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読み切り小説
「願わくは」
チェリー&ローランド
(作者:むーむー)

●目次

〇チェリー・素直なエルフ
〇難民キャンプ
〇ひと時の休息
〇気づかぬ想い
〇ライトネス邸襲撃
〇静養
〇ローランド・神の奇跡
〇抗う勇気
〇懺悔
〇夢
〇千年の想い

〇静養

チェリーはラーダ寺院にある客室で寝かされていた。2名宿泊できる客室のようだ。
入口から離れたところ、部屋の奥にベッドが2つあり、そのうちの1つに寝かされていた。

部屋の中央には小さなテーブルと椅子が置いてある。
テーブルの上には花瓶があり、花が生けられている。
椅子は2つあり、宿泊する客がお茶などを飲む際に使用するテーブルなのだろう。

チェリーの目が覚めた。
体の痛みは無くなっていた。あれだけあった傷は治っているのかもしれない。
体を確認しようという気に全くなっていなかった。
心にはもやがかかったようになっていて、起き上がろうという意志が沸き上がらないのだ。
目を開けてはいるが、何も見ていなかった。
薄暗い天井がぼんやりと見える。それだけだった。
今がいつなのか、どうしてここにいるのかも、考えようともしていなかった。

近くに人がいる気配があるが、そちらを見る気になれなかった。
チェリーの目がうつろになってくる。
不意に気が遠くなる。
チェリーは眠りに落ちた。

―――

数時間後。辺りは夜になり薄暗くなっていた。

チェリーは再び目覚めた。
先ほどよりは意識が戻ってきていた。
今がいつなのか、どうしてここにいるのか。少しだけ、疑問に思えた。
体は相変わらず動かない。痛みなどは無いようだった。眼だけ動かす。
天井だけを見ていたが、色々見えるようになってきた。
どうやら、どこかの部屋のベッドに寝かされていることは分かった。

生きているようだった。そうだ。生きている…。目にジワリと涙が出てくる。
何かを思い出さないといけないはずなのだが、まだうまく頭が働かない。
目だけを動かして周りを見る。
部屋の真ん中あたりに、テーブルがあり花が見えた。ランプの光で照らされている。
そこに人が座っている。目を凝らしてみるとルーシアがいた。
座りながら書き物をしているように見えた。

何か、言わなくては、と思った途端、チェリーの目がまたうつろになってくる。
気が遠くなる。チェリーは再び眠りに落ちた。

―――

さらに数時間後。辺りは深夜という時間になっていた。音もない静寂の時となっていた。

チェリーはまた、目が覚めた。
先ほどよりは意識がはっきりしてきていた。

どうやら辺りは夜になっているようだった。先ほどの部屋に寝かされたままだった。
体は動かない。眼は動くようだった。
テーブルがあり花が見えた。ランプの光が灯っていた。だが、そこに座っていたルーシアはいない。
少し寂しい、と心が動いた。だが、それだけだった。
不意に近くから声が聞こえてきた。ルーシアの声だった。

「気が付きましたか? 無理に動くことは無いですからね? ゆっくり休んでいてくださいね?」

チェリーは目だけそちらに動かす。隣にあるベッドに腰を掛けて座っているルーシアが見えた。
遠くにあるランプに照らされた、ルーシアの表情は優しかった。少し、安心した。

何か声をかけなくてはならないと思い、口を動かそうとした。上手く動かない。
もどかしい。もう少し、頑張れば、話せる気がするのに、言葉が出てこない。
集中するために、目をつむる。少し頑張ってみたが、無理だった。

諦めて、目線だけでルーシアに大丈夫というようなことを伝えたいと思った。
目を開き、ルーシアの方をちゃんと見ようとする。
その時、不意に、ルーシアが座っているベッドの後ろの方に置いてあるものに目が行った。
小型の盾が置いてあった。
……どこかで見覚えがある。
……誰が使っている物だったか…。

これはローランドさんの盾だったと思い出した。

途端に、ある情景が、目に焼き付いたある情景が、浮かんでしまう。
自分を守ろうとして、庇ってくれたローランドの手が吹き飛ばされる情景。
彼が襲い掛かられ、片手が吹き飛ばされ、血しぶきが舞う。
チェリーは声にならない叫びをあげる。

――やめて!! その人を、傷付けないで!!!

チェリーの頬に涙が流れる。また意識が闇に捕らわれる。
チェリーは、再び、深い眠りに落ちた。

ルーシアは、眠りについたチェリーの涙を拭う。
チェリーは何かを言いたそうだった。辛そうな顔をした後、また眠りについてしまった。

待とう…。今は、近くに、誰かが居るだけで、良い。
側に居られるうちは、私が、側に…。

ルーシアは、ずっとチェリーの側に付き従う。何の助けにもならないかもしれない。
だが絶望の暗闇に居る時、誰も近くに居ない辛さ、苦しさ、寂しさを、彼女は誰よりも深く知っている。

――今は、側に居てあげたい。

ルーシアはそっとチェリーを見つめ続けるのだった。

巨悪との戦いが、じきに始まる。この時、誰もが、未来を予想出来ていなかった…。

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●本コンテンツについて

・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。

・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
 楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。

●本コンテンツの著作権等について

・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
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【プレイヤー】

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・ヤトリシノP
・むーむー(GM)

【挿絵・イラスト】

・マーコットP
・むーむー

【キャラクター(エモーション・表情差分)】

・マーコットP
・むーむー

【使用ルール・世界観】

・ロードス島戦記
 (C)KADOKAWA CORPORATION
 (C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
 原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
 出版社:角川書店

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【リプレイ製作】

・むーむー

【ショートストーリー・小説製作】

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・むーむー
 (むーどす島戦記TRPG会)

【製作】

・むーむー/むーどす島戦記TRPG会

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