平成5年(行ウ)第5、6号

退去強制命令等取消、国籍存在確認請求事件

被告 準 備 書 面 (4)

 任意認知に受理が必要とされる根拠について、以下のとおり主張を追加する。

1 既に被告準備書面3で述べたとおり、民法781条が、「認知は届け出ることによってこれをする」として、右身分行為の成立要件を届出を必要とする要式行為と定めたことから、受理が要件として必要となると解されるものであるが、同条が「戸籍法の定めるところにより」と規定して、右届出の方式や手続等を戸籍法に委ねているところ、この届出に関する1戸籍法の規定の解釈からも、任意認知の成立要件に受理が必要と解されるところである。

2 すなわち、戸籍法は、同法25条から22条にかけて、第4章「届出」とし、うち同法25条から48条にかけ、届出に関する通則規定を、49条以下に各種届出に関する規定を定め、認知については、第3節「認知」として、同法60条から65条にかけて規定を置いている(なお、同法28条以下は、第6章「雑則」とされている。)。

3 これらのうち、同法34条2項が、「市町村長は、特に重要であると認める事項を記載しない届書を受理することはできない」と定めていること、並びに、同法48条1項、28条及び29条から、各種戸籍の届出が戸籍事務管掌者に受理されない場合、届出人は、不受理の証明書を受けられるとともに、家庭裁判所に対し、不受理処分の不服申立てをすることができ、右申立てに対しては、家庭裁判所は戸籍事務管掌者に対し届出の受理を命じる旨の形成的裁判ができる(特別家事審判規則15、17条)ことになるが、このような救済手続を設けたこと自体が、正しく受理処分がなければ届出は効力が生じないことを前提にしたものと言わざるを得ないものであることのほか、同法42条が在外公館で受理した書類の送付について、同法45条が届出を受理した場合の追完について、同法46条が期間経過後の届出の受理について、同法47条が死亡前に郵送した届書の受理にっいて、同法131条が市町村長の届出の不受理についての過料について、戸籍法施行規則20、21条が届出の受理処分したときの手続について、それぞれ受理に関連して個別的な規定を定めていることも合わせ考えると、戸籍法上の届出は受理をその要件と解していることは動かし難いところである。

4 そして、右各規定が、それぞれ戸籍法第4章届出の通則規定及び同法第6章雑則に置かれていることからすると、戸籍法は、届出1般について、要件として受理を必要としているものと解されるから、届出についての各則に当たる任意認知の届出についても、これらの規定が当然に及ぶものと解される。

5 他方、同法60条以下には、「受理」の文言はみられないが、任意認知に係わる同法60、61条も同法29条と同じく届書の記載事項にっいて定めるものであって、任意認知の届出に関する重要事項を定める規定にほかならず、その形式的な内容からすると、受理の際の形式的審査事項の1つを定めるものと解される。そうすると、同法60、61条は、受理が要件として必要とされる根拠になるものであって、これに受理の文言がないことをもって、届出の成立要件に受理を排斥する積極的な根拠にはならないことは言うまでもないところである。



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