第9章 物欲のみで霊的なものに関心を示さなかったスピリット
第1節 ●倫理に無感覚だった人間が陥り易い例
憑依霊の中には、死んでいることを自覚しないまま人間を操り、その影響力を楽しんでいるスピリットも少なくない。その種のスピリットは地上時代にキリスト教に反発して、倫理とか道徳といったものに無感覚になっている場合が多い。

ある日の招霊会で、そのタイプのスピリットがG氏から除霊された。G氏は、子供の頃からよく癇癪を起こすことがあり、その原因になっているスピリットがいよいよ『表面に浮き出てくる』ようになり始めた頃の数週間はイライラが強くなり、特に車を運転している時が酷かった。また、他人を避けようとする態度が顕著に見られた。

ついに除霊されてしまうと、G氏の性格が一変して正常に戻った。除霊後しばらく霊団側に拘束されていたスピリットが霊媒に乗り移らされた日の招霊会には、G氏夫妻も出席していた。

1922年9月21日  スピリット=フレッド・ホープト 患者=G氏

乗り移らされると、椅子の中で激しく暴れて逃げ出そうとした。そこでメンバー達の協力を得て押さえ込み、私が両手を握ると激しく抵抗した。

博士「どなたですか。おとなしくしなさい。暴れても無駄ですよ。どなたでしょうか」

スピリット「誰だっていい、余計なお世話だ! こんなところでお前なんかの相手をしたくない。来るんじゃなかった。もう二度と来んぞ! 罠にはかからんからな」

博士「ここへは、どなたと来られましたか」
スピリット「誰と来ようと、大きなお世話だ」

博士「死んでどのくらいになりますか」

スピリット「死んでなんかいない。俺は何を聞かれても答えるつもりはないから、そのつもりでいろ! (G夫人に向かって)お前はこの俺を構ってくれなくなったな?」(G氏に憑依していた時は、奥さんがG氏の身の回りの世話をするのを、自分の世話をしてくれてると思い込んでいた)

博士「私が、あなたの世話をしなくなった?」

スピリット「お前のことじゃない! お前とは後でキチンと片をつけてやるからな。俺の頭と背中に酷い稲妻を浴びせやがって! 」

博士「あれは電気ですよ。よく効いたみたいですね」
スピリット「ここへは二度と来んからな」

博士「死んで、どのくらいになりますか」

スピリット「死んで!? 死んでなんかいるもんか。ここへ来させようとしても、二度とその手には乗らんからな。今回は上手くいったつもりだろうが、仕返しはちゃんとしてやるからな! 二度と罠にははまらんぞ! お前にはムカムカしてるんだ!」

博士「何に腹を立ててるんですか」
スピリット「世の中さ。人間みんなさ」

博士「シャクにさわることがあるのでしたら、おっしゃってみてください。取り除くお手伝いをしますよ」

スピリット「お前は、お前の思うようにすればいい。俺は、俺の好きなようにする。これで用事は終わった。さ、とっとと消えてくれ! 俺を自由に操れるとでも思ってるのだろうが、あとで後悔するぞ。一切口をきくつもりはないから、何を聞いても無駄だ」

博士「どこのどなたであるかを、ぜひ知りたいのですがね」

スピリット「俺には関係ない。俺を上手く捕まえたつもりだろうが、後で後悔するなよ」

博士「お名前を教えて頂けないでしょうかねえ」

スピリット「お前なんかと知り合いになりたくないし、お前もこの俺と知り合いになる必要はない。俺は一人でいたいのだ。周りに誰もいて欲しくないのだ。一人になりたいのだ。自分と仲良くしてるのが、一番さ」

