第13章 誤った再生思想に囚われているスピリット
〈セオソフィーの場合〉
第1節 ●再生を信じて子供に憑依するスピリット
地上の人間が想像しているような単純な生まれ変わりの思想は間違っており、それが往々にして死後の向上の妨げになっていることは、高級霊はしばしば指摘するところであるが、我々のサークルにおいても、死後すぐに生まれ変わろうと子供に取り憑き、その子供はもとより、自分自身もおかしなことになっているケースをよく見かける。

例えば、シカゴのジャック・Tという少年は、五歳までは正常だったのだが、その後、急に大人びた傾向を見せ始め、行動に奇妙なところが多くなった。子供には縁のない取り越し苦労をし、夜も寝付かれずにブツブツ独り言を言い、時には激しい感情をあらわにした。

少年は、顔立ちの奇麗な子であったが、自分が歳をとってしまい顔が醜いことをしきりに口にするのだった。それを聞いて両親がそんなことはないじゃないのと説得しても、まったく耳を貸そうとしなかった。そのうち両親も回復に絶望的になってしまった。

が、親戚の人に、我々の仕事を知っている人がいて、その少年の為に集中祈念をしてほしいと依頼してきた。早速行ったところ、一人のスピリットが私の妻に憑依して(マーシーバンドが連れて来て乗り移らせた)、少年とそっくりの仕草をした。聞き出してみると、次のような事情が明らかとなった。

名前はチャーリー・ハーマンといい、死んだことはしっかり自覚していたが、容姿が不細工で、顔もあばた面で醜いという点をしきりに強調し、それがために誰も付き合ってくれず、そのことで心を傷つけられたという。

そのうち、誰かから、死後もう一度生まれ変わることが出来る――自分の好みのタイプになれると聞かされたことがあるのを思い出した。彼の唯一の望みはハンサムになることだったので、今度こそいい男に生まれ変わろうと考えた。そして、奇麗な顔立ちのジャックを見つけて生まれ変わろうとしているうちに、その子のオーラに絡んでしまって出られなくなったという次第だった。

招霊によって、その間違いに気づいたハーマン霊は、マーシーバンドの指示に素直に従って離れていった。ジャックも、それから子供らしさを取り戻し、学校の成績も目覚ましく向上したという。

次に紹介するのも、同じように子供の身体に入り込んで生まれ変わろうとして、その子を肢体不自由児にしてしまったケースである。

1916年11月19日  スピリット=ウィリアム・スタンレー

スピリット「私は本当に健康体になったのでしょうか。話が出来ますね。腕も足も動かせます。あの子から、どうやって出られたのでしょうか」

博士「高級霊の方達が、あなたを救う為にここへ連れてきてくださったのです」

スピリット「地上に戻りたくなり、子供の身体に入ろうとして身動きが取れなくなって、それきり出られなくなってしまいました。身体の自由がきかなくなって、ものも言えず、酷い目に遭いました。

地上ではセオソフィーを信じていました。教えの通りに生まれ変わりたいと思い、一人の子供を見つけて入り込んだところ、その子が麻痺してしまい、私も麻痺してしまいました。出なかったのではなく、出られなかったのです。

自分が数年前に死んだことは知っていました。もう一度生まれ変わって、もう一つのカルマを生きたいと思ったのです。尊師に生まれ変わるつもりでいたのですが、ご覧の通りのざまでした。大変な目に遭いました。生まれ変わろうなどと考えてはいけません。間違っております。もっとも、セオソフィーの教えそのものは大変いいと思います。

私は、考えが利己的でした。偉い人間になってみせる為に生まれ変わりたいと思ったのです。それが、まったく逆の結果になったのです。生まれ変わってみせて、セオソフィーの仲間達に、どうです、見事に生まれ変わりましたよ、と自慢してやろうと思い、子供の身体に入ろうとしたのです。

ブラバツキー女史がいけないのです。(ブラバツキーのスピリットが来ているらしく、指さしながら)ブラバツキーさん、私がこんなことになったのも、あなたが悪いのですよ。

ブラバツキー女史がここに来ています。私を救うのを手伝う為です。この方こそ、私に輪廻転生の教義と思想を教えたのです。今、正しい考えを教えようとなさっておられます。転生のようなものはないと述べておられます」

