第10章 二人の幼児と語る
サークルのメンバーではないが、シルバーバーチの〝お友だち〟として毎年クリスマスが近づくと交霊会に招待されて、シルバーバーチと楽しい語らいを持っている子供がいる。ルース(女児)とポール(男児)の二人で、ともに心霊ジャーナリストのP・ミラー氏のお子さんである。これから紹介するのはそのミラー氏がサイキックニューズ紙に発表したその日の交霊会に関する記事である。

まずシルバーバーチが次のような祈りを述べた。

「神よ、なにとぞ私たちにあなたの愛、あなたの叡知、あなたの慈悲を知る力を授けたまえ。素朴さと、無邪気さの中にあなたに近づき、童子のごとき心を持つ者にのみしめされる真理を悟らし給わんことを。あなたは不変にしてしかも変転極まりなき大自然の栄光の中のみならず、童子の無邪気さの中にも顕現しておられるからでございます」

そして二人に向かい、あたかも慈父の如き口調で、目にこそ見えなくてもたびたび二人の家を訪れていることを述べ、さらに、

「私はあなた達と遊んでいるのですよ。妖精や天使達といっしょに、そして特にあなた達に霊の世界の素晴らしさを教えようとしている人たちといっしょに、あなた達の家を訪れているのですよ」と述べた

すると最近になって霊視力が出始めたルースが寝室で見かける〝光〟は何かと尋ねた。ポールもルースと一緒にいる時に同じようなものを見かけることがある。シルバーバーチはそれが妖精と天使が見せてくれているものであることを説明してからルースに向かって、

「あの光はその妖精達が携えてくる〝守護の光〟であなた達を取り巻いております」と述べ、今度はポールに向かって、

「霊の世界には地上で遊ぶチャンスが与えられないうちに連れてこられた子供がそれはそれは沢山いるのです。そういう子供達をあなた達と遊ばせるために連れ戻すことがあります。あなたたちとの遊びを通して、まだ一度も体験したことのないものを得ることができるのです」

ルースがシルバーバーチにこうして霊界からお話をしに戻って来てくれることにお礼を言うと、シルバーバーチは、

「いえ、いえ、あなたたちこそ私の話を聞きに来てくれてありがとう。こうしてお話をしに来ることによって私は、皆さんが私のお話から得られる以上のものを頂いているのです。お二人の心には私の本当の住処である高い境涯の純粋さが反映しております。

その純粋さは地上近くで仕事をしている霊にとって、とても大切なものなのです。それをお二人の心の中に見つけて、いつも慰められております」

ルース「霊界のお友達に会いに戻られるのは楽しいですか」

「もちろん楽しいですとも、ルースちゃんがもしお家から遠く離れて暮らし永いことお父さんお母さんに会わずにいたら、いよいよお家に帰ることになったと聞かされた時は嬉しくないですか。

私はもうすぐ〝多くの住処〟のある私の本当の〝父の家〟に帰って(※)そこで大勢の私の愛する霊、私を愛してくれている霊、私にこの使命を授けて下さった霊と会うことになっております。ですが、それは、人生の旅を理解するための知識を必要としている地上のさらに大勢の人達のお役にたつための力をいただくためです」

(※わが父の家には住処多し〝霊界にもさまざまな生活の場があるということ〟)

ルース「私も妖精を見るのが楽しみです」

「そういう楽しみを授かったことを感謝しなければいけませんよ。何も感じない人が大勢いるのですから」

ここで二人が霊媒の膝に座ってシルバーバーチに口づけをさせてほしいと言う。それが終わると今度は霊界について何か楽しいお話をしてほしいとたのんだ。するとシルバーバーチは・・・

「霊界にも広い広い動物の王国があることをご存知ですか。そこでは動物のあらゆる種類が・・・動物も小鳥も・・・襲ったり恐がったりすることなくいっしょに暮らしております。ライオンが子羊と並んで寝そべっても、ケンカもせずにえさじきになることもありません。

