私的・Y2k問題考



 西暦2000年問題について、掲示板へ書込みする等していたらちょっとしたボリウムになってしまったのでここにまとめてみます。

 ただ、この問題については、うっかりしたこと(特定企業の内部事情など)を公開すると信用リスクを惹起しかねないといった微妙な問題を孕んでいるので、私の勤め先等、詮索しないこと。また、内容についても、「企業IT部門の担当者が現場で見聞きした範囲内で書いているもの」であることをお断りします。経営批判めいたことも書いてるけど、現場から見えないだけでちゃんとやってるかもしれないし。(そうは思ってないけど。)つまり、「現場からはこう見える」ということで読んで頂きたい。


そもそも、何で私がY2Kに関わるようになったかと言うと、要するに職業的必然ってやつです。某企業に就職したところ何故かIT部門に配属されて、えー何でー?、とか言ってるうちに*年経ってしまい、気が付いたら運用SEだって。誰だよそれ。
 最初は社員の部下×2と協力会社プログラマ×2の体制があったんだけど、会社の懐が苦しくなるとそれもぜーんぶ取られてオレ一人になってしまった。もう開発なんかしないからいーもんねーと言っていたら、Y2Kなのでうちが昔作ったプログラムもメンテ(修正)しないといけないらしい。私んとこは体制ないですから、誰がやるんだろうと他人事ながら心配していたら、オマエが全部一人でやれだって。
 普通、そういう時は体制をまず何とかするだろうと思うんだけど、どうもそういうことは考えない会社らしいので、仕方がないからプログラム修正なんかも(いい歳して)することになったのであった。普段の手持ちの仕事は、それはそれでやんなきゃいけないし、どーなってんだ!!!
 でも、うちはまだ手持ちシステムのボリューム小だし、コケてもお客様に迷惑かけることもまずないから気楽っちゃ気楽だけど(だから遅れてます。つーか、プライオリティつけろよってかんじ)、基幹のレガシーシステムを維持してる奴らは本当に悲惨な目にあっている。(事情は同じ。ヒト、仕事、スケジュールの手当て・調整なし。)

1998年12月〜1999年01月  
と言うような中で、たまたま勤め先のホームページを見た所、なんかとんでもないディスクローズをしている。で、衝動的に掲示板Upしてしまったのが、右。
 これが総ての始まりでして、会社がこんな現場の神経を逆撫でするようなディスクローズさえしなければ、こんなことにはならなかったのだ。(ってどんなこと?!!)

b1:うちの会社の2000年対応
すると、レスポンスがありました。RESの主は大手銀行のIT担当らしい匿名の人物。 それによると、大手銀行では第3次オンでシステムを総入れ替えした時に対応済みだから全然問題なしとのこと。また、マスコミ等が世間の不安を煽っているのが気に入らない様子。まあ、大手銀行がちゃんとやるのは当たり前だけど、そういう所ばかりじゃないからね。(現にうちとか).... ってことで掲示板Upしたのが、これ。
 HPのY2K対応スケジュールですが、ここでは「IT部門の努力目標」としているけど、実はどうも、お上の言い分(政府のアクションプランかなんか)をそのまま書いているみたい。こりゃ、もっとずっと悪質ですな。

b2:Re: 反対意見
そうこうしているうちに、意外な展開。上の書き込みを見た週刊某誌から取材依頼があったのだった。で、こーゆー返事を書きました。
 でも、慌てて返事書いたのに反応が全然なかったので、(この時は)無視されたもんだと思っていた。

m1:取材依頼への返事
これは茶々入れResです。どこかの損保でシステム修正しているらしいSE(多分外注)が、そこの会社のHPを見て「こりゃひどい」みたいな書き込みをしていたので、その補足。損保各社のHPは危ない業界のディスクローズの見本なので是非見て頂きたい。

b3:損保はやる気ないみたい
これも茶々入れ。もともと「自動車は大丈夫か」という論議だったんだけど、「来年の正月」が出たのですかさずRes。私は運用だから来年の正月は間違いなく泊まりです。しかも、タダで済むとも思えないから下手すると1週間くらい帰れないかもしれない。そんなことされるとパンツが足りなくなっちゃうなあ。誰か励ましのパンツを送って下さい。

b4:2000年のお正月は、
この期に及んで基本的認識のない人って、やっぱりいるみたいなので、基本的なことを分かりやすくまとめとくのも必要かなと思い、書いてみました。でも、現場でプログラム修正とかテストとかしていないと、コトの大変さはなかなか分からないだろうとも思います。

b5:Re: 00と99の件だけでしょ?
年が明けて、例の週刊某誌を買ってみたところ、私のコメントが出てるじゃないですか。出す前にひとこと言えよー。しかも異様に危機感を煽るような言い方になっている。オレはここまで言ってないぞー。
 ということで、こんなメールを出したのでした。
 すぐに担当編集者氏から返事が来たのですが、それによると他の人の発言をミックスして記事にしたとのこと。また、企業に直接取材をしても門前払いを食らったりしているそうで、プロの取材者にとっても、ニッポンの企業は外からは窺い知れないブキミな所ってことみたいです。そーゆーことしてるから格付落とされるんだよってことが、やっぱり分かってないみたい。

