第1章 除霊による精神病治療のメカニズム
第1節 ●霊的要因による障害の危険性
霊的現象の研究は人類にとってきわめて重大な意義を秘めており、既に世間一般の日常生活において欠かすことのできない要素となっているにもかかわらず、各分野において霊的現象をあくまでも精神生理学の基盤の上で分析しようとしていることは明白である。

例えば、精神分析学者は、精神病の多くは何らかの心理的障害ないしはショック――無意識のうちに受けたものが残存している場合と意識的に受けたが既に忘れている場合のいずれか――に起因しているという説を立てている。

分析心理学の専門家は、心理測定法や知能テストによって精神的欠陥者の隔離と分類を可能にしつつある。また、神経学者や精神科医は、各種の神経症・精神異常及び精神障害の病理的要因を突き止めて、予防法と治療法を確立することに真剣に取り組んでいる。

こうした研究分野に携わる人は、神経症や精神異常の有力な要因の一つとして[霊魂説]を受け入れることを忌避するが、現実にはこの説こそ、ノイローゼ、神経過敏症及び精神的錯乱に陥りやすい人間に見られる不確定要素を明るみにする上で、重大な貢献をしているのである。

いわゆる[心霊研究]には二つの側面がある。すなわち[正常]と[異常]である。
[正常]な側面では、牧師と同じように「死後人間はどうなるか」という問題を医師の立場から取り扱う。むろん問題はこれ以外にも色々あるが、特に死後の問題は、病気であまり長生きできないと観念し、死後の状態について恐怖心さえ抱きながら生死の境界をさまよっている患者にとっては、大きな関心事である。そうした事態において、実際の知識に基づいて、いわゆる[死]というものは存在しないこと、それはより次元の高い世界における新しい活動とその機会とを提供してくれる界層への誕生であることを確信させてあげることは、医師としてこれ以上の崇高な役目はないと言ってよいのではなかろうか。

次に[異常]の側面では、肉体に宿って生活している間だけでなく、肉体を棄てて他界の存在となった後の精神の複雑な機能についても、医師に可能な限りの多くの知識が要請される。異常心理現象における研究は、正常心理現象の研究と同様に[霊(スピリット)]というものが実在することを指摘しているのみならず、そのスピリットこそ各種の神経症や精神病において大きな要因となっていることを、疑問の余地のないところまで証明している。

面白半分に心霊能力を試してみた者が引き起こす精神異常をよく知っているのは、誰よりもまず医師である。というのは、誰しもまず医師のところを訪れるからである。したがって、そうした不幸な犠牲者がその後いかなる扱いを受けることになるかは、診察した医師の判断一つにかかっていることになる。

そんな次第で、心霊学の諸相、特に軽率な心霊愛好家、なかでも神経症の素因のある者の危険性について幅広く知っておくことは、医師の特権であると同時に、緊急の義務であらねばならない。

そうした遊び半分の心霊実験から生じる恐ろしい結果を目の当たりにして、私は、その因(よ)ってきたる原因を確認するための一連の調査を行った。これも医師の領分に関わることだからである。

一見害は無さそうな自動書記とかウィージャ盤(日本のコックリさんのようなもの)による実験をしているうちに精神病院への収容が必要となった患者を見て、面白半分にやった心霊実験がもとで生じる精神障害や錯乱といった深刻な問題が、まず私の注意を引きつけた。

その最初のケースはB夫人で、自動書記を試みているうちに錯乱状態となり、人格が変わってしまった。普段は愛想が良く、信心深く、物欲がなく、あか抜けのした貴婦人だったのが、ある時から急に荒々しくて騒々しい性格となり、はしゃぎ回り、跳び回り、下品な言葉を使い、自分は女優だと言い張り、何時までに舞台へ行かないとクビになると言ったりした。ついには完全に責任能力を失ったとの診断で精神病院へ収容されてしまった。

もう一つのケースはC夫人で、同じく自動書記を試みているうちに、芸術家の貴婦人から一転して乱暴な性格の女性に変わってしまった。金切り声を上げながら両手でこめかみをさすり、「神よ救いたまえ! 神よ救いたまえ! 」と叫ぶかと思えば、道路へ飛び出してぬかるみにひざまずいて祈ったり、午後六時前に食事をしたら地獄に落ちる、と言って食事を拒否したりした。

