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日本の鉄道路線長

イメージと違います

日本は鉄道に向いている国

車両保有数比較

 下の図1は、欧州各国の国鉄系の鉄道事業者の路線長を国別に比較したものです。その中に、JR各社の路線長を入れてみました。

【図1】 鉄道路線長比較

所属する旅客両数については以下のとおりです。元資料はJRさんは鉄道統計年報(平成30年度版)、その他はUIC(世界鉄道連合)の統計Railisaです。UICのRailisaは、年ごとの変動が大きすぎる国がある点から一部不正確なようです(ポーランドは少なすぎです。)。また、鉄道運行会社別に所属国を決めているようで、例えばベルギー−フランスをまたいでいるタリス社の車両数は、ベルギーに帰属しています。

【図2】 旅客車両数比較

図1、図2では、国(会社)の並びを同じにしています。列車が国境を越えて乗り入れてくるのが当たり前な欧州各国とJRさんを同列にするのは乱暴なのですが、図2の車両保有数を図1の営業距離で割って、単位線路長あたりの旅客車両数を計算してみると、図3のようになります。
 この図3ではJR各社さんはどこも路線長の割に車両数が多いということがわかります。おそらく、列車編成が長いことと、運行頻度が多いので車両がたくさん必要だということだろうと思います。

なお、ベルギーとオランダについては、前述のように他国を走っている車両も会社の帰属国に計上されるために膨れ上がっているようです。英国については、列車編成の長さと大都市から枝線まで直行運転をしている形態が関係しています。

【図3】 100kmあたりの旅客車両数の比較

図1にはインド(6万km)、中国(12万km)、ロシア(12万8千km)、アメリカ(29万km)など、桁違いに長い路線を持つ国は入っていませんが、それでも、山がちで狭い国土にもかかわらず日本の鉄道会社の路線は長い上に、路線長の割に鉄道車両も多いことから、鉄道を利用される旅客の多さ故に国内の鉄道が発達しているといえそうです。


世界一の旅客輸送量

ところで、インターネット上では日本の鉄道が世界一、という意味合いのキーワードで検索が行われているようです。
  一方、本サイトで紹介している事項は優劣とは無関係の話ばかりで、「世界一」とは無縁なのですが、ここで紹介しようと思っている国民一人当たりの鉄道利用量は、世界一です(元資料によってちょっと揺らぎますが)。
  鉄道利用者は、「旅客輸送量」という統計項目から算出することができます。旅客輸送量とは、何人の旅客を、何km運んだかという観点から集計するため[人キロ]という単位で集計します。

日本の鉄道旅客輸送量(全鉄道路線)は、4351億人キロ(2017年度)です。
 この[人キロ]は、あまりなじみのない単位なのでピンときませんけれど、日本の総人口(1.25億人)で割り、かつ365日で割ると、9.39[km]、と求まります。これは、国民1人が1日に9.39km鉄道に乗っている、ということを意味するのですが、皆様の実感と合っておりますか? (私はその9倍乗っているようです。)

旅客輸送量は統計手法の違いで各国を比較できる資料が少ないのですが、図1のUICの統計(2018年、2019年)の旅客輸送量を使うと下の表のようになります。ただ、UIC加盟鉄道会社はほぼ旧国鉄系の会社のみですので、日本では地下鉄、民鉄が含まれない(→そのため、旅客輸送量が半分になってしまいます)点にご注意願います。なお、このUICの統計では日本と英国は、一部の主要会社さんのデータが欠落しています。そのため、日本については日本の統計(2019年度)からほかの国と条件が同じになるようJR各社さんの旅客輸送量だけに絞ったデータで補っています

【表】旧国鉄系鉄道の旅客輸送量の比較
  旅客百万人km
(旧国鉄系のみ)
センサス人口[億人] 旅客一人・
一日当たりの輸送km
備考
中国 2,554,725 13.40 5.22  
インド 1,157,174 12.09 2.62  
日本 277,670 1.27 5.99 輸送量統計(JR6社利用分のみ)
全鉄道では435,063百万人km)
ロシア 133,381 1.43 2.56  
フランス 94,423 0.64 4.04  
ドイツ 85,785 0.80 2.94  
イタリア 51,006 0.59 2.37  
スペイン 28,682 0.47 1.67  
ウクライナ 28,615 0.48 1.63  
スイス 20,983 0.80 0.72 (全鉄道では、1382億人km)
アメリカ 10,426 3.09 0.09  
オーストラリア 5,157 0.23 0.61  
イギリス データ欠落 0.63 #VALUE!  

 

上の表をグラフ化したものが図3です。国民一人当たりの国鉄系鉄道の旅客輸送量は、(ほぼ)間違いなく世界一です。

【図3】鉄道旅客輸送量比較

旧国鉄系鉄道に限らなければ、前述のように日本は国民一人当たり、9.39km/日、鉄道が利用されています。私鉄が加わることで、倍近くになるのですね。

念のために私鉄が発達したスイスについて確かめるべくスイスの統計から全鉄道利用の人キロ(=138.2 [10億人km],2019年)からスイスの人口8千万人で割り出ししてみると、4.73km/人ですので、日本の鉄道が世界一といってよいと思います。

これは、どちらかというとお客さんのおかげといったほうがいい成果だと思います。ご乗車ありがとうございます。