借地権の譲渡(建物所有目的)
弁護士(ホーム) > 不動産の法律相談 > 不動産賃貸借 > 建物所有目的の借地権の譲渡
2015.12.19mf更新
弁護士河原崎弘
相談:借地権譲渡
私は地主から土地 30 坪を借り、建物を所有しています。この建物を売り、郊外に一戸建て住宅を買いたいと思っています。不動産屋に借地権付建物の売り仲介を頼み、買主も決まりました。地主のところに行ったところ、地主は、事前に相談がなかったことを理由に借地権の譲渡について承諾してくれません。
どうしたらよいでしょうか。
私の土地の更地価格は坪 200 万円、借地権割合は 60 %(路線価図では D )、地代は坪 800 円です。
相談2
私は、借地権付き建物を買い、建物の登記をしました。これから、地主に頼んで、借地の名義書換(借地権譲渡)をお願いしようと思います。
どのように交渉したら、よいでしょう。
相談3
先月、父が亡くなり、私が、父名義の借地権付建物を相続することになりそうです。そこで、地主さんのところへ行き、新しく私が借地人となる契約をする旨お願いしようと思います。どのくらいの名義書替料が適正でしょうか。
回答1
建物所有目的の土地賃借権は、
建物の譲渡と同時なら譲渡できます(借地権譲渡)。借地権の譲渡については事前に地主の承諾が必要です。地主の承諾なく、借地権を譲渡すると、契約違反として地主から土地賃貸借契約を解除される危険があります。
借地非訟手続き
地主が借地権譲渡の承諾をしてくれない場合には、地主に代わって、裁判所が借地権譲渡の許可をしてくれます( 借地借家法 19 条)。
この場合、裁判所は、鑑定(うまいことに鑑定料は特に必要ありません)をし、借地権譲渡の承諾料や新地代を決めてくれます。借地人が地主に支払う承諾料は、大体、借地権価格の 10 %位です。地代は税金(固定資産税と都市計画税の合計)の 3 倍位です。
相談者の借地権価格は坪 120 万円(更地価格×借地権割合=200万円×60%)ですから、承諾料は、坪 12 万円位、合計で 360 万円位です。
この手続きは 6 ヶ月ほどかかります。
この手続きの中で、地主は、希望すれば借地権を優先的に買うことができます。その価格は借地権価格の 90 %位です。
従って、借地人は、借地権付建物の買主を捜し、「地主の承諾あるいは裁判所の許可があること」を 条件とする売買契約 を締結し、弁護士に依頼し、この借地非訟手続の申立をするとよいでしょう。
回答2
この状態では、借地権の無断譲渡を理由に地主から、土地賃貸借契約を解除され、土地の明渡しを求められる危険があります。
すぐ、建物の売主と相談し、建物の所有権移転登記を錯誤などで抹消してください。次に、地主の許可があったことを条件とする借地権付き建物売買契約を締結し、上記手続き(地主の許可を得るか、あるいは、裁判所の許可を得る)をしてください。
回答3
相続を原因とする借地権の移転は、法律の力で当然発生することですので、地主の承諾は不要です。従って、相談者、相続人ですから、名義書換え承諾料を支払う必要はありません。
なお、相続人以外の人に対する遺贈については、問題があり、(包括遺贈は除く)地主の承諾が必要そうです。
判決
- 東京地方裁判所平成19年7月10日判決(出典:判例秘書)
(2)被告は,Aの甥であり,Aの遺言によりその全財産の包括遺贈を受けた者である。また,Aが全財産を被告に遺贈する旨の遺言をしたこと自体から,被告とAが親
密な関係にあったことを推認することができる。そして,相続による包括承継であれば賃貸人の承諾は不要と解されるところ,包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有
すること(民法990条)に照らすと,本件においてAから被告への本件借地権の承継につき原告の承諾が必要であると解すべき実質的理由は乏しく,むしろ,形式的に
承諾がないことをもって原告の被告に対する建物収去土地明渡請求を認めることは相当でないと考えられる。
(3)以上によれば,本件においては,本件借地権の譲渡が原告に対する背信行為に当たると認めるに足りない特段の事情があるから,原告による本件賃貸借契約の解除
は認められないと判断するのが相当である。
港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)河原崎法律事務所 弁護士河原崎弘 03-3431-7161