博士「あなたのお名前は、何とおっしゃるのですか」
スピリット「それが出て来ないのです。

ブラバツキー女史はインドにいらして、セオソフィーの思想を説いておられました。大勢の支持者がいて、私もその一人でした。

私の父は、インドが植民地だった頃の陸軍の将校でした。生涯の殆どをカルカッタで過ごしました。その時にセオソフィーの中心指導者達との縁があり、私もセオソフィー協会の会員になりました。

輪廻転生説は間違いです。私は二度と生まれ変わりたいとは思いません。利己的な目的の為の転生願望を生み出します。生まれ変わらずとも、向上進化の道はあるのです。私はセオソフィーの思想とカルマの教義に固執していました」

博士「霊媒というものについて何か耳にしたことがありましたか」

スピリット「あれは、霊的な媒体のような存在に過ぎません。ブラバツキー女史も、かつては霊媒だったのですが、スピリットにコントロールされるのが嫌いで、自分の個性と才能を伸ばすべきだと考えるようになったとおっしゃっています」

このスピリットは死後の生活への準備としての地上生活の意義、つまり地上で獲得した知識と叡智が、死後の環境を明るく照らす光となる、といった主旨の私の説明を素直に聞き、礼を述べ、最後に地上時代の姓名を告げて去って行った。

第2節 ●セオソフィスト・ウィルコックスの霊界からの報告
次に紹介する女性のスピリットは、セオソフィーに関する著作でご存知の方も多いであろう。この招霊会でも輪廻転生説が話題となった。

1920年1月28日  スピリット=E・W・ウィルコックス

「こんばんは。初めて出させて頂いた者です。もっとも、地上にいた時から、こうした催しの噂を耳にして、一度お尋ねしたいと思っておりました。それが実現しないうちに、こちらへ来てしまいました。

こちらへ来てつくづく思うのは、『神』についての真理を理解しておくことの大切さです。ところが、本当のことを理解している人はきわめて少ないのです。なぜか、真理は必ず、はりつけにされるのです。真理は真理としてそのまま知らされるべきでして、ややこしい教義で飾り立ててはなりません。

私も地上時代は、教義の奴隷のようなものでして、間違ったことや愚かしいことを本気で信じておりました。死後の生命についての単純素朴な真理に理解がいったのは、死ぬ少し前のことでした。

それも、悲しみを伴わなければなりませんでした。人間は、身近な人の他界といった深い悲しみの体験をしないことには、真理が悟れないようです。その時初めて、魂の底から真理を求め、ドグマや信条に惑わされなくなるのです。夫に先立たれた私は、失意のどん底に落ちましたが、死は存在しないという真理の光に目覚めてから、夫がいつも側にいてくれていることを感じ取るようになりました。

この素晴らしい真理は、真剣に求める者には必ず与えられます。が、一旦見出したら、今度はそれを素直に、そして真剣に守らないといけません。なぜかというと、素直さと真剣さがないと、いつしか猜疑心が入り込んでくるからです。そうなると、せっかくあなたの死後の為に、色々と準備をしてくれている背後霊との連絡網を閉ざしてしまうことになるのです。

本当の意味で『生きる』というのは、墓のこちら側に来てから始まるのです。地上生活は小学校のようなものです。自分とは何か、何の為に存在しているのかを学ぶところです。

人間は、死ねば神に会えると思っているようですが、そういう人は、『神』というものの本当の意味を知らない人です。神とは万物の生命のことです。地上の人間は、地球とは何かということをあまり考えませんが、宇宙の中のごくごく小さな一部分に過ぎません。

生まれ変わりについては、私もかつては信じておりました。セオソフィーに夢中だったのです。セオソフィーの基本思想そのものは決して悪くはないのです。思想も教えも立派なのですが、問題は、生まれ変わりの説が単純過ぎることです。一体なぜ、この小さな地球にそんなに何回も生まれてくる必要があるのでしょうか。

私は、こうして死後の高い世界について語る為以外には、この地上界へ戻りたいとは思いません。まして、もう一度赤ん坊からやり直す為に戻りたいとは、さらさら思いません。戻ってくるべき理由が分かりません。もう一度地上に戻って来て、何を学ぼうというのでしょう。

一旦霊界へ来て生命についてより高度なものを学んだら、もう二度と地上へ戻りたいとは思わないものです。霊界で学ぶことがいくらでもあるのです。地上のことは、地上にいる時に十分に学んでおくべきです。地上にいる間でも霊界のことは学べますが、霊界へ来れば、地上で学ぼうにも学べないものが、いくらでも学ぶことが出来るのです。

