相談:サブリース
私は、不動産会社に勧められて、約100坪の土地にマンションを建築し、不動産会社に一括して貸しました。不動産会社は、u当り2500円の賃料を、10年間保証してくれました。
ところが、最近、賃料が下がったのと、入居率が悪いので、賃料をu当り2000円にしてくれないかと言ってきました。
これでは、10年間賃料を保証した意味がありません。弁護士さんに尋ねると、「借地借家法では賃料の減額請求できる」と言う方と、「10年間は、減額請求できない」と言う方がいて、はっきりしないのです。 法律的にはどうでしょうか。回答
サブリースにおいては、賃借人は、一定期間(下記@の事件では15年、Aの事件では20年、Bの事件では10年)賃料を保証するのですから、賃借人からの、賃料減額を認めてしまうと、保証の意味がありません。さらに、契約上も、賃料減額を排除するようになっているのですから、減額を認めることは当事者の意思にも反します。
しかも、実際のサブリース契約では、借主は、大会社であり、しかも不動産業を専業とする不動産会社です。決められた賃料額も、年額約20億円(下記@の事件)、年額18億円(下記Aの事件)、月額約1064万円(Bの事件) と高額であり、弱者保護規定である借地借家法を適用すべきかは疑問があります。
しかも、借地借家法第3章第2節のの強行法規性を定めた37条では、32条1項が除かれています。
他方、転貸目的ではあるが、賃貸借契約であるから、論理的には、借地借家法32条は、強行法規であり、サブリース契約にも32条1項が適用され、賃料減額請求が認められるとの考えもあります。
この問題については、判例の見解は次のように分かれていました。最近、最高裁は、上記 3 の説を採用し、サブリース契約に借地借家法32条1項が適用され、賃料減額請求できると判決しています。
- サブリース契約は、不動産賃貸借契約ではなく、事業委託契約であるから、借地借家法32条1項による、賃料減額請求を否定する。
- サブリース契約は、不動産賃貸借契約だが、賃料減額請求を否定する。
- サブリース契約は、不動産賃貸借契約であるので、借地借家法32条1項による、賃料減額請求を認める。
しかし、借地借家法32条の適用があっても、同条1項但し書には、「ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と規定されており、実際の賃料減額請求は、相当な期間の経過、近隣の賃料の相当なる低下、賃料が決められた事情などが考慮され、簡単には、認められないでしょう。
下に、判例を書いておきます。判例
- 最高裁の判決(金融法務事情1700-88)
- 最高裁平成15年10月21日判決
賃料につき自動増額特約付のサブリース契約において、借地借家法32条1項(借賃の増減請求の規定)が適用されると判示した。そして、借地借家法32条1項による減額請求につき判断しなかった原判決を破棄し、原審に差し戻した。
- 最高裁平成15年10月21日判決
サブリース契約に借地借家法32条が適用されるが、契約に基づく使用収益開始前には、賃料の増減請求はできないと判示した。
- 最高裁平成15年10月23日判決
賃料につき一定期間の保証が付いたサブリース契約において、借地借家法32条1項が適用され、賃料減額請求できる、相当賃料を判定する際には、賃料保証特約の存在および保証賃料額が決定された事情を考慮すべきと判示した。
- 東京地裁平成13年6月20日判決(出典:判例時報1774号63頁)
そこで、この点についてみるに、前記認定事実によれば、原、被告間の契約は、被告から本件賃貸部分を賃借した原告が、第 三者に転貸することを目的としたいわゆるサブリース契約であることが明らかであるが、本件確認書1、2により、原、被告 間て合意された契約内容は、まさに、被告が、本件地物の被告所有に係る本件賃貸部分を原告に賃貸し、原告が被告に対し、 その対価として賃料を支払うという賃貸借契約そのものであるから、このような建物の賃貸借契約について、借地借家法の適 用があることは、同法1条の規定に照らし、明らかである。
原告による本件賃料減額請求権の行使が、借地借家法32条1項本文所定の賃料減額請求権行使の要件を具備しているか否か について、以下、検討する。
上記規定は、継続的法律関係である建物賃貸借契約における当事者間の利害を調節し、不動産利用関係を合理的に調整する 見地から、契約後に生じた経済事情の変動に応じて既定の賃料を改定するために、公平の理念に基づいて設けられたものであ るから、その適用に当たっては、経済事情の変動の有無、程度はもとより、当該契約成立に至る経緯、当該契約の実質的意味 内容をも考慮して、公平の理念に照らし、上記規定の適用の要件の充足の有無を検討し、相当賃料額を決定すべきものである。 結局、原告と被告は、平成7年7月17日、同日付けの本件確認書2により、本件賃貸部分に係る原、被告問の賃貸借契約の 内容は、本件確認書1の合意内容と同一の内容であることを確認し、本件確認書1で合意した敷金額1億5600万円を支払 うとともに、月額保証賃料についても、本件確認書1において取り決めた基準(1坪当たり月額2万6600円)により、月 額1064万0840円であることを確認し、原告は被告に対し、これを平成7年7月分より、毎月25日限り、当月分を支 払うものとすることが確認され、これにより、原、被告間の本件賃貸部分に係る賃貸借契約の内容が確定したことは、前記認 定のとおりである。
そこで、以上の事実関係を踏まえて、原告による本件賃料減額請求権の行使の適否について検討するに、鑑定人若林眞の鑑定 の結果によれば、本件賃貸借契約が、サブリース契約でない通常の賃貸借契約であったと仮定した場合の、平成7年11月1 日の時点における適正賃料額は、月額603万5000円であると認められ、本件賃貸借契約における賃料保証月額1064万0840円とは、相当の乖離があることが認められる。
しかしながら、
(1)原告は、平成7年7月17日、被告との間で、上記のような経緯の下で、本件賃貸借契約における当 該賃料保証月額が、当時の近傍同種の建物の賃料相場と比較して著しく高額であり、相当の乖離があることや将来の賃料相場 の下落の可能性も十分認識した上で、従前の合意内容等を考慮して、当時の賃料相場とは大きく乖離した賃料保証月額を、10年間に限って合意したものてあること、
(2)被告においても、原告との従前の合意内容を信頼して本件共同事業に彡加し、 本件共同 業のために多額の借財をして、これに資金を投じたことから、原告に対し、従前の合意内容と同一の契約内容にす ることを強く要求し、原口がこれに応じて、上記の時点で本件賃貸借契約の契約内容(賃料保証額、賃料保証期間等)が確定 したこと、
(3)原口による本件賃料減額請求権の行使が上記契約内容確定後約3か月後てあること等
の上記認定の諸点に照 らすと、上記賃料保証月額は、上記のような特殊な事情により形成され、合意された賃料なのであり、もともと近傍同種の建 物の賃料(サブリース契約ではない通常の賃貸借契約における賃料)との関連性は乏しいものというべきであるから、原告が 本件賃料減額請求権を行使した同年10月23日の時点において、経済事情の変動等により、 は近傍同種の建物の賃料に比 較して不相当なものになったとは認め難く、結局、原口による本件賃料減額請求権の行使は、借地借家法32条1項本文所定 の「建物の借賃が、・・・・・不相当となったとき」との要件を満たさないものというベきである。借地借家法32条
第32条(借賃増減請求権) 1 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 2 建物の借賃の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 3 建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の建物の借賃の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた建物の借賃の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 当サイトにおけるサブリースに関する