平成5年(行ウ)第6号 国籍存在確認請求事件

被告 準 備 書 面 (1)

第1 求釈明

 本件において、原告に係る胎児認知届の受理の欠缺が認められれば、直ちに原告が日本国籍を取得する余地が存在しないことは明らかである。そこで、原告は、訴状における請求の原因31において、「Aが、1991年9月12日(以下「事件当日」という。)広島市西区長に対し、原告につき胎児認知する旨届出た。」としているが、その趣旨をめぐり、
1 Aの届出行為の存在に加え、広島市西区長の受理の事実もあったと主張するのか、それとも、届出はしたものの受理の事実はなかったと主張されるのか、明らかにされたい。
2 受理の事実が存在するのであれば、いかなる事実をもって受理がなされたと主張するのか、その具体的かつ詳細に事情を明らかにされたい。

第2 国籍法第2条1号の解釈について

 原告は、自らが日本国籍を有する訴外A(以下「A」という。)に認知されている者であり、国籍法第2条1号にいう「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」に該当するから、日本国籍を有する旨主張する。
 しかしながら、右規定にいう「父」は法律上の父を指し自然的血縁関係があるだけの事実上の父を含むものではなく、また、その法律上の父子関係は出生の時点において既に成立しているものでなければならないものと解すべきであって、これは、同法第3条において、父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得したものは、法務大臣に届出をなすことによって、日本国籍を取得する旨定められていることからも明らかというべきところであり、この理は戸籍実務(昭和26年3月9日民甲425号民事局長通達・乙第1号証)及び多数の裁判例(東京高裁昭和55年12月24日決定・判例時報993号56ぺ−ジ、東京高裁昭和42年5月15日決定・ジュリスト401号310ぺ−ジ、大阪高裁昭和56年10月31日判決・行裁集32巻10号185ぺージ、東京地裁昭和56年3月9日判決・判例時報1009号41ぺージ、神戸地裁昭和54年3月30日判決・訟務月報27巻9号2ハ94ぺ−ジ)がこれを肯認するところである。
 そして、原告は、Aにより、平成3年9月30日付けで認知されているのであるから、出生の時点においてAと原告の間に法律上の父子関係が存在しなかったことは明らかであるから、原告の前記主張は明らかに失当というべきである。
 なお、Aに係る戸籍の身分事項欄には、平成4年2月12日原告を認知した旨記載されているが(乙第2号証)、同日はAにおいて、平成3年9月30日になした胎児認知届を普通認知届に補正する旨の追完届をなした日であり、認知の効力自体は、平成3年9月30日に発生しているものと認められることから、右戸籍の記載は、福岡県嘉穂郡嘉穂町長の誤記入に起因するものと思料される。

以 上



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