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読み切り小説
「願わくは」
チェリー&ローランド
(作者:むーむー)
●目次
〇チェリー・素直なエルフ
〇難民キャンプ
〇ひと時の休息
〇気づかぬ想い
〇ライトネス邸襲撃
〇静養
〇ローランド・神の奇跡
〇抗う勇気
〇懺悔
〇夢
〇千年の想い
〇難民キャンプ
チェリーがライトネス邸のメイドになってから2か月ほど経った頃、
ブラス村ではちょっと困ったことが起きていた。
マーモの圧政から逃れて、カノン方面から、農民などが難民として逃げてくるようになっていたのだ。
難民は着の身着のままで、財産などもほぼ持っておらず、街道沿いをひたすら歩いて逃げてきていた。
カノンとヴァリスを結ぶ街道沿いには、アイリス、ヘリオス、グロースと村が続いているが、
どの村も自分たちの生活で手一杯で、難民などに居つかれても困るだけだった。
アイリスにカノン自由軍の隠れ本拠地があるなどは誰も知らず、
また彼らとしてもレジスタンスであるため、大っぴらに難民を保護することも出来ず、
また、保護したとしても養う場所もない状況だった。見過ごすしか無かったのだ。
それぞれの村で追い払われるように難民が逃げてきた先に、
ヴァリス領の一番端の村、ブラスがあるのだった。
難民たちは、最初はブラスの警備の聖騎士たちに追い払われてカノン方面に押し戻されていた。
だが押し戻されたところで、行く先がある訳でない。結局毎日のように来るだけだった。
そのうち、聖騎士の隙を突くようにして、難民が10数名居つくようになってしまった。
ブラスに2つある小高い山のうちの、南側の方の山のふもと辺りだった。
そこはまだ開拓も進んでおらず、街道から少し離れた森に、
ちょっと開けたような場所があったのだ。
そこなら、聖騎士の街道の警備では回らない場所なので、こっそり居つきやすい状況だった。
これを最初に見つけたのは神官戦士たちだった。
対応に困った彼らは、彼らのリーダーであるローランドにそれを報告した。
ローランドはそれなりの実力を備える神官戦士だった。
魔法の力はさほど強くなかったが、鍛え抜かれた体で小型の盾と
メイスを振るって戦う屈強な戦士だった。
ローランドは部下からの報告を聞いて、すぐさまライトネスの指示を仰ぐため、
ライトネス邸までやってきたのだ。
メイドのチェリーが応対をした。
ローランドはかいつまんで用件を伝える。
だが残念なことに、ライトネス一行は一足違いで、カノンに発ってしまった後であり不在とのことだった。
カノン自由軍と連携してカタコンベにある魔術結社を掃討する任務のためだった。
神託の任務なのでどうにもならなかった。
連絡する手段も持ち合わせていない。
件の任務のためには往復の行程を含めてひと月はかかるだろう。
すぐに早馬で追わせて指示を仰ぐか…?
しばらくそこでローランドが思案していると、おずおずと、チェリーがこんなことを言い出してきた。
「ローランド様…。少しお伺いしても、良いでしょうか…?」
「はい。如何様なお話でしょうか…? チェリー殿」
普段、ライトネスへの取次ぎを願う以外は、会話をしたことが無い。
何を言い出すのかと思ってローランドは聞いていた。
「テントや野営用の道具というのは、リスモアに行かないと買えないものでしょうか…?」
「…ええ…。恐らくは…」
「ファリス神殿には用意はありませんか…?」
「…それなりの人数分は、あるにはありますが…」
「当家の倉庫には恐らく10名分程度しかないので…。食材はブラスでも買えるのですけども…」
「…チェリー殿?」
チェリーの質問の意図を掴みかねた。まるで炊き出しを行うつもりのようだった。
「準備を1人でするのは難しいでしょうか…?」
「…念のための確認ですが、炊き出しを行うおつもりですか…?」
「はい」
淀みがない答えだった。ローランドはチェリーに再度確認する。
「ライトネス様のお許しをうかがいに来たつもりだったのですが…」
「ふふw ライトネス様なら、すぐにやれ、とおっしゃるはずです」
「なるほど…?」
「奴隷だった私を救い出してメイドにしてくださる方なのです。そうおっしゃると思います。
むしろしなかったら、何をしていた、と叱られてしまいます…」
「なるほど…。違いない…」
「では、ファリス神殿にある分をお貸出し願えないでしょうか。用意は私の方で…」
「いやいや。1人でやるなど、大変ですよ。みんなでやりましょう。我々も手伝います故」
こうしてチェリーとローランドをはじめとする神官戦士は速やかにテントの設営と炊き出しを実施した。
テントの設営は一度してしまえばあとの手間はないが、食事の用意はそれなりに労力がいる。
チェリーはライトネス達が不在だったためにしなくてもよくなった屋敷の仕事の時間を充当して、
この炊き出しのためにだいぶ時間を割いていた。
ローランドはその姿を見て、神官戦士にも率先して手伝うように指示を出した。
一週間もした頃、チェリーは先々を見通してリスモアに使いを出して、
テントや野営用の道具を大量に購入した。
ローランドはそこまでの数いるのか?と思ってはじめは聞いていた。
ライトネスの了解も取っていない。相当な金額なはずだった。
が、しばらくしてチェリーの読みの方が正しかったと思い知った。
難民が続々と来るようになったのだ。
チェリーは難民の世話をしながら、きめ細かく情報を集めていたのだ。
そのため、人買いの動きが活発になっていることや、襲われている地域が拡大していることを把握し、
これからも難民が増えるだろうということが、彼女には分かっていたのだ。
難民は、来てすぐは、ただ疲れ果てて飯を食うだけの存在だったが、
チェリーや神官戦士たちが頑張ってる姿を見て、手伝える者は率先して手伝うようになっていた。
1人手伝い始めると、また1人、また2人と、手伝いをする者が増えていく。
自分たちのことは自分たちでやろう、そういう空気が出来てきていた。
のちに、自助努力をモットーとする救貧所の前衛となる姿が、ここに現れ始めていたのだ。
チェリーは最初のうちこそは食事をずっと作り続けていたが、
3週間もする頃には、難民の健康状態の確認をしたり、情報を聞き集めて、
食材やテント、寝袋の手配をしたり、足りない物を手配するというような仕事をするようになっていった。
規模が大きくなり、街道警備をしている聖騎士がこれに気付いた時も、
チェリーが事もなげに「問題ありません」と言うので、ライトネスの指示を受けているのだと勘違いされ、
最終的には聖騎士たちや暗黒騎士たちの一部も手伝うようになっていた。
チェリーは嘘をついていたつもりではなく、ライトネスなら「問題ない」と言ってくれると信じていたので、
淀みが無かったのだ。
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