なんて素晴らしい世界でしょう。この芸術的な豪華な世界を、是非お見せしたいものです。私達は、それを楽しんでばかりいるわけではありません。人の為になることをしないといけません。地上圏へ戻って、愛する者や友人の為に力になってあげることが出来るのです。

皆さんがここで続けておられる仕事を、地上にいる間に知っていたら良かったのにという気で一杯です。これほど今の時代に要請されている仕事は、他にないのです。救済と啓発を必要としているスピリットが実に多いのです。それを霊界側だけで処理することは出来ないのです。なぜなら、そういうスピリットは、様々な地上的教義や願望によって地球圏に縛り付けられているからです。

その曇った目を開かせて霊的実相に目覚めさせるには、こうした場がどうしても必要です。目覚めると同時に、我々霊界側の救済団の姿が見えるようになり、我々の手で案内してあげることが出来るわけです。

今夜は、私のような者が出て来て驚かれたかも知れません。実は、色々な霊的手段を試みたのですが、上手くいかず、今やっと皆さんと同じように語ることが出来た次第です。ちょうど電話で喋っているような感じです。身も心も、皆さん方地上の人間と同じになった感じがします。

今夜も、この部屋には大勢のスピリットが集まっていて、話を聞きながら、自分も出してもらえないのかと、押し合いへし合いをしております。出来れば、その様子をお見せしたいところです。

さて、これ以上時間を取るのもなんですから失礼しますが、この度はこうして話をさせて頂いて、本当に有り難うございます。少しでも皆さんのお仕事に役立てば嬉しく思います。どうか勇気をもって仕事に邁進してください。

ウィルコックスと申します。一度激励の言葉を申し上げたくて、やってまいりました。今後とも除霊の仕事を続けてください。とても大切なのです。及ばずながら、私達も霊界から協力いたします。さっき申しました通り、この招霊会に出たがっている者が大勢群がっております。が、一人ずつしか出られません。有り難いことに、今夜その順番が私に回って来たということです。

この仕事は、人類全体にとっても大いに必要です。残念ながら、それが出来る霊媒が極めて少ないのです。本当は、各都市において、除霊の仕事がなされるべきなのです。霊媒は喜んで協力すべきなのです。死者が帰ってくることを認めないキリスト教でも、そのうちその事実を認め、生命の実相に目覚める時が来ることでしょう。その時はもう、ややこしい教義は一切要らなくなるでしょう。

そろそろ失礼しなくてはなりません。今夜は、出させて頂く光栄にあずかり、心からお礼を申し上げます。またいつの日か出させて頂けることを期待しております」

第3節 ●ドクター・ピーブルズ、地縛霊を前に語る
かつてトルコ領事を努めたこともあるJ・M・ピーブルズ氏は、六十年にわたってスピリチュアリズムの普及に尽くして、九十九歳で他界したスピリチュアリズムの大先輩であるが、私達は家族ぐるみのお付き合いもさせて頂いて、尊敬していた方である。

これまでも何度か出現して語り、時には霊界側の大勢の地縛霊を前に啓発の講演をなさったこともある。次はその一つである。

1922年10月4日  スピリット=J・M・ピーブルズ

スピリット「皆さんこんばんは。この度は、気の毒な身の上のスピリットを集めて私の話を聞かせるよう取り計らって下さったことに感謝致します。皆さんの仕事のお手伝いが出来ることを嬉しく思います」

博士「どなたか存じませんが、ご挨拶をお聞きして大いに歓迎すべきお方のようです」

スピリット「ご存知でしょう? 私です、ドクター・ピーブルズです。今はすっかり若返っております。地上時代も精神的には若いつもりでいても、身体の方が次第に衰えていき、晩年は言うことをきかなくなりました。ついでに百歳まで生きてやろうと考えていましたが、あと一歩のところで駄目でした。しかし、こちらへ来て、友人達から百歳の誕生日のお祝いをしてもらいました。素敵でした。

死ぬ時は嬉しいくらいでした。霊界入りして、私は大変な栄光と幸せと美しさを見出して、本当に嬉しく思いました。地上にいた時から、霊界についての一通りの理解はありましたが、実際に見た美しさはとても言葉では表現できません。霊的理解力が目覚めた人にとって、その美しさは筆舌に尽くしがたいものがあります。