博士「どんな体験をなさったのですか」
スピリット「これ以上、お前とは話さん」

博士「一体、なぜこんなところにいるのでしょうね?」
スピリット「お前が、あの変な稲妻で来させたんじゃないか」

博士「心にひっかかってることを吐き出してしまえば、楽になりますよ。ところで、その指輪はどこで手に入れられました?」

スピリット「お前の知ったこっちゃない。どこで手に入れようと勝手だ」

博士「いつもそんなにへそ曲がりだったのですか」
スピリット「その手を離してくれ! 行くんだ」

博士「どちらへ?」

スピリット「どこへ行こうと勝手だ。お前がどこへ行こうと、俺には関係ないのと同じだ」

博士「でも、あなたには行くところがないのでしょう?」

スピリット「(怒って)俺のことを浮浪者扱いにする気か! 宿賃くらいの金はいつでも持ってたさ。行きたいところなら、どこへでも行けるんだ」

博士「なかなかの紳士でいらしたんですね?」

スピリット「紳士と付き合ってる時は、俺も紳士さ。これ以上俺に話しかけても無駄だよ。あんな光を浴びせやがった奴とは付き合うつもりはない」

博士「人生に悲観しましたか」
スピリット「違う! むかっ腹が立ってるだけだ! 」

博士「名前を教えてください」
スピリット「お前には関係ない。その手を離してくれれば行かせてもらう」

博士「それからどうなさるのです?」
スピリット「余計なお世話だ」

博士「死んでどのくらいになるのか、教えてくれませんか」
スピリット「死んでなんかいない。ずっと死んでない」

博士「今年が1922年だと言ったら信じますか」

スピリット「お前とは一切関わりを持たんと言ってるだろう! こんなところに用はない。あんなところ(牢)には二度と行かんぞ」

博士「私達が、お招きしたわけではありませんよ」
スピリット「俺を牢にぶち込んだじゃないか」

博士「一体、なぜ牢なんかに入ったのでしょうね? 誰が入れたのですか」
スピリット「お前が、昨日、入れたじゃないか」

博士「そうでしたか?」
スピリット「気が狂うまでつきまとってやるからな」

博士「そういうことには慣れてますよ」

スピリット「俺は俺、お前はお前、ここできっぱり別れようじゃないか。お前にはこれ以上用はない。お前はお前の道を行き、俺は俺の道を行けばいい」

博士「でも、我々があなたの思う通りにさせなかったら、どうします? 今のあなたの置かれている身の上をよく理解しないといけません。あなたはスピリットになっているのです。肉体はないのですよ」

スピリット「肉体を何度失っても平気さ。こうして肉体があった時と同じように、立派に生きてるよ。何を心配することがあるというのだ」

博士「今、誰の身体で喋ってると思ってるのですか」

スピリット「俺には身体がいくつもあるんだよ。ある時は女になり、ある時は男になったりして、あっちこっちを渡り歩いているから、誰にも捕まらないよ」

博士「でも、この度ばかりは、誰かに捕まえられたじゃないですか。他人の生活を邪魔するのは、もう止めないといけません」

スピリット「俺は、ずっと自分のことしか構ってないつもりだ」

博士「牢に入れられたとおっしゃいませんでしたか」
スピリット「そう長い期間じゃなかったよ」

博士「いつまでも態度を変えないと、また暗い牢の中へ入れられますよ」

スピリット「生意気言うと後悔するぞ! 俺はこれまで何度も動きの取れない状態にされたが、いつもちゃんと脱け出てきたよ」

博士「フォード車を持ったことがありますか」
スピリット「いや、ない。それがどうした?」

博士「面白い話があるんです。フォード車を持っていた男が死んだのですが、最後に述べた頼みが、その車を自分と一緒に墓に埋めてくれということだったのです」

スピリット「何の為に?」

博士「そのフォード車が何度も命を救ってくれたからというのです」
スピリット「そして、埋めてやったのか」

博士「そうね、多分・・・」
スピリット「はっはぁ、ばかな! 死んでしまったら、車に用はないじゃないか」

博士「本当の死というものがないことが、まだ分からないのですか。死んでしまう人はいないのです」

スピリット「俺は、死んだけど死んでないというのか」

博士「肉体は死んだけど、あなたという人格は死んでないということです」

スピリット「でも、俺は好きなものになれるんだ。男になったり、女になったり・・・」

博士「それは違います。男に憑依したり女に憑依したりしてるにすぎません」

スピリット「そんなことはないよ。その気になれば、家族全員に指図して、思い切り楽しい思いをすることが出来る。行きたいところへも行ける。俺が俺のボスなんだ。腹が空いても、食べたり食べなかったり・・・。食欲を出すには腹を空かせるのが一番だ。すると何でも食べられるし、おいしく食べられる。腹が空いてないと、何を食べても美味くない。言っとくが、俺はスピリットじゃない」

博士「今、あなたは私の妻の身体を使って喋っているのです」
スピリット「こんなことをしていては時間の無駄だ。行かせてもらう」

博士「あなたと親しく語り合いたいのですがね」
スピリット「お前とは、何の関わりも持つ気はないね」

博士「さ、色々と語り合いましょうよ。人生というのは素晴らしいものです。ものを考え行動する。それでいて、自分のことは何も分かっていないのです」

スピリット「分かっていない? それはお気の毒だね」

博士「『音』というものが、いかに不思議なものか、考えてみたことがありますか」

スピリット「この世に何一つ不思議なものはないよ。さ、行かせてくれ。これ以上引き止めないでくれ」

博士「いいえ、聞かれたことに真面目に答えるまで放しません」

スピリット「俺は癇癪持ちなんだ。こうして押さえ込まれてなかったら、お前を殴り倒すところだぞ! 」

博士「さ、ジョニー、私の言うことを聞きなさい」

スピリット「ジョニーだと! 俺はそんな名前じゃない。ほんとの名前は言わんぞ」

博士「殺しでもしたんですか。それでそんなにムカムカしているのでしょう?」

スピリット「違う。俺は真面目な人間だ。俺の思う通りにしたいだけだ」

博士「どんな教会に通ってましたか」
スピリット「お前の知ったこっちゃないよ」

博士「牧師をなさってたのでしょうか。それとも教会の役員でもなさってたのでしょうか」

スピリット「いや、違う。何を聞かれても答えるつもりはない。少し黙ってろ」(と言って口をへの字に結んだまま、じっとしている)

