平成5年(行ウ)第6号 国籍存在確認請求事件

原告 準 備 書 面 (1)

1 胎児認知の届け出に対する広島市西区長の取扱について

(1)外国人女性が出産するに際して胎児の父親が胎児の母親の承諾書を持参して胎児認知の届け出をした場合、市町村の担当職員は、承諾書をとりあえず受領し、届出当日受理決定した場合には戸籍受附帳に所定事項を記載し(戸籍法施行規則第21条第1項)、不受理決定した場合又は必要書類の提出がない等の理由で即日受理決定ができない場合には所定事項を戸籍発収簿に記載すべきこととなっている(戸籍事務取
扱準則第33条、34条)。
(2)しかし、本件胎児認知の届け出がなされた1991年9月21日当時、広島市西区役所は右のような取扱をしていなかった。当時の西区役所では外国人女性が出産するに際して胎児の父親が胎児の母親の承諾書を持参して胎児認知の届け出をしても母親の国籍を証するものを持参していなかった場合は、戸籍受附帳、戸籍発収簿のいずれにも記載せず、承諾書も受領しない取り扱いをしていたのである。
(3)西区役所の右取扱いついての1例を挙げると、1991年2月中旬頃、日本国籍の男性が、広島市西区在住の韓国籍の女性の胎児を認知をするために母親の承諾書を持参して代理人を介して西区役所に届け出をしたことがある。
 西区役所の担当職員は承諾書の受領を拒否した上、代理人に対し、母親の国籍を証するもの(訳文付の韓国の戸籍謄本か、外国人登録証)及び父親の戸籍謄本を揃えてから再度来所するようにアドバイスし、「書類が揃うまでに子どもが生まれないことを祈る。」などと言っている。西区役所が記載どおりの取扱いをしていれば、承諾書の受領が拒否されるはずもなく、書類が揃う前に子どもが生まれても差し支えなかったはずである。結局、書類が揃ったのは同年12月26日で、区役所が胎児認知を受理したのは翌27日(子の出生5日前)であった。尚、この事例の詳細については必要に応じて追って主張・立証する。
(4)Aの本件胎児認知の届け出については戸籍受附帳、戸籍発収簿いずれにも届出をした旨の記載がないものと推測されるが、西区役所の右取扱からすれば、届出当日(1991年9月21日)Fの出生証明書を持参しなかった日の届出について全くどこへも記載をしないまま処理されていることは十分有り得ることである。

2 Aが原告の出生前に西区役所を訪れた事実について

 マスコミ報道等でAが胎児認知をめぐって係争中であることを知った「広島婚外子差別と闘う会」のメンバー数名が、本年5月28日午前、西区役所を訪れ、市民課長らに対し本件胎児認知届出時の状況につき説明を求めたところ、市民課長は事件のことについては直接回答できないと言いながらも「出生前に区役所に来たが必要書類を揃えて再度来るよう助言したところ、実際揃えてきたのは出生後だったのだから区役所に落度はない。」旨話したそうである。この市民課長の発言も本件胎児認知届出の事実を裏付けるものである。尚、右やりとりの詳細については現在調査中であるので、必要に応じて追って、主張・立証する。



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