私は、地上時代はスピリチュアリズムをずっと信じていましたが、それでも、あるドグマにしがみついておりました。キリスト教から完全に脱け切っていなかったのです。

どうか、この地上界が小学校に過ぎないことを知ってください。大学ではりあません。高等学校でもありません。生命についての基礎を学習するところに過ぎません。その小学校でロクに勉強しない者が、大勢いるのです」

博士「(招霊会に先立ってサークルのメンバーと輪廻転生について語り合っていたので、冗談半分に)そういう人達は、もう一度生まれ変わってくるわけですよね?」

スピリット「(真面目な口調で)いいえ、生まれ変わることはありません。そもそも生まれ変わりたいと思う理由があるでしょうか。せっかく自由になったのに、どうしてもう一度この思うにまかせない小さな肉体に閉じ込められる必要があるのでしょうか。せっかく高等学校へ入る段階まで来ていながら、なぜ小学校へ逆戻りする必要があるのでしょうか。

このサークルの皆さんは、生命の実相の基本を正しく学ばれた方達ばかりですが、死後もう一度この地上へ戻ってきたいと思われるでしょうか。この地上で十年もそれ以上もかかって学ぶものが、霊界では一日で学べるのです。それほど自由で迅速なのです。

例えば、あらゆる種類の機械類を製造している霊界の大きな工場へ見学に行きたいと思ったとします。スピリットはそう思うだけでその場へ行けて、そして好きなだけ学べるのです。

また、米国以外の国、たとえばロシア、ドイツ、イギリス、インド、オーストラリアなどの暮らしはどうなっているのかを知りたいと思えば、そう思っただけでその国へ行けるのです。

地上で生涯かけて学ぶことも、霊界では一日にも相当しません。一度に理解してしまうという意味ではありません。何一つ束縛するものがないということです。自由なのです。誰にでも学べるのです」

博士「例えば、地上では一冊の本に書いてあることを知る為には、初めから終わりまで一通り読まないといけませんが、そちらでは内容を霊覚で一度に読み取ってしまうわけでしょう?」

スピリット「そうです。感じ取ってしまうのです。肉体ですと脳を通して行動しなければなりませんから、手間がかかりますが、肉体のないスピリットは、その手間が省けます。

生命は永遠です。精神を通して体験したものはすべて記憶されております。が、細胞は年齢と共に動きが鈍くなり、スピリットは脳細胞が使用出来なくなり、記憶が途切れるようになるわけです。

スピリットになってから地上へ戻って来てこうして霊媒をコントロールすると、乗り移る前には知っていたことも、思い出せなくなることがあります。自分の地上時代の名前さえ出てこないことがあります。何しろ他人の身体を使っているのですから」

博士「一種の憑依現象と言ってよいのでしょうね?」

スピリット「いえ、それは違います。憑依の場合は、スピリットは身体にひっついて離れようとしないので取り除くのに骨が折れます。

現代生活は、昔と違ってとても忙しくなっています。それが神経系統を疲れさせ、自分を見失わせ、スピリットに付け入る隙を与える結果となっているのです。賑やかな都会の通りを歩いている人達を霊視してみてごらんなさい。色んなスピリットに付きまとわれている様子を見て、驚かれるはずです。スピリチュアリズムを説いている人達でも、死後の実情について本当のことをご存知の人はあまり多くはありません」

博士「大抵の人は、心霊現象にしか興味を抱いておりません。思想的な側面についてはあまり関心がありません」

スピリット「私は今夜、ここへおよそ百名ばかりのスピリットを案内してきております。霊界で私が直接説き聞かせても分かってくれないものですから、さっき出た地縛霊の女性が良い実物教育になると考えて、みんなに見させたのです。みんなとても不思議がり、思い当たるところがあって目を覚まし始めております。そこで、私が代わって話をしているわけです。

皆さんは、なぜこんなスピリットを出させたのかと思われることがあろうかと思いますが、全ては、乗り移っているスピリットだけでなく、それを見物に来ている他の大勢のスピリットに霊的真理を理解させる目的があってのことなのです。

