▼今年の出来事
1年を一言で表すなら、イラク戦争の年、というのが一番正しいように思う2003年。しかし、私の中で今年の最大のニュースは、やはりCanon EOS10Dを買ったこと。1個体としては今年最大の買い物でしたが、生活に一番大きな影響を与えた買い物でもありました。付随して、レンズを3本、三脚・一脚、プリンターまで買っちゃいましたからね。相方は呆れてます。
そんな10D君を背負って、あちこち行きました。どちらかと言うと出不精気味な私を外に連れ出してくれたのはこの10D君でした。一番行ったのはもちろん競馬場(笑)。毎日王冠、天皇賞(秋)、京王杯2歳ステークス、ジャパンカップ、 朝日杯フューチュリティステークス、有馬記念と、GIを含む(関東開催の秋の芝GIは全て見たって事か)数多くの重賞競走も(ファインダーを通して)競馬場で見ました。来年最大の目標は、もちろん日本ダービー、そしてファインモーションが目標にしている安田記念です。やはり寝袋買ったほうがいいでしょうか(アホ)。
そんな我が家にはI-PATも入って、私のパソコンではテレビも見られるようになったので、ほぼ自宅でウインズと同じ状態(ほんとは大画面プラズマが欲しい)。別に競馬場に行かなくても賭けには参加できるのですが、やっぱり競馬場に行くと違いますよね、面白さが。
それ以外にも、意外と首都圏は撮るものもあって、特に六義園の紅葉はとっても感動。今年は紅葉も含めて、天候不順で例年より劣る、というものが多かったのですが、中でもいつもはもっと絨毯みたいになるという巾着田にはもう一度行きたいです。今年は咲き誇るコスモスを撮らなかったから、来年はそれも目標。クリスマスイルミネーション撮りも楽しかったですね。
イベントとしては、ROBODEX2003が面白かったな。それ以外にも演劇や映画、展覧会と例年通り見たのですが、そんな私に影響があったのが、東急文化会館の閉鎖と、六本木ヒルズの開業ですね。東急文化会館は空いていることと、家から近いことでしょっちゅう使ってたので、すごく残念。最後に見た映画はアメリカでの封切りと同じ日に上映した『マトリックス・リローデッド』でした。そして、六本木ヒルズが4月末に開業。最初に通ったときの感想では、あまりの人にひるんでいる様子が伺えますが、それも約1年経って大分落ち着いてきました。特に平日の人出はそれほどでもありません。職場も家も近いし、映画館がインターネットで予約できるのも良い。ヒルズの中でなくても食べるところは腐るほどあるしで、すっかり気に入ってしまって、六本木ヒルズで上映されている映画は六本木で、というのが最近の傾向です。カードも作っちゃいました。
いろいろあった1年でしたが、景気回復の兆しも見えてきたことだし、来年はいい年になると良いですね。
▼今年のおすすめ
さて、今年のおすすめ本に参りましょう。上記に書いたように今年は微かにですが、景気回復の兆しが見え始めた年でした。そのせいなのかどうなのか、意外と明るい本に面白本が多かった。中でも福田栄一『ア・ハッピー・ラッキー・マン』が私は大好き。クスリと笑えて、かつ清涼感さえ漂う面白さ。大学生らしいアホさと、大学生だからできる日常の冒険が面白おかしく描かれています。大倉崇裕『無法地帯』も、ちょっと間違えると気持ち悪いとすら思えるコレクターがユーモアたっぷりに書かれていて笑える小説。こっちもおすすめですね。また「笑える」わけではありませんが、さわやかさという点では、伊坂幸太郎の2作が良かったです。『重力ピエロ』も『アヒルと鴨とコインロッカー』も内包するエピソードは非常に重たいものなのですが、それを何とも淡々と描き、かつストーリーとして面白いという、今までの小説になかった新鮮さが感じられます。そういう「重厚テーマを淡々と」というのは、全体的に言えたことかも。瀬尾まいこ『図書館の神様』も、実は不倫やら、学校やら、友達やらというちょっと間違えたらものすごーく暗くなっちゃうテーマを淡々と、でも心に残るような描き方がされていて、とてもお気に入り。少年少女7人が、誰もいない孤島に流されてしまう久世光彦『渚にて』なんかもそうかな。多分今までの文壇なら、もっとドロドロに書かれたと思うんですよ。下手したら仲間割れとか殺し合いといった描き方もできなくもない。そうではなく、7人が力を合わせようとして悩み、そして楽しみ、生き抜こうとするストーリーは、新鮮でかつ感動的なものでした。
一方で、人間の泥臭さにどっぷりつかったような重厚小説も健在。兄が強盗殺人を犯したことで、様々な不利益を被る東野圭吾『手紙』、そして喧嘩で相手を殺してしまった男の出所後を描く真保裕一『繋がれた明日』という表裏というか、兄弟のような作品が同時期に出ました。どちらも重いテーマで、かつ答えの無い小説。微妙な評価ではありますが、どちらも読んで損はありません。また、日航機墜落現場であった群馬県の記者たちの活躍を描いた横山秀夫『クライマーズ・ハイ』も男臭さが匂うような小説でおすすめ。横山秀夫は驚異的なペースで標準以上のエンターテイメント小説を次々と出していますが、この作品が一番力があったかな。もともと群馬で記者をしていたという経験がリアリティを生んだということもあるのでしょう。また、この著者の面白いところは、誰を主人公にしようとも、その人が「探偵役」になって「事件を解決する」というパターンにはならないとこ。あくまでその職業なりの悩みや、人間関係に主眼を置いた作品づくりが受けている所以かと思います。
また、シリーズものとしては京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』がよかったですね。このテーマは私のツボにはまりました。ちょっと長いけど、このオチには参りました。また、雰囲気は全然違うのですが『豆腐小僧双六道中ふりだし』を読んで、この人の「日本文化と心」に対して、一貫してユニークな考え方を持っているんだなと、今更ながら感心。こうやって解き明かされると、今まで漠然と感じてたことが形を成してくるような気がします。『豆腐小僧』は、まだ京極小説を読んだことない人には最初におすすめかも。あるいはいくつか読んでから『豆腐小僧』を読むと、なおさら納得するのかな。
最後に番外としてあげておきたいのが宮本輝『優駿』。「馬に一度携わった人は、一生馬から離れられない」とは、松樹剛史著『ジョッキー』に書かれていた言葉ですが、確かに馬って魅力があるんです。徐々に強くなっていく馬、早熟な馬、左回りが嫌いな馬、音が怖い馬。あんなにでかくて、人間なんて踏み潰そうと思ったら簡単にできてしまうのに、ものすごく繊細。パドックや馬場でカメラを構えてると、こっちを見ながら回ってく自意識過剰(?)な馬もいれば、ぜーんぜん知らんぷりのもいたり。そんな馬が競争するのもとっても面白い。サラブレッドというのは、またすごく美しい生き物です。たまたま相方が競馬をやる人で、しかもその友人に競走馬の一口馬主をしている人がいたりしたことで、すっかり競馬にはまった片桐が今更読んだ、ダービーをめざす競走馬物語。ホントにおすすめ。読んで競馬って面白そうと思った人は是非。東京競馬場は改修も進んで、六本木ヒルズも真っ青なくらいとっても綺麗ですよ(何しろ胴元はお金ありますからね)。気づくと望遠レンズをつけたカメラを構えて最前列で待つ自分がいる・・・かも(笑)。
今年は新人さんに力がある小説が多かったように思いますが、来年はどんな人がデビューしてくれるでしょうか。楽しみです。