2948.日本の主知主義、欧米の理念主義



インドアーリア人がアジア思想を作り、欧州アーリア人が理念を掲
げる欧米思想を作った。      Fより

このコラムの仏教史シリーズをお読みになっている読者の皆様は、
ご存知でしょうが、仏教がアジア全体に広まり、この思想が共通の
文化体系をアジアに齎している。今、イスラム圏のインドネシアや
マレー半島も14世紀までは大乗仏教の中心的な国家であった。

インドも欧州もアーリア人が支配したので、ギリシャ文明を見れば
分かる通り主知主義であったが、ユダヤ人の信仰から一神教が出て
、欧州は神が聖書にあるような世界を作ったという反主知主義にな
る。その後、主知主義のギリシャ文明に復古したルネサンス以降、
欧州は大発展するが、神の代理人である人間が自然を作るという
理念主義におちいる。

インドの仏教思想は革新的な主知主義から出た思想体系であり、人
間の内面を追い求めて出来た理論体系であった。この理論体系を広
めるために、5世紀にナーランダ、ビクラマシーラなどの大学が、
ヒンズー川流域にできたのだ。インド仏教は精緻な理論体系が構築
されていた。もともと1宗派とは1つの理論であった。

しかし、この仏教が中国において実利主義の考えに染まり、理論よ
り、なるべく簡便で早くという実践になり、理論の一部を取り出し
、禅や念仏など簡単で実践しやすい方向に変化したのである。この
教えが日本に入り、天台宗の魔可止観になり、坐禅や繰り返しの行
動が神との対話に必要とし、その魔可止観から鈴木正三により、農
作業も繰り返しであるから、農作業を真剣に行うことが仏行である
とした。

この鈴木正三の思想を商家の石田梅岩が商業などの職業も繰り返し
であるからまじめに行うことが人間の道であるという石門心学を作
り、それが今も日本人の心を支えている。職業即仏業というのであ
るから、欧米基準では無信仰であるという日本人が一番、修行時間
が長いことになる。

しかし、このため仕事を無くした日本人は惨めになる理由であり、
定年退職後におかしくなる理由でもある。職業と言う修行ができな
くなり、心に大きな空白ができるためである。

この思想が欧米人を始め、世界企業が日本人が構成する日本企業に
負ける根本的な原因である。職業即修行と考えには勝てない。長時
間労働を厭わない日本人の根本を支えている原理でもある。

仏教の実利主義化とともに、そのインドの主知主義が中国では自然
を観察して人間に必要な物を見つける本草学、漢方を生み出す。
これは実利に基づいているので中国で大発達を遂げる。その本草学
が日本に導入されると実利よりご隠居の趣味になり、精緻な博物学
になる。ただ、鑑賞するだけの朝顔やツツジと言う植物を商品化す
ることになる。また、穀物類の品種改良に応用して江戸時代は、農
産物の収穫量がその前に比べて、著しく増加している。自然を自然
のままに見るというのが、日本的な見方である。

これに比べて、欧米科学は目的が明確で、その目的に向けて無理や
りに自然を改良しようと言う理念主義が先行している。温暖化は、
CO2が増えたからであるという思想を作り、CO2削減が世界を
助けるために必要であるというように理念化する。この理念に向け
て、科学技術をフル動員する。

日本は、自然を自然のままに見た結果として、人間に役立つ微生物
を見つけて、それを役に立てるという考え方であり、長い自然観察
の経緯があり、その結果としての応用である。厚みが違う。これが
物性研究にも現れている。リチュームイオン電池でも新興米企業が
新しい理論で日本企業に挑戦しているが、長い物性の観察なしでは
理論通りに、自然は動かない。

このような自然観察がない欧米は、目的に向けて自然を見るために
いろいろな微生物の多様な面を見ずに応用するため副作用も出てし
まうことになる。または手近な穀物をエネルギーに使ってしまう。
食糧不足などの問題点を多面的に見ない。

2653.チャンパ史の発掘(日本への道)
2659.インドからムラユへ、そして日本へ(東南アジア史)
2736.仏教思想史1
2741.仏教思想史2
2750.仏教思想史3
2756.仏教思想史4
2764.仏教思想史5
2769.仏教思想史6
2774.仏教思想史7
2780.仏教思想史8
2799.日本文化優位の根源は

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