江戸料理百選タイトル   

江戸時代・筍料理-1

素人包丁      素人包丁
『素人包丁』より

筍羮

 『大江戸料理帖』(新潮社)写真:松藤庄平

「林巻大風呂吹大根」の原文にある「しゅんかん」とは?
「「しゅんかん」とは、『江戸料理集』(1674)によれば筍羹と書く。こう書けば、どんな料理なのか見当がつく。 これは室町時代に流行した筍の煮物。冷めてから食膳に出された料理なので、別名、煮冷(にさまし)とも言われていた。しかし、『料理網目調味抄』(1730頃)になると、筍に限らず、菜類を中心に、海老、いか、あわびなどを加えた煮物のことになっている。」(『江戸料理百選』島崎とみ子著 料理帖 46

【 料理物語 】
寛永二十年(1643)刊、徳川家光の時代。
江戸時代初の第一級の料理書。江戸初期の献立について書かれている。著者不詳。
江戸時代になって刺身料理が流行し、『料理物語』の中に筍が見られる。筍の刺身は蒸して白酢を とある。
 ※参考資料:『たべもの江戸史』永山久夫著 新人物往来社

筍羹(しゅんかん)「料理物語より」
「竹の子をよくゆにして色ゝにきり。あわび。小とり。かまぼこ。たいらぎ(平貝)。玉子。ふのやき。わらび。さがらめ(海草の一種)。右之内を入。だしたまりにてに候てよし。又竹子のふしをぬき。かまぼこを中に入れ。に候てきり入も有。」(『江戸時代料理本集成 第一巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「材料  筍 白身魚又は海老の擂り身 きくらげ 椎茸 木の芽 だし しょうゆ みりん
    作り方
    筍は皮をむき、茹で上げてから、中央の節の部分をくりぬく。
    くりぬいた部分を乱切りにしたもの、きくらげや椎茸など好みの具をだし、醤油、みりん
    などで煮る。(少し 濃いめに味をつける)。
    煮上がった具の汁気をきり、完全に冷めたところで、魚か海老の擂り身とあわせ、
    節を抜いた筍の穴に詰めて蒸し上げる。
    大きな筍なら小口切りに、小さな物なら縦割りにして盛りつけても美しい。
    木の芽を添えて出来上がり。」(『大江戸料理帖』新潮社 福田浩著)

だしの仕方「料理物語より」
「鰹の良き所をかきて、一升あらば水一升五合入、煎じ、味を吸い見候て、甘味良き程にあげてよし。過候ても悪しく候。二番煎じ使い候。」(『江戸時代料理本集成 第一巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「作り方
    だしは、鰹の良い所をかいて、一升あれば水一升五合を入れてせんじ、味を見て、
    あま味ほどよくあげる。あますぎてもよくない。二番煎じを使ってもよい。」

【 万宝料理秘密箱 】
天明八年(1785)刊、本書には『卵百珍』の異称がある。

卵之部
笋煎入卵(たけのこにこみたまご)の仕方「万宝料理秘密箱より」
「一是も。竹の子を。よく湯がきて。扨(さて)笋(たけ)の根より。細き小刀(こがたな)にて。笋のやうを。くりとり。とくととりて。たまごをわり。よくとき合セて。右の笋の中へ流しこみ。扨口へ。葛の粉をかけて、厚き紙にて。包みよく縛(くゝり)むすへし。よくむして。取いだし。遣(つか)ひ方は。いづれも。前に同し。尤も平皿(ひらさら)の。さしこみによし。」(『江戸時代料理本集成 第五巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「作り方
    小ぶりの筍の皮をむき、茹でたものを、根元の方からナイフの刃先を差し込んで縁に沿って
    ぐうーつとひとまわしして切り目を入れる。あとはスプーンで節の部分をかき出す。・・・・・
    くりぬいた筍の穴に玉子を流し込んで蒸す。玉子が流れ出さないように口に葛粉を振りかけ、
    厚紙で包んできつくしばってから蒸す。」(『大江戸料理帖』新潮社 福田浩著)

