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読み切り小説
「願わくは」
チェリー&ローランド
(作者:むーむー)

●目次

〇チェリー・素直なエルフ
〇難民キャンプ
〇ひと時の休息
〇気づかぬ想い
〇ライトネス邸襲撃
〇静養
〇ローランド・神の奇跡
〇抗う勇気
〇懺悔
〇夢
〇千年の想い

〇チェリー・素直なエルフ

※この話はシナリオ6以降~シナリオ10、11辺りと、エピローグその後以降の話となります。

チェリーはライトネス邸でメイドとして雇われている珍しいエルフだ。
つい最近雇われたばかりだ。

容姿はかなり可愛く、ピンク色の髪をしており、背はかなり低い。
肉付きはエルフとしても痩せているため、慎ましい方といえる。
小動物を思わせる雰囲気の娘だった。
本人は気付いていないが、人に物を頼む時の仕草や物腰がかなり可愛いく、
ブラスの男たちにはそこそこ人気で、チェリーの頼み事はみんなよく聞いてくれた。
男の庇護欲をそそるタイプだ。

性格は素直で、穏やか。面倒見がよく、頑張り屋だ。
また、きめの細かい気配りの出来るほうで、ライトネスが用事を言い付ける前に
先回りして用意しておくような、そういう娘だった。
ライトネスは家のことはすぐにチェリーに頼りきりになる様になった。

年齢は120歳。人間で言えば15歳といったところだ。まだまだ若いエルフだった。
生まれはカノンのカドノアの西にある森だ。
墳墓群が近くにある森の中の20人程度の小さな集落だった。

エルフといえば弓使いであったり、精霊使いであったり、戦士であったりと、
みな一様に戦えるイメージがあるのだが、チェリーはそういう適性には恵まれなかったエルフだった。
親としては成人になる前に、何か適性を付けさせたかったのだが、間に合わなかった。
真面目に戦いの技や精霊魔法に取り組んではいたのだが、能力は開花しなかったのだ。
狩りの為の弓くらいは引けるが、戦いに向くかといえば、首を横に振らざるを得ない。
正直、戦いや争いに向く性格でも無かった。
闘争心などは全く無い。
どちらかというと臆病で、戦いとなると震え上がるような娘だった。

さらに言えばかなり素直な性格だった。
素直過ぎるところがあり、他の者の言うことをホイホイ聞いてしまう。
悪い男に騙されやしないかと、親としてはちょっと困っていたところはあった。
それでもなんとか幸せに暮らしている、そんなエルフだった。

1年ほど前、その幸せな生活は消え去った。
森の集落が人買いに襲われたのだ。
人買いとは奴隷商人に売るための商品を狩る者たちだ。
人狩りのほうが正しい表現かもしれない。
かなり残虐な人買いで、抵抗する者は容赦なく殺された。
集落のエルフの多くは戦う能力を持っていたので当然死力を尽くして戦った。
戦えば戦うほど殺されるだけだった。捕えられた者は商品として扱われた。
男は殺されることがほとんどだが、一部肉体労働用の奴隷として売られた。
女は愛玩用の奴隷として売られるか、その場で慰み者になって人買いのおもちゃのように扱われた。

戦う能力も無く、集落の隅でうずくまって震えていたチェリーは、あっさりと商品として捕らえられた。
殴りつけるまでも無く、言うことを素直に聞いたので、酷い目に合わされなかった。
人買いの方が戸惑うくらいの素直さだった。逃げようともせず素直に付いてくるのだ。

容姿が良かったので、これは高く売れそうだ、ということになった。
男を知っているか問われ、正直に清い体であることをチェリーが言うと、人買いたちは満足したようで、
チェリーはそのまま丁寧に扱われた。清い体は高値が付くのだ。
その後、愛玩奴隷として奴隷商人に売られていった。

奴隷商人は最初のうちは容姿が可愛く、清い体であるため、これは高く売れそうだと喜んでいた。
また、逃げたりもせず、言うことを良く聞く娘だったので、用事を言い付けたりして便利に使っていた。
何しろ外に出してもちゃんと戻ってくるのだ。
魔法の適性や戦いの適性もほとんど無く、逃げようが無かったというのも大きい。