美しい花園もたくさんあります。そこに咲いている花々はそれぞれの種類に似合った色彩、濃さ、形をしています。地上では見られない色彩がたくさんあります。

又美しい湖、山々、大きな川、小さな川、豪華な羽毛と目の覚めるような色彩をした小鳥がたくさんいます。昆虫も綺麗な種類のものがたくさんおります。地上で見かけるものよりは変異しています(物質界という)さなぎの段階を通過して、本当の美しい姿を見せているからです」

ポール「地上でもし小羊がライオンの側に寝そべったら、まるごと食べられてしまいます」

「地上のことではありませんよ。こちらの世界のお話ですから大丈夫です」

ポール「シルバーバーチさんのお家はきれいでしょうね」

「それはそれは美しくて、とても言葉に言い表せません。絵描きさんが描こうとしても、ぜんぶの色合いを出す絵の具が地上にはありません。音楽でその美しさを表そうにも、地上の楽器では出せない音階があります。〝マーセルおじさん〟・・・シルバーバーチの肖像画を描いた心霊画家のマーセル・ポンサン氏でその日も出席していた・・・に聞いてごらんなさい。

あの人は絵かきさんです時おりインスピレーションで見ている霊界の美しさを描く絵の具が無いとおっしゃるはずですよ」

ルース「寝ている間に霊界へ行ったことを覚えていないのですけど・・・・」

「大きな精神で体験したことが人体の小さな脳に入りきれないからです」

ルース「シルバーバーチさんは英語がはっきり話せるのですね」(普段のバーバネルよりもっとゆっくりと、そして一語一語はっきりと発音してしゃべる-訳者)

「そのことを有難いと思っています。こうなるまでにずいぶん永い時間がかかりました。ポール君がおしゃべりできるようになるのとほぼ同じ位の年数がいりました。このぎこちない地上の言葉をしゃべるようになるために私はずいぶん練習しました。

私の世界ではそんな面倒はいりません言葉はしゃべらないのです。こちらは思念の世界です。あるがままが知れてしまうのです」

ポール「ウソをついても知られないようにすることができますか」

「ウソと言うのが存在できないのです。神様の摂理(オキテ)をごまかすことはできないからです。あるがままの姿が映し出されるのです。見せかけも、ごまかしも、ぜんぶはぎ取られてしまいます。そのままの姿がみんなに見られるのです。でも、それを恐がるのは自分のことしか考えない人たちだけです」

ルース「いまイエスさまが話そうと思えば霊媒を通じて話すことができますか」

「いいえ、イエスさまは王様が家来の者を使うように私達を使っていらっしゃいます。私たちはイエス様の使節団なのです。イエス様のお考えを地上の人たちに伝え、地上の人たちの考えをイエスさまにお伝えするのです。でも、イエスさまの霊はいつも私たちとともにあります。決して遠くにいらっしゃるのではありません。

前にもお話ししたことがありますが、私がイエス様のところに行く時は・・・もうすぐまいりますが・・・ルースとポールと言う名前の二人の良い子の考えと言葉と愛とをたずさえて参ります。ご存じのようにイエスさまは子供が大好きなのです」

二人がこの言葉の意味を考えている少しの間沈黙が続いた。やがてルースが言った。

ルース「霊や妖精がいることを信じることが出来て嬉しいです。何時までも信じていたいと思います」

「そうですとも、その信仰を忘れてはいけませんよ。人に笑われても気にしてはいけません。こんな素敵な信仰が持てて幸せだなあと、それだけを思っていればよろしい。それを笑う人は何も知らないのです」

こう述べてからシルバーバーチはサークルのメンバーに「この子は心の中で妖精を見たいという念をしきりに抱いているので、いま見せてあげようとしているところです」と述べ、妖精はバイブレーションが高いので普通の人間の目には見えないけど、いつか皆さんにも(物質化して)お見せできるでしょうといった。

ここで私(ミラー)が誰か私の友人が来ていますかと尋ねるとシルバーバーチは、

「人間と言うのは面白いですね。よくそう言う質問をなさいますが、愛の繋がりのある人はいつもそばにいてくれているのです。決して遠くへ行ってしまうのではありません。

皆さんは肉体と言う牢獄に閉じ込められているからそれに気づかないだけです。霊の世界には時間もありませんし、距離もありません。意識の焦点を合わせさえすればいいのです。私はこれから遠くへ参りますが、あい変らずここにいると言ってもいいのです。この問題はここでは深入りしないでおきましょう。二人の子供が混乱しますから」