同じく自動書記を面白半分にやっていたS夫人も精神がおかしくなり、やがて凶暴性も出てきて警察の手を煩わせるに至った。夜中に突然起きて、自分の経営する婦人帽子店のショーウィンドウの中で、ナポレオン気取りのポーズを取ったりした。自分はナポレオンだと思い込んでいたのである。その他にも無軌道な行為が多くなって、ついに精神病院へ収容されるに至った。

同じ原因で、W夫人も幻覚に取り憑かれるようになった。神がひっきりなしに自分に語りかけていて、過去の過ちを咎めているというのだった。そのうち神の求めにしたがって(と本人は思って)自殺を企て、それは未遂に終わったが精神病院へ収容された。

この他にも[無害]と思われているウィージャ盤で遊んでいるうちに起きた悲惨な症状に私は関心を持ち、その有力な手がかりを心霊現象に求めるようになっていった。

私は心霊仲間が集まって催す信頼のおけるホームサークル(霊との交わりを求める会を交霊会ないし心霊実験というが、10人前後で行う家庭交霊会と、何百人、何千人もの人を相手に行う公開交霊会とがある)に出席し、また私の家で催したこともあるが、そのうち私の妻に優れた霊媒的能力があることが分かり、複数のスピリットに代わるがわる支配されるようになった。

最初妻は、死者が自分の口を使って喋るということは[死者を安らかな眠りから覚ます]ことにならないかと心配したが、霊団側(後にマーシーバンドと名乗る[慈悲・哀れみをもった霊団という意味])は、死後についての人間の認識が嘆かわしいほど間違っており、その心配は無用であると言ってきた。

彼らが言うには、事実上[死]というものは存在せず、肉眼に映じる世界から映じない世界へ移るだけのことであって、高級霊は、死後に待ち受ける素晴らしい可能性について人間を啓発するための交霊の機会を待ち望んでいるというのであった。問題はその[死]つまり、肉体からの解放があまりに簡単で自然であるために、大半の人間はしばらくの間――個人によって長短の差はあるが――その変移に気づかず、霊的知識が欠如しているために、地上の懐かしい場所をうろつき回っているというのである。

そうしたスピリットの中には、そのうち人間の磁気性オーラに引きつけられて乗り移り――本人も人間の方もそれを自覚しないことが多い――それが原因となって数知れない災害や悲劇が引き起こされ、病気・不道徳・犯罪・精神病等が生じているケースが数多くあるという。スピリットの側はそうとは知らずにいる場合もあるし、悪意からそうしている場合もある。

こうした霊的要因による障害の危険性は、好奇心が先走りして、指導者なしに心霊実験に手を染めた者の場合が最も大きいが、そうした事実を知らずにいることはさらに危険なことで、感受性の強い精神症患者の場合は特に注意を要するという。

こうした説明のあと霊団は、さらに次のようなことを言ってきた。すなわち一種の転移方式、具体的に言えば憑依しているスピリットをその人間(患者)から霊媒へ乗り移らせることによって、右の霊魂説の正しさが証明できるし、霊的症状の内側の事情も明らかに出来る――患者は正常に戻り、憑依霊はそのあと霊界の事情に通じたスピリットの手に預けられ、その看護のもとで霊的真理についての教育を受けることになる、というのである。

その上で彼らは、そうした実験の霊媒役として私の妻が適切であると見ており、もし私が彼らに協力して、一時的に妻に憑依させるスピリットの話し相手となって話を聞き出し、また諭してくれれば、彼らの主張していることが正しいことを証明してみせる――私の妻には一切の危害は及ばないようにする、と提案してきた。

こうした重大な主張――もしもその通りであれば、精神病理学のみならず犯罪学においても不可解とされている原因の解明に大きな意義をもつであろう霊魂説――が真実か否かをぜひ確認したいとの願望から、私は、危険と思えるその提案を受け入れることにした。

第2節 ●実例・死後も肉体に執着するスピリット
その目的への準備として、霊団側はしばしば私のまったく予期しない時に色々な現象を起こしてみせた。その幾つかは、私が医学部に籍を置いて間もない頃に起きた。

