ゼミ:経営者のための実践経営学(数字で理解する会社の歴史)

はじめに
 会計には「税務会計」と「管理会計」の二つがあります。
「税務会計」は税務署、金融関係、株主など社外に対して会社の内容を知らせるものです。
「管理会計」は会社の内部を管理するための会計手法ですから、税理士の先生はどちらかといえば不得手。したがって、経営者は自分自身の努力を通してこの「管理会計」をモノにしなければなりません
 私もかっては「税務会計」にばかり注意がいっていて、「管理会計」を等閑視していた時期(恥ずかしい話ですが、つい10年ほど前までそうでした)があります。
 社長として管理会計の重要性を見過ごして、すべてを管理者任せしていた当時の資料を再分析してみました。当社は大学を出てから10年から15年の社員を幹部に登用していました。管理者としての基礎訓練を経ることなしに幹部に昇進した彼等の拠るべきものは、ハッキリ申し上げて非営利団体でしかない大学のサークル活動しかなく、そのサークル活動の延長のノリで部下を掌握しようとしたのも無理からぬことでしょう。しかし、それでは営利団体である会社が維持できるはずがない。当時のあまりにも無惨な財務内容(例えをひとつだけ上げれば、カスカスの経常黒字が、会計管理を導入していれば、少なく見積もっても1億円以上の経常黒字を出し得ていたはず)に今更ながら気付き、ああ、管理会計の重要性にもっと早くから気付いていれば、より強固な会社に仕上げられたはずだ、と激しい後悔の念に嘖まれてなりません。そして、分析している過程で忽然と立ち現れた、余りにも情けない経営者としての己の姿に呆然となり、こんな私を信用して会社を預けてくれた先代たち、会社をこれまで支えてきてくれた社員、取引先、銀行の方々に申し訳なくて、首を括りたくなるほどです。しかし、後悔は先に立たず。この経験から、ホームページをご覧になられる経営者の皆さんに、二度と同じ轍を踏んでいただかないよう、経営分析を通じて学び得た「管理会計」の神髄(米原万里さん流にいえば「社長業の産業廃棄物」)を少しばかり詳しくお話しすることにします。
 
 社長業とは本当に辛い仕事です。でもね、従業員たちは社長をどんなふうに見ているのでしょうか。
「経営者っていうのは、なんなんですかね? 俺、顔が見えないんですよ。無論、社長の顔は知っていますよ。俺たちにはわからない、難しい問題を抱えているのでしょう。だけど、なにもやっていないような気もします」(『擬態』北方謙三 文春文庫 13頁)
 どうです? しかし、他人の痛みがわかる感性の持ち主は期待するのが無理だし、社長業の苦しさは経験したことのない人にはます分からないことだから、気にする必要はありません。
 
 社長の仕事をひとことで要約れば、「経営計画を作成すること」に尽きます。
「社長が代わって、やりはじめたことは経費の削減と、事業規模の縮小整理でしょう。(中略) 要するに、目先の金を追うってことだと思います。五年先、十年先のこと考えるの、経営者の仕事じゃないのかな」(『擬態』北方謙三 文春文庫 13頁)
 従業員には、経費の削減と、事業規模の縮小整理が、五年先、十年先のこと見据えてのことだ、というのがわからない。だからこそ経営計画の公表が必要なのです。 経営計画作成には、管理会計の手法が不可欠。是が非でも習得しょう。

もくじ

第一章 経営分析の基礎編

 1)経営分析のすすめ
 2)企業活動は経済学の実践
 3)資金移動表への第一歩(1)
 4)資金移動表への第一歩(2)
 5)資金移動表への第一歩(3)
 6)資金移動表への第一歩(4)
 7)資金移動表作成(1)
 8)資金移動表作成(2)
 9)資金移動表を応用して簡易資金繰表の作成(前期)
10)資金移動表を応用して簡易資金繰り表の作成(後期)
11)数字で理解する会社の歴史(暦年資金移動表)
12)各勘定科目の暦年比較


第二章 損益分岐点分析


第三章 投資効果の測定 


 ここまでの三章を完全学習すれば、あなたの経営分析力は、すでに水準を大きく超えていることになります。これからが、いよいよ奥伝。秘伝中の秘伝です。
 第四章に入る前に、一言申し上げておきます。任意の過去何年間かの経営分析を行ってみると、経営者が、行き当たりばったりの会社経営をしてきたのか、あるいは計画に基づいて、経営の高度化を進めてきたかが、分かります。
 ここに某会社の暦年指標を添付しておきました。
 この会社の経営者ですが、財務指標を見る限り、長い間、いわば行き当たりばったりの経営をしてきたものと思われます。それが、突如として経営計画の作成に目覚め、それに則って事業の制御をはじめたらしいことが、暦年財務指標の数字から伺い取れます。途中から、指標のすべてが、好転しはじめているには、驚きました。
 経営分析とは一言で要約すれば「同業他社比較」、つまり「同業他社と比較して自社の問題点を明らかにして、改善を進めていく道しるべを発見すること」だったのです。

 付属資料−暦年財務指標


 第四章と第五章は、これまでに学習してきたこと、特に「同業他社比較」をキーワードとして、ご自分で研究されることをお薦めします。
 ですから、当分の間  としておきます。
 本当のことを申し上げますと、奥伝をお教えすることが、何だか急に惜しくなってきたのです。……というのは嘘です。
 兎に角、経営分析の項については、しばらくの間、ごきげんよう。

第四章 経営改善計画の作成(短期計画)

1)なぜ予算の作成が必要なのか
2)原価計算とは
2)資金移動表を参考にして、「損益予算」・「貸借予算」の作成
3)資金移動表をもとにして「経営改善計画の作成」


第五章 経営計画の作成(中期計画)


第六章 管理者教育(『外食業「王道」の経営』渥美俊一:柴田書店からの要約) 


私たちの経営研究会HP(HP管理者:中小企業診断士・日本大学講師 佐藤卓)

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