第2部 アラン・カルデック自伝
──孤独と休みなき戦いの日々(『遺稿集』第四章「自伝的ノート」から抄訳)
第6章 霊媒を誰に頼むべきか?
一八五六年六月十日、ルスタン氏宅で、霊媒はジャフェ嬢。
――(ハネマンに対して)『霊の書』の第一部がもうすぐ終わりそうなので、もっと早く仕事を進める為に、Bに霊媒を務めてもらおうと思っているのですが、そのことについては、いかがお考えですか?
「それは止めておいた方がいいと思います」
――どうしてですか?
「虚偽の霊から真実が伝えられることはないからです」
――彼に、今Bを支配しているのが虚偽の霊であったとしても、この霊媒を通じて高級霊からの情報を得ることは可能だろうと思うのですが。
「確かにそうです。しかし、この霊媒は虚偽の霊との縁が深くなっています。したがって、常に虚偽の霊が介入してくる可能性があるのです」
Bは若い男性の霊媒で、容易に自動書記を行うことが出来る。しかし、アリストと呼ばれる、傲慢で横暴な霊に支配されていた。アリスト霊は、Bの自惚れ易い傾向性に取り入っていたのである。
ハネマンの予測は当たっていた。Bは医学的な相談業務、物当て、また、占いの類を行うことによって、一財産を築こうとし、その結果、アリスト霊に翻弄されて、支離滅裂なことを言うようになったからである。やがて、誰からも相手にされなくなった。