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読み切り小説
「願わくは」
チェリー&ローランド
(作者:むーむー)
●目次
〇チェリー・素直なエルフ
〇難民キャンプ
〇ひと時の休息
〇気づかぬ想い
〇ライトネス邸襲撃
〇静養
〇ローランド・神の奇跡
〇抗う勇気
〇懺悔
〇夢
〇千年の想い
チェリーは、ずっと、夢を見ていた。
最初は何もない空間だった。
虚無、だった。
何もかもが足元から崩れゆき、何もない空間になっていた。
ただ、自分という存在があると、認識しているだけの空間。
それ以外は、何もない空間だった。
気持ちだの、風景だの、何だのが、有るとも思わない世界。
自分がいるだけの世界だった。
――
だいぶ長い時間そこに漂っている気がする。
時折、部屋に寝かされている夢を見た。
誰かが見守ってくれているようだった。
その顔を見た途端、世界がすぐさま暗闇に戻った。
何か想いがある訳では無かったが、その顔を見たくないという何かの意思が働いてるかのようだった。
世界は、相変わらず、虚無のままだった。
――
また夢を見た。
小さな虫のような、光の粒のような、何かが、その暗闇の中で、ほんのり輝いていた。
周りには何もない。照らされても、映し出されるものは、無かった。
音も何もない。世界は、虚無のままだった。
だけど、何故か、温かさだけは、感じるようになった。
――
夢を色々見た気がする。
光の粒に照らされて、ちょっとずつ、世界に何かが生まれていく夢だった。
夢の中はセピア色の世界だった。古ぼけたそんな世界に見えた。
暗闇の中で浮かんでは消える夢だった。
森が見えた。集落が見えてきた。
弓を射っている自分も見えた。そうだ、あれが自分だ。
何故か丸まっていることが多かった。何でだったろう、良く分からない。
小っちゃいな、と思った。
3人でご飯を食べていた。
思い出した、これが両親だ。優しかったな、と思った。
色々教えようとしてくれていた。
頑張ったけど、あんまり出来なかったような気がしてきた。
森が焼けていた。
丸まっている自分が見えた。
何故か人間に付いていっているようだった。何でだったっけな。
色々聞かれたような気がするけど、思い出せない。
街の中にいた。お使いをしている夢だった。
意外と楽しかった気がする。
でも、その後、何故か牢屋のような所にいた。
何だろう、変だな、と思った。
お屋敷の中にいる夢も見た。
自分はメイドの恰好をしていた。
そう言えば、そういう仕事だった気がする。
頑張ろう、ちゃんとしよう、って張り切っていた気がしてきた。
森の中でテントの近くでご飯を作っている夢も見た。
周りを見る。隣に白い鎧を着た男の人がいた。
あれ、白いな?
そう思った途端、世界は急に色付いた。
今までのセピア色でなく、美しく、鮮やかな彩りが世界に与えられたのだ。
何故だか、その瞬間から、色々な気持ちも思い出してきた。
周りの香りなども思い出してくる。
音も戻ってきた。
暗闇の中で浮かんでは消える夢でなく、自分がその世界に入り込んだような夢になった。
色々なものがどんどん取り戻されていく。
そして、それを嬉しい、と思うようになっていた。
夢の続きが見たくて仕方がなかった。
一緒にテントを張っていた。
慣れない自分を後ろからちゃんと見守っていて、すぐに手助けしてくれるような優しい男の人だった。
一緒に誰かのお世話をしていた。
困っている人たちの話を聞いて、その男の人と2人でよく相談していた。楽しかった。
一緒に肩を並べて木の根元で寝ていた。
あれ、なんかすごく幸せそうな寝顔をしている。寝てる自分の顔って、こんななのかな?