輪廻転生の信仰は棄てないといけません。この信仰が意識の中枢に居座っていると、思いが常に地上へ引き戻される為に、向上の足枷となるからです」

博士「ブラバツキー女史は、今はどう考えているのでしょうか?」

スピリット「今は信じておられません。私は地上にいた時から、その説について女史と議論し、こちらへ来てからも、さらに多くの議論を重ねましたが、今ではなんとかして、その説による弊害を修正しようとして、地上圏へ戻ってきておられるのです」

博士「それは大仕事ですね」

スピリット「どんな形にせよ、ドグマや教義や信仰に夢中になってはいけません。真実を知る為に常に疑問を聞き、見、感じ、そして自分の中の神を見出すことが大切です。そうすれば、霊的なものに目が開かれて、こちらへ来てからは二度と地上へ生まれ出たいとは思わないでしょう。第一、霊界には、しなければならないこと、会いたい人、行ってみたいところが山ほどあって、地上へ戻ってみる考えなど、抱いている暇はありません。

地上生活を体験をせずに他界した幼子はどうなるのか、という疑問をよく受けますが、霊界の教師や指導者によって、実物教育による体験を積んで成長します。地上と違って、様々な教育施設があって、そこに通って勉強します。ただの読み書きとは違います。その成長ぶりは、皆さんに見て頂きたいほど素晴らしいです。

どうか、私が霊界において、皆さんのお仕事のお手伝いをしていることを知ってください。生命の実相を理解できずに彷徨っているスピリットが、実に多いのです。それが憑依現象を引き起こす原因です。精神病棟はその犠牲者で溢れておりますが、医者は為す術を知りません。

あまり長話になってもいけませんので、この辺りで失礼します。おやすみなさい」

第4節 ●輪廻転生説の誤りに気づいたブラバツキー
それからほぼ一ヶ月後に、輪廻転生説で世界的に有名なマダム・ブラバツキー女史が思いかげなく出現した。

1922年11月1日  スピリット=マダム・ブラバツキー

「こうして皆様と直接お話が出来る機会の到来を、どんなに心待ちにしていたことでしょう。

ささやかではあっても、このサークルが行っておられる仕事は大変重要であると信じ、その成果を見て、私はいつも有り難く思っております。こうしたサークルがもっと増えてくれると有り難いのです。死というものが、事実上、存在しないことを地縛霊に理解させる為には、こうした霊界と現界とが歩み寄って手を繋ぐことが大切だからです。

私は、なぜもっとこうした霊界との繋がりについて説かなかったか、なぜもっと深く勉強しなかったかと、残念に思われてなりません。その事実については知っていたのです。様々な霊現象を見ていたのです。今は、何もかも打ち明けますが、私はとにかく『リーダー』になりたかったのです。霊媒現象の存在を知っておりましたし、私も霊媒としてずいぶん学者の研究材料にされていました。

が、そのうち古代インドの霊的思想を勉強し始め、やがて輪廻転生説を知りました。これは面白いと思いました。といって、その原理に納得がいったわけではありません。ただ、同じ地上に生まれてきて、金持ちで楽しく暮らしている者がいるのに、他方には生涯貧乏で苦労ばかりしている者もいるというのは、不公平だと考えたのです。中には、ろくに地上体験を積まずに夭折する者もいます。

そういう事情を単純に考えると、もう一度地上に戻って来て、その反対の生活を体験するという説には真理と公正があると思い、これを旗印にして世に訴えようと考えました。そしてそれを説き始めました。

これには実は、もう一つ別の体験が伴っておりました。自分の過去を思い出すという体験です。過去世のことが何もかも、直ぐに分かるのです。しかしそれは、実は過去世を思い出しているのではなかったのです。

過去世の記憶の回想ということがよく話題になるのですが、あれは、節操のないスピリット達が企んでやっていることです。つまり、スピリットが自分の地上体験をもとに、もっともらしいドラマを演出して、それを霊媒の意識に印象づけるのです。それを霊媒は、依頼してきた人の過去世を見たと錯覚して物語っているに過ぎません。

スピリットは『印象づけ』という方法で霊媒にもっともらしい生活ドラマを吹き込むことが出来ます。それが霊媒の霊的視覚にパノラマ状に映じます。それを前世の記録であると勘違いするのです。私は地上時代にそのことに気づかず、間違いなく前世の記憶を回想していると思い込んでいました。こちらへ来て、それが間違いであることを知りました。

