不動産賃貸借
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2024.2.1mf更新
弁護士河原崎弘
- 契約の締結
不動産賃貸借契約では、契約後、貸主と借主の継続低な関係が続きます。この関係の基礎は契約ですから、賃貸借契約書 を隅から隅まで読み、内容を確認する必要があります。特に、賃料額、解約の予告期間(中途解約の告知期間)、借主の義務とされる修理義務があるか、などは、気をつけなければなりません。この点は、履行が終わると関係が終了する 不動産売買 契約とは異なります。
- 期間・更新
建物所有目的の土地賃貸借契約、建物賃貸借契約では、期間が満了しても、賃借人が望めば、契約は更新されます。借地借家法の改正により、
定期借地権、および、定期借家権の制度ができましたので、更新をしない契約をすることができます。この場合は、契約書は公正証書 など書面にする必要があります(借地借家法22条、38条1項)。
- 賃料の支払い
賃料の不払いがあれば、貸主は賃貸借契約を解除して明渡しを求めることができます。即時解除ができるかと言えば、契約書に、「1か月分でも滞納した場合は、貸主は催告なくして解除できる」との無催告解除の特約があると、裁判所は、これを有効と認める場合もあります。しかし、3か月分くらいの家賃滞納したら、催告して解除する方法が通常です。
催告付き解除は、通常、内容証明郵便 でします。
- 更新料
不動産賃貸借契約に伴う
更新料( 土地賃貸借の場合の更新料 、や、建物賃貸借の場合の更新料 )
については、当事者間で金額について合意があり、その金額が相当(妥当)であれば、有効です。
ただし、 更新料の合意は、法定更新に適用ないとの判例が時々あります。さらに2001年4月1日消費者契約法施行後は、更新料は消費者契約法に反し無効であるとの判決が出てきました。
- 借主の使用方法
借主は、善良なる管理者の注意義務をもって賃借物件を使用する必要があります。建物であれば、騒音など、隣近所に迷惑を及ぼすような使用方法をすれば、貸主は賃貸借契約を解除できます。
- 又貸し(転貸借)
借主は、賃借した不動産を他人に貸すと、転貸借として契約違反になります。
この関係で、よく、誤解されるのは、借地上の自己所有の建物を他人に貸す場合です。建物の転貸借の借主は、建物の賃貸借に伴って、土地を使用していますが、これは、土地の転貸借ではありません 。土地の賃借人は、依然として、建物を所有して借地を占有しているのです。
サブリース契約 では、貸主は、事前に、建物転貸借を包括的に承諾しているのです。
- 建物所有目的の借地権
建物所有目的の借地権は、財産的価値があり、他に譲渡できます。しかし、借地権譲渡 には地主の承諾あるいは裁判所の許可が必要です。
借地権割合は、税務署の路線価図に書いてあります。例えば、「600C」 と書いてあれば、路線価は60万円(=600千)円/u、C は借地権割合が70%であること、「950B」 と書いてあれば、路線価は95万円(=950千)円/u、B は借地権割合が80%であることを示しています。
- 修繕費
物件の修繕費は、貸主が負担します。ただし、借主の故意過失により賃貸借の目的物件が破損した場合は、借主に修理義務があります。畳、壁紙など、経年経過による自然損傷の修繕は貸主の義務です。特約によって、借主に修繕義務を課すことができます。
- 敷金
不動産に対する需要が大である地域(都会)では、貸主が敷金を返還しない例がよくあります。
弁護士に依頼するには、金額も少なく、頼みにくいのですが、内容証明郵便、さらには、支払い督促 、あるいは、少額訴訟 を使って訴えを提起すると、取り返すことができます。
貸主は、不動産を所有している資産家ですから、法的手続きをとれば、回収は、比較的容易です。
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不動産に関する訴訟
簡単な訴訟は自分でできます(本人訴訟)。しかし、不動産の裁判では、相手は色々な妨害行為に出ます。訴え提起前に、仮処分、仮差押をする必要がある場合が多いでしょう。さらに、不動産訴訟には、技術的な問題があります。その意味では、不動産訴訟は、本人訴訟は不向きです。不動産は金額が高いので、依頼者は弁護士費用を支払っても、弁護士に依頼するメリットがあります。
弁護士費用は問題となっている不動産の時価を基に決めます(不動産事件の弁護士費用 を参照)。借地権の問題なら、通常、更地の6割とか、7割が基準です。
不動産に関する訴訟では、目的不動産の価格(実際は、固定資産評価証明上の価額)によって、訴状に貼付する印紙額 が決まります。
- 保証人
不動産賃貸借契約では、借主に保証人を付けるのが、通例です。これは、必要性があるでしょう。建物賃貸借契約の場合ですが、
更新後の滞納賃料につき保証人は責任を負い ます。
- 保証金
ビルの賃貸借契約では、借主は、貸主に対し、敷金の他に、保証金を差し入れる例が多いです。1億円を超える例もよくあります。最近は、ビルの所有者も多額の債務を抱え、破産状態の例もよく見られます。そこで、他に店子つきでビルを売る場合があります。この場合、保証金返還義務は、新所有者に引き継がれるか、依然として、旧所有者が負っているか、問題でした。
この問題については、最高裁で、 保証金返還債務は、新所有者に引き継がれない との判決が出ています。旧所有者が破産状態の場合は、賃借人は、契約終了の際、保証金を返してもらえない例も出てきます。ビルを借りるにも危険が伴うのです。
- 解約予告期間
解約予告期間が、3か月とか、6か月とか、相当前に予告する義務を規定した契約があります。直前に解約した場合は、賃借人にその期間の賃料を払う義務が決められています。この条項は有効です。
借主としては、事前に予告するよう心がけ、それができなかった場合は、「期間満了まで物件を使用する」と伝えて、貸主と交渉するしかないでしょう。この方法は、意外に有効です。
- 明渡
不動産の賃貸借契約、正確には、建物所有目的の土地賃貸借契約、および、建物賃貸借契約では、通常、借主は、借地借家法 により、強力に保護されています。土地の賃貸借契約でも、建物の賃貸借契約でも、明渡には正当事由が必要ですから、明渡しは難しいです。
通常、土地の場合は、地主が借地権を買取ることになるか、土地が広い場合には、底地と借地権の交換契約、不動産等価交換契約で、約半分を返してもらうことになるでしょう。建物の場合には、明渡料 を支払うことになるでしょう。
土地でも、建物でも、借主が賃料支払いを怠れば、貸主にとって賃貸借契約を解除できる絶好の機会となります。
- 賃貸借と使用貸借
賃料を支払わない 使用貸借契約 では、借主の権利は弱いです。
賃借権は相続 されます。特に建物所有目的の土地賃借権は価値のある財産です。使用借権は相続されません。
使用貸借契約で、借主が 固定資産税を負担しても、契約は、賃貸借ではなく、使用貸借契約 です。
相続で 黙示の使用貸借契約 認められる場合が
あります。
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