和歌入門附録 和歌のための文語文法

活用表 動詞についての留意点 助動詞の種類と機能 助詞の種類と機能 仮名遣

助詞の種類と機能 4

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助詞一覧表

連体助詞 格助詞 副助詞 係助詞 終助詞
間投助詞 接続助詞

係助詞  なむ や(やも・やは) か(かも・かは) こそ  

係助詞(かかりじょし/けいじょし)は、種々の語に付き、その語に意味を添えると共に、文の終止にまで影響を及ぼす助詞である。いわゆる「係り結び」を形成し、ぞ・なむ・や・かは連体形で、こそは已然形で、は・もは終止形で結ぶことを要求する。

 係助詞

【主な機能】

    種々の語に付き、その事柄を取り立てて強調する。結びは連体形になる。古くは清音(そ)であった。

    吉野なる夏実の川の川淀に鴨鳴くなる山影にして(万葉集、湯原王
    人はいさ心もしらずふるさとは花むかしの香ににほひける(古今集、紀貫之
【補足】

元来は終助詞であったが、強調のため倒置されて係助詞となったと見られている(大野晋『係り結びの研究』など)。上に引用した湯原王詠を例にとれば、「鴨ぞ鳴くなる」は「鳴くなる鴨ぞ」という文に直すことができるが、これが倒置の形をとっていることにより「鴨」という語が強調されていることになる。

【助詞との結合例】

なむ 係助詞

【主な機能】

    種々の語に付き、それを強調する。結びの活用語は「ぞ」と同じく連体形をとる(但し下記引用歌の結びはいずれも体言である)。「ぞ」に比べ語調は柔らかい。主として会話文・散文に用いられ、和歌にはほとんど用いられなかった。発音の変化に伴い「なん」と表記されることも多くなる。

    白髪にさしまどはせる花の色をそれなむ梅と人はわかなん(家持集)
    袂よりはなれて玉を包まめやこれなむそれとうつせ見むかし(古今集、壬生忠岑)
【他の機能】

終助詞としてもはたらき、主として会話文で丁寧の意をあらわす。

や(やも・やは) 係助詞

【主な機能】

    問いかけ・疑問・反語などをあらわす。結びは連体形になる。

  1. 質問・疑問をあらわす。相手あるいは自身に対し呼びかけ、問いかける気持を伴うことが多い。
    神風の伊勢の浜荻折り伏せて旅寝らむ荒き浜辺に(万葉集、碁檀越妻
    難波江の葦のかりねの一よゆゑ身をつくして恋ひわたるべき(千載集、皇嘉門院別当
  2. 已然形に付き、自らに問いかける疑問をあらわす。直後に述べる事実の根拠について推測する時に用いられる、特殊な語法である。詠嘆や反語の意を伴うこともある。終助詞「や」も参照されたい。

    いにしへの人に我あれささなみの古き都を見れば悲しき(万葉集、高市黒人
    里は荒れて人はふりにし宿なれ庭もまがきも秋の野良なる(古今集、遍昭
  3. 反語をあらわす。「〜か、いや〜ない」の意。「やは」「やも」の形をとることが多い(次項参照)。
    秋の田の穂の上を照らす稲妻の光の間にも我忘るる(古今集、読人不知
【助詞との結合例】
【他の機能】

終助詞間投助詞としてもはたらく。

か(かも・かは) 係助詞

【主な機能】

    疑問・反語をあらわす。連体形で結ぶ。

  1. 疑問をあらわす。「何か」「いつか」「誰か」「幾〜か」など、疑問詞を伴うことが多い(この点「や」とは異なる)。
    一つ松幾代ぬる吹く風の声の清きは年深みかも(万葉集、市原王
    葦辺より満ち来る潮のいや増しに思へ君が忘れかねつる(万葉集、山口女王
  2. 反語をあらわす。
    荒津の海潮干潮満ち時はあれどいづれの時我が恋ひざら(万葉集、作者不詳)
【他の機能】

終助詞としてもはたらく。

【助詞との結合例】

こそ 係助詞

【主な機能】
【補足】
【助詞との結合例】
【他の機能】

奈良時代以前に用いられた終助詞「こそ」があるが、係助詞の「こそ」と同源かどうか不明。

 係助詞

【主な機能】

    種々の語を承け、それを話題として提示して、それについての説明・叙述を導くはたらきをする。「は」を承けて結ぶ活用語は通常終止形をとるとされるが、命令形をとったり、連用形で中断したり、体言で言いさしたりと、実際は様々な形をとる。
    なお、現代口語では、既知の(古い)情報を「は」で、未知の(新しい)情報を「が」で示すというように、「は」と「が」が対(つい)をなしているが、文語では既知の確実な情報を「は」で、未知の不確実な情報を「も」で示すというように、「は」と「も」が対をなしている(次項「も」参照)。

     国のまほろば たたなづく 青垣 山隠れる 倭しうるはし(古事記、倭建命
    葦辺ゆく鴨の羽がひに霜降りて寒き夕へ大和し思ほゆ(万葉集、志貴皇子
    古里となりにし奈良の都にも色はかはらず花咲きけり(古今集、平城天皇
    鈴鹿川波と花との道すがら八十瀬をわけし春忘れ(秋篠月清集、藤原良経
【他の機能】

終助詞としてもはたらく。

【助動詞との結合例】

 係助詞

【主な機能】
【他の機能】

終助詞としてもはたらく。

【助詞との結合例】

助詞一覧表

連体助詞 格助詞 副助詞 係助詞 終助詞
間投助詞 接続助詞


公開日:平成19年5月19日
最終更新日:平成19年5月19日