2 奥尻との出会い
奥尻なんて島は、学校で習うものではない。ふつう、東京で暮らしていたら、この島との接点は無い。僕のばあい、渓流釣りの雑誌を眺めていて、たまたま見つけた。思えばそれが悪い偶然だった。
僕は渓流釣りをする。臆病なうえに変わり者なので、熊や蛇、釣り人さえいない離島での渓流釣りが好きだ。普段は佐渡を根城にしている。しかし、佐渡は熊こそいないものの、マムシはいる。前年にたびたびマムシと出くわした僕は、熊も毒蛇もいないという奥尻の記事を目にしたとき、これこそ自分の求めている釣り場だと思った。
奥尻には熊がいない。毒蛇もいない。なぜかハクビシンというアナグマみたいな獣がいるらしい。島には細流が幾筋か流れている。渓流釣りの本には、イワナが細流の河口近くからジャンジャン釣れるようなことを書いてあった。
1 プロローグ
2 奥尻との出会い 3 奥尻に行く
4 地震だ! 5 父がいない 6 父の生還
7 広がる被害 8 夜が明けた 9 奥尻港へ
10 上陸 11 エピローグ 12 教訓 EXIT!