一緒にご飯を食べていた。
凄くいっぱい食べてくれる人だった。美味しいって言ってくれた。嬉しい。凄く、嬉しい。
一緒に焚火を見つめ合っていた。
何かを話した気がする。凄く大事な何か…。生きるために必要な、大事なこと。
一緒に、一緒に、一緒に……。
チェリーは目覚めた。
体は動かなかった。
綺麗な女の人が抱き起こしてくれた。…セラフィさんだ。思い出した。
自分の体を見た。元々細い体だったけど、もっと細くなってしまっていた。
セラフィさんが支えながらご飯を食べさせてくれた。
しばらくはそうしましょうね?と言われた。
ちょっと恥ずかしかったけど、自分では起き上がれなかった。
力がまるで入らないのだ。
そのうち、色んな人が変わる変わるお世話をしてくれるようになった。
ライトネス様や、ルーシアさん、マーコットさんや、クリスさんや、クエリッサさん…主に女の人だった。
男の人にお世話をされるのはちょっと恥ずかしかったので、それはありがたかった。
アンスリュームさんはしばらく不在にしているらしい。会いたいな、と思った。
巨悪の討伐が終わってから、2カ月が経とうとしていた。
チェリーは1人で生活できる程度にようやく体力が復活したのだった。
――
巨悪の討伐から2か月後。
チェリーはラーダ寺院で働いていた。
小さな御用を聞くような仕事だった。
ライトネス邸に戻るのは、色々辛いことも思い出すだろうということで、チェリーはしばらくラーダ寺院で生活することになったのだ。
ルーシアは定期的にブラスとリスモアのラーダ寺院を行き来するようになっていた。
修行のし直しなどをしなくてはならなかった。
なので、付きっ切りでチェリーのお世話は出来ない。
ライトネスとルーシアは、カルスやセラフィにチェリーの面倒を見てくれるようお願いをした。
無理な仕事はさせないよう、頼むのも忘れなかった。
元よりそのつもりだった2人は快く了承してくれた。
その頃、ライトネスは、山の上に新たな屋敷、というか城のようなものを建てることに決めていた。
それが出来るまでを目安に、ラーダ寺院で預かってもらうこととなった。
大体1年はかかる見通しだった。
この頃のチェリーは、お世話をしてくれた人に恩を返そう、というような気持ちだけで、働いていた。
チェリーはすぐに頑張ろうとしてしまうので、ルーシアがよくたしなめていた。
正直、ルーシアも頑張り過ぎるタイプだ。2人まとめて、カルスからよく叱られていた。
セラフィは苦笑いしていた。
――
巨悪の討伐から3か月後。
チェリーは夢を見た。
ローランドと2人でいる夢だった。
ラーダ寺院で働いてるチェリーが、何故かローランドに叱られている夢だった。
「チェリー殿?」
「はい……」
「無理をするなと、あれだけ言ってるのに、なに故、無理をしているのですか……?」
「……えと……頑張らないと、お世話してもらってるだけでは申し訳ないなと……」
「まさか、とは思いますが、寝ていない、などということは有りますまいな?」
「……あ、えと……。休んでは……います」
「嘘の香りがしますな。なに故、“寝ている”と言わないのですか?」
「……寝ては、いますよ?」
「無論、毎日でしょうな?w」
ローランドの笑顔が怖い。
「……えと……でもですね……」
「でもも、何も、無いのです」
「はい……あ、やっぱりその……」
「言葉を変えてもダメです。
……チェリー殿は、私の言うことは、もう聞いてくださらないのでしょうな……。
寂しい限りですな」
「寝ます。すぐ寝ますから。毎日ちゃんと寝ます。本当です」
「そうですか。それは、嬉しいですな。
ちゃんと毎日見ています故、ゆっくり、お休みください……」
「……はい……w」
目が覚めた。涙が出ていた。嬉しかったのだ。
これからは毎日、ちゃんと4時間以上寝よう、と決めたのだった。
それをルーシアやカルスに伝えたら、物凄く叱られた。
今まで何をしていたのかと。
最低6時間以上は寝るように言いつけられた。
チェリーは素直にそれに従うことにしたのだった。
――
巨悪の討伐から半年後。
チェリーはまた夢を見た。
毎日きちんと寝ているので夢を見る回数は増えていた。
今日の夢は、ローランドと2人でいる夢だった。
ワクワクした。
救貧所という名のキャンプ地で働いてるチェリーとローランドが一緒にご飯を食べている夢だった。
何となく、炊き出しをしていたころのキャンプ地のような感じだった。
チェリーは自分の器にシチューを入れていた。
2すくいくらい、入れる。もう十分かな。
ローランドさんがじっとそれを見つめている。瞬きせずだ。何か圧力を感じる。
もう1すくい、入れる。これで大丈夫です…。
ローランドさんがじっとそれを見つめている。瞬きせずだ。何か圧力が増した感じがする。