博士「なぜ、そんなに黙りこくってるのですか。今どんな悪いことを考えてるんでしょうかね?」

スピリット「失礼なことを聞くんじゃない! 俺が本気で腹を立てたら、この家なんかいっぺんにぶっ壊しちゃうぞ! 」

博士「言うだけなら、どんなにでかいことを言っても、元手はいりませんからね」

スピリット「どうせ言うんなら、でかいことを言った方がいいじゃないか」

博士「どこのどなたでしょうか。そして死んでどれくらいになるのか、教えてくださいよ」

スピリット「(足を踏み鳴らし、もがきながら)手を放してくれ! 俺が死んでないことを思い知らせてやる! 何度言ったら分かるんだ」

博士「でも、あなたが喋っているその身体は、私の妻のものなんですから」

スピリット「ちょっとその手を放せよ。お前は、少し痛い目に遭わせないとダメみたいだな」

博士「えらく凄みますねえ。でも、私には効き目はありませんよ。あなたは私の妻の身体で喋ってるんですから」

スピリット「もういい! お前の言うことなんか聞く気はない。お前には用はない。あの電気さえなかったら、追い出されて牢へぶち込まれることもなかったんだが・・・。自由になったら、思い知らせてやるからな。今はここで別れるとしよう。お前はお前の思う通りにすればいい。俺は俺の好きなようにする。それが一番いいのだ」

博士「でも、友達を解放してあげたいのです」

スピリット「友達だと? あんな電気をかけておいて、この俺を友達扱いにする気か」

博士「あれは、私からの友情のしるしですよ。あなたにとっては、あれが何よりの賜り物でした」

スピリット「(嫌みたっぷりに)そう思いたけりゃ、勝手に思うがいいさ!」

博士「あなたが私の妻の身体で喋っていることが本当かどうか、よく見つめてみてくださいよ」

スピリット「お前の奥さんとは関わりたくないね。女は女の好きなようにすればいい。俺は俺の好きなようにやる。お前の奥さんであろうが、どこのどの女だろうが、ご免こうむるね。奥さんは旦那が大事にしなよ」

博士「その私の妻の身体で、今、あなたは喋っているのです。あなたはあまりに無知だから、今の自分の置かれている状態が理解できてないのです」

スピリット「俺に劣らず、お前も相当に無知だよ」

博士「あなたは、今はもうスピリットなのです。愚かなスピリットになってしまって、そのことに気づかないのです」

スピリット「人を愚か者呼ばわりするとは、紳士の風上にも置けん奴だ」

博士「あなたは実に愚かで、わがままなスピリットになってしまったのです。少しでも知恵があれば、私の言うことを聞くでしょうよ」

スピリット「何とでも言えよ。この手さえ放してくれたらいいんだ!」

博士「私は、あなたの手なんか握ってませんよ。妻の手を握ってるんです」

スピリット「おい、おい、俺が男だということが分からんのか。奥さんと混同しないでくれよ。奥さんを連れてってくれ。俺はいらんよ」

博士「素直に見つめれば、ご自分がどこか変だということが分かりそうなものなのです。その手をごらんなさい」

スピリット「(見ようとしないで)俺の手に決まってるじゃないか。お前は少しヤキを入れてやらんといかんな。なぜか前より体力がついてきたから、こたえるぞ。口も楽にきけるようになった。以前はいつも誰かが邪魔をして思うように話せなかったもんな。今やっと一人になり切って、思うように話せるし、喧嘩も出来そうだ」

博士「私の妻の身体だから、楽に話せるのです」
スピリット「私の妻、私の妻と、いい加減にしろ! ぶん殴るぞ!」

博士「妻は霊媒なのです」

スピリット「だからどうだと言うんだ? お前の女房が千人の霊媒になっても、俺はなんとも思わんよ」

博士「高級霊の方達が、あなたを救う為にここへ連れてこられたのです。どうしても聞き分けがないとなれば、土牢に閉じ込められますよ」

スピリット「好きなようにするがいいさ」

博士「そういう態度をとって、何の得があるというのです? その方達は、あなたに心を入れ替えさせようとしておられるのです」

スピリット「そのことなら、一度ゴロツキみたいな牧師の世話になったよ。金を全部巻き上げといて、教会から蹴り出しやがった」

博士「考えようによっては、それで幸いだったとも言えるんですよ」

スピリット「なんだと! 蹴り出されて良かっただと?人生についてほんの二、三の質問をしただけなのに、牧師は『この罪人が! とっとと出て行ってくれ!』なんて言いやがって。欲しかったのは金さ」

博士「でも、それで終わったんじゃ、人生問題の解決にはなりませんでしたね?」

スピリット「人生問題? 人生は人生、それだけのことさ。この世に生まれて、しばらく滞在して、そして行っちまう」

博士「その教会はどこにありましたか。何という派でしたか」

スピリット「秘密は教えん。俺自身のことは一切喋るつもりはない。俺の名前も、牧師の名前も」

博士「ここにいる人達は、みんな、あなたの味方だということが分からないのですね。あなたが知らずにいる大切なことを教えてあげたいのです。何度も言うように、あなたはもう肉体を失ってスピリットとなっているのです。そのことがあなたには理解できないのです」

