御遊戯結社
トップ
⇒
むーどす島戦記リプレイ ⇒ 「願わくは」
←[ 1話前の話へ]
[このページ]
[次の話へ]→
読み切り小説
「願わくは」
チェリー&ローランド
(作者:むーむー)
●目次
〇チェリー・素直なエルフ
〇難民キャンプ
〇ひと時の休息
〇気づかぬ想い
〇ライトネス邸襲撃
〇静養
〇ローランド・神の奇跡
〇抗う勇気
〇懺悔
〇夢
〇千年の想い
チェリーは難民の炊き出しキャンプ地では、お世話役として皆に慕われていた。
いつでも穏やかで、細かいことでも気にかけてくれる、頑張り屋の可愛いエルフだ。
慕われない訳が無かった。
ローランドはその姿を好ましく見ていた。
小柄な体でちょっと頼りない感じに見えていたが、勘違いだったと認識を改めた。
ある時の事、そうしていつものようにキャンプ地でローランドが様子を見に来ると、
ふらふらと歩いているチェリーの姿を見かけた。
様子がおかしいと思ったので、チェリーを近くの大木の根元の所に座らせ話を聞く。
聞けば、ここ3週間ほど、休んでいないし、もっと聞くと、寝てもいないと言うのだ。
ローランドはびっくりして思わず叱りつけてしまった。
「何をやっているのですか、チェリー殿! 3週間も寝ないなど死んでしまいますよ!」
「…? あ、えっと…先ほども言いましたが、3週間休んでいないだけです…」
「同じ意味でしょう!?」
「…えっと…エルフは寝ないで良いのです…。そういうものなのです…」
「そうじゃない! 寝るとか寝ないじゃない! 休息を取りなさいと言っているんです!
3週間も働きづめなど、体をおかしくするに決まってるでしょう!」
「…あの…でも…」
「でもも、何もない! 現にふらふらしながら歩いていたでしょう!
疲れているんです!休みなさい!」
「…ご、ごめんなさい…」
ローランドがかなり怒ってるように見えたので、チェリーはどうして良いか分からなくなる。
さすがに24時間休まず働いているという意味で言った訳では無い。
ご飯を食べる時とか、仕事がそんなにない時は、30分程度座っていたりはしていた。
だが、そもそもエルフは寝なくて良い種族だ。もちろん疲れを取るために、
体を休めたり瞑想はする。
だがそんなに長い時間必要かと言うと、長くは要らないものなのだ。
人間は8時間程度寝る必要があるらしいが、そこまでは要らないのだ。
そういう意味では、瞑想や休息のため、数時間のまとまった休みを取ってはいない、
と言ったつもりだったのだ。
元々、ライトネス邸のメイドの仕事の時は「休み」という概念が無い。
1人しかメイドがいないのだ。
ライトネス達が家にいる間はお世話をすると決めていたので休んでいる暇など無い。
とはいえ、ライトネスたちが何週間も屋敷にいるなどということはそうそうなく、
何も仕事がない時は、ぼーっと過ごすようなことも多かった。
その時がいわゆる「休み」だった。
雇ってもらえるだけ幸せだと思っているチェリーは、交代のメイドが必要だとか、
休みを週に1日もらいたいだとか、そんなことは思い浮かびもしていない。
そういう意味ではこのキャンプ地では、それこそ休んでいる暇など無いのだ。
ローランドに怒られているのは何となくは分かるのだが、どうしたら良いのかは、
分からなかった。
「チェリー殿? 良いですか? 大事なのは体なのです。体が資本です」
「はい…」
「鍛え上げられたこの肉体こそが資本です」
「私は、そこまで鍛えていないです…」
「なら、なおのことです。鍛えてないなら、休まないでどうしますか?」
「えと…はい…」
「ということで、今すぐ、寝てください」
「…え?!…でも」
「でもも、何もない!」
「…はい…寝ます…」
チェリーは素直だった。言われたら言うことを聞こうとは思っている。
だが寝るのは躊躇していた。
ローランドに何かされるとは思えない。
というか、そういうつもりで口籠ってる訳では無い。
男性の前で寝るのがちょっと恥ずかしいだけなのだ…。
「…あの」
「安心してください。ちゃんと危なくないかは見てます故、ゆっくりとお休みください」
「…はい」
――その…見られるのが一番恥ずかしい…。
そう思いつつも、チェリーは素直に、木にもたれかかるようにして、目を閉じる。
――なんだろう…あれ…吸い込まれる…。
チェリーはあっという間に眠りに落ちていた。
何やら温もりを感じるようなそんな穏やかな時間を過ごした。
チェリーが起きたのは数時間後だった。こんなにぐっすりと眠ってしまったのは久しぶりだった。
ふと隣を見ると、ローランドも木にもたれかかって座っていた。
チェリーとローランドの体はくっついている訳では無い。
気を使って、ちょっと離れた所に座っているようだった。
ローランドは極力こちらを見ないようにしてくれていたようだった。
チェリーが起きたことにまだ気付いていない。
見られていなくてちょっと安心した。
衣服の乱れなどがないか、少し整えてから、ローランドに声をかける。
「おはようございます…」
「おう。チェリー殿。お目覚めになられましたか。よく眠られていたようです…」
「はい…なんというか…びっくりするくらい深く眠ってしまいました…」
「でしょうとも…。疲れというものは、目に見えないものです故。
ちゃんと眠るのは良いことです」
「はい…分かりました…。これからは時折眠ることに…」
「時折ではダメです。毎日、寝なさい」
「え…でも、あの、エルフはそんなには…」
「でもも、何も、無いのです。何度言わせるのですか…。
あなたは無理をするお方のようだ…。毎日、寝なさい」
「はい…」
ちょっと腑に落ちない気もしたが、ローランドに言われたので、
まずは寝てみることにしたチェリーなのだった。
←[ 1話前の話へ]
[このページ]
[次の話へ]→
●本コンテンツについて
・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。
・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。
●本コンテンツの著作権等について
・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。
●使用素材について
・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。
【プレイヤー】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)
【挿絵・イラスト】
・マーコットP
・むーむー
【キャラクター(エモーション・表情差分)】
・マーコットP
・むーむー
【使用ルール・世界観】
・ロードス島戦記
(C)KADOKAWA CORPORATION
(C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
出版社:角川書店
【Web製作ツール】
・ホームページデザイナー22
(ジャストシステム)
【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】
・むーむー
【ショートストーリー・小説製作】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
(むーどす島戦記TRPG会)
【製作】
・むーむー/むーどす島戦記TRPG会