第2部 アラン・カルデック自伝
──孤独と休みなき戦いの日々(『遺稿集』第四章「自伝的ノート」から抄訳)

第5章 将来の情勢
一八五六年五月七日、ルスタン氏宅で、霊媒はジャフェ嬢。

――過去の霊示では、近い内に重大な事件が起こるようなことが言われていました。そのことに関して少し説明して頂けますか?

「それがどの事件のことなのか特定出来ません。というのも、多くの破壊と悲嘆が引き起こされることになっているからです。人類が新生すべき時期が近づいているのです」

――この破壊の原因は何ですか? それは大災害ということですか?

「あなた方が思っているような種類の天災ではありません。しかし、諸民族があらゆる種類の災いに見舞われるでしょう。戦争が起こり、多くの国の、多くの国民が命を失うでしょう。時代遅れの制度が、血の海の中に沈んでいくでしょう。古い世界が滅んで、新たな進化の時代が始まる必要があるからです」

――多数の国を巻き込んだ大規模な戦争が起こるということですか?
「そうです。地が燃えるでしょう」

――今のところ、何の予兆も感じられませんが。
「事態は緊迫しています。危機一髪というところまで来ているのです」

――最初の火花がどこに上がるか、お聞きしてもよろしいでしょうか?
「イタリアです」

一八五六年五月十二日、ボダン家における個人的セッション。

――([真実の霊]に対して)M氏について、どのようにお考えですか? 彼は、そうした将来の情勢に対して影響力を持っているのでしょうか?

「大いに持っています。彼の考え方は正しいと言えます。彼は行動の人です。ただし、首謀者とはなりません」

――予言されたことは文字通りに取ってよいのですか? つまり、彼は旧体制を破壊する役割を持っているということでしょうか?

「いいえ。人々が、彼に常に考えを代表させようとしているのです」

――彼と親しい関係を保ってもよいのでしょうか?

「当面は止めておくべきです。無用な危険を呼び寄せることになりますから」

――M氏は、霊媒を使って、今後の情勢をかなり詳しく予言していますが、あの内容は本当なのでしょうか?

「確かに、M氏は事件の起こる日まで予言しています。しかし、それは軽薄な霊達からの情報にすぎず、こうした霊達は、いい加減なことを言っては人を興奮させるだけなのです。『高級霊達が、日にちを限定して将来の予言を行うことはまずない』ということを、あなたは知っているはずです。予言された大事件が起こることは間違いありませんが、その日程まで確定出来るわけではないのです」

――霊人達によれば、「そうした事件が起こるべき段階に、既に突入している」ということですが、これはどのように解釈すればよいのですか?

「重大な事件というのは、ある日突然、青天の霹靂といった感じで起こるわけではありません。火山が爆発するしばらく前から地鳴りがするように、大事件が起こる時には、部分的にあちこちで予備的な小事件が少しずつ起こり始めるものです。そういう意味で、『既に時は至っている』と言っているのです。ただ、『明日にでも大事件が起こる』と言っているわけではありません」

――「大規模な天災が起こるわけではない」というのは正しいのですか?

「大洪水や、大火災が起こるわけではありません。その類の災害は起こらないでしょう。そうではなくて、『あらゆる時代に起こってきた混乱が引き起こされる』と言っているにすぎません。それらの原因は人間の側にあるのです」