和歌入門附録 和歌のための文語文法

活用表 動詞についての留意点 助動詞の種類と機能 助詞の種類と機能 仮名遣

助詞の種類と機能 3

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助詞一覧表

連体助詞 格助詞 副助詞 係助詞 終助詞
間投助詞 接続助詞

副助詞 だに すら さへ のみ ばかり まで 

副助詞とは、種々の語に付き、その語と一体となって副詞としての働きをする助詞である。

だに 副助詞

【主な機能】

    種々の語を承け、それを最低限・最小限のものごととして提示する。室町時代に「さへ」に取って代わられるが、歌語としてはその後も使われ続け、近代に至る。

  1. 否定・反語と呼応して、「〜すら(ない)」の意。
    石瀬野に秋萩しのぎ馬並めて小鷹狩だにや別れむ(万葉集、大伴家持
    けふのみと春をおもはぬ時だにも立つことやすき花のかげかは(古今集、凡河内躬恒
  2. 推量・仮定と呼応して、「〜ですらも」「〜だって」の意。
    恋しけく日長きものを逢ふべかる宵だに君が来まさざるらむ(万葉集、作者未詳)
    身の果てをこの世ばかりと知りてだにはかなかるべき野辺の煙を(玉葉集、藤原定家
  3. 「せめて〜だけでも」の意。願望・命令などと呼応することが多い。
    三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや(万葉集、額田王
    今年だにまづ初声をほととぎす世にはふるさで我にきかせよ(詞花集、花山院
  4. 「〜さえも」「〜までも」の意。
    大かたの秋の空だに侘しきに物思ひそふる君にもあるかな(後撰集、右近
    聞くやいかにうはの空なる風だにも松に音するならひありとは(新古今集、宮内卿
【助詞との結合例】
【慣用的表現】

すら 副助詞

【主な機能】

    体言または体言に準ずる語を承け、それを最低限の例、あるいは極端な例として提示する。

  1. 「〜でさえも」の意。
    春日すら田に立ち疲る君は悲しも若草の妻なき君し田に立ち疲る(万葉集、人麻呂歌集歌
    かくしつつ遊び飲みこそ草木すら春は咲きつつ秋は散りぬる(万葉集、坂上郎女
  2. 「〜までも」の意。
    あぶり干す人もあれやも家人の春雨すらを間使ひにする(万葉集、作者未詳)
【助詞との結合例】

さへ 副助詞

【主な機能】

    体言や活用語の連体形、副詞などを承け、それが現状にさらに添加されることを示す。語源は動詞の「添へ」。

  1. 「〜までも」「その上〜まで」の意。
    水無月の土さへ裂けて照る日にも我が袖干めや君に逢はずして(万葉集、作者未詳
    うつつにはさもこそあらめ夢にさへ人めをもると見るがわびしさ(古今集、小野小町
    君がため惜しからざりし命さへ永くもがなと思ひぬるかな(後拾遺集、藤原義孝
  2. 「〜だけでも」の意。意志・推量や仮定をあらわす句の中に用いる。
    さへあらば見つべき身のはてを忍ばむ人のなきぞかなしき(新古今集、和泉式部)
【助詞との結合例】

のみ 副助詞

【主な機能】

    種々の語に付き、そのことだけに限定する意をあらわす。「〜だけ」「〜ばかり」強調の意ともなる。語源は「の身」で、「それ以外の何物でもない」ことを示すのが原義。

    ももづたふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ(万葉集、大津皇子
    秋の夜も名のみなりけり逢ふといへば事ぞともなく明けぬるものを(古今集、小野小町
    忘れては打ち嘆かるる夕かな我のみ知りて過ぐる月日を(新古今集、式子内親王
【助詞との結合例】

ばかり 副助詞

【主な機能】

    語源は動詞「計る」。この程度であると見積もる意。体言や動詞・副詞など様々な語に付く。用法によって接続する活用語の活用形が異なるので注意が必要。

  1. 「〜ほど」の意味。おおよその度合・時・場所などをあらわす。活用語の場合、終止形に付く。
    かくばかり恋ひつつあらずは高山の磐根しまきて死なましものを(万葉集、磐之媛
    我が屋戸の萩が花咲けり見に来ませいま二日ばかりあらば散りなむ(万葉集、巫部麻蘇娘子)
    命あらば逢ふよもあらん世の中になど死ぬばかりおもふ心ぞ(金葉集、藤原惟茂
    鶉なく交野にたてるはじ紅葉散りばかりに秋風ぞ吹く(新古今集、藤原親隆
  2. 否定表現を伴ってそれ以上はないという限定をあらわす。「〜ばかり〜なし」の形を取り、「〜ほど〜はない」の意に用いることが多い。活用語の場合、連体形に付く。
    有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし(古今集、壬生忠岑
    かぞふれば年の残りもなかりけり老いぬるばかり悲しきはなし(新古今集、和泉式部)
  3. 「〜だけ」と範囲を限定する。主に平安時代以降に見られる用法。活用語の場合、連体形に付く。
    今来んと言ひばかりに長月のありあけの月を待ちいでつるかな(古今集、素性
    わが恋はゆくへもしらず果てもなし逢ふを限りと思ふばかり(古今集、凡河内躬恒

まで 副助詞

【主な機能】

    体言または活用語の連体形を承け、それが事態や動作の辿り着く到達点であることを示す。時についても場所についても言う。

  1. 到達点を示す。「まで」
    天飛ぶや鳥にもがもや都まで送り申して飛び帰るもの(万葉集、山上憶良)
    黒髪に白髪交じり老ゆるまでかかる恋には未だ逢はなくに(万葉集、坂上郎女
  2. 程度をあらわす。「〜ほど」「〜ほどまで」の意。
    わが宿は道もなきまで荒れにけりつれなき人を待つとせしまに(古今集、遍昭
    忍ぶれど色に出にけり我が恋は物や思ふと人のとふまで(拾遺集、平兼盛
【助詞との結合例】

 副助詞

【主な機能】
【助詞との結合例】

助詞一覧表

連体助詞 格助詞 副助詞 係助詞 終助詞
間投助詞 接続助詞


公開日:平成19年4月8日
最終更新日:平成22年12月22日