企業活動は経済学の実践
企業活動とは経済学の実践のことです。それでは経済学の実践とは一体何でしょう。経済学の実践とは、「最小の費用で最大の利益をあげる」ことです。「同じ費用をかけるなら、期待できる利益は多いほどいい」とも言い換えることができるでしょう。ところがこの経済学を実際に実践している企業は本当に少なく、当社の歴史もまた論外ではなく、この経済学の原則に反する無駄な投資ばかりがこれまで行われてきました。
経済学の原則に則って忠実に投資を行ってきたなら、ひょっとしたら今より一層社会に役立てる物流会社になっていただろうにと、ショベルカーでも持ってきて大きな穴を掘り、その中に入りたい気持ちです。
「経済学は普遍的な法則を導き出していくという観点から立派な社会科学であり、どの企業にとっても普遍的な示唆を行うことができる学問ですが、経営学はほとんど宗教のようなものである。宗教と大差ないような経営学をまじめに戦略に取り入れてはならない」との『小売業の最適戦略』(日本経済新聞社)での松岡真宏氏の指摘は、まったくその通りです。
企業の創設者は、一度味わった成功感をとかく肥大化しがちです。数字の上でもっと検討をしなければならないところをいい加減にして切り上げ、「私がするのだからこの事業は必ずや成功する」といった、いわば何の根拠もない、単なる自信だけで新規事業を起こしてはその都度失敗し、借金の山を築いてゆくのです。
私が経営する会社の長期借入金残高はほぼ九億円余ですが、これまでに支払った利息総額は十一億五千万円もの額にのぼります。借金を我慢して、蓄積した利益の範囲内で新規事業に乗り出せば、これほどの借金は残らなかったでしょう。「私がするのだから必ず成功する」という経営哲学を元に、すべてを借入金で賄った結果がこれです。
全米ベストセラー『貧乏父さん・金持父さん』の中で、著者が「負債は増やさないで資産を増やすことだ。あれが欲しいこれが欲しいという欲望を抑制し、極力負債を増やさない努力をする。その自制心が金持父さんにする」といった内容のことを書いています。借金の総額を超える利息を払いながらまだ元金は残ったまま、という当社の経験がその言葉を素直に納得させてくれます。
当社のこれまでの経営はやはり、「最小の費用で最大の利益をあげる」・「同じ費用をかけるなら、期待できる利益は多いほどいい」という経済学の実践からはほど遠いものでした。二度と同じ轍を踏まぬため、反省の意味もこめて、次回から実践的経営分析を試みたいと考えます。
資料は現実にある某運送会社の決算書を使用します。