風のささやき

ビルとビル境を無くす梅雨の町

その日は日永
シトシトと雨が降っていました

すべての物音は
落ちてくる雨粒が吸収してしまったように静かです

あるいは雨の音が
他の雑音を包み込んでしまったのでしょうか

視覚的にも雨は町に変化を与え

普段は角ばって輪郭がくっきりとした
ビルとビルもその肩を濡らし
輪郭もしっとりと膨らんで
その境が曖昧となり

まるで町一面が灰色に押し込められた
絵画のように見えていました