さらにもう1すくい、入れる。これ以上はさすがに…。
ローランドさんがじっとそれを見つめている。瞬きせずだ。そろそろ瞬きして欲しい。怖い。
最後にもう1すくい、入れる。ていうか、溢れちゃいます。本当に無理です……。
ローランドさんがにっこりと笑う。
「おあがりください」
「えと……いただきます……w」
絶対食べ切れない……どうしよう。残したら叱られる……。
躊躇しながら、頑張って食べる。
ローランドさんが自分の食べている横で、シチューをよそって食べている。
結構な量入ってるようだった。言ってくれたら、よそうのに……。というか、よそいたい……。
ローランドさんが食べ終わってお代わりをしている。
あれだけあったのに、と思いながら自分ももぐもぐと食べる。
ローランドさんがさらにお代わりをしている。美味しいって言ってくれた。
……嬉しい……。私も頑張って食べる。
ローランドさんがまたお代わりをしている。何杯目だっけ。満足そうに食べてくれてる。
よーし……残さず、食べるよう、頑張ろう……。
そうこうしているうちに食べ終わった。もう、お腹がはち切れそうだった。
「頑張って食べましたな。ちゃんと体が必要としているのです。これからもたくさん食べてください」
「はい……」
「鍛え上げられた体こそが、資本ですぞ?w」
チェリーは自分の体を見つめた。
体が小さいのはもうどうしようもない。
元々細かったが、腕とか足が、だいぶ細くなってしまっていた。
出る所も、正直、出ていない。ちらっと、ローランドさんを見る。
やっぱり人間の男の人は、ふくよかなのが好きなのかな……と思ってしまう。
「もうちょっと、お肉がある方が、好き、ですか……?」
「好きですな」
「……」
「特に、腕、足、辺りに筋肉が必要でしょう。もっとがっつりと肉をつけましょう」
「え……?そっち……?」
「……何だと思ったのです?」
「いえ、その……はい……w」
「……チェリー殿は、そのままで、十分、可愛いですぞ?」
「……!!」
チェリーはびっくりして起きてしまった。
はっ!夢だった!ああ……何で起きちゃったの……?
目をつぶる。残念ながら全く眠くならない……。
体中が熱い。ドキドキしてしまって、まるで眠れなかったのだ。
チェリーは色々思い出した。
そう言えば、ちゃんと食べないといけなかった。
それに、炊き出しとかもまた、行いたい、と思うようになっていた。
聞けば、難民キャンプは救貧所と名前を変えて、新しい組織になっているという。
そこでお手伝いしたいな、と思うようになっていた。
チェリーはルーシアとカルスと相談して、毎日、救貧所の炊き出しのお手伝いをすることにした。
もちろんラーダ寺院のお手伝いも続ける。無理のない範囲でやるように言われた。
チェリーは毎日のように炊き出しを手伝った。
そこで、みんなと一緒にご飯も食べた。
なるべく無理して多くよそって、頑張って食べた。
そのおかげもあって、チェリーの体は、元通りに可愛らしい、小動物のような姿に戻ったのだった。
ルーシアはその姿を見て、涙ぐんだ。
時間はちょっとかかったかもしれないけど、まだ傷はきっと癒え切ってはいないだろうけども、チェリーが元気になってくれたのが、本当に、嬉しかったのだ。
その話を聞いたライトネスは物凄く喜んだという。
もし良ければ、ということで、チェリーにお使いを頼むようになった。
救貧所で困ってる人たちなどの意見を聞いて、メモを取って教えてくれるよう依頼したのだ。
チェリーはこうして、ラーダ寺院と救貧所を行ったり来たりしながら、色んな人と会話をしていく日常を取り戻していった。
――
巨悪の討伐から1年が過ぎた。
ライトネス城とも言える、新しいライトネス邸が完成した。
街の様子もだいぶ変わってきた。
ブラスは街といって良い規模になって来ていた。
チェリーは当初の約束通り、新しいライトネス邸でメイドとして仕事に戻ることになった。
その頃にはだいぶ心の傷も癒えて、明るくなってきていた。
どうしても救貧所の仕事は続けたい、というので、ライトネスは無理をしてはならないと言いつつも、チェリーの願い通り、両方の仕事をさせることにした。
チェリーはちゃんと寝て、ちゃんと食べながら、しっかりと仕事をこなしていった。
その頃、ファリス神殿が新しく改築され、セントローランド神殿と呼ばれるようになっていた。
また、それと同時に、ブラスの南側の河の向こう側、ローランドが奇跡を行った場所にセントローランドの像が建てられた。
チェリーは神を信じてはいなかったが、そのローランドの像には興味が有ったので、見に行ってみた。
かなり大きな像だった。2階建ての建物と同じくらいの高さ、5~6mはある純白の像だった。
片腕にメイスを構え、左腕は無く、凛々しいローランドの姿を形どっていた。