ポール「僕たちはどのようにして物ごとを思い出すのでしょうか。」

「一つのことを知ると、それは記憶の部屋にしまわれます。そしてその知識が必要になると、知りたいという欲求がテコとなって(タイプライターのキーのように)その知識を引き出します。すると記憶がよみがえってきて、使用されるのを待ちます。使用されると又記憶の部屋へ戻っていきます。一度学んだことは決して失われません。いったん覚えたことは決して忘れません」

ルース「じゃ、あたしたちが考えていることが全部そちらから分るのですか」

「親しい間柄の霊には分ります。人間の心の中は開いた本のようなものです。親しい人にはみな読み取れます。親しくない人には分りません。近づけないからです」

ルース「あたしはシルバーバーチさんが大好きです。どう説明して良いのか分らない位好きです」と言ってポールと一緒に霊媒の顔をじっと見つめた。

「私だってルースちゃんとポール君が大好きですよ。この気持ちは愛の大中心からくる愛、世界全体を支配している愛、宇宙全体を動かしている愛、全部の生命を優しく抱きしめ、たった一人の子供も、どこにいようと何をしようと、絶対に見放すことのない愛と同じものなのです。

それが、宇宙が始まる前から、そして宇宙が終わった後も、永遠に霊を一つに結びつけるのです。それは永遠に変わることのない神様の愛であり、愛の神様です。その愛の心をお二人が出すたびに神様の心が発揮され、宇宙の創造の仕事が続けられるのを助けることになるのです」

この対話にサークルの全員が涙を流した。

続いて話題がシルバーバーチのインディアンとしての地上時代の生活に移った。まず山ふところでの〝水〟に左右された生活の様子を語った。

その生活は素朴で、現代生活にありがちな問題や、せかせかしたところが無かったこと、日が暮れると子供の霊がやって来て、良い子はもう寝る時間ですよと告げてくれたこと、寝入ると霊の世界へ遊びに行ったこと等を話して聞かせた。そして最後にこう述べた。

「ではもう一つだけお話ししてお別れすることにいたしましょう。私は間もなく地上を離れ、いくつもの界を通過して私の本当の住処のある境涯へ行き、そこで何千年ものあいだ知りあっている人たちとお会いします。地上のために働いている人たちばかりです。しかもたびたび苦しい思いをさせられています。私はこれからそこへ行って、かつて身に付けた霊力を取り戻してきます。

そこへ行って私はこれから先の計画を教えていただき、これまでに私が仰せつかった仕事をちゃんとやり遂げているのかどうか、どこまで成功し、どこが失敗したか、それを次の機会にやり直すことが出来るかどうかをお聞きします。

それからみんなで揃って大集会に出席して、そこであなたたちがイエスさまと呼んでいる方とお会いします。するとイエスさまは美しさと優しさと理解と同情にあふれたお言葉を掛けてくださいます。

その時私たちは神さまのマントで包まれます。愛の衣で包まれます。そして神さまの尊い力で身を固めて一人ひとりに授けられた新しい使命に向かって出発します。

お二人の様な子供から〝シルバーバーチさん大好き〟と言われるごとに私は〝ああ良かった〟と思います。なぜなら私たちの仕事は愛を得て初めて成し遂げられるのもであり、愛の反応を見出して初めて仕事がうまく行っていることを知るからです」

どうぞその天界の光が皆さんの毎日の生活に反映されることを祈ります。神の恵みがいつもみなさんとともにあることを祈ります。ここにおいでのみなさんは今まさに神が託した霊団の保護のもとにいらっしゃいます」

かくして二人の子供にとってその年で最高の一日が終わった。霊媒が意識を取り戻してふだんのバーバネルに戻り、二人に話しかけると、二人は驚いた様子で見つめていた。そして娘のルースは私に抱きつき、涙を流しながら言った・・・シルバーバーチさんとお友達になれて、あたし、ほんとにしあわせよ、と。