江戸料理百選タイトル   

落語にみる
江戸の食生活

第1回 お花見  
 落語『貧乏花見』 
 名物『玉子焼き』 
第2回 たけのこ
落語『たけのこ』
『竹の子料理 1 * 2 』
第3回 そば
落語『そば清』
『霙蕎麦(みぞれそば)』
第4回 豆腐
落語『酢豆腐』
『豆腐料理いろいろ』
第5回 うなぎ
落語『うなぎ屋』
真夏の風物詩
第6回 秋刀魚
落語『目黒の秋刀魚』
江戸の魚ごよみ
第7回 いわし
落語『猫久』
『 酢烹(すしに)』
第8回 大根
落語『たらちね』
『大根料理いろいろ』
第9回 さつま芋
落語『芋俵』
『甘藷百珍』

* 第7 回 * いわし
第7回 落語『猫久(ねこきゅう)』 へ飛びます。

 『江戸料理百選』 酢烹(すしに)のレシピをご紹介します! ← クリック
 いわしに、卯の花を使って重ね煮にするお料理です。

江戸の庶民の食卓を支えてきたイワシ!
天高い秋空に、白く鱗状に広がるいわし雲。
このいわし雲は、空の高いところにできる上層雲で秋によく見られます。1つ1つの雲が小さいので、高いところにあるように見えます。イワシが群がったような形で、この雲が出るとイワシが沢山捕れたので、この名前がついたそうです。

10月4日がイワシの日{1(イ)0(ワ)4(シ)}だということご存じでしたか。
大阪府の多獲性魚有効利用検討会(現在の大阪おさかな健康食品協議会)が1985(昭和60)年に提唱しました。イワシは栄養豊富だが捕獲量が多いので、食用の他大半はハマチやニワトリの餌にされています。

江戸の頃のイワシも『和漢三才図會』(1713年)に
およそ、鯨と鰯と本朝海中の宝なり。その利用はかり知れず。
と書かれているように、食用の他は乾燥して干鰯(ほしか)として田畑の肥料にされていました。
痛みが早いので、大漁に採れても当時の保存技術では腐らしてしまうので値段を安く値切られてしまいます。
このように安い大衆的な魚が下品とされ、落語『目黒の秋刀魚』の秋刀魚と同様『下魚(げうお)』と言われ、「いわし」が「いやし(い)」に通じるところからも馬鹿にされていたようです。もちろん身分の高い方は食べませんでした。
その昔、平安時代、紫式部は鰯が大の好物。夫の宣孝が「鰯のような卑しい魚を食べるとは何事」ととがめられたが
「日の本にはやらせたまういわし水 まいらぬ人はあらじとぞ思ふ」と言い返したとか。
ちなみに現在では捕獲量も減少して高級魚になりつつあるようです。

江戸の庶民は、毎日売り歩く行商のイワシ売りから買っていました。
行商は、固定店舗の商人より多く、天秤棒の両側に桶を吊って売り歩く「振売り(または「棒手振」)」と呼ばれる行商人が主流で、いつも決まった時間帯に来るので時報の役割も兼ねていました。「エ、いわしこい。エ、いわしこい」の売り声は季節を感じさせる風物詩でした。

イワシといえば、三種類(マイワシ・ウルメイワシ・カタクチイワシ)に大別され、ふつうはマイワシのことを指します。体に一列、または二列に黒い斑点が7つ位あるので別名ナナツボシとも言われます。背中は青黒く、腹側は銀白色です。
このマイワシの中でも大きさによって、大羽いわし(15センチ以上)、中羽いわし(12センチ以上)、小さいのはコバといっている。稚魚は軽く塩干しされシラスボシの名で出回ります。
中羽、大羽いわしの旬は前回の"秋刀魚"と同じく秋。八月から十月にかけて、『秋鰯』の時期とされ、脂肪がのって特別に美味しい。そして栄養的にも優れています。
この他、ウルメイワシ、カタクチイワシは冬が旬といわれます。

イワシの選び方!!
イワシは魚偏に弱いと書くように、とても弱い魚で、痛みが早く生臭くなりやすいので鮮度の良いものを選びたい。体に張りがあり、丸々と太ってること。生きているような真っ黒な目を選ぶのがコツ。顔が小さいのも脂がのっていて美味しいようです。

イワシの栄養価!!
安値で庶民に親しまれたイワシは、栄養価が高く、秋刀魚・サバ・アジなどの"青魚"の共通の特徴として脂肪分の含有量が多い。その脂肪分に含まれている高度不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の働きで血液の動きをよくし、コレステロールを排除するので、動脈硬化や脳血栓、心臓疾患の成人病を防ぐ効果があります。

イワシの一番手っ取り早い調理法というと軽く焼くことですが、刺身やタタキ、煮もの、なます、ぬたにしたり色々な食べ方ができ、そのうえ包丁を使わず手で開くことができるので、家庭でも簡単に調理することができます。
欠点と言えば脂が強いことと、生臭いことでしょうか。料理をするとき葱・生姜・味噌などを加えることで臭い消しに。酢を使うことで脂対策になります。

この他美味しい食べ方として魚の漬け物が挙げられます。黒漬け・糠漬け・糠味噌漬け・粕漬け・麹漬けなど。

江戸時代には魚の糠味噌漬けが愛用されていたようです。
この方法は魚の生臭さが抜けて新鮮味が残ると記録されています。材料はイワシ・鮒などの小魚からサケ・マス・サワラなど。

余談ですが、1872年10月10日は日本で初めて缶詰が製造された日です。
その中身はイワシの油漬けでした。腐りやすかった鰯も獲れたてを高温高圧で加工する保存に成功しました。消化しやすいたんぱく質とカルシウムが大変豊富です。カルシウムは骨を丈夫にする働きや、神経のイライラを鎮める効果があり、ストレスの多い方に是非お勧めします。
缶詰なら、骨まで柔らかくいただけるので、カルシウムもたっぷり摂れて手軽で便利ですね。缶詰を使ったお料理も工夫してみてください。
いわしの缶詰は、汁気をしっかり切ってお使いください。臭みが全然気になりません。
このように良いことづくめのイワシです。
家庭料理の主役になるように、もっとイワシを食べましょう!!


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