Re: 00と99の件だけでしょ?


投稿者 KawKaw 日時 1998 年 12 月 27 日 04:09:24:

> 2000と1999とではどちらが大きいか小さいか
> の件だけならどうにかなるのでは

 私はとある企業の担当者ですが、そういった立場でコメントさせて頂きます。

 「だけ」と言えば「だけ」なんですが、その「だけの件」が無数に存在して、しかもどこにどれだけあるか把握し切れない、その結果どんな事態が生じるか予想できない、というのが問題なのだと思っています。

 「だけ」の問題が何故存在するのかといったそもそもの話については、このボードの過去の書き込みや関連する他のページを見て下さい。

 ある程度の規模(1部上場してるとか)の企業の場合、保有するプログラムは万の単位にのぼります。その中に「だけ」の問題がどれだけ存在するかを正確に把握するは仲々困難です。結局、プログラムのソースを機械的に検索して、怪しそうなものを(文字列サーチで)ピックアップするといった手法で修正対象プログラムを特定することになります。が、こういったやりかたでは、当然のごとく漏れが出るものと思われます。

 要修正プログラムが特定できたとしましょう。

 一つ一つのプログラムについて見る限り、仰る通り、「(20)00と(19)99とではどちらが大きいか小さいか」をきちんと判定できればいいだけの話ですから、修正自体は15分もあればできてしまいます。ただ、プログラムを修正する場合、テストをしないとリリースできませんから、そのプログラムが何をしているかという調査から始まって、テストパターン作成、テスト環境・テストデータの作成・準備、そしてテストの実施・検証という手順を踏むことになります。そういうことをしていると、プログラム修正には、(どんな下らない修正でも)どうしても最低3日や4日はかかってしまいます。(この辺は環境によって変わってくるでしょうが。)
 ここで、1本のプログラムの修正に3日かかるとして、修正すべきプログラムが1500本あるとします。これを1人のプログラマーで対応しようとすると、1500本×3日=4500日必要となります。1998年7月から1998年12月までの6ヶ月間(1ヶ月の営業日を22日とすると132日)で完了するというスケジュールを立てた場合、4500日÷132日=34.1=35人の専任プログラマーが必要になります。
 換言すれば、これだけの体制を確保できなければこのスケジュールは消化不可能ということです。例えば、私自身の問題で言うと、私が勤めている某企業では必要な体制を整えるための端下の費用を惜しむため、この問題についての対応が予定通り進捗していません。

 次に、把握された範囲での要修正プログラムが全部修正完了したとしましょう。

 上述したように、「把握された範囲」というのがそもそもマユツバですから、最後は、修正不要と判断されたものを含めた全プログラムについて、2000年のリハーサルをしないと安心できないという話になります。で、1900年代のうちに2000年代の環境を擬似的に作って、保有する全プログラムについて、2000年のリハーサルをすることになるのですが、これは、言うのは簡単だけど物凄く大変なことなのです。
 まずは手間。
 本番で使用している膨大な種類のデータを、一式、テスト用に用意しなければなりません。しかも、データの中にも「日付」がありますから、ただコピーしただけでは済みません。膨大な種類のデータに対して内容の変更が必要になります。これをテストパターン(リハーサルの設定日時)に応じて用意しなければならないのです。テストデータの日付変更には専用のツールもありますが、(精度の問題等あるので)結局は手作業になります。この手間が膨大。
 次に費用。
 例えば、メインフレームで稼動しているシステムだと、手持ちのメインフレームで日々の運用や開発をしている訳ですから、それとは別にY2K検証用の環境が必要ということになります。メインフレームを維持するには、レンタルでも月当り数千万から数億の費用がかかりますから、これを別途用意するとなると並大抵の話じゃない。で、お金が出ないようなら、本番運用や日常の開発に支障が生じないように、Y2K検証用の環境を無理矢理でっち上げることになりますが、ここで又手間の問題が生じます。
 というような事情でリハーサルが進捗しないと、マユツバな部分を検証しないまま2000年を迎えてしまうシステムが出てきてしまうことになるということになります。

 最後に、自社の責任範囲については、検証が完了したとしましょう。

 とある企業の企業活動というのは、それだけで完結したものではあり得ません。関連する他の企業、或いは、電気・ガス・水道・交通・通信といった社会的インフラが正常に機能していることを前提として成り立っているものなのです。そういった前提条件が機能不全に陥った場合、一企業の企業活動などは完全に吹っ飛んでしまうでしょう、吹っ飛んでしまった一企業が例えば銀行だったりした場合、その社会的影響は計り知れません。

 と、言う訳で、「だけ」の問題と言えばそれ「だけ」なのですが、その量及び範囲が、ただの「だけ」ではないというのが私の認識です。

 


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