そのうち奴隷商人は困惑することになる。思ったより売れなかったのだ。
若干貧相な体と言えなくもない。だが、性格は極めて素直で、言うことを大抵聞いてくれる娘だ。
多分、買われた後は、何でもしてくれて良い娘だったと、評判を得るはずなのだが…。

これで売れないのは値段が高すぎたかと、少し値を下げたのだが、それでも売れなかった。
魔法や戦いの能力が無い方が逃げられないので、だいぶお買い得なはずだった。
普通は魔法を使えなくしたり、体の一部に傷を付けたりするなどして、
能力を削ぐ処置をするのだが、その心配も要らない正真正銘の傷の無い体なのだ。
仕方無く、だいぶ値を下げた。それでも売れなかった。

そうこうしてるうちに1年近く過ぎようとしていた。さすがにそんなに居つかれても困る。
元手がかかった上に、維持費もかかる。とはいえ、大して量を食べない娘だったが…。
他の娘の面倒を見てくれたりしていたので、いると楽な娘であることは確かだった。
面倒を見ている他の娘の方が先に売れていくのだ。困った事だった。

自分の物として扱うかとも考えたが、それだとだいぶ体つきが物足りないなと悩んでいた時、
盗賊風の男が客として現れて、チェリーと何やら話し込んでいた。
これは高く売れるかと思って維持費分くらい取り戻そうとしたら、難色を示されたので、
慌ててその値段のままにした。
結局盗賊風の男がチェリーを買っていってくれた。
奴隷商人はほっとしていたのだった。

チェリーとしては、買ってくれた面々が、良い人そうで良かったなと思っていた。
酷い目に合わずに、ちゃんと扱ってくれた上に、鎖も解いてくれた。
元々逃げる気は無かったが、歩き辛くないのはありがたかった。
「君は解放された」と言われ、チェリーはむしろ困ってしまっていた。
帰る所もなく、このあと自由になっても、生活のアテが無かった。
何しろ戦いや魔法の能力を持っていない。
お手伝いをちゃんとするくらいしか出来ず、放り出されても一人で生活していく能力が無いのだ。
また人買いに狩られるだけな気がした。
次に捕まった時に乱暴なことをされたらと思うと気が気で無かった。
一緒に付いて行きたいと言うと、快く了承してくれた。正直ほっとしていた。
そんな経緯を経て、チェリーはライトネス邸でメイドとして働くことになったのだった。
チェリーは、ライトネス邸に仕えて、色々教えてもらいながら仕事をするのが楽しかった。
チェリーは戦いの能力は無かった分、家の手伝いなどはちゃんとしていたので、
ライトネス邸でメイドの仕事をするのは家事の延長線上と言えた。
あっという間に仕事を覚えていった。

ライトネスは家事をほとんどしたことが無いそうだ。
聞けば生まれは人間の貴族の女性で、家には使用人がいるのが普通。
家事はしてもらうものだったとか。
一時期、騎士になるために別の家に奉公したことがあるそうで、その時は家事というよりは、
仕える騎士の用事を言い付かったり、武器や防具の手入れをしたり、
同行して雑用全般をするという、そんな生活ならしたことがあるらしい。
「結局、家事は全く分からないな」と笑って言われた。
であれば、家のことは全部自分がしようと、チェリーはきちんと家事をこなしていった。
メイドとして雇われているということはあるが、言われなくても全部やろうという気になったのだ。
家事をしたことが無いなら、何を命令したら良いか分からないだろう。
そんなこともあり、チェリーは素直で気が利く、自分でやることを見つけるタイプの、
良いメイドとなったのだ。

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●本コンテンツについて

・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。

・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
 楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。

●本コンテンツの著作権等について

・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
 むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
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●使用素材について

・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。

【プレイヤー】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)

【挿絵・イラスト】

・マーコットP
・むーむー

【キャラクター(エモーション・表情差分)】

・マーコットP
・むーむー

【使用ルール・世界観】

・ロードス島戦記
 (C)KADOKAWA CORPORATION
 (C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
 原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
 出版社:角川書店

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【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】

・むーむー

【ショートストーリー・小説製作】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
 (むーどす島戦記TRPG会)

【製作】

・むーむー/むーどす島戦記TRPG会

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