【 名飯部類 】
享和二年(1802)刊、合計一五一品目の米飯料理について書かれた、江戸時代後期の日本初のご飯事典。

筍めし「名飯部類より」
「「淡竹筍(はつちく)用ひ 苦竹筍(またけ)を用ゆへからす 味ひ少し苦(にか)く 簽(あく)うしてあくつよし

末凡三四寸柔(わ)らか成ル所を切取塩湯をたきらせ其中に入淪(ゆに)し切て飯を常のことく炊薪(たきき)を断(ひき)て後飯上(うへ)に置熟(うま)す 達矢汁 加料 紫蘇苗(めしそ) 花蜀椒(はなさんせう) 浅草紫菜(あさくさのり)よろし」(『江戸時代料理本集成 第七巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「作り方
    淡竹(はちく)の竹の子を用いる。苦竹(まだけ)の竹の子を用いてはならない。
    味わいが少し苦(にが)く、えぐくてあくも強い。
    先端の三、四寸(11、2cm)の柔らかな部分を切り取って塩湯をたぎらせ、
    その中に入れてよくゆがいてから切る。飯が炊き上がってから飯の上において蒸らす。
    だし汁、加料は、芽紫蘇(めじそ)、花山椒、浅草海苔がよい。

      新鮮な淡竹はアクが少ないので、ゆでなくともよい。
    料理に使う竹の子は孟宗竹が主である。先の方を皮つきのまま斜めに切り落とし、
    皮を二、三枚はがし、水に糖を入れてゆでる。流水にしばらく晒(さら)してから
    料理する。加料は木の芽が第一であろう。」(『名飯部類』教育社新書 福田浩・島崎とみ子訳)

竹の皮巻すし「名飯部類より」
「竹の皮の広く大なるを両端を切攤げ飯と核肉(かやく)を置巻て巻尾(まきしゆひ)を薄のりにて貼巾(つけふきん)に巻包(まきつつみ)すし筥に入圧石をかけ一時計りして切
 右のことくし切絹帛(ふくさ)で包遠に括(もち)て行厨(へんとう)に代(かゆ)へし」(『江戸時代料理本集成 第七巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「作り方
    竹の皮の広く大きなものの両端を切り、ひろげて飯と加料(かやく)を置いて巻く。
    巻き端を薄のりではりつけ、布巾で巻き包み、すし筥(ばこ)に入れて
    重石(おもし)をかけ、二時間ほどしてから切る。
    右のようにして切ったものを絹帛(ふくさ)で包んで遠くへ出掛けるときに
    持参し、弁当がわりにするのもよい。」(『名飯部類』教育社新書 福田浩・島崎とみ子訳)

筍すし「名飯部類より」
「淡竹筍の随分新近(あたらしき)を以て皮を去(と)り根(ね)を断(きり)完(まる)なから稀しやうゆにて烹小刀を持(もち)て節間(ふしあひ)を刮(くり)て前のおこし鮓の飯核(めしく)肉を摶円(にきりまろめ)め末(すへ)より堅くつめ置てすし桶に並へ尤やりちかへおく也おして一口(ひとゝき)時計りして殺(そぎ)切にす△こけらすしのことく製(せい)したけの子を薄く片切にし稀豆油(うすしやうゆ)に烹て多く入たるをも筍(たけのこ)のすしと云」
(『江戸時代料理本集成 第七巻』 吉井始子編 臨川書店)

   「作り方
    淡竹(はちく)の竹の子の新鮮なものを用い、皮をむいて根元を切り、
    丸ごと薄醤油で煮る。小刀で中の節を削り取って、前のおこしずしの飯や具を
    にぎりまるめて、竹の子の中に末の方から固くつめ、すし桶に並べ
    (もっともやりちがいにおく)、重石ををかけて一時間ばかりしてからそぎ切りにする。
    また、こけらずしのように作り、竹の子を薄切りにして、薄醤油で煮て、
    たくさん入れたのも竹の子ずしという。」(『名飯部類』教育社新書 福田浩・島崎とみ子訳)
  

           江戸料理百選 江戸時代・筍料理-2 へつづく。


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