スピリット「肉体を失ったということは、いくつも身体があるということだ」

G氏「二つ以上の身体をどうやって持てるのですか」
スピリット「それは知らん。が、他の身体を使って楽しかったよ」

G氏「『他の身体』をどうやって見つけたのですか」
スピリット「それは知らん。どうでもいいことさ」

G氏「ある時は男になり、ある時は女になるということは、どういうことでしょうね?」

スピリット「あまり深く考えたことはないね。自分でも分からん」

G氏「あなたをここへ連れてきたのは誰ですか」
スピリット「あいつらさ」

G氏「誰のことでしょう?」

スピリット「知らんね。俺は来るつもりはなかったのに、来させられたのさ。今度だけだぞと言って、来てやったんだ」

G氏「以前にも来たことがあるのですか」
スピリット「時々な」

G氏「誰が連れてきたのですか」
スピリット「知らんと言ってるだろう」

G氏「よくご覧になってみてください。あなたを連れてきた人の姿が見えませんか」

スピリット「知らんのだから、どうでもいいことさ」

G氏「私が前に一度、あなたに話しかけたことがあるのを覚えていますか」
スピリット「あるかもしれんな」

博士「今の方(G氏)が誰だか気づきませんか。以前は友達だったはずですよ」
G氏「以前会ったことのある人がここにいませんか」

スピリット「知らんね。あの電気を頭に受けて、ひどく痛かったぞ。誰でもいいからぶん殴ってやりたい気分だ」

G夫人「ここへはどうやって来られましたか」

スピリット「そんなこと、余計なお世話だ。俺は癇癪持ちなんだ。稲妻みたいにカッときて、雷のように落ちるんだ」

G夫人「人の身体の中に入ってる時でも、癇癪を起こすのですか」

スピリット「そうさ。俺は癇癪持ちなんだ。どうしてカッとなるかは自分でも分からんのだが、とにかく何もかも腹が立ってしょうがないんだ。それで、じっとしておれずに、あっちこっちと歩き回らずにいられんのだ」

G夫人「ある場所にじっとしていたくてもダメなんですね?」

スピリット「ダメだな。歩き回ってないと気が済まんのだ。腹が立ってしょうがないんだ」

G夫人「自分で自分がコントロールできないのですね」

スピリット「何だか知らんが、とにかく腹が立って、行きたくなくても、あちこち歩き回ってないと気が済まんのさ」

G夫人「その腹が立つ性分を直したいとは思いませんか。(博士を指差しながら)この方はお医者さんです。あなたの症状についてよくご存知ですよ」

博士「言うことを聞いてくださるのであれば、力になりますよ」

スピリット「些細なことでムシャクシャしてきて、ついカッとなるんです。なぜだか、自分でも分からんのです」(少し大人しくなる)

博士「下らないことで支離滅裂になるのが抑え切れないのですね」

スピリット「物事が自分の思い通りに運ばなくて、それがまず不愉快なのです。時々自分が自分でなくて、半分が他人になったような気がして、ムシャクシャしてくるのです」

博士「それは、あなたが生身の人間に取り憑いて、その人の身体を半分使っているからです。あなたの肉体は死んだのですが、あなた自身は死んでいないのです。肉体と自分とは別のものなのです。その肉体の方を失っているのですが、霊的身体が肉体のように思えて、それで死んだことに気がつかないまま人間界を歩き回っているうちに、霊的感受性の強い人に乗り移ってしまうのです。あなたは勝手にその人の身体を使おうとするのですが、その人にはその人の意志があります」

スピリット「あの機械にも腹が立ちます」

博士「機械類はお嫌いですか」

スピリット「嫌いだね。ぶっ壊してやりたくなる。あれにもムシャクシャする」

博士「自動車のことですね?」

スピリット「はて、それは何ですか。馬がついていなくても走る、あの機械のことですか」

博士「自動車というものをご覧になったことがないのですね?」

スピリット「ブルブル、ブルーンという音を出して進む機械のことですか」(腕をぐるぐる回す)

博士「まだ自動車のない時代の方ですね? 今の大統領は誰ですか」
スピリット「知りません。何年も新聞を読んでないもんで・・・」

博士「マッキンレー大統領でしたか」
スピリット「いや、クリーブランドです」

博士「シカゴ国際見本市のことを覚えていますか」
スピリット「知りません」

博士「お住まいはどこでしたか」
スピリット「カンザスです」

G氏「カンザスのHですかNですか」(G氏は若い頃、カンザスに住んでいた)