私は、インドの古代思想を勉強し、そこからセオソフィー(注)という思想体系を編み出しました。それを私は最高の生命思想と信じておりましたが、所詮、説は説に過ぎません。真理の前にはどうしようもありません。人間は真理に従って生き、説や信仰は棄て去らないといけません。

(注 『神』を意味するtheoと『叡智』を意味するsophiaを組み合わせて、『theoso-phy』という用語をこしらえた。ブラバツキー女史は『十九世紀における最も不可解な人物』として、研究者の間でその真摯さが疑われていた)

あまり遠い先のことを考えてもいけませんし、遠い過去のことに関心をもってもいけません。現在を見据えて、自分の良心に忠実に生きることです。そして『説』とか『信仰』というものを忘れることです。

輪廻転生説は間違いです。かつては正しいと信じ、自信を持って説き、死んだらきっと誰かに生まれ変わってみせようと考えておりましたが、その考えはもう棄てました。それよりももっともっと意義のある仕事がいくらでもあります。地縛霊を救済することです。地球圏には、地上を去った後でも地上的波動から脱け切れずにいるスピリットが、地獄さながらの悲惨な境涯の中で、無益な生活を続けております。

朝から晩まで賛美歌を歌い、神に祈ることばかりしている集団があります。一種の自己催眠にかかった状態で、はたから声をかけることすら出来ないほどです。

別の集団へ行ってみると、そこには金の亡者が集まっています。朝から晩まで金を数えることばかりをしております。彼らにとっては金こそが神なのです。この者達にも声はかけられません。

さらには、地上で身を破滅させた者達が集まっているところがあります。世を恨み、心が鬼と化して、仕返しをすることばかり考えております。愛と優しさは欠片もありません。その魂は、まるで泥水に浸したスポンジのように、汚らわしい感情に満ち、愛も情も受け付けようとしません。うっかり近づいて神だの愛だの親切心だのを説こうものなら、唾を吐きかけられ、笑い飛ばされます。

それでも、我々は諦めません。そういうスピリット達から、少しでも善姓を引き出すことが使命なのです。どんな酷い目に遭うか分かりません。近づいて祈ってあげるなどということでは歯が立ちません。彼らの心は閉ざされてしまっていて、絶対に寄せ付けませんから、話しかけたり説教するなどという手段では、何の効き目もありません。

では、どうするのか――まず、私達のグループ全員で、集中的の彼らに意念を向けておいて、音楽を演奏するのです。初めは穏やかに、聞こえるか聞こえないかの音で演奏し、徐々にボリュームを上げていきます。いかに邪悪な魂でも、音楽には耳を傾けるものです。音楽の得意なスピリットによる演奏に注意を向けるだけの心の余裕を見せたところで、我々が祈りの念を集中して、彼らの魂に揺さぶりをかけるのです。

その次の段階では、絵の得意なスピリットの協力を得ます。上層階の素晴らしい境涯を絵画にして見せると同時に、彼ら自身の地上時代の過ちを、一人ひとりに絵画にして見せるのです。そのうち、質問をしてくる者が出始めます。そうなったらしめたものです。そこからは積極的に働きかけて、より高い境涯へと導いてまいります。

以上のようなタイプとは異なるグループに、間違った信仰による自己催眠にかかって眠り続けているスピリットがいます。キリスト教の『最後の審判説』を信じ、地球の最後の日に、ガブリエルがラッパを吹くまで墓場で眠り続けると信じている為に、そうなるのです。

こういう地上的波動の中にいるスピリットは、地上的手段を用いるしかありません。そこで強引に霊媒に乗り移らせておいて語りかけるのが効果的なのです。これこそ一種の再生といえるのかも知れません。もう一度物的身体に宿り、物的波動によって目覚めさせるのです。

こういうサークルがもっともっと多く出来れば有り難いのですが・・・。

こういう話をお聞きになって、私が本当にあのブラバツキーなのかと疑われる方がいらっしゃるかも知れません。が、間違いありません。ブラバツキーがあんなことを言うはずがない、あんな言い方はしないなどとおっしゃるかも知れませんが、私は地上でエレーネ・ペトロワ・ブラバツキーと呼ばれた人間のスピリットです。何かお尋ねになりたいことがあれば、おっしゃってください。お答えいたしましょう」