ある日私は、最初の解剖実験をその日から始める意図もなしに家を出た。したがって、妻の潜在意識が、そのあと起きた現象に何らかの関わりをもった可能性は考えられない。

さて当日は、学生は一つの死体を上下半分ずつ解剖することになった。最初の死体は60歳ばかりの男性で、私はその日の午後から下肢の解剖に入った。

帰宅したのは午後五時頃だった。ドアを開けて中に入るや否や妻の様子が急におかしくなり、妙な気分がすると言いながら今にも倒れそうによろめいた。私が妻の肩に手を置いたとたんに、しゃんと身を起こした。何者かに憑依されていて、それが脅すような身振りをしながらこう言った。

「俺を切るとは、一体どういうつもりだ!」

誰も切った覚えはないと私が言うと、そのスピリットはこう言って怒った。

「切ってるじゃないか! 俺の脚を切ってるじゃないか!」

私は、この男は私が今日解剖した死体の主で、大学からずっと家までつけてきたのだと理解がいったので、そのスピリットと語り合おうと思い、とりあえず、その(妻の)身体を椅子に座らせた。すると、

「コラ! 人の身体に勝手に触らんでくれ!」と言うので、

「自分の妻の身体に触って何が悪いんですか」と言い返すと、

「お前の妻だと!? 一体何の話だ。俺は女なんかじゃない、男だぞ!」と怒鳴るのだった。

そこで私は、彼がもう肉体から離れて、今は私の妻の身体を使って喋っていること、つまりスピリットとなってここへ来ており、肉体は大学に横たわっている事実を説明した。どうやらそのことが分かってくれたようなので、私はこう付け加えた。

「たとえ私が、大学に置いてあるあなたの肉体を切っているとしても、それであなたが死ぬわけではないでしょう――あなた自身は今、ここにいるんだから」

すると彼は、なるほどもっともな話だと答えてから、こう述べた。

「どうやら俺は(死者)の仲間入りをしたに違いないな。となると、あの古ぼけた肉体にはもう用はないから、勉強の材料になるのなら思い切り切り刻んで結構だ」

そう言ったあと突然「だんな、噛みタバコを恵んでくれんかな」と言うので、私がそんなものはもってないと言うと、今度はパイプをせがんで「一服やりたくてたまらんのだ」と言った。

勿論私は断った。(妻はタバコを噛んでいる人を見るとひどく嫌がっていたから、この現象に妻の潜在意識が関わっていた可能性はないことになる)。そして、今はもう[死者]となっていることを、さらに詳しく説明してやると、ようやく事情が呑み込めたらしく、妻の身体から去って行った。あとで死体の歯を調べたら、噛みタバコの常習者であることが判明した。


もう一つは、私が実地教授の助手に指名され学生の前で解剖することになった時のことで、ある黒人の死体が選ばれた。その日は何も手をつけずに帰宅したのであるが、その夜になって妻が憑依状態となり、こんなことを喋った。

「大将、この俺を切ってくれるなよ」

私は、彼がもう死んでしまっていること、今は古びた肉体ではなく女性の身体を使って喋っていることを話してきかせた。が、信じてくれないので、私は妻の両手を見させて、黒人の手ではなくて白いでしょうと言ってみた。が、それでも信じないで、

「それは白く塗っているからだよ。俺は白壁塗りが仕事だもんな」と言う。

随分頑固なスピリットで、こんな調子の言い訳や弁解ばかりして私の言うことを認めようとしなかったが、最後は得心して去って行った。


スピリットが死というただの移行現象に気づかずに、信じられないほどしつこく肉体に執着していることを証言する例として、次のようなものがある。

シカゴの郡立病院で死亡した40歳ばかりの女性の死体が、解剖室に安置されていた。

死後七ヶ月たった翌年1月に、私を含む何人かの学生がその死体の解剖を指示された。解剖が始まった最初の日の夕方は、訳あって私は参加できなかった。

その最初の解剖の二、三時間の間にどんなことが起きたのかは、私は何も聞いていなかったが、なぜかその日参加した学生は、二度とその死体に触れたがらなかった。

翌日の午後は授業がなかったので、私は一人で解剖することにし、腕と頸部にメスを入れ始めた。

すると、解剖室は長い地下室の奥にあって物音一つしない所なのに、解剖の途中で、小さいがはっきりとした声で「私を殺さないで」という声が聞こえた。遠くから聞こえる微かな声だったが、私は迷信的なところは微塵もなく、些細な出来事を一々スピリットの仕業にするタイプではないので、多分道路で遊んでいる子供の声だろうくらいにしか考えなかった。もっとも、よく考えてみると、その時、それ以外に、子供の遊び声は一切聞こえていなかった。