博士「この方(G氏)といろいろ話してごらんなさい」
G氏「G――という家族のことをご存知ですか」
スピリット「ああ、きれいな豪邸に住んでいました」

G氏「じゃあ、Nに住んでたわけですね?」

スピリット「いや、そこより少し郊外です。私はあちこちでヘルパーをしていました。一つの家に長くはいませんでした」

G氏「農家でも働きましたか」

スピリット「ええ、馬がいれば・・・。あのチョロチョロするやつ(車)は乗りたくないね」

G氏「機械の方が馬よりも遠くまで行けますよ」

スピリット「私は、空気に触れるのが好きでね。あんな機械じゃ窓が開けていられないじゃないですか――閉じ込められちゃって・・・」

G氏「病気をしたことがありますか。それとも事故にでも遭いましたか」

スピリット「よく分からんのですが、頭が変になったみたいで・・・。何が起きたのか、ほんとに知らんのです。よく癇癪を起こすとこをみると、何かあったんでしょう」

G氏「Gさんの家のお子さんで誰か覚えている人がいますか」
スピリット「噂は耳にしていました」

G氏「当時あなたはおいくつでしたか。R君と同じでしたか」
スピリット「あのガッチリした体格の男のことですね?」

G氏「年齢は一緒でしたか」

スピリット「いや、いや、彼の方がもう一人(G氏)よりも元気で、よく遊んでいました。もう一人は勉強家でした。一緒にいても、すっといなくなりました。いつも本を持ち歩いていたから、牧師か弁護士かなんかになるつもりなんだろうと思ってました」(その通りだった)

G氏「歌を歌ったことはありますか」
スピリット「誰がですか」

G氏「その『もう一人』の男です」

スピリット「彼のことはよく知りません。私はただのヘルパーでしたから・・・」

G氏「その二人の少年の家で働いていたわけですか」

スピリット「いえ、南西地方の農場で仕事をしてました。農場は家から遠く離れたところにありました。丘をのぼって、さらに下ったところです」

G氏「W市の方角ですね?」
スピリット「そうです」

G氏「そこで事故に遭ったのでしょう?」

スピリット「覚えていません。頭部に何かが当たったことは覚えています。脱穀機に大勢の人が群がって仕事をしていました――『脱穀仲間』ってヤツですよ」

G氏「そこで何か、大怪我をされたに違いありません」
スピリット「脱穀の仕事中にですか。頭部に何か当たったのでしょうか」

G氏「何かで負傷して、それがもとで亡くなられたのですよ」

博士「多分あなたは、眠ったようなつもりでおられたのでしょう。その時に肉体を失ったのです。普通はそれを『死んだ』というのですが、あなたという個性は死んでいないのです」

G氏「トムを知ってますか(G氏に憑依していたもう一人のスピリット)。私の親友です」

スピリット「ええ、ここに来てますよ。あなたを助けにきたと言ってます。一体、どういう具合に助けようというのですかね?」

G氏「トムに聞いてごらんなさいよ」

博士「なぜこの方(G氏)を助けようというのか、なぜ助けが必要なのか、尋ねてみてください」

スピリット「『お前、出て行くんだ!』なんて私に言ってます」

博士「わけを聞いてごらんなさい。真相が分かりますよ」

スピリット「(トムに向かって)なんでそんなことを言うんだ。正直にわけを言ってみろよ! なんだと? この俺が? 冗談じゃない! デタラメを言うな! (博士に向かって興奮気味に)トムのやつ、この私があの人(G氏)に何年もたかってたなんて言ってます! 」

博士「ピンとこないかもしれませんが、実はそのとおりなんですよ」

G氏「トムもそうだったんです。彼も、私にずいぶん迷惑をかけてくれましたが、今は友達です。あなたも同じです。これからは仲良くしましょうよ」

スピリット「なぜ、あんなにムシャクシャしたのでしょうね?」

博士「頭に傷を負った際に、精神的な錯乱が生じたのでしょう」

スピリット「トムのやつ、この俺を取り除くのを手伝ったなんて言ってやがる。覚えてろ! なんでこの私を取り除きたがるのでしょうね?」

G氏「そうすることで、あなたも自由になれるです。彼は、我々の仲間なのです。一緒に仕事をしているのです。あなたも自分の身体をもつことになります。そうすれば『取り除かれる』心配もいりません」

スピリット「あなた達のおっしゃっていることがさっぱり分かりませんが・・・」

博士「説明しましょう。私の言うことがどんなにバカバカしく思えても、反抗的になってはいけませんよ。ありのままの真実を申し上げるのですからね・・・」

スピリット「いい加減なことを言ったら承知しませんよ!」

博士「あなたは、何年か前に肉体を失ったのです。今年は1922年ですが、いかがですか」

スピリット「1892年でしょう」

博士「それはクリーブランドが大統領に返り咲いた年です。その年から今年まで、あなたはずっと『死者』になっておられるのです。ただし、本当の死というものはないのです。精神と肉体とはまったく別物で、死ぬのは肉体の方です。精神とか心と言われているものは死なないのです。あなたは今、あなた自身の身体で喋っているのではないのですよ」

