平成5年行ウ第5号・第6号

原告 準 備 書 面 (4)

平成6年4月7日

1 訴外Aは、1991年9月12日、広島市西区役所市民課を訪れ、原告Fの胎児認知の承諾書及び母子手帳を提出したうえで、口頭によりFの胎児の認知届をした。

2 被告らは、認知は、認知届が受理されないかぎり効力がないと主張する。しかし認知は届出により効力を発生するのであり、受理を云々する余地はない。その理由は以下の通りである。

(1)我が国の民法は強制認知(訴えによる認知)、死後認知などの制度を認めるが、これらはいずれも自然の血縁による父子関係がある場合に(父の意思にかかわらず)認知の効力を認めるものであり、民法781条1項が生前認知の場合に届出を必要とした趣旨も、これらの制度と整合性を持たせて解釈する必要がある。そこで、以下のように解するのを相当とする。
 わが国の民法は、婚姻外の父子関係につき、自然の血縁があれば法的父子関係を発生させるとの基本的考えに立つ。もっとも、自然の血縁による父子関係の存在は確証しがたい。そこで、法は、裁判所の手続を緩る場合(強制認知や死後認知)を除いては、自然の血縁による父子関係の存在についてもっともよく知りうべき地位にある父が、右父子関係の事実を、認知届出行為により承認した場合に、法的父子関係を発生させることにしたのである。
 したがって、法的父子関係の発生(認知の効力発生)は、父による父子関係の事実の承認、すなわち父による認知届出行為の存否によって決せられるべきものであり、認知届の受理は認知の効力の発生要件ではない。

(2)民法、戸籍法のいずれにも、認知届は受理されなければ効力を発生しないと定める条項はなく、披告らの、認知届に受理が必要だとする主張は法的根拠に欠ける。
 なお、民法には、婚姻、離婚、養子縁組、離縁について、受理に言及する規定(婚姻については民法740条「婚姻の届出は、その婚姻が第731条乃至第737条及び前条第2項の規定その他法令に違反しないことを認めた後でなければ、これを受理することができない。」、離婚については同765条、養子縁組については同800条、離縁については同822条)があるから、これらの規定を手掛かりに、婚姻等の場合には受理が効力
発生要件であると論ずる余地がないでもない。しかし、認知については同旨の規定は置かれていないか、婚姻等の場合と同様に論ずることはできない。

(3)もし認知届も受理されなければ効果を発生しないとすると、本件のように、理由もなく認知届が受理されない場合、真実の父子であるにもかかわらず、当事者は法律上の父子関係を生じさせることができなくなるが、このような事態はおよそ法の予想しないところであって、不当であることはいうまでもない。この意味においても、認知届に受理が必要との解釈は有害無益である。

以上


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