m2:記事を拝見しました
ニッポン企業のやる気のないディスクローズを見ると、なんか凄く腹が立つのですが、何故だろうと考えたところ、要するにこういうことじゃないか。
 ディスクローズ通りに対応できている所も無い訳じゃないんだろうけど、実際捗ってないところが多いのが実状のようです。にもかかわらず過去日付の「対応完了予定日」を掲げっ放しで平気でいるというのは、世間をナメているとしか思えません。このまま最後まで(実状がどうあれ、)「完了」「完了」と言い続けるんだろうね。それで何かあったらどうするんだろう。(予想は右)
 対策費用が業界横並びなのも、要するに、右見て左見て恥ずかしくない額を出してるだけみたいだし。(葬式の香典じゃないんだから...)
 ニッポン人のダメなところがいっぺんに出ちゃってる感じがします。

b6:「経営問題」としてのY2K

b7:実は...
大昔のプログラムがいつまでも動いている問題について。最近はメインフレームの旧資産を再利用できる新技術(CORBAとか)が開発されたりして、御長寿のプログラムはますます長生きしそうで御目出たい限りです。(「レガシー連携」と言えば聞こえはいいけど、単なる旧資産の延命策。)

b8:Re: プログラムの寿命って?
週刊朝日の内部事情については全くの想像、根拠レスです。が、企業内のY2K事情を見ると、典型的な日本的状況を見る思いがするってのは実感なんですね。
 上は現場任せで、現場の実状を把握しないまま勝手に命令を出している。現場は現場で、ヘンな責任感からか、命令や状況がどんなにムチャでも黙々と励んでしまう(涙)。
 こうしてガダルカナルでもインパールでも幾多のニッポン人が玉と散ってしまった訳だけど、こーゆー、玉砕するまでみんなじーっと黙って我慢しちゃうよーなメンタリティーは、そろそろヤバいんじゃないの。

 現場任せってのはニッポンの美徳なのかもしれないけど、結局は上がサボってるだけ。ミッションクリティカルな局面で現場任せをすると、大局的なプライオリティーがグチャグチャになる。で、現場が玉砕するだけで収穫ゼロだったりすると、これじゃ現場は浮かばれない。

b9:週刊朝日のY2K連載が、
1999年05月  
実機テストの光と影

 ゴールデンウイークに実機テストというのをやりました。

 うちの状況は右に掲げた(B10)良くない例そのまんまなんですけど、結局大した問題も出ずに終了しました。現在(これ書いてるのは1999/05/09)バンザイムード真っ只中です。でも、少量データをチョロっと流して問題なかったからって、安心するのはまだ早いんじゃのとも思うんだけどね。
 多分、これから、「実機による日付変更テストでも問題なし」なーんて宣伝するんだろうけど、こう言う宣伝を鵜呑みにするのも危険だと思っています。何をどこまで確認したのかチェックしないとね。
 
 まあ、私としては、アプリさえちゃんとしていれば問題無いことが確認できたから良かったと思ってますけど。でもそれだけって言えば、それだけだからね。
 
 因みに私は運用で日々トラブルに晒されている身の上のため、アプリ担当者を信用していません。常日頃、トラブルで夜中に叩き起こされたり、呼び出されたりしてるし。で、トラブルを出した本人を問い詰めると、「テストしてません」なんてことを平気で言うんだよねー。まあ、アプリ担当者の労働実態を見ると、分かんないわけじゃないけど。つまり、人手もスケジュールも足りない中でやってると、現実問題として、じっくりテストなんか出来ゃしない。で、ロクにテストもせずにさっさとリリースだけして、トラブってからなんとかすりゃいいという行動パターンになってしまう。(アプリ担当者の問題と言うより、マネージメントの問題!とも思う。)
 でも、こっちはそれで夜中に呼び出されたりする訳だから、勘弁して欲しい。Y2Kでそれをやられて、ボコボコにトラブルが出たりした日にゃ、もう、収拾不能でしょう。
 
 テストはちゃんとやって欲しいです。
 
 あと、ついでに。うちの場合、急に実機テストなんかすることになってしまったもんだから、そっちの準備のため、通常のy2kテストの進捗が遅れてしまいましたとさ。(大笑い)

b10:GW実機日付変更テスト





b12:意外と何でもなかった
上の文章を膨らませてこんなの書いてみました。因みに「IT 部門員 K」氏というのは、私の書き込みに対して下のようなResを上げてきた人です。

「プログラムの修正を終えてしまった以上、(中略)高いコストをかけてテストをするよりも、早く本番を迎えて事後に対応したほうが安あがりという認識が、私の周囲では一般的です。」

 うんうん、気持ちはすっげーよく分かるよ。でもねえ....、というところを書いてみました。
 同じ事象に接していても、その人の立場や環境によって見え方感じ方が違ってくるってことの好例ってことで。
b13:補足と言うか、解説。
1999年10月〜  
久っしぶりの更新。

暫く更新しない間に異動なんかしてたりして、現在私は「メインフレーム運用担当者」ではありませーん。
もっとしんどい「ネットワーク運用SE」だったりしています。で、色んなサーバの日付変更テストをされられたり、相変わらずY2kからは逃れられない身の上なんですよぇ。

そろそろY2kもカウントダウン状態ですが、やっぱりカイシャでは色々ヘンなことが起こっています。そこで、身近なトホホ事例のご紹介。
b14:2000年元旦出社体制:こんな奴は来なくていい
 



オリジナルに修正・加筆をしています。
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