スピリット「私の身体ではない?」

博士「違うのです。あなたは私の妻の身体で喋っておられるのです。妻の身体はスピリットが自由に使って喋れるような構造になっているのです。それで、こうしてあなたのようなスピリットと話を交わして、色々と調べることが出来るわけです。スピリットの中には事情が分からないまま人間に取り憑いて、その人の精神を混乱させている者がいるのです。あなたの場合も、この方(G氏)に取り憑いていた為に、あなたのムシャクシャがそのままこの方をクシャクシャさせているのです」

スピリット「ほんとですか」
G氏「あの機械(車)にはよく乗ったのでしょう?」
スピリット「乗りました。が、嫌いです、あれは」

博士「あの機械のことを教えてあげましょう。1896年に自動車というものが発明されたのです。馬無しで走るのです。それ自身がパワーを出すのです。今では何百万台もあります」

スピリット「馬はどうなるのですか」

博士「今は使いません。自動車というのは実に便利なもので、百マイルを一時間で走れるのです。もっとも、平均すると一時間に二十マイルないし二十五マイルですね」

スピリット「そんなに速いものには乗りたくないのですね」

博士「一日中突っ走れば二百マイルから三百マイルは行けます。そういう機械が、あなたが肉体を失った後から発明されているのです。それに、空を飛ぶ機械まで発明されています。電線なしで通信することも出来るようになっています。海を越えて話が出来るのです。そういった素晴らしいものが、あなたが他界されたあと発明されているのです。今、あなたは、カリフォルニアにいらっしゃることをご存知ですか」

スピリット「意識が薄れていくような感じがします」

博士「お名前をおっしゃるまでは、しっかりしてくださいよ」

スピリット「名前は知りません。頭が混乱していて・・・。少しの間、そっとしとしてください。思い出しますから。いろんな名前がごっちゃになって、自分の名前が分からなくなりました」

博士「見回してごらんなさい。お母さんがお見えになってるかもしれませんよ」

スピリット「母が私を呼んでる声を一度聞いたことがあります。そう、私の名前はチャーリーだったことがあるし、ヘンリーだったことがあるし、男だったり女だったり、どれを言えばいいのか・・・。本当の名前を呼ばれてからずいぶんになるので、忘れたみたいです」

博士「トムに聞いてごらんなさい」
スピリット「フレッドだと言ってます。そうだ、フレッドだ!」

博士「姓も聞いてごらんなさい」

スピリット「自分の名前を忘れるとはね・・・。余程のことがあったのでしょうね」

博士「お父さんのことを人は何と呼んでましたか。仕事は何をなさってましたか」

G氏「農業をなさってたのじゃないですか」

スピリット「農業ではありませんが、いくらか土地を所有していました。父はドイツ人でした」

G氏「メノー派教徒だったのでしょうか」

スピリット「いえ。ドイツから移住してきました。それにしても、自分の名前が思い出せないとは、私もどうかしてますね」

G氏「トムに尋ねてみては?」

スピリット「場所と出来事を、あるところまでは思い出せるのですが、そこから先がダメなんです。フレッドという名は覚えてます。みんなそう呼んでいたので・・・」

博士「もういいでしょう。そのうち思い出しますよ。あなたはスピリットになっておられるのです。ここを出たら、高級霊の方達がお世話をしてくださいますよ」

スピリット「トムが、『安らぎの家』へ案内してくれるそうです。心配事が多く、疲れ果てていたせいで、何もかも腹が立って・・・。もうこれからは癇癪は起こしません。カッとなった後が、ひどくこたえました。自分の心が抑えられなくてムシャクシャしていました。酷いことを口走ってしまって申し訳なく思っております。意地を張って口答えばかりしましたが、内心では分かっていたのです。

トムが早く来いと言ってます。では、まいります。(G氏に向かって)トムが、あなたに迷惑をかけたことのお詫びを言わなくては、と言っております」

G氏「過ぎたことは過ぎたことです。お役に立てればいいのです」
スピリット「不愉快に思ってらっしゃるのでは?」
G氏「とんでもない」

スピリット「気が抜けたような感じです。どうしたらいいのでしょう? これではトムと一緒に行けそうにありません」

博士「それは、霊的な意識が芽生え始めたスピリットがよく体験することです。一時的な感覚です。霊媒のコントロールを失いつつある証拠です。トムとマーシーバンドの方達のことを心に念じてください」

スピリット「頭が少し変になってきました。気でも狂ったのでしょうか。医者を呼んでください。死んでいくような感じです」

博士「霊媒の身体から離れれば良くなります」

スピリット「医者を呼んでください。血が全部喉のところに上がってきて、息が出来ません! 喉が詰まったみたいです。このまま寝入ってしまいそうです。寝ると良くなると医者はよく言いますが、このまま死んでしまうんじゃないでしょうね?」

