資金移動表への第一歩(4)

今日の主題「短期流動性(流動比率)」

 いま勉強しているのは「財務比率」といいます。財務比率の算出が何故必要なのかというと、自分の会社の数字だけですと、自社の経営状態が健康なのか不健康なのかが分かりにくいからです。同業他社の財務比率と自社のそれとを比較検討することで自社の病をあぶり出し、経営改善の手だてとするわけです


 短期流動性(流動比率)は、流動資産を流動負債で除することから得られます。流動資産も流動負債も、一年以内に現金化される資産ですから、この比率が高ければ高いほど支払能力があるということになり、安全性が高い企業とみなされます。短期流動性で安全性を見る目安は100%以上です。
(計算式)短期流動性=流動資産÷流動負債

A社 X期 Y期
流動資産    47、186    43、647
流動負債 13、097 2、424
短期流動性 360% 1800%

A社の短期流動の数値の高さは異常です。現金商売の小売業に見られるタイプです。
これだけの流動資産があれば、支払の対象である流動負債はすべて賄えますから、本来なら借り入れの必要はないはずです。どうも納得がいきませんね。あるいは回収できない不良債権が隠されてでもいるのでしょうか。
それはともかくとして、損益計算書右側の直接経費・販売費を前期とくらべてみてください。その差額が多い場合は、利益を出すために経費を翌期へ繰り延べした疑いがあります。
流動負債の未払費用の項を見てください。もうお分かりになりましたね。
Y期の異常に高い数値は、未払費用を計上しなかったことからきています。もし仮に未払費用を前期並みに計上したら、Y期の営業利益は15,228千円から7,171千円下がって、流動負債が2,425千円から10,481千円に増え、同時に短期流動性も1800%から416%に変動します。それでもたいした数値ですし、利益だって出ていますから、何故未払費用を計上しなかったのか、いまもって理解できません。

短期流動性(流動比率)の勉強はこれでおしまいです。

「総労働時間」の検討
これはおまけです。
A社の決算書下欄の「総労働時間」で「粗利益(社員が生み出した売上=売上高−仕入高−傭車料)」を除するかことで、A会社の社員一時間当たりの生産性を算出してみましょう。

A社 X期 Y期
粗利(売上−仕入・傭車料)単位千円    129、283    111,648
総労働時間     56、210     44、659
一時間当たり売上高(単位円) 2,300 2,500

一時間当たり売上高の目標数値ですが、人件費は普通、売上高の三分の一を見ています。
一日七時間労働で月二十五日労働日として計算すると
X期の社員一人当たりの売上高は、2,300円×7×25×12ということになり、4、830、000円ということになり、
Y期の社員一人当たりの売上高は、2、500円×7×25×12で、5、250、000円、若干ですが生産性が高まったようですね。
でも、この三分の一しか給料がもらえないとすれば、向上したY期でも従業員一人当たりの貰い分は1、750、000円にしかならなりません。
世の中の平均賃金をY期の売上高に等しいとするならば、
一人一時間当たりの売上高は最低でも5、000円はあげないと、というのがどの業種でも数値目標のようです。
即ち、5、000円×7×25×12で、少なくとも年間一人当たり10、500、000円の売上高は欲しいところですね。
この売上が稼げない限り、社員の給料は増えていかない、ということになります


仮に粗利が変わらないとするなら、労働時間を短縮する以外に、一人一時間当たりの生産性はあがらないことになります。
つまり分子を粗利とすれば、分母の総労働時間を少なくするよりほかに道はない、ということはもうお分かりですね。

では次回からいよいよ「資金移動表の作成」にはいります。

A社 業種 運送業 (単位千円)
資本金10百万円 従業員16名
貸借対照表
X期 Y期 Y期−X期 X期 Y期 Y期−X期
流動資産 47,186 43,647 -3,539 流動負債 13,097 2,424 -10,673
現金預金 20,916 15,788 -5,128 支払手形 5,040 2,160 -2,880
受取手形 0 0 0 未払費用 8,057 -8,057
未収収益 23,893 23,729 -164 短期借入金 0
棚卸資産 2,114 2,114 0 264 264
263 2,016 1,753 0
固定資産 12,685 16,413 3,728 固定負債 59,955 56,235 -3,720
(有形固定資産) 10,592 10,592 0 長期借入金 59,955 56,235 -3,720
車両運搬具 10,183 10,183 0 延手 0
工具備品 409 409 0 0
土地 0 0
建物 0 0
(無形固定資産) 165 165 0 資本合計 -13,181 1,401 14,582
電話加入権 165 165 0 資本金 10,000 10,000 0
(投資等) 1,928 5,656 3,728 利益準備金 685 685 0
出資金 1,061 1,061 0 別途積立金 0
保証金 867 495 -372 繰越利益 -11,378 -9,284 2,094
保険積立金 4,100 4,100 当期利益 -12,488 14,582 27,070
資産合計 59,871 60,060 189 負債・資本合計 59,871 60,060 189
損益計算書
X期 Y期 Y期−X期 X期 Y期 Y期−X期
売上高 167,745 138,059 -29,686 光熱費 0
燃料費 16,275 13,269 -3,006 租税公課 923 -923
労務費 61,677 40,186 -21,491 地代家賃 5,363 5,310 -53
傭車料 38,462 25,308 -13,154 保険料 4,785 400 -4,385
修繕費 7,338 3,616 -3,722 消耗品費 779 779
減価償却費 2,164 -2,164 福利厚生費 5,430 1,464 -3,966
仕入高 0 1,103 1,103 事故費 131 -131
直接経費 34,282 23,564 -10,718 材料費 0
運送原価 160,198 107,046 -53,152 リース料 8,092 8,309 217
売上総利益 7,547 31,013 23,466 高速道路料 9,466 7,302 -2,164
販売・管理費 31765 15785 -15,980 雑費 92 -92
営業利益 -24,218 15,228 39,446 直接経費計 34,282 23,564 -10,718
営業外収益 15723 2434 -13,289 役員報酬 9,870 2,820 -7,050
営業外費用 2365 1691 -674 事務員給与 9,523 3,485 -6,038
経常利益 -10,860 15,971 26,831 賞与 0
特別利益 0 0 0 通信費 2,563 1,255 -1,308
特別損失 1627 1320 -307 広告宣伝費 294 181 -113
税引前利益 -12,487 14,651 27,138 運賃 2 2
法人税 70 70 旅費交通費 30 1,364 1,334
当期利益 -12,487 14,581 27,068 交際費 1,555 424 -1,131
前期繰越利益 -11,378 -23,865 -12,487 会議費 11 11
当期損益金 -12,487 14,581 27,068 水道光熱費 452 370 -82
合計 -23,865 -9,284 14,581 消耗品費 243 152 -91
利益準備金 0 寄付金 0
別途積立金 0 地代家賃 1,687 1,830 143
役員賞与 0 租税公課 4,422 2,450 -1,972
株主配当金 0 減価償却費 0
0 保険料 123 123
0 諸手数料 180 316 136
0 諸会費分担金 419 342 -77
処分合計 0 0 0 雑費 527 660 133
次期繰越利益 -23,865 -9,284 14,581 販売・管理費 31,765 15,785 -15,980
 総労働時間   X期   Y期  Y期−X期
56,210 44,659 -11,551
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