翌日の午後も私は一人で解剖していた。すると床の上にまるめて置いてあった新聞紙が、ちょうど紙くずをクシャクシャにまるめる時に出るような音を出したので、さすがの私も一瞬どきっとした。が、この時も特に気にせずに、帰宅後も妻には何も話さなかった。

そうした出来事をすっかり忘れていた数日後のこと、私の家で(時折開いていた)ホームサークルが開かれた。霊媒の妻を通じて見えざるスピリットが変わるがわる語り、それも無事に終わって、いつもならそこで妻が入神状態から平常の状態に戻るのだが、その時はなぜか憑依状態のままの様子なので、私が確かめようと思って席を立って近づくと、妻がいきなり体を起こして平手で私をぶった。そしてこう言った――。

「あんたに少しばかり言いたいことがあるのよ! 」

そう言ってから私に激しく食ってかかり、少しの間もみ合った後、私が一体どうしたというのかと尋ねたところ、

「なぜこのあたしを殺そうとするのよ?」と言うので、

「私は誰も殺そうとなんかしてませんよ」と言い返すと、

「いいや、してます――あたしの腕と首に切りつけてるじゃない! 殺さないでと大声を出して床の上の新聞紙を叩いて驚かせたのに、あんた、知らん顔だったわね! 」

そう言ってからケタケタ笑い出して、こう付け加えた。
「でも、あの連中は上手く脅かしてやったわ」

この女性霊は生前ミニー・モーガンと言い、現在の身の上を説明するのに随分暇がいったが、ついに得心してくれて、高い世界を目指すように心がけますと言って去って行った。

第3節 ●霊媒による患者救済のメカニズム
霊媒である私の妻は、よほどスピリットがコントロールし易いらしく、憑依して語るスピリットの大半が、自分がいわゆる死者であって一時的に地上の人間の身体に宿っていることに気がつかない。

理知的判断力の鋭いスピリットの場合だと、自分だと思っている今の(霊媒の)身体の特徴や手足、衣服などの違いを指摘すると、事情が尋常でないことに気づいてくれる。特に男性である場合はその違いが歴然としているので、なおさらである。

「今、あなたが使用しておられる身体は私の妻のものです」と言われると、大抵「ワシはあんたの奥さんなんかじゃない」と言い返し、得心してもらうまでにはずいぶん多くの説明を要するが、とにもかくにも、なんとか分かってくれる。

これに対して、あくまでも頑固な猜疑心の固まりのようなスピリットがいるもので、自分が死んで肉体を失っていることを絶対に認めようとしない。理知的に判断しようという気持ちがなく、たとえ鏡を持ってきて映して見せても、催眠術をかけているんだろうと言って、事情が変化していることを認めようとしない。あまりの頑固さに、結局はマーシーバンドに連れ出してもらって、あとをお任せすることになる。


精神異常の原因となっている憑依霊を、患者から霊媒(ウィックランド夫人)に移すには、静電気を患者に流す方法が効果的である。患者は必ずしもその場にいるとは限らないが、大抵は同席している。

静電気は人体には害はないが、憑依しているスピリットには耐え切れなくて、通電しているうちに、ついにその身体から離れる。そこで待機していた霊団が誘導して霊媒へ乗り移らせる。

これでそのスピリットとの直接の対話が出来ることになり、私が現実の真相を語って聞かせ、向上の可能性を教えてあげる。

それが納得できた段階で、霊媒から離れてマーシーバンドの手に預けられ、霊媒は正常に復する。

同じ効果は、心霊サークルによる思念集中法(サークルのメンバーが円座を作って精神を統一して霊的な磁場をこしらえる)によっても得られる。患者は別の場所、往々にして遠く離れた病院などにいて、そこでマーシーバンドが憑依霊を連れ出して、そのサークルのところへ連れてきて霊媒に乗り移らせる。

