2729.仏教とその可能性について



ハイビジョン特集 五木寛之 21世紀・仏教への旅(NHK)を
4日連続して見た。この感想というか検討。  Fより

作家の五木寛之さんの最近の本は、仏教書と間違えるくらい仏教の
教えを自分の体験を通じて解説した書になっている。私はサンガを
扱った「風の王国」のようなノンフィクションとフィクションの中
間的な作品が好きであるが、五木さんの仏教書も読んでいる。
しかし、今まで仏典を自習してきたために、最近の五木さんの安直
な仏教解説書をあまり評価していなかった。

しかし、NHKの映像として、五木さんが意図していることが分か
り、その解説で仏教の別の面が見えたような気がしている。
アミニズムなどの自然的な宗教を人間の意識構成などの思索で探り
、その論理化を行ったのが仏教であると考えている。その意味では
、仏神合一と見ていることになる。

その仏教の人間意識・訓練方法である座禅をフランスに伝えて、フ
ランスのカトリックを変えることができたという。フランスに座禅
を持ち込んだ弟子丸禅師がフランスのカトリックを変えたというの
だ。また、フランス人で座禅を宗教としてではなく、自分の生き方
の方法として取り入れているようである。zenという単語が普通
名詞や動詞になっているという。心を落ち着かせるという意味だそ
うだ。

仏教、特に大乗仏教は基本的に人間の内面世界を論理的に説明する
ために思索を重ねてきた学問体系である。このため、紀元前1世紀
から13世紀に渡り、世界最初のインド・ナーランダ仏教大学があ
り、世界から学徒を引き付けたのだ。

この中心的な学問が唯識と華厳である。人間は認知したことを社会
と見ている。これは現代心理学の理論では当たり前であるが、仏教
は4世紀までにこの考えを確立しているし、人間同士は根源的な部
分で繋がっているというユングの心理学も5世紀までに仏教理論に
なっている。16世紀以降、西欧社会は仏教を心理学的な用語で説
明し直して、心理学としただけである。

その後、瞑想だけではなくて、インドのヒンズー教の訓練方法を取
り入れた密教(チベット仏教)は自力でのチャクラ開発を発展させ
た。大乗仏教では仏教者が世衆を助けることになっている。このた
めには、仏教者はスーパーマンになる必要があるとして、人間のエ
ネルギーや天との交信を高める力を増強するために人間のホルモン
分泌箇所を見つけてチャクラとし、そのチャクラを自由に扱うこと
でエネルギーなどを高めることができるようにしたのが密教である。

中国で開発され、日本で完成した自力の座禅は、インドから来た仏
教の瞑想の部分を中国では、それが重要なポイントであるから、
それだけを集中的に訓練すればいいという簡単化を行っている。中
国人の才能はキーポイントを見つけて、それを簡単化することのよ
うだ。

これは現代の中国を見ていても思うのは、キーポイントの簡単化で
コストを削減するのに長けている。日本はその禅に作法を被せて、
体系化・マニュアル化したことで、それにより世界に伝えることが
できるようになったのだ。このため、中国が禅を世界に伝えるので
はなくて、日本の禅師が世界に禅を広めている。

日本が鎌倉時代に生んだ浄土真宗や日蓮宗などの他力信仰が今、世
界的に広まる気配がする。特に創価学会があるために日蓮宗は大き
い。一神教は、神との間は本来、他力本願ではなくてはいけないが
、米国や西欧の精神文化は、自分の希望を持ち、それを諦めないと
いう自力本願を高めないと生きていけないようになっている。
しかし、その張り詰めた心が長続きできずに、心に大きな穴を抱え
ている米国人が多くなっている状況だと米国に渡った禅師は指摘し
ていた。このため、他力への道や座禅に来る人たちが増えているよ
うだ。

禅も自力ではなくて、自他同一と言う。それはそうだ。自力だけで
は涅槃の境地にならない。世界の根源に身を任せないと、自分とい
う存在は小さいために何もできないことを知るだけである。

天の助けと、自分の意思の2つがないと自分が納まらないし、周囲
の世界は変えることができない。

しかし、日本人の多くは、既存の仏教から無信仰へと流れている。
このため、日本人の自殺者が増えているし、「人を殺すのはどうし
ていけないのか?」という小学生の質問に先生が答えることができ
ないことになっている。座禅という手法を中学や高校で、生きる方
法として、宗教とは違う方法で教えるべきではないかと思っている。

神道だけでは、人間が生きることができない。やはり、人としての
苦労や心の問題として、心を強化する方法を探すことが重要である。
それを日本で確立すると、世界に広めることが日本の役割になる。

その意味では自力・他力の両方を論理的に解説することが必要なの
かもしれないとNHKの番組を見て、思った。このコラムでも私が
勉強した心の自由を高める仏教理論を掘り下げて解説する必要を感
じている。


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