――やっぱりローランドさんは、格好良いなぁ……。
チェリーはそんなことを思いながらその像を見上げていた。
ローランドはみんなの英雄だ。
自分だけが独り占め出来るような存在ではないのだ。
そういう風に思えた。
だからこそ、こうして像が建つのだろう。
エルフには神を崇めるという概念が無い。
だが、英雄であるローランドがこうしてみんなに認められ、凄い人だったのだと言われるのは、嬉しかった。
像を見ると、左腕が無い。
あの時、切り飛ばされた左腕。
あの戦いが一週間後であれば、左腕は元に戻っていたらしい。
そうしたら左腕がある像だったんだろうなと、思った。
チェリーを救った時にローランドが持っていた盾は、今はチェリーの部屋に置いてある。
半年くらい前、ルーシアが「これを」と言って、チェリーに渡してくれたのだ。
チェリーは盾を受け取ると、しっかりと抱きしめた。
自分の命を救ってくれた盾。あの人の形見。宝物だと思った。
この像には盾が無い。
この像を見てローランドを知る人は、彼があの盾を持って戦ったことは知らないだろう。
私の盾、私だけが知る彼の本当の姿、私だけの英雄。
チェリーは、その盾を自分が持っている、ということが、密かな自慢だった。
像の周りをよく見ると、落ち葉などが風に吹かれて溜まっていた。
ここは河の近くだし、森も近い。
海から吹いてくる風が、河の辺りで強くなり、森の木々の落ち葉を運んできてしまうのだろう。
時折、掃除をしよう、と思った。
チェリーはそれからというもの、ライトネス邸での仕事をして、救貧所で炊き出しを手伝った後、ローランドの像を掃除したり花を添えたりするのが、日課となった。
――
巨悪の討伐から1年半が過ぎた。
チェリーはその日もまた夢を見た。
穏やかな気持ちになっていた。
こんなに優しい気持ちになることなんて、滅多に無い気がする。
何か、光り輝く中で、ローランドと2人で話していた。
凄く、幸せな気分だった。
「今日は、何やら、良い気分になりますな」
「本当に……いつもこうなら良いのに……」
「ですな……。
チェリー殿は、最近、調子が良さそうですな。ずいぶん見違えられた」
「はい……ちゃんとローランドさんの言いつけ通りに、きちんと生きてるんですよ?w
いっぱい寝て、いっぱい食べてますw」
「それは、何より……」
2人で肩を並べて座る。
チェリーはローランドの肩にそっと頭を預ける。
暖かかった。
――ずっと、こうしていたい。この夢は、覚めないで欲しい。
……今日は驚かないようにしよう。覚めたらもったいない。
チェリーはうっとりとしたように体を預ける。
ローランドは不意に曇った表情になる。
「チェリー殿……」
「何でしょう?w」
「あなたは、美しい……」
「もう…照れますね……w」
「まだまだ、若い……」
「そう……ですね……?」
「あなたなら……。頑張り屋の、可愛いあなたなら、どんな男でも好きになりましょう……」
「……?」
「もう、この夢は、見ない方が良い……」
「……」
チェリーは真面目な顔でローランドを見た。
ローランドは何かを諭すように続きを言う。
「私は、生ける者では無い……。
あなたの生は長い。
まだまだ、たくさんの出会いがあるはずだ……」
「……」
「……私などに捕らわれず、どうか、どうか……」
「やめてください」
「しかしですね」
「しかしも、何も、無いです」
「……」
チェリーの中で、強い意志が……、はっきりとした意志が芽生えていた。
今、何かから……、凄い勇気を、与えられている気がする。
「もし、そういうこと言うなら、この夢が終わったら、私は死にます」
「な……」
「本気です」
「……」
「さっきの、凄く、嫌な感じでした。取り消してください」
「……しかし」
「しかしも、何も、無いんです。ほんとに、私、死にますよ?」
「……取り消します。申し訳ない……」
「私、生まれて初めて、怒りました。謝ってください」
「本当に、申し訳ない……」
チェリーは怒っていた。分かってくれていない事に腹が立ったのだ。
「今日はいっぱい言います。ちゃんと聞いてください」
「はい……」
「私は、ローランドさんのことが大好きです。愛してるんです。
分かっていますか?」
「……その、そうだと、良いなと、思っておりました……」
「そうなんです。
じゃぁ、これからは、この夢では、私のことはチェリーって、呼んでください」
「夢でですか……
それはどちらかと言うと私よりはあなたが夢で頑張らないと無理なのではないかと……」
「何言ってるんですか。ローランドさんが頑張るんです。簡単でしょう?」
「簡単でしょうか……?」
「そうですよ。だって、生きてる時は、チェリーって呼んでくれていたんですよ?
何で夢では距離が遠いんですか?