このやり方ではスピリットは『追い出された』と言って文句を言うことが多いが、それでも自分がスピリットになっていることに気づかず、また地上の人間に憑依して障害の原因となっていることも知らないのである。

しかし、憑依霊の言動と患者の症状との間に類似性があること、そして、その憑依霊を除霊すると症状も除去されるという事実は、そのスピリットこそ精神病の原因であったことを明快に証明するものである。多くの場合、スピリットの身元も一点の疑問の余地もないまでに立証されている。

憑依霊を霊媒に乗り移らせた後、二度と患者に戻らないようにすると、患者は次第に回復へ向かう。

ただ、なかには複数のスピリットが憑依しているケースがあり、その場合は一度に回復というわけにはいかない。

読者の中には、マーシーバンドは憑依霊をいちいち霊媒へ乗り移らせないで、直接説得すれば良いのではないかと思われる方もいるであろう。実はそうしたスピリットは霊的知識が欠けているので、いったん地上的条件下に置き、現在の自分の状態を認識させ、向上の意識を芽生えさせてからでないと、霊界側からの直接の接触が得られないのである。

交霊会において、無知なスピリットが霊媒に乗り移らされることによって霊的理解へ導かれていく現象は、研究者にとって大変興味深いことであるが、同時に、暗黒界からその交霊の場へ連れてこられて、その様子を見学している大勢の無知な霊にとっても、大きな勉強となる(モーリス・バーバネルを霊媒とし、ハンネン・スワッハーを司会者とする英国の交霊会に、約半世紀あまりも出現していた古代霊シルバー・バーチの話によると、毎回5000名ばかりのスピリットが見学に来ていたという。シルバー・バーチはサークルのメンバーにだけ語りかけていたのではなかったのである)

なかには、まるで精神病院のような状態になって、まともな説得ができないスピリットが多い。これは地上時代の誤った宗教的信仰や固定観念、もろもろの迷信が禍いしている。暴れ回り、暴言を吐くこともしばしばで、そんな時は霊媒の両手を握って押さえ込むことが必要となる。

また、自分の置かれている事情に目覚めるとともに死んでいくような感じを抱くスピリットがいる。

これは霊媒の身体の支配を失いつつあることを意味している。

さらには、意識がもうろうとして半分眠っているような状態になり、そっとしてくれないかと言い出す者もいて、このあとに紹介する記録をお読み頂けば分かるように、時には激しい言葉で目を覚まさせることが必要となる。

そうした記録の中で、よく[地下牢]または[土牢]という言葉が出てくるが、これは手に負えないスピリットをマーシーバンドが捕らえ閉じ込めておく場所で、そのあと霊媒に乗り移らせると、今まで地下牢に入れられていたと文句を言う者がいる。

これは、高級霊になると、ある霊的法則を利用して牢に似た環境をこしらえることが出来るのである。出口が一つもない独房のような部屋で、頑固なスピリットはそこに閉じ込められて、どっちを向いても自分の醜い性格と過去の行為が映し出される。

これは実際は心の目に映っているのであるが、本人は客観的に映っているように思い込む。その状態は、悔い改めの情が湧き新しい環境へ適応して向上したいと、自ら思い始めるまで続けられる。

私の妻の霊媒能力は、無意識のトランス(日本でいう神懸かり、ないし入神状態)である。その間ずっと目を閉じ、睡眠中と同じく精神機能は停止状態に置かれている。

したがって、本人はその間の記憶はない。そうした体験に対して異常な反応を起こすこともない。常に理性的であり、頭脳は明晰で、性格は陽性である。この仕事に過去35年も携わってきて、一度も健康を害したことも、いかなる種類の異常を見せたこともない。

それは、一つにはマーシーバンドと名乗る高級霊団によって、常時保護されているからであろう。この霊団は[死]と呼ばれているものが、いたって単純な[移行現象]にすぎないこと、そしてまた、その死の後はどうなるかについて合理的に理解しておくことがいかに大切であるかを教えるために、この仕事を指導しているのである。

我々のサークルは、その[死後]の事情についての、議論の余地のない、信頼の置ける証拠を直接入手することを目的としており、妻に憑依して語ってくれたスピリットの正確な事情を記録しておくために、何百という例証を速記によって書き留めたのである。