2998.将来が見える仏教の歴史



 7月20日のセミナーをまとめてほしいという要望があり、まと
 めてみたのがこの文章である。     Fより

 0.はじめに
  ・現時点での世界の問題は、欧米思想によっている。この思想
   は自然を征服するというものであるが、この思想と石油があ
   り、現在、地球温暖化の問題を起こしている。
  ・世界にはいろいろな宗教があり、仏教人口は少ない。その仏
   教徒はアジアに固まっている。この仏教徒が次の世界の思想
   を生み出すことになる。特に日本である。

 1.インド古代思想
  ・アーリア人の移動はBC15世紀にインドに到達する。
  ・ヴェーダからウパニシャド(奥義書)の哲学ができる。
  ・宇宙原理プラフマンと個体原理アートマンとの合一説に至っ
   て、哲学が深まる。このウパニシャドの解釈を自由に行う思
   想が出てくる。この自由思想の1つが仏教である。
  ・この時代、1世紀前後までがバラモン教の最盛期である。

 2.インド仏教
  ・ブッダは前5世紀の人で、自由思想家の一群の一人である。
   同時代にジャイナ教のマハーヴィーラがいる。
  ・ブッダの基本的立場は「縁起」「中道」「四聖諦」である。 
  ・アショーカ王(マウリヤ朝)が仏教をインド全土に広める。
  ・仏教の分裂:上座部と大衆部との 二部に分裂する。
  ・上座仏教の思想:有部であり、無の大衆部とは違う。

 3.大乗仏教
  ・大乗仏教の思想:「般若経」:空の哲学である。
  ・中観学派 :「般若経」 の空を「空即是色、色即是空」と
   表現した。
  ・唯識学派とは自分の心を観察ないし、 禅定というアプロー
   チから理論化する学派である。
  ・論理学派とは意識下の無意識なアーラヤ識やマナス(意識)
   の問題、もろもろの心作用の分析、認識論などの問題も追究
   学派である。
  ・6世紀に陳那(ディグナーガ)が唯識派と経量部の知識論を
   取り込んで唯識派を発展させた。これが法相宗の基本である。
  ・7世紀にはタントリズム(密教)の思想が主流。マンダラや
   マントラ(呪文)などが整備され、民間諸信仰を統合した。
  ・ナーランダーの仏教大学は5世紀に創立した。

 4.西域、海のシルクロード
  ・北伝仏教の道
   ・2世紀半のクシャーン朝カニシカ王がシルクロードを制覇
    し、仏教に帰依したことで伝播した。
   ・ガンダーラ石彫:多数の仏像がギリシャ系パクトリアの影
    響でできた。
   ・トルファンにはベゼクリク千仏洞がある。
  ・南伝仏教の道もあり、リンガが灯篭になったようだ。
   ・義浄は海のルートでナーランダ大学留学のためにインドを
        往復している。

 5.中国仏教
  ・350年-409年の鳩摩羅什が中国語に翻訳した。これ以後、
   中国語で仏教を論実ことができるようになった。
  ・天台宗は隋の智(ちぎ)が創立
  ・密教は青龍寺の恵果が不空に従事し、その後空海に伝える。
   唐末期には密教は中国社会では衰退する。
  ・禅宗は、慧能の頓悟禅が流行して、臨済宗と曹洞宗ができる。
  ・浄土教は、善導が念仏修行に簡単化した。
  ・中国仏教とは論理より実践を重んじ、より大衆に受け入れら
   れる仏教とした。

 6.日本仏教
  ・神道とは、神道の道教+縄文人のアミニズムを足した宗教で
   ある。
  ・宇佐八幡宮は、祖先崇拝や山岳信仰と結び、神仏混合を推進
   した。
  ・奈良仏教は、国家鎮護を目的とした学問仏教で、南都六宗が
   あり、空の哲学である三論宗、唯識論の法相宗、大小乗を総
   括した成実宗、有の哲学である倶舎宗、人は皆繋がっている
   という華厳宗、戒律を研究する律宗である。
  ・平安仏教は、真言宗の空海と最澄の天台宗である。
  ・鎌倉仏教は、法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、日蓮の日蓮宗
   、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗
  ・江戸の仏教は、布教活動が制限され、明治の仏教は神仏分離
   令で迫害を受ける。

 7.チベット仏教
  ・ソンツエンガンポ王(617 〜649)の時に伝来する。
   同時代にトンミサンポータがチベッ ト文字で仏典を翻訳し
   た。
  ・密教の導入は、8世紀中にチーソンデーツアン王の時にシャ
   ーンタラクシタを迎えて、サム・イエ寺を建立した時に始ま
   る。
  ・13世紀にヴィクラマシーマ仏教大学がイスラム教徒の攻撃
   で、インド仏教は滅亡する。仏教大学の座主シャーキャシュ
   リーバドラは、ネパールを経由してチベットに亡命し、イン
   ド仏教を引継ぐ。
  ・現在のチベット仏教
   ・ゲルク、サギュー、 カギュー、ニンマの四大宗派である。

 8.心理学へ
  ・仏教が確立した心理哲学は現在心理学に継続されている。
  ・連合心理学、実験心理学、行動主義(シカゴ学派)、精神分
   析学、認知心理学を欧米心理学は発展する。
  ・チベット仏教的な心理学が欧米で急速に確立したが、この心
   理学がトランスパーソナル心理学と呼ばれる。

 9.日本の発展について
  ・『摩訶止観』では、瞑想法には「常坐三昧」と「常行三昧」
   の2つに大別されていて、「常坐三昧」は坐禅、「常行三昧
   」は「運動しつづける瞑想法」である。
  ・江戸初期の鈴木正三の思想で全ての職業をまじめに行えば、
   仏行とした。これのベースが「常行三昧」である。
  ・鈴木正三の思想を発展させたのが、石田梅岩で石門心学とし
   て、職業をまじめに行うことは人として正しいとして、商業
   で利潤を出すことも正しいとした。

 10.欧米と日本の違い
  ・欧米と日本の違い
   欧米諸国はキリスト教徒という反主知主義であったが、ルネ
   サンス後、人間が神の変わりに自然を改造するという理念主
   義、効率主義になる。日本は、主知主義の自然を調べて、そ
   の自然の仕組みの中に人間の活動を調和させることが必要と
   いう思想である。
  ・日本の思想は、縄文時代のアミニズム+弥生人の道教神道派
   +聖徳太子の和の定義+怨霊信仰+秦氏の景教:衛生思想+
   中国仏教で内観の確立+本草学+石門心学で、宗教から倫理
   へ進化した。このように日本の思想は多重構造になって、
   かつ自然との調和が重要という思想になっている。

  この日本の思想が世界としても重要になるようだ。

2641.アンコールワットへ
2648.インド文化伝来の道(東南アジア史)
2653.チャンパ史の発掘(日本への道)
2659.インドからムラユへ、そして日本へ(東南アジア史)
2729.仏教とその可能性について
2736.仏教思想史1
2741.仏教思想史2
2750.仏教思想史3
2756.仏教思想史4
2764.仏教思想史5
2769.仏教思想史6
2774.仏教思想史7
2780.仏教思想史8
2799.日本文化優位の根源は
2948.日本の主知主義、欧米の理念主義

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