……寂しいです」
チェリーはむくれる。
こういう感情になるのも初めてだった。
「チェリー……」
「ふふふ……w
出来るじゃないですかw」
チェリーの機嫌が一気に良くなる。
不意に、聞いておかなければならないことを思い出した。
「あと、そうだ。
そこって、どこなんですか?」
「そこと言いますと?」
「ローランドさんが普段いる場所です。
こうやって話せているんです。きっとどこかにいるはずです」
「いや、私の魂は無いのです。
しいて言えばあなたの心の中にいるのではないかと……」
「そういうのは良いです。
絶対にいるんですよ?
そこの場所を教えてください」
「……しかしですね……」
「しかしも、何も、無いんです。何度、言わせる気なんですか?」
チェリーは笑いながら言う。
ローランドは狼狽しながら、しばらく考え込んでいるようだった。
結局分からなかったようだ。
「……分かりませぬ。……どこにいるのやら」
「じゃぁ、約束してください。
場所が分からないなら、迎えに来てください」
「迎えに……ですか」
「はい。…いつか私は死ぬと思います。その時に、ちゃんと迎えに来て欲しい……」
「……」
「ちゃんと言いつけ通り、長生きするんです。
1,000年は待ってもらうかもしれませんけど……w」
「永いですな……」
「早く死んだ方が良いですか……?」
チェリーは本気で言っていた。早く会えるなら、早く死んでも良い。
ローランドは怒っていた。
「チェリー……それはダメだ。あなたは天寿を全うしなさい……」
「じゃぁ、ちゃんと1,000年待って迎えに来てください。
私も言いつけ通り、必死に長生きするんです。
ローランドさんも、好きなら、ちゃんと、待ってて欲しいです。
……好きですよね?」
「……」
「……好きって、言ってくれないんですか……?」
「……チェリー……好きだ……。愛している。
ちゃんと迎えに行く……」
「名前を呼べば、来てくれますよね……? 待ってますからね……w」
「必ずや……」
夢の終わりは、淡く、温かい光に包まれた。
この世のものとは思えないほどの、安らかな光だった。
チェリーは爽快な気分で、目覚めた。
この夢の内容は一言一句忘れずに覚えていた。
ベッドの中で、思い出しては、にこやかになってしまう。
こんなに幸せだったことはない。
それから数日間は、ずっとにこやかな笑顔になっていたくらいだ。
朝の食事の用意を終え、給仕をする。
食事の終わりかけの頃、ライトネスから話しかけられる。
「何だ? チェリー。今日はご機嫌だな?w」
「はい。w 最高に良い夢を見たんです……w」
「お、そうなのか。奇遇だな。私も見たんだ。
……死に別れた母親が出てきて、やりたいようにして良いって、頭を撫でながら言ってもらえたw
昨日はいつもより早く寝たんだけども、良い夢過ぎて寝坊してしまったよ……w
チェリーはどんな夢を見たんだ?」
「大好きな人と会っている夢を見たんです。
ちゃんと言いたいことを言えて。
生きる勇気と元気をもらいました」
チェリーの笑顔が輝いていた。
ライトネスはそれを見て、本当に安心した。
これなら、チェリーはもう、大丈夫だろう、という気になったのだ。
そんな幸せな会話をしていると、別のメイドが大慌てでライトネスのところに駆け込んできた。
セラフィから緊急の会談の要請が来ているらしい。書状が届いたそうだ。
書状を読んだライトネスの顔色が一気に険しくなる。
「困ったな。今日は色々重要な商談がいっぱい有るんだが……」
「ライトネス様。こちらのことはお任せください。
シャーロットさんと私たちで、何とか致します」
「チェリー…」
ライトネスはチェリーを見つめる。
チェリーは自信に満ち溢れた顔をしていた。
任せても大丈夫な、そんな予感がした。
「よし、後は頼んだ!
正直、今来た案件が一番厄介だったんだ……助かるよ。
じゃぁ、行ってくる!」
「お任せください!」
チェリーの元気な返事に見送られ、ライトネスは、会談に向かったのだった。
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●本コンテンツについて
・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。
・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。
●本コンテンツの著作権等について
・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。
●使用素材について
・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。
【プレイヤー】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)
【挿絵・イラスト】
・マーコットP
・むーむー
【キャラクター(エモーション・表情差分)】
・マーコットP
・むーむー
【使用ルール・世界観】
・ロードス島戦記
(C)KADOKAWA CORPORATION
(C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
出版社:角川書店
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【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】
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(むーどす島戦記TRPG会)
【製作】
・むーむー/むーどす島戦記TRPG会