風のささやき

夏 天文

夏の景色

梅雨入りの朝は雨音重いドア

季語:梅雨

風青しシートにうつらうつらの子

季語:風青し

峰雲やほどけ続ける姿なり

季語:峰雲

夏かぜを指先に弾くピアノかな

季語:夏かぜ

涼風やこの指止まれと募りおり

季語:涼風

抱く子いて傘には梅雨の重さかな

季語:梅雨

梅雨じめり喧嘩増えおり家の中

季語:梅雨

梅雨じめり絵本の字さえ滲むかな

季語:梅雨

走り梅雨傘ぶつけ合う通学路

季語:走り梅雨

夏かぜや忘れた物が鳴りにけり

季語:夏かぜ

梅雨じめり洗濯物のカビ仕立て

季語:梅雨

滝行の禊の後の風涼し

季語:風涼し

梅雨じめり肩身狭くててる坊主

季語:梅雨

薫風裡隠れた子らも薄緑

季語:薫風

片蔭や青待つ合間の人だかり

季語:片蔭

梅雨に入るトランプ覚えし子供たち

季語:梅雨

直立す赤子支えよ夏の風

季語:夏の風

子供らのおしゃべりとある風涼し

季語:風涼し

夏雲は位牌のごとき過日呼ぶ

季語:夏雲

いかずちが吠えて紫町の空

季語:いかずち

夢にまで沁み入る今朝の梅雨の音

季語:梅雨

ビルとビル境を無くす梅雨の町

季語:梅雨の町

過ぎ去れば皆懐かしき夏の空

季語:夏の空

カラス二羽デコイとなりぬ梅雨の町

季語:梅雨の町

走り梅雨チューしてた子は高いびき

季語:走り梅雨

修羅多き国となりけり風も死す

季語:風死す

梅雨曇り恨みがましき目の子供

季語:梅雨曇り

夏空は恋しき日々の墓標かな

季語:夏空

泣き虫の子もあやされて薫る風

季語:薫る風

赤子(こ)の爪を切る目は細し青嵐

季語:青嵐

長梅雨や客来ぬ店主にぼやきあり

季語:長梅雨

狛犬の涙の数や梅雨深し

季語:梅雨

夏空や雲の筆なす一文字

季語:夏空

雨白く空縫い付ける梅雨の入り

季語:梅雨

南風回す手にはのんびり観覧車

季語:南風

五月雨やぎゅっと濃くなる葉の緑

季語:五月雨

老いし手をふと照らしてや夏の月

季語:夏の月

駅で待つ腕時計にも夏の空

季語:夏の空

起きられず夏空はるか呼びつつも

季語:夏空

白壁に静かなるもの炎天下

季語:炎天下

雨音の猛りにも倦む梅雨長き

季語:梅雨

野良猫も乾く暇なし梅雨に入ぬ

季語:梅雨

夏霧に迷い溶け込む白き翅

季語:夏霧

かき鳴らすギターの音にも梅雨の鈍

季語:梅雨

梅雨の音の憂鬱離れぬ日曜日

季語:梅雨

邪魔な虫逃げ込んでくる長き梅雨

季語:梅雨

洗い物干す暇くれぬ梅雨の空

季語:梅雨

水際や歓声わんさと炎天下

季語:炎天下

夏の雨どの色傘に集うかな

季語:梅雨の町

合羽着た子には楽しく梅雨の町

季語:梅雨の町

蔓草を伸ばす指かな夏の風

季語:夏の風

雨傘も毎日仕事の深き梅雨

季語:梅雨