博士「あなたはもうとっくにスピリットになっていることを自覚してください。その身体は他人のものです」

スピリット「思い出しました――姓名はフレッド・ホープトでした。トムが、Gさんにたびたび腹を立てさせたことを許して頂くようにと言ってます」

G氏「許しますとも。こちらこそトムに感謝していると伝えてください」
スピリット「それでは失礼します」

このあと指導霊のシルバー・スターが出てG氏にこう語った。

「ようやく彼をものにしました。これから病院へ連れてまいります。彼にはずいぶん手こずりました。あなたの磁気オーラに完全に入り込んでしまって、そこから引き離すのは、まるで肉を引きちぎるみたいでした。

あなたの子供時代からひっついていて、自分の思うようにならないと、癇癪を起こしていました。こうして彼を解放したことで、あなたは別人に生まれ変わったみたいに感じられるでしょう。もう、イライラすることもありません。

今、彼をお引き受けしましたので、もう大丈夫です。霊的に非常に衰弱していて、看病が必要です。一人ではほとんど動けない状態です。これまではあなたにおんぶされて生きてきたようなものですから、そのあなたから引き離された今、まったく力がありません。

しかし、私達が面倒を見ますから、どうぞご安心ください」

第2節 ●妻に自殺を促す『唯物的現実主義者』
霊的なものを否定し、無感動・無関心の性格のまま地上生活を終えた人間が、死後、絶望と暗黒と当惑に苦しめられ、無意識のうちに人間に憑依してしまっているケースがよくある。

我々夫婦と顔見知りのF・W夫人は、ニューヨーク在住で、幸せな、ごく平凡な結婚生活を送っていた。奥さんの方はもともと霊的なものに理解があったが、ご主人の方は徹底した唯物的現実主義者で、『なるようにしかならん』といった運命論者的な人生観しかもっていなかった。ただ、夫婦仲はいたって良かった。それが、皮肉にも、悲劇の誘因となるのだが・・・。

ご主人は、宗教というものには一切関心がなく、死はすべての終わりであると信じ込んでいた。そして、奥さんに対して、もしお前が先に死んだら、俺はあとを追って自殺すると言い、もし俺が先に死んだら、お前も自殺して死んでくれ、などと言っていた。が、奥さんは取り合わなかった。

そのご主人が、ちょっとした病気がもとで、あっさり死んでしまった。が、死んだ後も奥さんにつきまとい、夜になると起こして、早く死ね! と脅すので、奥さんは寝られなくなってしまった。

自分の置かれている事情が分からないながらも、彼は何か変わったことが起きたらしいことは感じていた。奥さんと自分とを隔てている何ものかを取り除こうと必死だった。そして、しつこく奥さんにこう迫るのだった。

「自殺するんだ! 俺のところへ来い! 俺はお前がいないとダメなんだ。どうしてもお前が欲しいから、早く死んでくれ! 」

この『自殺しろ』の叫び声が昼も夜も耳から離れないので、F・W夫人は身の危険を感じ、自分が発作的に何をしでかすか分からないと案じて、ついにシカゴの我々のもとに助けを求めてきたのだった。

事情を聞いているうちに、そのご主人が私の妻に乗り移った(霊団が乗り移らせた)。そして、すぐ隣に奥さんがいるのに気づくと、いきなり左手を握って結婚指輪にキスをしてから、俺が何を話しかけても知らん顔をしてるが、俺のことを怒ってるのかと尋ねた。

奥さんが答える余裕もなく、彼は奥さんを抱きしめて、激しくキスをした。その力の強さに耐え切れなくなって、奥さんが金切り声を上げた。

二人を引き離してから、私はご主人に、その身体は自分のものではなく他人のもので、今はもうスピリットの世界の人間になっていることを説明すると、意外に早く理解がいって、そうとは知らずに妻を苦しめたことを詫び、これからスピリットの世界のことを学んで、今度は霊界から妻を援助したいと述べた。ニューヨークに戻った奥さんに、その後は、何の異常も起きなくなった。

そしてF・W氏はその後、我々の背後霊団であるマーシーバンドのメンバーとなって活躍している。

その後、何度か出現して当時の実情を語っているが、次に紹介するのはその一つである。

1920年11月22日  スピリット=F・W氏

「またまた参りました。この度は、私が決して死んでしまったのではないことをお教えしたくて参りました。そのためには、こうしてウィックランド夫人の身体をお借りしなくてはなりませんが、それ以外の時でも私は、いつもここへ来てお手伝いをしているのです。

まずは、私を救ってくださったお礼を申し述べたいと思います。あのままでしたら、妻と共に大変なことになっていたことでしょう――それも私の愚かさから・・・。スピリットの世界の素晴らしさについての話も、耳を傾ける気になりませんでした。

両親は、厳格なクリスチャンで、その信仰は強烈でしたから、自分達と同じように信じない人は、誰であろうと非難しておりました。自分達が考えていることだけが正しくて、他はすべて間違いであると、骨の髄まで思い込んでおりました。

