に済ませておく。そうすれば今度不具合が発生した時に外す場合、同じ位の太さの棒を当てて、それをハンマーで打って叩き出せるからだ。この目釘の処理で折角のお道具が汚く見えるから格好良く形を整えて打ちたい。大体そんなところかな。簡単でしょ。

 あと包丁の修理。包丁の不具合は大抵中子が水分で腐ってガタが出てくることだが、此は早期に手当てすれば復旧が可能だ。柄をハンマーなどで割ってしまって刃だけにしてみて、中子がまだ長さを保っていれば新しい柄を買ってきて差し込めば使える。先ずは中子の錆を落とし良く磨き、錆びて細ってしまった部分は切り落としてしまおう。
 それから中子を焼いて赤め(刃の方まで熱が入らない様に水に浸した雑巾で刳るんでも良い)、峯側をプライヤーでしっかり銜えて、中子を包丁用の柄に差し込む。すると柄の中の孔を焼きながら奥へ入っていくので銜えたプライヤーで更に押し込む。または柄が傷つかない様に敷いた布の上で軽くたたき込んでも良い。場合によっては手に火傷をしないように柄を持って、柄のお尻を同様に硬いものの上で打ち付けても良い。最後は柄の長さを自分の好みで切って合わせれば出来上がりだ。

 以上で簡単に小さいものは火造りできる。が、長いものは炉となる七輪の中には入らない。もし、少し本格的に鍛造を行うのだと下の写真の様に耐火レンガで炉を作ると良い。

 ブロア2台で風を送っている。ブロアからの風は調整が効かないと使い物にならないので、弁で流量を調整するか、または電圧を変えられる様にしてモータの回転数を変えるかだ。
 小山師匠が打つ。こんなハチノスがあればちょっとした事は出来る。この時は左の露木鍛冶屋の親父さんが引っ越しをして行ってしまうので、個人宅に臨時の火床を作って火造りをやって遊んだ。`99年正月

 こういった簡単な事は、ちょっと昔は自分のところでやっていた人が結構大勢居る様だ。我々も倣って自分でメンテナンスできる様になろう。以上

`04/10/14記 


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