質問(サークルのメンバー)「マスターのことを今はどうお考えですか」

スピリット「たしかに私は、セオソフィーの信者の中でも特に優れた方をマスターと呼びました。が、高等な霊的真理に通じた人なら、皆、マスターであることに理解がいきました。要は煩悩を克服し、純粋で意義ある人生を送ることの出来る人のことです。

大自然から学び取り、向上の仕方を身につけることが大事です。地上でマスターとなることを心掛けているセオソフィストの大半が、いつしか堕落していきますが、それは邪悪な地縛霊の誘惑に負けているからです。世俗的煩悩を十分に克服していないところに、隙を与える原因があるのです。

私がその一番いい例です。地上であれだけ活動して、一体人類の為に私は何の貢献をしたというのでしょう?」

質問「あなたのお陰で、キリスト教のドグマから救われた人は大勢いたのではないでしょうか」

スピリット「そうかも知れませんが、それに代わる間違った教義をたくさん教え込んでしまいました。セオソフィー協会など興さず霊媒のままでいて、霊界と地上界の橋渡しの仕事をしていた方が、どれだけ意義ある人生だったことでしょうか。そのセオソフィーの信者達も分裂し始めております。現代という時代は、何もかもが分裂していきつつあります。世界全体に落ち着きがありません」

博士「生活にもっと単純素朴さが必要です」

スピリット「おっしゃる通りです。『単純素朴』――いい言葉です。まさに核心をついた言葉です。あなたと奥さんの仕事を援助しているスピリットは、実に立派な方ばかりです。あなた方が訴えておられることには、ややこしい『教義』もなく、謎めいた『秘義』もありません。セオソフィーにはそれが多すぎて、マスター気取りでいる人達は、難解な教義や秘義を口にするほど霊格が高いかに錯覚しております」

質問「霊能者や霊媒は、これからも多く輩出されるのでしょうか」

スピリット「その必要性が生じ、受け入れ態勢が整えば輩出されるでしょう。各地に、こうしたサークルが出来ることでしょう」

質問「霊能者はいつも守られているものなのでしょうか」

スピリット「霊能者だけが特に守られているということはなく、自らの自覚によって日常生活を明るく陽気なものにしなくてはなりません。落ち込んだり動揺したりしてはいけませんし、腹を立てたり悲しんだりしてはいけません。そうした低級な感情は低界層と繋がるからです。

これは、普通一般の人も同じことです。低級界と波動が繋がると、物的身体を通して『光』を見たがる地縛霊が寄ってたかります。霊性が目覚めていないスピリットは、霊的な明るさが見えない為に、暗闇の中で生活しております。地上なら太陽の光があって、少なくとも辺りは明るいです。彼らは、その明るさを求めてやってくるのです。心を入れ替えれば霊眼が開くのですが、それが分からないのです」

質問「霊能者はあまり知識を持たない方がいいという考えがありますが・・・」

スピリット「名ピアニストが、祖末なピアノで演奏する場合を想像なさることです。微妙な音が出せるでしょうか。やはり、上等のピアノが必要です。霊能者も同じです。人間生活のあらゆる側面に関する知識をなるべく多く知っておくべきです。無教養な霊能者が科学的な問題を扱うと、微妙なところで間違いをします」

質問「スピリットにコントロールされている時、霊媒自身のスピリットはどうなっているのでしょうか」

スピリット「まず、スピリットというものに形体上の大きい小さいの概念が当てはまらないことは、ご存知と思います。今、ウィックランド夫人のスピリットは、ご自身のオーラの中に引っ込んでおられます。一種の昏睡状態にあって、精神的な意識は働いておりません。が、バッテリーないしはモーターのような機能を果たしていて、そのモーターから何本もの電線を引くことが出来ます」

質問「スピリットは、睡眠中に肉体から離れて霊界で体験と勉強をするというのは本当でしょうか。肉体と霊体とは細い糸状のもので繋がっているそうですが・・・」

スピリット「それは事実です。よく夢を見ますね、あの中には全く意味のないものと、実際の霊界での体験とがあります。ヨガを勉強なさると、努力次第で意識的に肉体を離れることが出来るようになります。

この度は、皆さんと楽しく語り合うことが出来ました。是非また来させて頂きたいと思います。皆様も、どうか、この貴重なお仕事をお続けください。今夜もずいぶん多くのスピリットが、この部屋を訪れ、私達の対話を聞きました。その中のかなりの数のスピリットが、私達と共に霊界へ向かうことでしょう。

では、失礼します」