そういう雰囲気の中でいたたまれなくなった私は、家を飛び出しました。まだ少年でした。なぜそんな無茶を、と言われても、両親の強烈なキリスト教信仰には、どうしても馴染めなかったのです。両親の説くことが信じられず、そういう私を、両親は『罪人』であると決めつけるのです。自分では罪人なんかであるはずがないと思っていましたから、信じられないのなら家を出るしかないと思って、飛び出したのです。

そのことを、今でも少しも後悔しておりません。自分の家以外の世界を知ることが出来ました。辛いこともありましたが、でも多くのことを学びました。教会が教えていること以外のことを学び、自分で生き抜いて行く方法を身につけました。教会に対しては、子供の頃からその内情について聞かされていたこともあって不愉快な感じを抱き、批判的でした。

すべての教会がそうだというのではありません。が、教義というものをあまり一方的に教え込まれると、人間は催眠にかれられたように、その教義のとりこになり、正しかろうが間違っていようが、自分達のすることはすべて正しいのだと思い込むようになります。その思い込んだ人にとっては『間違い』というものが存在しなくなり、たとえ間違ったことをしていても、それを正しいと考えてしまうのです。

世の風に当たっているうちに、ふと家が恋しくなって、両親と一緒に暮らすつもりで帰ってみました。が、そこは相も変わらずキリスト教一色に塗りつぶされた世界で、子としての義務を果たそうと頑張ってみましたが、ダメでした。このままではキリスト教に押しつぶされてしまうと思った私は、再び家を出ました。

再び一人の生活に戻って、また新しい体験を得ました。心を広くもって、人生の明るい側面、楽しい側面を求めるよう努力しました。そのうち好きな女性との出会いがあって、二人で家庭を持ちました。ようやく家庭らしい家庭をもった気持ちでした。生まれて初めて幸福感を味わったものでした。その幸せな生活は数年しか続きませんでしたが、今でも思い出すと楽しくなります。

私は、死後にも生命があるとは思っていませんでした。信仰というものは何一つ持っていませんでした。キリスト教でうんざりして、宗教的なものが嫌だったのです。死ねばそれでおしまい――その後には何もない、と考えていました。それも間違いでした。どっちに偏ってもいけません。中庸を守って、何でも勉強することが大切です。うっかりすると、踏み外してしまいがちな細い道――理性と直観によって、神の素晴らしい顕現を理解していくという道を歩むのが一番正しいのです。

私は急死によって、こちらへ来ました。死から覚めるのは、ちょうど睡眠から覚めるのに似ていて、すっかり目覚めてみると、妻が泣いておりました。とても悲しんでいるのですが、私にはなぜだか分かりません。自分が死んだことに気づかないのです。妻に声をかけて、一体どうしたのかと尋ねるのですが、知らん顔をしています。こんなに愛し合っているのに、何があったのだろうと不思議でなりません。妻への思いは募るばかりです。

妻の悲しみの情に、私が同情して抱きしめたりしているうちに、ふと、彼女の磁気オーラの中に入り込んで、そこから出られなくなってしまいました。が、私はそのことに気づきません。ただ、どこかに閉じ込められたみたいで、そこから脱出しようと、もがきました。彼女ももがき、それが異常な行動となって現れていました。

有り難いことに、マーシーバンドの配慮で、妻はこのサークルに案内されて、私も妻も、共に解放されました。もしもあのままだったら、二人とも惨めなことになっていたことでしょう。私が死後のことについて何の知識もなく、また知る気もなかったのが、そもそもの不幸のもとでした。

皆さんに申し上げます――死後の生命の存在を絶対に疑ってはなりません。いつかは、すべての人間が同じ道を通らねばならないのです。『大いなる彼岸』へ至る前に、真理を求め、そして見出しておきましょう。そうすれば、目を大きく見開いて歩むことができ、行き先についても確信をもつことが出来るのです。

もしもあの時、妻が博士の説得に理解を示さなかったら、おそらく私は彼女を自殺に追い込んでしまっていたことでしょう。そうしたら、今頃はどうなっていることやら・・・想像しただけで怖くなります。

私と同じような状態で霊界入りする人が大勢います。そういう人は、誰かの磁気オーラに引っかかって離れられなくなり、そのまま憑依状態となります。死後の世界についての基本的な知識があれば、そういう事態にはならずに済むのです。

皆さんには、心からお礼を申し上げたいと思います。今では、かつての私と同じような不幸なスピリットを救ってあげる仕事に携わっていて、とても幸せです。妻のことも、背後から導くことが出来ます。

どうか今後とも、ここにおいでの皆さまが、死後にも生命があるという事実の普及の為に努力してくださることを期待しております。地上で学ばないでいると、死後の世界へ来て学ばねばなりません。その時になって後悔することが実に多いのです。

お二人(患者と付き添い)はついに大きな真理を学ばれました。それをどこかに仕舞い込んでおいてはいけません。人に教えてあげないといけません。それが霊的に強化されるゆえんとなり、二度と憑依されることがなくなります。今、地上に憑依の風潮が蔓延しております。それに歯止めをかけるためにも、死後の世界についての真理の普及が必要です。F・Wでした。さようなら」