中古の町

oldcal

「カルカッタは周辺部から廃墟になっている」
 中央のグリーンベルトにバラックが建ち、路上生活者が炊事している通りを抜けると、タクシーは焼け跡のような路地に入り込んだ。なるほど。言われていたとおり。
「サダル・ストリートに着きましたよ」
「え?」
 周辺どころか中央部が廃墟ではないか。

 これが初めて訪れたカルカッタの印象。古い町並みが廃墟に見えてしまったのである。そのぐらい、カルカッタは古い。むしろカルカッタはボロいと表現した方が適切だろう。臭いもあるし、汚れてもいる。(今はかなりきれいになったが)

 古いと言うだけなら日本の京都や萩なども範疇に入ってくるし、インドならほとんどすべての都市が該当するかもしれない。それらの中には手厚く保護されている古都もある。何とか遺産か知らないが、古い景観を保つために大切に大切に扱い、元通りの古びた感じにするための修復がおこなわれる。
 カルカッタは骨董やアンティークの町ではなく、徹底的に使い倒された中古の町。手垢が付いた古さだからボロい。町を走るバスもトラム(市電)もおそろしくボロい。それでも一所懸命に働いている。ぞんざいに扱われているわけでもない。建物もよく見れば、補修の跡だらけだ。壊れたら直す。外観が多少違ったとしても再び動けばいい。大切に保っているんじゃなくて、大切に使っている。
 カルカッタは貧しいという声を聞くけれど、私は豊かだと思う。貧しく見えてしまうことこそ、ある意味、カルカッタの美点かもしれない。

 バブルの時代に期間限定を売り物にした建物があった。傷も異常もない数年前の自動車が当たり前のように捨てられ、立派に動く家電品が処分されていく。
「地球資源を大切に……」と訴えている方、
「地球環境が……」と言いながら近くの買い物にも自動車を使っている方、
 当然、カルカッタはお好きですよね?